杏林大学名誉教授・田久保忠衛 「右傾」化でなく「普通の国」化だ
産経新聞2013.5.24 03:25 [正論]
≪米中韓が手組み対日非難?≫
太平洋地域全体に繰り広げられた巨大な魔術に目を見張っているところだ。21世紀最大の課題は中国の軍事的膨張であり、価値観をともにする2期目のオバマ米政権と日韓両国の新政権が、その中国と平和裏にいかにいい関係を続けていくかだと思っていた。ところが、あっという間に、諸悪の根源は、安倍晋三内閣閣僚を含めた日本の政治家の靖国神社参拝や、「侵略の定義」に関する安倍首相のコメントや、他の政治家の慰安婦発言になってしまった。日本に対し米中韓の3カ国が手を組んで非を鳴らしている構図である。
4月末に、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルの米3紙と、英紙フィナンシャル・タイムズなどが一斉に、安倍批判の社説を掲げ、コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授は、朝日新聞紙上で憲法96条改正反対を主張し、自民党の改憲案は時期尚早だと批判した。
5月には、作家の大江健三郎氏らが代表する護憲の「九条の会」が、安倍政権の狙う第9条改正は「絶対に許せない」とのアピールを出した。カーティス教授の発言は慎重だが、日本の護憲派や中韓両国と口裏を合わせたような米英などの粗雑な議論には辟易(へきえき)する。
中でも、悪質なのはフィナンシャル・タイムズ紙であった。「日本の同盟国である米国ですら、容易ならざる事態を引き起こしてしまったのではないかと困惑している」と断じ、「問題は靖国が天皇崇拝の狂信的カルトと救い難いほど結びついていることだ」と書いた。型にはまった決まり文句を繰り返すだけだ。
日本人が死者の霊にどう対面しているかの理解は、悲しいほど乏しい。三島由紀夫とも親交のあった英国人でニューヨーク・タイムズ紙東京支局長だったヘンリー・スコット・ストークス氏が、日本人の思考に敬意を込めて書いた記事を、この英紙の社説子は読み返したらいい。
≪米3紙安倍批判は改憲ゆえか≫
占領基本法ともいうべき現行憲法には、大規模自然災害、外国からの攻撃、内乱、大規模サイバー攻撃に対応できる緊急事態条項が欠けていることぐらいは、外国の記者も当然知っているだろう。新しい憲法の前文には、独立国日本の国柄を明記し、世界で政治的に安定している立憲君主制を謳(うた)い、独立自存の道義国家を目標に据え、認知されていなかった自衛隊を軍にする−、産経新聞の「国民の憲法」要綱こそは、平和のための憲法だろう。これに対する直接の言及はないが、前述の米3紙の安倍批判が改憲批判に直結しているのは明らかだ。
本欄で前に紹介したと思うが、私には痛切な経験がある。読売新聞が「憲法調査会」を発足させた1992年を機に、各政党や組合その他の団体で憲法論議が盛り上がった。民社党の支援団体「民社党と語る会」(関嘉彦会長)も、民間の有識者を集め、私が座長になって報告書を取りまとめた。
そのころニューヨーク・タイムズは「日本には平和を選ばせろ」との見出しで社説を書いた。タイトルもさることながら、内容は高飛車で、(1)日本は「平和憲法」に手を付ける必要はない(2)第9条は米国が命じて書き取らせたものだ(3)日本の右翼政治家たちは尻込みしている大衆を前進させようとしている−といった、読むに堪えない無礼な表現が羅列されていた。
関会長と私は、同紙東京支局責任者に会い、日本の改憲の動きに社説がいかにひどい偏見を抱いているかを冷静に説明した。戦前に戦闘的自由主義者といわれた河合栄治郎直系の思想家でもあった関会長は、用意してきた英文を相手に手渡し、投書欄でもいいから掲載してほしいと要請した。
≪オバマ政権を信じたいが…≫
忘れたころに、この反論が載ったことを知ったが、これでは誰も読むはずがない。押しなべて、米紙の論調は少しでも日本が「普通の国」に動こうとすると、「戦前化」「軍国主義化」「右傾化」という、うんざりする用語を羅列して批判を繰り返してきた。今回の安倍批判も例外ではない。
