【主張】日本版NSC 年内発足で国家戦略急げ
産経新聞2013.7.31 03:51
外交・安全保障に関する国家戦略を構築する国家安全保障会議(日本版NSC)の年内発足に向けた環境が整った。
菅義偉官房長官は30日、「できるだけ早く発足できるよう努力したい」と述べた。当初想定の来年4月発足からの前倒しに意欲を示した発言であり、歓迎したい。
参院選で衆参の「ねじれ」状態が解消し、政府与党は安定した国会運営が可能になった。10月召集予定の臨時国会で、日本版NSC関連法案を、確実に成立させる必要がある。
安倍晋三首相は、5月のNSC創設に関する有識者会議の席上、「外交・安全保障体制の強化は喫緊の課題だ」と述べた。
NSCを一日も早く発足させなくてはならないのは、厳しさを増す一方の東アジア情勢に対し、国家の総力を挙げて的確に対処するためだ。
尖閣諸島の奪取をねらう中国は、不測の事態を招きかねない挑発行為を繰り返している。
1月には、中国海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制用レーダーを照射した。5月には中国潜水艦が3度にわたり、日本の接続水域へ潜航したまま侵入した。今月26日には、新設された中国海警局所属の「海警」4隻が尖閣周辺の領海に侵入した。
北朝鮮は、国連など国際社会の非難も意に介さず、2月に核実験を強行するなど、核・ミサイル開発を続けている。
NSCは、形骸(けいがい)化が指摘される現在の安全保障会議を大幅に改組し、外交・安全保障の司令塔となる機関にしようというものだ。事務局である国家安全保障局は、政府の各機関から国家安全保障に関する重要情報の提供を受け、政策立案に活用する。
その意義は、東アジア情勢への対処にとどまらない。自由な通商に支えられたわが国の繁栄は、中東など世界各地と密接にかかわっている。地域分析にも力を入れるNSCは、日本の政治が、世界的な視野で国家戦略を構想することにも資するだろう。
発足後も、より実効性のある機関とする努力が欠かせない。内外の機密情報を得るため秘密保全法制が必要だ。ポストや組織の性格をめぐり、外務省や警察庁など省庁間の主導権争いも伝えられる。縄張り意識を捨て、国のためによりよい仕組みを作ってほしい。
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *リンクは来栖
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◇ インテリジェンスに関わる専門家の育成 / 日本の情報収集の弱さ 中日新聞 《特報》 2013-06-06 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 国際情報戦の裏側 大使館など対象「公然の秘密」 盗聴反発--実はポーズ? 中日新聞 《特報》 2013-07-04 | 国際
◇ NSAによる盗聴 米「世界の国々は国益を守るため様々な情報収集活動を行っており、特別なことではない」 2013-07-01 | 国際
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◇ 「国守れぬ憲法は無意味」奥野誠亮元法相/『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』福山隆著 2013-07-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 『 防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織 』 福山隆著 2013-07-28 | 読書
第1章 知恵なき国は滅ぶ
P12〜
すべては情報が決する
「情報」を制する者は天下を制す
彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず------。
言わずと知れた、兵法書『孫子』の一節です。これが書かれたのは、中国の春秋時代(紀元前770〜403年)のこと。それまで、戦争の勝敗は運不運に左右されると考える人が大半でした。そういう時代に、戦争には人為的な「勝因」と「敗因」があると考え、それを理性的に分析したのが、『孫子』の画期的なところです。
