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経産省官僚古賀茂明氏への肩たたき/民主党政権よ、霞が関の改革派潰しにまで手を貸すのか

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Diamond online 岸博幸のクリエイティブ国富論【第146回】 経産省解体は難しくない
 2011年7月15日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
 私がかつて20年ほどお世話になった経産省は、原発事故以来、菅首相の攻撃対象としてすっかり悪者になってしまいました。しかし、問題が多いのも事実。もういっそ経産省は、“解体的出直し”といった甘い次元ではなく、解体すべきではないでしょうか。
経産省の罪
 実際、経産省の罪はたくさんあります。原発事故への対応では、官邸が混乱していて可哀想だった面もありますが、保安院は多くの対応ミスや情報開示の遅れなど、人命に関わる言い訳できない失敗をしています。
 そして何よりも、事前の安全規制に問題があった面は否めません。“耐震設計審査指針”全15ページのうち津波への言及はわずか3行のみで、そこで想定された福島第一原発の津波の高さも、震災時の14メートルを遥かに下回る5.7メートルでしかありませんでした。こうした規制の甘さは、経産省の幹部と電力会社の密接な関係の延長と言われても仕方ないでしょう。
 そして、原発事故の損害賠償スキームにおいても、中堅クラスはともかく幹部は東京電力の延命を優先し、かつ事故の責任のある経産省は予算の削減と供出などの痛みを何も負っていないのに、安易に電力料金に転嫁しようとしています。
 更に言えば、原発の再稼働を急ぐあまり、6月18日に海江田大臣が安全宣言をする根拠となった2回目の緊急安全対策は、実質わずか一週間で取りまとめ、水素爆発への対応などは今後時間をかけて対応と答えた原発も多いのに、安全より電力不足の経済への影響を優先して安全宣言しました。保安院は自らの役割を放棄したに等しいです。
 それに加え、不祥事も目立ちます。保安院の西山英彦前審議官の不倫もさることながら、資エ庁前次長のインサイダー取引疑惑まで出てきて、組織内のガバナンスの欠如も明らかです。
 そして極めつけは、今やすっかり有名人になってしまった古賀茂明さん(経産省大臣官房付)に対する勧奨退職です。本日7月15日に退職しろと事務次官から言われているようですが、そもそも民主党政権はこうした勧奨退職は禁止したはず。政権が禁ずることを堂々とやり、有能な人材を省益に沿わないという理由だけでクビにして国のために活用しないというのは、行政組織としては失格です。
経産省はこうすれば解体できる
 そして、経産省の解体は難しくありません。まず俎上にあげるべきは、原発事故の責任の大きい保安院と資エ庁です。安全規制を確実なものとするとともに、経産省と電力会社の癒着を確実に断ち切るためにも、
● 保安院を原子力安全委員会と統合して内閣府の下の独立委員会に改組
● 資エ庁(+産業技術環境局の環境部門)と環境省を統合して“資源・エネルギー省”を新設
とすべきではないでしょうか。
 また、その他の部局についても、例えば、
● 経済産業政策局は内閣府(経済財政)に移管
● 通商政策局と貿易経済協力局は外務省に移管
● その他の産業関係の部局と中小企業庁、特許庁は農水省と統合して“産業省”を新設
と整理してしまえば、経産省は解体できます。
 もちろん、被災地の復旧・復興と福島第一原発への対応が最優先な中で、そんな大規模な省庁再編をやっている余裕はないかもしれません。その場合でも、原発事故対応とエネルギー政策の再構築が正しく行われるようにするためには、最低限、保安院と資エ庁については他省庁への移管を行うべきではないでしょうか。
 ちなみに、菅政権は保安院を経産省から他へ移管する方針を表明していますが、それだけでは不十分です。経産省の下に資エ庁がぶら下がる構造が残る限り、霞ヶ関の中の力関係では保安院+原子力安全委員会よりも資エ庁の方が確実に強いままですし、かつ、本省の幹部&資エ庁と電力会社の密接な関係を完全には断ち切れないからです。
 “目立つテーマはぶち上げるけど具体策は官僚任せか何もなし”という菅首相では、官僚がもっとも激しく抵抗するこうした改革は絶対に無理でしょう。次の首相がこうした英断を下してくれることを期待しましょう。
 そして、解体されるのがイヤならば、経産省内の良識派の官僚には是非とも自浄作用を発揮してほしいものです。中堅や若手はもちろん、幹部にもまだ良識を持った人がいることは私自身よく知っています。そうした人たちがクーデターを起こしてでも省の体質を変えるべきではないでしょうか。
 いずれにしても、古賀さんが15日に辞職しなかった場合(公務員の身分保障の下では辞める必要ありません)、当面は、経産省が古賀さん問題への対応でどう迷走するかに注目すべきではないでしょうか。それでこの役所の本質が分かるはずです。
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官僚肩たたき 改革派を追放するのか
中日新聞【社説】2011年7月16日
 経済産業省の改革派官僚として知られた古賀茂明氏が「肩たたき」された。事実上のクビ宣告である。脱官僚・政治主導を唱えた民主党政権は、いまや霞が関の改革派つぶしにまで手を貸すのか。
 古賀氏はかねて霞が関、永田町で筋金入りの改革派として知られていた。産業再生機構の執行役員当時はダイエー再建に辣腕(らつわん)をふるい、政府の国家公務員制度改革推進本部事務局では審議官として抜本的改革案をとりまとめた。
 ところが、徹底した改革姿勢が官僚の既得権益を守りたい霞が関の怒りを買う。推進本部から本省に戻った後、一年半にわたって「官房付」という閑職に飛ばされた。このポストでは実質的な仕事がなかった。
 最近では東京電力福島第一原発の事故を受けて、東電株式の100%減資や銀行の債権カットを柱とする独自の賠償案をまとめて公表した。同案を収録した著書「日本中枢の崩壊」は二十万部を超えるベストセラーになっている。
 海江田万里経産相は就任当初「能力を発揮できる場所で仕事をしていただく」と語っていたが結局、閑職にとどめたまま放置し、六月末に事務次官を通じて古賀氏に早期退職勧奨をした。三週間後の昨日が退職期限だった。
 国家公務員は法律で身分を保障されており、退職勧奨に強制力はない。古賀氏は辞職しない意向を通告しているので当分、身分は中ぶらりんの状態が続く。
 古賀氏の肩たたき問題が示しているのは、民主党政権が霞が関をどう改革し、そのために有能な官僚をどう活用しようとしているのか、さっぱり見えない点だ。 
 脱官僚と政治主導こそが政権の出発点だった。仙谷由人氏は一時、古賀氏を補佐官に起用しようとしたが、発令直前に断念してしまう。菅直人政権は今国会に公務員制度改革や公務員給与削減の法案を提出しながら、審議入りもせず先送りの方針だ。
 そもそも民主党は退職勧奨こそ天下りの元凶と言っていた。そうではなく、本当は官僚の能力・実績をどう評価し、適正に処遇するか。それによって官民の人材交流をどう活発にするか、が真の問題だったはずだ。
 そうした根本の議論を避けただけでなく、自分たちが厳しく批判してきた「肩たたき」という不透明な手段で古賀氏を退職に追い込もうとしている。まったく本末転倒と言わざるを得ない。
 海江田経産相に再考を求める。
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官僚・古賀茂明氏の出処進退にみる 公務員制度の摩訶不思議2011-07-14 | 政治
原発問題の裏にある経産省・東電「天下り・利権の構図」/退職勧奨を受けた古賀茂明キャリア官僚2011-07-12 | 地震/原発


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