オバマ政権は、歴史認識を常に外交問題化しようと企(たくら)み、虎視眈々(たんたん)とあらゆる機会を狙ってきた隣国に軽く乗るようなことにはならぬと信じたい。が、米政府関係者からはすでに首を傾(かし)げたくなる発言が伝えられている。これでは日本の親米論者にも動揺が走る。
日米関係に暗雲が漂い始めた昭和初期、駐中国米公使(現在の大使に相当)だったジョン・ヴァン・アントワープ・マクマリー氏は、米国が反日、親中に流れていく傾向に反対して覚書を本省に送ったが、日の目を見なかった。戦後、ソ連の軍事的増大に対抗する形で「強い日本」を望んだのはジョージ・ケナン氏だった。
オバマ政権は、明日の日本を担う健全な政権を肯定的に捉えるのか、距離を置こうとするのか。マクマリーやケナン不在のままで、歴史は繰り返されるかもしれないのである。(たくぼ ただえ)
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◆ 米国メディア、日本の右傾化を批判/韓国と在米韓国系市民の巧みな影響受ける『ニューヨーク・タイムズ』 2013-04-26 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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◆ 憲法改正で「日本」を取り戻せ 誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を 『Voice』4月号 2013-03-24 | 読書
『Voice』4月号2013/3/9(毎月1回10日発行)
憲法改正で「強い日本」を取り戻せ いまこそ誤った歴史観を広めるメディア・教育界に風穴を開けるときだ
対談「渡部昇一(わたなべしょういち・上智大学名誉教授)×百田尚樹(ひゃくたなおき・作家)」
〈抜粋〉
■在日コリアンの影響下に置かれていた民主党政権
p44〜
百田尚樹 民主党は与党になってから2年以上、代表選で在日コリアンを含むサポーター(党友)にも投票権がありました(2012年より日本国籍を有する者に限定)。つまり日本の首相を選ぶに際して、外国人の票が影響力をもっているということです。こんなおかしなことはありません。
渡部昇一 それは明確な憲法違反ですね。さかのぼっていえば、民主党と在日コリアンの関係が密接であるのは、戦後の55年体制で最大野党であった社会党出身者も少なくない。社会党を支えたのがまさに在日コリアンなのです。たとえば1951年に日本がサンフランシスコ条約に署名し、国際社会に復帰した時には、強硬に反対したが社会党でした。占領下の日本は在日外国人にさまざまな特権を与えており、彼らにとって非常に居心地がよかったからです。闇市で食糧を調達するときも、日本人はすぐ摘発されるのに、彼らは警察に取り締まられることはなかったほどですから。
これは作家の吉屋信子が書いていることですが、戦後間もなく菊池寛と一緒に京都に向かう汽車の中で、菊池が「今度の選挙で社会党は金がなくて大変だろうな」と口走ったところ、たちまち屈強な在日コリアンの男たちに囲まれ、因縁をつけられたそうです。彼らの本質がわかるエピソードです。
百田 日の丸や君が代に反対する文化人は少なくありませんが、そのなかには在日コリアンがいるともいわれています。厄介なのは、彼らが「自分たちは在日である」ということを標榜せず、日本人のふりをして意見を述べているということ。本来、外国人に日の丸や君が代について意見をいわれる筋合いはないですね。
渡部 日本人風のいわゆる「通名」を名乗っているコリアンの人に「元の名前は?」と聞くと、「名誉棄損で訴えるぞ」と怒りだすそうです。祖国にプライドをもっているにもかかわらず、なぜ本来の名前を聞かれるとそうした反応を示すのか。その意味でも非常に屈折しているといわざるをえません。
p45〜
■サイレントマジョリティの声を聞けるか
百田 同じように、戦後長らく左翼的な勢力が跋扈しているのが、新聞やテレビなどメディアの世界、そして教育界です。(略)
まずメディアについていえば、第1次安倍内閣は『朝日新聞』をはじめとする新聞やテレビに過剰なまでにバッシングされ、短い期間で残した実績が国民に十分に伝わらないまま、退陣に追い込まれてしまいましたね。