冒頭に掲げた言葉は、その「謀攻篇」(実際の戦闘によらずに勝利を収める方法)に書かれたものでした。敵と味方の情勢を知り、その優劣や長所・短所を把握していれば、たとえ百回戦ったとしても敗れることはない。これは、戦争における「情報=インテリジェンス」の重要性を指摘した言葉にほかなりません。
ちなみに、「謀攻篇」には、「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」という言葉もあります。
(p13〜)戦火を交えることなく敵を屈服させるのが最善だという意味ですから、もし情報戦で勝利を収めることができたとすれば、それにまさるものはないといえるでしょう。
p22〜
敗戦と同時に「厚いコート」を脱いだ日本
このように、アメリカは第2次大戦、9.11という大きな情勢変化が起こるたびに、情報機関という「防寒着」を厚めのものに着替えてきました。
もちろん、これはアメリカだけの特徴ではありません。国家と情報機関の関係を如実に示す1例として今はアメリカのケースを挙げましたが、どの国においても、これが基本的なあり方だと考えるべきでしょう。
p23〜
どんなに武力を整えても、それを効果的に使いこなす「知恵」のない国は滅びます。そして国家の「知恵」は情報機関の質と量に大きく左右されるのです。
p27〜
軍事インテリジェンスはアメリカ頼み
GHQによる占領統治が始まって以来、今日にいたるまで、外務省のインテリジェンスは専らアメリカのほうを向いていたといっていいでしょう。それも無理はありません。日米安保条約で日本はアメリカの同盟国となり、そのアメリカはCIAの設立などによって「情報超大国」としての地位を固めてきました。
p28〜
しかも国内には米軍基地が置かれ、憲法9条によって戦力を放棄したため、日本の安全保障はアメリカ頼みです。自衛隊の前身である警察予備隊が組織されるまでは、国防を専門に担当する官庁も存在しませんでした。
そのためわが国では、日米安保条約とそれに付随する日米地位協定を主管する外務省が、実質的な「国防省」の役割を担うことになったのです。
外交を担当する外務省が、安全保障政策の最前線に立つ―今までこのような論説が指摘されたことはありませんが、これは国際的に見てかなり異例な体制といえるでしょう。日本では、国を防衛するための最大のツールを、外務省が持っている。その後、自衛隊を主管する防衛庁が設立され、第1次安倍政権下の2007年には防衛省に格上げされましたが、在日米軍と日本政府の第1の接点は相変わらず外務省です。
p28〜
しかも国内には米軍基地が置かれ、憲法9条によって戦力を放棄したため、日本の安全保障はアメリカ頼みです。自衛隊の前身である警察予備隊が組織されるまでは、国防を専門に担当する官庁も存在しませんでした。
そのためわが国では、日米安保条約とそれに付随する日米地位協定を主管する外務省が、実質的な「国防省」の役割を担うことになったのです。
外交を担当する外務省が、安全保障政策の最前線に立つ―今までこのような論説が指摘されたことはありませんが、これは国際的に見てかなり異例な体制といえるでしょう。日本では、国を防衛するための最大のツールを、外務省が持っている。その後、自衛隊を主管する防衛庁が設立され、第1次安倍政権下の2007年には防衛省に格上げされましたが、在日米軍と日本政府の第1の接点は相変わらず外務省です。
そうなると、少なくとも安全保障に係るインテリジェンスについては、アメリカに頼っていれば問題ありません。アメリカの動向を把握しつつ、必要なことはアメリカに教えてもらえば事足りる。いわば外務省は、アメリカという分厚い防寒着の下に着る薄手のセーター程度のインテリジェンス機能を持てば十分だったのです。
p31〜
アメリカの戦略で動いた日本の「戦後レジーム」
それも含めて、戦後日本のインテリジェンスは、基本的に超大国アメリカが打ち出す戦略の枠内に収まっていました。これは、いわゆる「戦後レジーム」がもたらした弊害の1つといえるでしょう。
東京裁判や現行憲法の話を持ち出すまでもなく、日本の尖閣体制がアメリカ主導で構築されたことは明らかです。これがさまざまな点で日本社会のあり方を歪めたからこそ、かつての第1次安倍政権も、「戦後レジームからの脱却」を掲げました。
