【話の肖像画】保守政治家の最長老・奥野誠亮(おくの せいすけ 100歳)
産経新聞2013.7.24 03:13 [話の肖像画]
■国守れぬ憲法は無意味
保守合同が昭和30年にあって、憲法改正の実現が期待されましたが、自民党は衆参各院の「3分の2以上」の議席をなかなか得られなかった。そこで自民党は、憲法改正をあまり言わないようになりました。
〈鈴木善幸内閣の法相だった昭和55年、国会答弁で自主憲法制定の信念を披露した。「国民の間から、自分たちで自由な議論をして、憲法を作ろうじゃないかという気持ちが出てくることが好ましい」と問題提起したのである。野党が閣僚辞任を要求したが応じなかった〉
アメリカは、今は大切な同盟国ですが、占領初期の対日方針(20年9月)には「日本が再びアメリカの脅威とならないようにすること」とありました。この日本弱体化政策の一環が、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とする今の憲法の制定でした。
憲法前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」して「われらの安全と生存を保持しようと決意した」なんて書いてある。いい日本にしようという憲法ではないんですよ。
占領中は、日本の国会も政府も自主的活動はできませんでした。国会へ法律を出すのも、審議で修正するのも、その議決が賛成でも反対でも、事前に連合国軍総司令部(GHQ)の承認を受けなければならなかった。憲法も同じです。こういうことを若い人に知ってほしい。
中国が、尖閣諸島を「おれのものだ」とねらっています。日本を守る軍事力が必要です。国を守れない憲法では意味がありません。
参院選では、改正要件を緩和する96条改正が論じられました。私は閣僚だったころ、3分の2をとれるとは思えなかった。夢でしたよ。
そこで、3分の2なんていわないで、まずは新しい憲法をつくって、そこに「外国の軍隊に占領されていたときにつくられた憲法は爾後(じご)効力を失う」という宣言規定をおけばいい−と考えていました。けれども、これは公にはいいませんでした。「憲法の遵守義務違反だ」と野党が騒ぎますからね。石原慎太郎さん(日本維新の会共同代表)の意見は私と同じですね。
これからは、憲法を改めるために政党再編成がおきてほしいですね。これだけ中国から脅されて、領土まで危うくなってきましたから、国民もだんだん分かってきたと思います。
集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈も変えたらいいですが、内閣法制局長官には政治家を充てるといい。戦前はそうでした。(粛軍演説で知られる)斎藤隆夫さんや(戦後、衆院議長になる)船田中(ふなだなか)さんもしていましたよ。
憲法は条文以外にも問題があります。たとえば、今の憲法ができたとき「戦争はなくなった」といって刑法からスパイ罪を削ってしまった。占領軍が手を回したんです。スパイを取り締まらないですむ甘い世界がどこにありますか。(聞き手 榊原智)
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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◇ 『 防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織 』 福山隆著 2013-07-28 | 読書
『 防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織 』 福山隆著
第1章 知恵なき国は滅ぶ
P12〜
すべては情報が決する
「情報」を制する者は天下を制す
彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず------。
言わずと知れた、兵法書『孫子』の一節です。これが書かれたのは、中国の春秋時代(紀元前770〜403年)のこと。それまで、戦争の勝敗は運不運に左右されると考える人が大半でした。そういう時代に、戦争には人為的な「勝因」と「敗因」があると考え、それを理性的に分析したのが、『孫子』の画期的なところです。
冒頭に掲げた言葉は、その「謀攻篇」(実際の戦闘によらずに勝利を収める方法)に書かれたものでした。敵と味方の情勢を知り、その優劣や長所・短所を把握していれば、たとえ百回戦ったとしても敗れることはない。これは、戦争における「情報=インテリジェンス」の重要性を指摘した言葉にほかなりません。
ちなみに、「謀攻篇」には、「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という言葉もあります。
(p13〜)戦火を交えることなく敵を屈服させるのが最善だという意味ですから、もし情報戦で勝利を収めることができたとすれば、それにまさるものはないといえるでしょう。
p22〜
敗戦と同時に「厚いコート」を脱いだ日本
このように、アメリカは第2次大戦、9.11という大きな情勢変化が起こるたびに、情報機関という「防寒着」を厚めのものに着替えてきました。