渡部 ベストセラーになった『約束の日 安倍晋三試論』(幻冬舎)で小川栄太郎さんが書いているのですが、昨年11月に亡くなった政治評論家の三宅久之さんは、かつて朝日新聞社の主筆だった若宮啓文氏に「どうして『朝日』はそこまで安倍さんを叩くんだ?」と尋ねたところ、「社是だからだ」といわれたそうです。
百田 ただ、いまでは「安倍たたき」をするか否か、メディアも少し慎重になっているようにもみえます。リベラルな論調を出すことで読者が減るのではないか、と懸念しているのでしょう。
渡部 1月にはアメリカの『ニューヨーク・タイムズ』紙が安倍さんを「右翼の民族主義者だ」と強く批判しました。『ニューヨーク・タイムズ』の東京支局は、朝日新聞社と同じビルにあります。これは邪推かもしれませんが、『朝日新聞』の記者が、自分たちの発言力が落ちていることに危機感を抱き、『ニューヨーク・タイムズ』の記者をけしかけて、社論を書かせたと解釈することもできます。
百田 ここ数年でインターネットが発達し、とくに若い世代を中心に「マスコミの情報が必ずしも正しいわけではない」という意識が芽生え始めたのも大きいですね。
p46〜
渡部 2012年から現在にかけては、脱原発運動の旗振り役になり、いかにも国民全体が「脱原発」の意見をもっているかのような記事を掲載した。しかし先の総選挙では、「日本未来の党」をはじめとする、脱原発政党は軒並み議席を減らしています。マスコミのいうことと、「サイレントマジョリティ」の意見は違うということが露呈しました。
百田 60年安保のときと状況はよく似ています。当時も日本全国が「安保反対」のような気運でしたが、自然成立とほぼ同時に岸内閣が倒れ、その数か月後に行われた総選挙で自民党が圧勝した。メディアの声はあくまでも「大きい声」にすぎず、それが大多数の声を代表しているとは限らないということです。
(略)
百田 岸信介はいみじくも、安保デモを前に「私には国民の声なき声が聞こえる」と発言しました。それは正しかったんです。いくら国会を群集が取り囲んでも、私の両親のような大多数の庶民は、そのような問題に何ら関わりはありませんから。サイレントマジョリティの声を聞くというのは、政治家の大きな資質の1つだと思います。
p47〜
■教科書には「事実」を記述すべき
渡部 第1次安倍内閣の果たした政策のうち、とくに私が評価しているのは、教育基本法の改正です。道徳や倫理観に関する基本的な教育方針を変えたことで、ようやく日本人が日本人であることに誇りをもてる教育ができるようになりました。
百田 日教組の教職員は子どもたちに、「日本は侵略戦争を行い、アジアの人々を傷つけた」「日本人であることを恥ずべきだ」ということを教えてきましたからね。そのような誤った知識を死ぬまで持ち続ける日本人も多い。広島県のある高校は修学旅行で韓国に行き、生徒たちに戦時中の行為について現地の人に謝罪をさせたとも聞きます。世界中を見渡しても、そのような教育をしている国はどこにもありません。
渡部 「日本が侵略戦争を行った」というのは、東京裁判の検察側プロパガンダの後継者です。しかし東京裁判以外に、日本を正式に批判した公文書は存在しません。マッカーサーもアメリカ上院の公聴会で、「日本が行ったのは自衛戦争だった」と証言している。東京裁判史観をいまだに尊重していることが、いかに意味のないものかがわかります。(略)
百田 「侵略戦争」といっても、日本人は東南アジアの人々と戦争をしたわけではない。フィリピンを占領したアメリカや、ベトナムを占領したフランス、そしてマレーシアを占領したイギリス軍と戦ったわけです。日本の行為を「侵略」と批判するなら、それ以前に侵略していた欧米諸国も批判されてしかるべきでしょう。
p48〜
渡部 私の娘はジュネーブの日本人学校で教えているのですが、日本から来た子どもたちが「日本人は悪いことをした」と洗脳されているのを解くのが大変だ、といっていました。「日本はほんとうは立派な国なのだ」と教えると、ほんとうに誰もが喜ぶそうです。
