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抑止なくては国を守れず

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【主張】敵基地攻撃能力 抑止なくては国を守れず
産経新聞2013.6.4 03:55
 日本を狙う弾道ミサイルの発射基地などを無力化する敵基地攻撃能力について、自民党が「検討を開始し、速やかに結論を得る」との提言をまとめた。報復能力を持たず、抑止機能がほとんど働いていない日本の防衛力の問題点を提起したことの意味は大きい。
 安倍晋三首相も検討の必要性を指摘してきた。ミサイル発射や核実験を重ねる北朝鮮が核を搭載した中距離弾道ミサイルを保有することは重大な脅威だ。国民の平和と安全を自力で守るのは当然である。現実的かつ具体的な議論を深めてほしい。
 敵基地攻撃については昭和31年、鳩山一郎内閣で「他に手段がない場合、誘導弾の基地をたたくことは自衛の範囲内」との統一見解が示された。だが、戦力不保持などをうたう憲法9条の下で、攻撃を可能にする装備の保有は見送られてきた。
 平成16年に中期防衛力整備計画(17〜21年度)に長射程ミサイルの技術研究を盛り込もうとしたが、与党の公明党が「専守防衛政策を逸脱する」と反対して見送られた。その後の北朝鮮の動向や中国の急速な軍事力増強などで周辺環境はさらに悪化している。
 おかしいのは、報復能力を検討することは周辺国との緊張を高めるので、議論するのさえふさわしくないといった考え方だ。報復能力の保有や検討が相手に思いとどまらせる抑止力になることを否定している。
 日本が打撃力を委ねている米軍の現状も変更されるかもしれない。状況が変化しても、日本の国を自ら守る努力が欠かせない。巡航ミサイルの導入、航空自衛隊が導入するステルス戦闘機F35に敵基地攻撃能力を持たせるなどの選択肢が浮かんでいる。
 提言は、離島防衛のため自衛隊に海兵隊機能を持った水陸両用部隊を新設することも挙げた。「強靱な機動的防衛力」の実現も急務である。
 中国による尖閣への攻勢を念頭に「武力攻撃には至らない侵害行為」への対処も指摘した。自衛権の発動は他国による計画的、組織的攻撃が要件とされ、工作員の尖閣上陸などの主権侵害行為は実力で排除できないのが現実だ。第一撃を甘受する専守防衛を含め、防衛政策の基本方針を抜本的に見直し、年末にまとめる新たな「防衛計画の大綱」に反映すべきだ。
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『自立する国家へ!』田母神俊雄×天木直人 著者 ◎田母神俊雄◎天木直人 2013年2月1日初版第1刷発行 KKベストセラーズ 刊 

    

