少女遺棄事件 何が暴力に向かわせた
中日新聞 社説 2013年7月24日 水曜日
広島県で起きた少女死体遺棄事件で、元同級生ら七人が逮捕された。何が少女たちを暴力に向かわせたのか。若者に普及した無料通信アプリで「口論」したのが発端ともみられ、丁寧な解明を求めたい。
事件は、広島市内に住む十六歳の無職少女が「友人と山にゆき、殺して遺体を捨てた」と、自首したことに始まる。この少女は被害者の少女と同じ高等専修学校に通っていた元同級生だった。
当初は「一人でやった」と供述していたが、男女六人が新たに逮捕されたことで、集団で暴行した疑いが出ている。
なぜ死に至らしめるまでになったのか。元同級生の少女と被害者の少女は同じ接客サービスに参加していて、金銭トラブルがあったといわれているが、動機や経緯はまだはっきりしない。
しかし、この事件が注目を集めているのは、関係者が連絡手段にスマートフォンの無料通信アプリ「LINE」(ライン)を使っていたためだ。
元同級生は自首する前、「(被害者にアプリで)悪口を書き込まれて腹が立った」と母親に打ち明けている。友人には「裏切ってごめんね」などと書き込んでいる。
逮捕された七人には、元同級生や被害者とはこの日初めて会ったという少女も二人いた。LINEで知り合った仲間だった。
LINEは二十四時間、いつでもメッセージを送ったり通話が楽しめる。携帯電話を使ったメールに比べても操作は簡単だ。
だが、便利さの半面、負の側面もある。短いフレーズで、条件反射のように早く反応することも求められる。これは、直接に会ったり、手紙を書いたり、電話で話すのとは違う。うまく表現できず、やりとりにつまずけば、感情を爆発させてしまうこともある。
元同級生と被害者の少女の間でも、被害者の少女がブログに「だーい好き」と書き込み、親密さを表した時期もあった。それが、激しい言い争いとなった。初対面のメンバーまで巻き込んだ暴行に、どんな集団心理が働いていたのか。逮捕された七人のうち六人はまだ十六歳だ。子どもの人権に配慮して調べを尽くしてほしい。
ネット時代のコミュニケーションは変化を続ける。夏休みに入り、学校では携帯を持つ子どもたちに、その使い方を保護者とよく相談しようと呼び掛けている。便利なツールにも、時には手に負えなくなる危うさも潜んでいることを、あらためて考えたい。
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「広島 少女死体遺棄事件」被害者とはこの日初めて会ったという少女も加わって暴行〜LINEで知り合った
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