百田 だからこそ政府にいま求められるのは、日本人の歴史観を正しいものに変えるため、ロビー活動、啓蒙活動を行っていくことですね。
渡部 安倍さんは首相就任以前より、教科書問題に関心を抱き、大手出版社の社長に「こんなことを書いていたのか」と迫ったり、教育学者の藤岡信勝氏らが設立した「新しい歴史教科書をつくる会」で講演を行っていたと聞きます。安倍さんの改革によって、いまの教育界にさらなる風穴があくことを期待しましょう。
■日本の軍備がアジアの平和に繋がる
p49〜
百田 日本の人口1億人に対して、自衛隊の隊員数は25万人です。海外と比較をすると、スイス軍は人口780万人に対して、軍隊は21万人もいます。しかも現役を退いたら、60歳ぐらいまでは予備役として登録される。一家に1丁自動小銃が配布されており、日常は普通の仕事をしていても、事が起きれば戦場に赴く。歴史的には「永世中立国」として200年以上戦争をしていないわけですが、軍隊をもつことは、戦争に対するもっとも有効な抑止力であり、平和の維持にはそれだけの労力がかかることを理解しているわけです。
渡部 なかでも核兵器はもっとも有効な抑止力ですね。もし原子爆弾が開発されていなかったら、第3次世界大戦が起きていても不思議ではなかった。歴史上、2000年以上にわたって戦争が絶えなかったヨーロッパで、現在60年以上戦争が起きていないのは、1955年に西ドイツ(当時)がNATOに加盟し、アメリカとともに核兵器を発射できる資格を得たからです。そのため冷戦下で対立していたソ連も、西側諸国には手出しできなかった。逆にいま、もっとも戦争の危険性が高いのはアジアですが、日本が核兵器を保有していないことが大きいでしょうね。p50〜
■日本国憲法は「占領基本法」にすぎない
百田 だからこそ安倍政権では、もっとも大きな政策課題として憲法改正に取り組み、軍隊創設への道筋をつくっていかねばなりません。世界の約200か国のうち、軍隊をもっていない国は、モナコやバチカン市国、ツバルといった小国をはじめとする27か国しかない。日本のような経済大国がそれに当てはまるのは異常なことです。
渡部 同感です。安倍さんは第1次内閣で防衛庁を防衛省に昇格させ、内閣に安全保障の責任者が不在という歪な状態を解消させることに成功しました。第2次内閣では、さらにもう一歩踏み込んだ取り組みに期待したいですね。
百田 世間では、「憲法は神聖で侵さざるべきものである。改正するなんてもってのほかだ」という、「憲法改正アレルギー」のような意識が蔓延しているようにも感じます。しかし世界中のどの国も、憲法改正はごく普通に行っている。アメリカは18回、フランスは24回、ドイツは58回、メキシコに至っては408回も改正しており、世界最多の回数といわれています。(略)
p51〜
渡部 日本国憲法は「アメリカの占領が続く」という前提のもとに作られた、いわゆる「占領基本法」と呼ぶべきものなんです。もし1950年に朝鮮戦争が起きなければ、アメリカは50年ぐらい日本の占領を続けるつもりだったのですから。そのため日本国憲法の前文には、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とある。日本人の安全と生存を諸外国に委ねるなんてとんでもない話であり、このような代物がほんとうの「憲法」であるといえるはずがない。
百田 アメリカも大東亜戦争で痛い目に遭っていますから、もう二度と日本が立ち向かえないようにした、ということですね。9条で「交戦権の放棄」を押し付けたのもそうです。いまの日本には自衛隊がありますが、9条を厳密に解釈すると、相手に銃を向けられて引き金に指がかかってもいても抵抗できない。向こうが撃ってくれば初めて反撃できますが、それも最低限のものに限られ、たとえば一発撃たれて十発撃ち返したら、過剰防衛として処罰される。こんな馬鹿なことはないでしょう。
p52〜
百田 ドイツも同じく、占領されているときに連合国軍に憲法を押し付けられましたね。でもドイツ人はそれを「憲法」とみなしておらず「ボン基本法(ドイツ連邦共和国基本法)」と呼んでいます。占領が解けてから50回以上も条文を改正し、自分たちの憲法をつくっていったのです。 *強調(太字・着色)は来栖