p101〜
■「専守防衛」は自主防衛とはいえない
 日本人に反省と謝罪を促した日本国憲法のもう1つの弱点は、「軍を持たない」と宣言したことにあった。これによって日本は、自衛隊という外国から見れば紛れもない軍ができた後も、その言い訳のように自衛隊は武器の使用を極度に制限された。原則的に、相手から攻撃されるまでは武器を使用できないことになったのである。p102〜
 しかも、そうした歪んだ自衛隊の形を、戦後の左翼教育によって日本の一定数の世論が良しとしていたこと、それから、長く続いた自民党政権時代でも、常に野党第1党の座にあった社会党などが自衛隊を違憲と断定していたこともあって、自衛隊をまともな形に正すことはできなかったのである。
 その間の1970年代には、当時の中曽根防衛庁長官が防衛白書の中で「専守防衛」といったあたりからこの言葉が一人歩きを始める。そして、日本が攻撃のための武器を持つことさえいけないことであるかのような風潮さえ生まれた。
 そして、アメリカはそうした風潮に乗って「攻撃はアメリカに任せておけ」とばかりに日本にもっぱら防御システムを莫大な金で買わせるようになり、攻撃面はすっかりアメリカ依存になってしまったのである。
 評論家などの中にも、「それでいいではないか」という人がいるが、それは軍事力とは何かを知らないもの言いである。
 軍事力というものは、攻撃と防御がバランスよくセットになってはじめて軍事力なのである。外国から見たら防御一辺倒の軍事力など怖さはない。いくら最新鋭の防御システム(ペトリオット・ミサイルなど)を備えていようとも、「あの国は守りは強いが攻めは弱い」と認識したら、その国に怖さを感じるだろうか。
p102〜
 軍事的な怖さがないということは、抑止力が働かないということに等しい。つまりは危険性が増すわけだ。そういう意味で、「実際に戦ったら恐い」とどれほど相手に思わせることができるかが、その国の軍事力であり、安全保障力であるといえるのである。
p118〜
 日本では、「専守防衛で核武装もしない平和憲法がある平和主義の日本だから世界で価値を認められている」といった根拠のない論調がいまだにあるが、それはまるで違う。むしろ逆で、核武装国になれば嫌でも存在感が増すのである。
 核兵器を持っている核武装国こそが、戦後の国際世界を牛耳ってきた。「核武装国になれば国際社会での発言力と安全度が増す」ことは、国際社会では常識中の常識である。だからこそ世界の多くの国が、あわよくば核武装国になれないものかと狙っているのだ。
 国連の常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国。核武装国でない国は1つもない。他にインド、パキスタン、そしてイスラエル、北朝鮮も核武装国だが、彼らがなぜ核武装国を目指したのかは、逆を考えてみればわかる。つまり、彼らが核武装国でなかったらどうなっていたかと。
p119〜
 どの国も核武装をすることで抑止力を手に入れ、国を潰されないようにしたまでのこと。いま核武装に突き進んでいるイランにしても事情は同じだ。決して気が狂ったわけでも何でもなく、自国の安全のためにもっとも合理的で効果的な方法をとっただけのことである。
 日本では、「核を持たないから平和でいられる」という論調がいまだに幅を利かせているが、世界の常識は180度違う。「核武装すれば国はより安全になる」というのが国際常識なのである。
 なぜなら、核兵器は決して使われることのない兵器で、同じ兵器でも通常兵器とは存在意義が違うものだからだ。(略)
 なぜなら、核戦争には勝者はいないからである。一発の核ミサイルは耐えることのできない被害を及ぼす。
p120〜
 お互いに甚大な被害を覚悟しなければならないから、核武装国同士はお互いに手出しができなくなる。つまり核による抑止力は、パワーバランス(数の均衡)をさほど必要としないのである。核兵器出現以降、核武装国同士の戦争は一度も起きていない。
 核兵器は2度と使われることはない。しかし核兵器を持つか持たないかでは大違い。国際政治を動かしているのは核武装国なのである。このことをよくわかっているからこそ、非核武装国は何とか核武装国になれないものかと考え、逆に、既に核武装国になっている国々は、自分たちの価値を下げないために、これ以上、核武装国を増やしたくないと考えるのである。
p140〜
 核兵器を所有する大国は、話し合いの末の多数決を拒否するカードを持ち、自国が不利と見るや、すぐさまこのカードを切る。オバマ大統領も本気で核兵器を廃絶させるのなら、アメリカが音頭を取って「せーの」で核廃絶を決議すればいいのだが、そんなことを本気で考えてもいないし、重要な話し合いになればなるほど、どこかの国が国が拒否権カードを切るのがわかっているから、議題にも上らないのが現実だ。
p141〜
 ただ、第2次大戦、そして冷戦以後の国際社会がそれまでと変わったのは、腕力の強い者が腕力にものを言わせる、すなわち戦争を仕掛けるのではなく(そういうことも時には起こるが)、大声でものを言い、発言力で相手をねじ伏せるようになったことだろう。それは国連が機能した結果というより、核抑止の効果といえる面が大きい。
 もっとも、ただ大声を出しただけでは、誰も聞いてはくれない。世界の国々の耳を傾かせ、従わせるのに必要なものこそが腕力、すなわち軍事力で、そのために大国は核武装をしているのである。
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