もちろん、これはアメリカだけの特徴ではありません。国家と情報機関の関係を如実に示す1例として今はアメリカのケースを挙げましたが、どの国においても、これが基本的なあり方だと考えるべきでしょう。
p23〜
どんなに武力を整えても、それを効果的に使いこなす「知恵」のない国は滅びます。そして国家の「知恵」は情報機関の質と量に大きく左右されるのです。
p27〜
軍事インテリジェンスはアメリカ頼み
GHQによる占領統治が始まって以来、今日にいたるまで、外務省のインテリジェンスは専らアメリカのほうを向いていたといっていいでしょう。それも無理はありません。日米安保条約で日本はアメリカの同盟国となり、そのアメリカはCIAの設立などによって「情報超大国」としての地位を固めてきました。
p28〜
しかも国内には米軍基地が置かれ、憲法9条によって戦力を放棄したため、日本の安全保障はアメリカ頼みです。自衛隊の前身である警察予備隊が組織されるまでは、国防を専門に担当する官庁も存在しませんでした。
そのためわが国では、日米安保条約とそれに付随する日米地位協定を主管する外務省が、実質的な「国防省」の役割を担うことになったのです。
外交を担当する外務省が、安全保障政策の最前線に立つ―今までこのような論説が指摘されたことはありませんが、これは国際的に見てかなり異例な体制といえるでしょう。日本では、国を防衛するための最大のツールを、外務省が持っている。その後、自衛隊を主管する防衛庁が設立され、第1次安倍政権下の2007年には防衛省に格上げされましたが、在日米軍と日本政府の第1の接点は相変わらず外務省です。
p28〜
しかも国内には米軍基地が置かれ、憲法9条によって戦力を放棄したため、日本の安全保障はアメリカ頼みです。自衛隊の前身である警察予備隊が組織されるまでは、国防を専門に担当する官庁も存在しませんでした。
そのためわが国では、日米安保条約とそれに付随する日米地位協定を主管する外務省が、実質的な「国防省」の役割を担うことになったのです。
外交を担当する外務省が、安全保障政策の最前線に立つ―今までこのような論説が指摘されたことはありませんが、これは国際的に見てかなり異例な体制といえるでしょう。日本では、国を防衛するための最大のツールを、外務省が持っている。その後、自衛隊を主管する防衛庁が設立され、第1次安倍政権下の2007年には防衛省に格上げされましたが、在日米軍と日本政府の第1の接点は相変わらず外務省です。
そうなると、少なくとも安全保障に係るインテリジェンスについては、アメリカに頼っていれば問題ありません。アメリカの動向を把握しつつ、必要なことはアメリカに教えてもらえば事足りる。いわば外務省は、アメリカという分厚い防寒着の下に着る薄手のセーター程度のインテリジェンス機能を持てば十分だったのです。
p31〜
アメリカの戦略で動いた日本の「戦後レジーム」
それも含めて、戦後日本のインテリジェンスは、基本的に超大国アメリカが打ち出す戦略の枠内に収まっていました。これは、いわゆる「戦後レジーム」がもたらした弊害の1つといえるでしょう。
東京裁判や現行憲法の話を持ち出すまでもなく、日本の尖閣体制がアメリカ主導で構築されたことは明らかです。これがさまざまな点で日本社会のあり方を歪めたからこそ、かつての第1次安倍政権も、「戦後レジームからの脱却」を掲げました。
p32〜
しかしその自衛隊も、実質的には米軍の世界戦略にはめ込まれた1つのピースにすぎません。もちろん形式上は組織として独立していますが、米軍と無関係に独自のオペレーションを実行することはほとんどできないのです。(略)
そんな次第ですから、自衛隊のインテリジェンス機能もまた、基本的には日米同盟を前提としたものになっているのです。
p33〜
それだけではありません。より広い意味の「情報」について考えた場合も、戦後の日本人はアメリカの影響を強く受けてきました。国民に正確な情報を伝えるべきマスメディアが、アメリカの情報戦略に巻き込まれてきたからです。
たとえば、日本最大の発行部数を誇る讀賣新聞。その「中興の祖」とも呼ばれる正力松太郎氏は、もともと警察官僚でした。いわゆる特高警察に所属し、一説には関東大震災の際に朝鮮人暴動のデマを組織的に流布したともいわれています。
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◇ インテリジェンスに関わる専門家の育成 / 日本の情報収集の弱さ 中日新聞 《特報》 2013-06-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 国際情報戦の裏側 大使館など対象「公然の秘密」 盗聴反発--実はポーズ? 中日新聞 《特報》 2013-07-04 | 国際
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◇ 「憲法改正はエベレストより難しい」と石原慎太郎氏 / 最高齢80歳でエベレスト登頂 三浦雄一郎さん 2013-05-24 | 石原慎太郎
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