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◆ 「右傾化」批判の誤り/安全保障への無関心や不関与という極左から、真ん中へ向かおうとしているだけです 2012-12-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
【あめりかノート】「右傾化」批判の誤り ワシントン駐在編集特別委員・古森義久
産経新聞2012.12.18 03:08 ワシントン駐在編集特別委員・古森義久
「安倍政権誕生となると、北京の論客たちはあらゆる機会をとらえて『日本はいまや右傾化する危険な国家だ』と非難し続けるでしょう。しかし『右傾化』というのが防衛費を増し、米国とのより有効な防衛協力の障害となる集団的自衛権禁止のような旧態の規制を排することを意味するのなら、私たちは大賛成です」
ブッシュ前政権の国家安全保障会議でアジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏が淡々と語った。日本の衆院選の5日ほど前、ワシントンの大手研究機関、ヘリテージ財団が開いた日韓両国の選挙を評価する討論会だった。日本については自民党の勝利が確実ということで安倍政権の再登場が前提となっていた。
CIAでの長年の朝鮮半島アナリストを経て、現在は同財団の北東アジア専門の上級研究員であるブルース・クリングナー氏も、「右傾」の虚構を指摘するのだった。
「日本が右に動くとすれば、長年の徹底した消極平和主義、安全保障への無関心や不関与という極端な左の立場を離れ、真ん中へ向かおうとしているだけです。中国の攻撃的な行動への日本の毅然(きぜん)とした対応は米側としてなんの心配もありません」
確かに「右傾」というのはいかがわしい用語である。正確な定義は不明なまま、軍国主義や民族主義、独裁志向をにじませる情緒的なレッテル言葉だともいえよう。そもそも右とか左とは政治イデオロギーでの右翼や左翼を指し、共産主義や社会主義が左の、反共や保守独裁が右の極とされてきた。
日本や米国の一部、そして中国からいま自民党の安倍晋三総裁にぶつけられる「右傾」という言葉は、まず国の防衛の強化や軍事力の効用の認知に対してだといえよう。だがちょっと待て、である。現在の世界で軍事力増強に持てる資源の最大限を注ぐ国は中国、そして北朝鮮だからだ。この両国とも共産主義を掲げる最左翼の独裁国家である。だから軍事増強は実は「左傾化」だろう。
まして日本がいかに防衛努力を強めても核兵器や長距離ミサイルを多数、配備する中国とは次元が異なる。この点、グリーン氏はフィリピン外相が最近、中国の軍拡への抑止として日本が消極平和主義憲法を捨てて、「再軍備」を進めてほしいと言明したことを指摘して語った。
「日本がアジア全体への軍事的脅威になるという中国の主張は他のアジア諸国では誰も信じないでしょう。東南アジア諸国はむしろ日本の軍事力増強を望んでいます」
同氏は米国側にも言葉を向ける。
「私はオバマ政権2期目の対日政策担当者が新しくなり、韓国の一部の声などに影響され、安倍政権に対し『右傾』への警告などを送ることを恐れています。それは大きなミスとなります。まず日本の対米信頼を崩します」
グリーン氏は前の安倍政権時代の米側の動きをも論評した。
「米側ではいわゆる慰安婦問題を機に左派のエリートやニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズが安倍氏を『危険な右翼』としてたたきました。安倍氏の政府間レベルでの戦略的な貢献を認識せずに、でした。その『安倍たたき』は日本側で同氏をとにかく憎む朝日新聞の手法を一部、輸入した形でした。今後はその繰り返しは避けたいです」
不当なレッテルに惑わされず、安倍政権の真価を日米同盟強化に資するべきだという主張だろう。(ワシントン駐在編集特別委員)
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◆ 石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行
