大逆事件で死刑の僧侶・愚童顕彰碑建立へ
社会主義者らが一斉弾圧を受けた「大逆事件」に巻き込まれて死刑となり、その後名誉回復が進んだ小千谷出身の僧侶・内山愚童(ぐどう)(1874〜1911年)の顕彰碑を建立しようと、市民有志が「内山愚童を偲(しの)ぶ会」を結成し、募金運動を展開している。小千谷市も、建立予定地の船岡公園(同市船岡)で、愚童が植えたとされる藤の木「愚童藤」の藤棚を作って協力した。10月には碑が建立される見通しだ。(石原健治)
愚童は大逆事件で幸徳秋水らとともに処刑された。当時の曹洞宗は愚童の僧籍を剥奪し、墓石には名前も刻まれなかった。
戦後、冤罪(えんざい)が明らかとなり、作家水上勉が小説「帰山の雁」で功績を紹介するなどした。1993年に曹洞宗は名誉を回復し、2005年には愚童が住職を務めた神奈川県箱根町の林泉寺で顕彰碑が建立され「愚童忌」が行われた。
林泉寺の顕彰碑の解説板は「最後まで僧侶としての誇りを失わず、理想世界を冀(こいねが)い、泰然として死に臨んだ」とたたえ、「その確固たる信念を永く顕彰し、宗門として『人権の確立・平和の維持・環境保護』を啓発推進していく」と決意を新たにしている。
名誉回復の動きを受け、小千谷でも、郷土史家や元教員らが集まり、愚童の足跡をたどり、たたえようと、昨年4月に偲ぶ会の準備会が結成された。
準備会は早速、愚童が中国を旅して小千谷に持ち帰ったと伝えられる愚童藤を、市内の民有地から移植することを計画。愚童藤は大雪などの影響で倒壊寸前になっていたが、昨年7月、市の協力を受け、信濃川や八海山を望む景勝地・船岡公園に移植した。
11月には偲ぶ会が正式に発足し、その後、小千谷市も愚童藤に藤棚を建てて支援した。顕彰碑は愚童藤の近くに建立される予定で、費用は百数十万円かかる見通しという。
偲ぶ会会長の田中邦彦さん(82)は「日本には珍しい中国産の素晴らしい藤で、5月末にも花を咲かせる。愚童の平和と博愛の精神を後世に伝えていきたい」と話している。
募金運動などの問い合わせは、同会事務局の佐藤勝太郎さん(0258・82・4628)へ。
(2013年5月21日 読売新聞)
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