p29〜
さらにその結果、あの戦争を起こした日本だけを一方的に悪人とした、いわゆる東京裁判史観が、戦後において日本の近代史、現代史を考える基準にされてしまったのです。
東京裁判でも外国人を含めて一部の弁護人が、あの戦争の中でアメリカが行った戦争における非道、つまり戦争の在り方を既定したジュネーブ条約違反を列挙してみせたが(〜p29)相手にはされなかった。
p30〜
ジュネーブ条約では戦闘によって意識的に非戦闘員を殺してはならぬとありますが、アメリカの原爆投下は一瞬にして20万人を超す日本人を殺戮してしまった。
その他の例としても(中略)制空権を失っていた首都東京に、アメリカの空軍司令官のルメイは、それまで高射砲の届かぬ亜成層圏を飛んでいたB29を超低空の2、3百?を飛ばせ、焼夷弾による絨毯爆撃をさせ一晩で十万人を超す都民を殺戮してしまった。
これは相手側の記録にもあるが、その計画に一部のスタッフはこれはあきらかにジュネーブ条約違反だと反対したが、ルメイは「日本は薄汚い国だから、焼いて綺麗にするのだ」と公言しことを行ってしまったのです。その相手に日本は戦後、航空自衛隊の創立に功あったとして勲章を贈ったのだから馬鹿みたいに人のいい話だ。
日本及び日本人が真に自立するために絶対に必要な精神的要件とは、連合軍が勝利者(〜p30)として一方的に行った東京裁判の歴史観を払拭することです。
p31〜
そのための格好のよすががあります。敗戦後日本を統治君臨したマッカーサー元帥は、帰国後アメリカ議会で、日本が引き金を引いた太平洋戦争は、歴史的に、あくまで自衛の戦争だったということがわかった、と証言しているのです。その訳は、その頃になって、日本を開戦に追い込んだ悪名高いハル・ノートは国務長官だったコーデル・ハルが書いたものではなく、実は彼のスタッフだったホワイトという男がものしたということがわかり、さらにマッカーシー上院議員による赤狩りの中でホワイトがなんとコミンテルンの隠れたメンバーだったことが露見しホワイトは自殺に追い込まれた。
モスクワの密命を受けたスパイが、ソヴィエトの南進の野心を遂げさせるために日本を戦争に追い込み、実際にソヴィエトは敗戦のどさくさに南下して日本の北方領土をかすめとってしまったのです。
ハル・ノートとは、日本が近代化以来行った戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦での勝利の結果獲得した海外領土と種々権益を一切放棄して返さぬ限り、アメリカ、イギリス、フランスの国々は一切の物資の供給を停止するという過酷なものでした。戦争に反対し続けていた昭和天皇もそれを見て、ここまでいわれるのなら覚悟せざるを(〜p31)得まいと決心をされたのです。
p32〜
アメリカ議会における、かつて占領時代の統治者マッカーサー元帥の重要な証言は、東京裁判を行わしめた当事者としての画期的な認識を示したものなのに、なぜか日本の政府、特に文部省はその重要な史実を教科書に載せることは禁止してきました。これは敗者の卑屈とか弱腰などというよりもまさに売国的な指導でしかありはしない。
日本は売られた喧嘩をやむなく買ったのに、有色人種ゆえに野放図な侵略者として位置づけられ、それを一方的に断定した東京裁判のトラウマから未だに抜けきれずにいるのです。自らのことながら、情けないというより哀れといわざるを得ない。
p37〜
そしてその巻き添えで日本はアメリカに強要され、実質金丸信と小沢一郎の支配下にあった日本政府は何と130億?の戦争援助金を拠出させられ、その一部はそれをとりもった日本の有力政治家たちにキックバックされたという噂もアメリカにあります。現にアメリカの公式発表では、日本の拠出金額はなぜか100億?とされている。その差額の30億?についてアメリカはどう解釈しているのだろうか。その金はどこの誰にいってしまったのか。日本の臆病、或いは無能なメディアは国民のためにそれを探索することは無さそうです。 *強調(太字・着色)は来栖
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