p32〜
しかしその自衛隊も、実質的には米軍の世界戦略にはめ込まれた1つのピースにすぎません。もちろん形式上は組織として独立していますが、米軍と無関係に独自のオペレーションを実行することはほとんどできないのです。(略)
そんな次第ですから、自衛隊のインテリジェンス機能もまた、基本的には日米同盟を前提としたものになっているのです。
p33〜
それだけではありません。より広い意味の「情報」について考えた場合も、戦後の日本人はアメリカの影響を強く受けてきました。国民に正確な情報を伝えるべきマスメディアが、アメリカの情報戦略に巻き込まれてきたからです。
たとえば、日本最大の発行部数を誇る讀賣新聞。その「中興の祖」とも呼ばれる正力松太郎氏は、もともと警察官僚でした。いわゆる特高警察に所属し、一説には関東大震災の際に朝鮮人暴動のデマを組織的に流布したともいわれています。戦後は東京裁判のA級戦犯に指名され、公職追放となったものの、不起訴処分で釈放。アメリカの公文書には、正力氏がその後CIAの非公然工作に長く協力していたことが記載されているといいます。釈放と引き替えに協力したと思われても仕方ありません。
CIAのコードネームも持っていたといわれるほどの人物がトップに君臨していたのですから、その新聞や系列テレビ局が流す情報がどのような操作を受けるかは、想像がつきます。それが、アメリカの国益に反するものになるとは考えにくい。そして、これは「大正力」が実権を握っていた時代だけの「昔話」ではないと私は思っています。
p34〜
アメリカは日本が再び「強い国」になるのを恐れている
一方、その讀賣新聞とはライバル関係にある朝日新聞にも、アメリカの息はかかっています。
私はかつてハーバード大学のアジアセンターで客員研究員を務めていたのですが、そのとき、「ニーマンフェロー」の存在を知りました。ユダヤ系の大富豪ニーマンの寄付金で設立された「ニーマンジャーナリズム財団」が、ジャーナリズム界のリーダーを育成するために、世界各国から新聞記者を集めて1年間無償で研修を受けさせるのです。
ニーマンフェローは毎年24名で、12名はアメリカ国内のメディア、残り12名が外国のメディアから呼ばれます。その中の「日本枠」は、常に朝日新聞の指定席。たとえば、かつてテレビの討論番組にもよく顔を出していた「朝日ジャーナル」元編集長の下村満子氏も、このニーマンフェローでした。ここでアメリカナイズされた優秀な記者たちが、やがて朝日新聞の幹部になるのですから、その論調が親米的なものになるのは自然な成り行きでしょう。
p35〜
朝日新聞といえば「左寄り」で、旧ソ連や中国と結託して戦前の日本を断罪するという印象がありますから、「親米」と聞くと意外に思う人もいるかもしれません。たしかに、憲法9条を擁護して日本の「軍国主義化」を警戒したり、首相の靖国神社参拝を批判したりするのは、---ソ連や中国---の国益にかなっています。
しかし実は、それがアメリカの国益にもかなっていることを忘れてはいけません。(略)
インテリジェンスに必要な機能は、情報の「収集」だけではありません。情報を「操作」することで、自分たちに有利な状況を作り出すことも重要な機能の1つです。
p36〜
そして日本の「戦後レジーム---アメリカの従属国」は、アメリカの巧妙な情報操作によって、より強固なものになりました。アメリカに飼いならされたのは、ジャーナリストだけではありません。日本からは、多くの言論人や学者たちが若い時期に留学生としてアメリカでの生活を経験しています。そこでアメリカに洗脳された人々が帰国し、オピニオンリーダーとして活躍する。その影響を受けて、日本の世論全体がアメリカナイズされてきたのです。
第2章 二つのインテリジェンス――軍事と外交
p44〜
軍事と外交の担うインテリジェンスの違い
憲法9条と安保条約という二本の手綱
さて、現在の日本が抱えるインテリジェンスの問題は、おおむね「戦後レジーム」の中で生じたものだと考えていいでしょう。それ以前から対外インテリジェンスをあまり重視しない傾向はありましたし、それについても後述するつもりですが、やはり敗戦とそれに続くアメリカの占領統治は実に大きな転換点でした。
その転換をもたらした最大の要因は、1946年に公布されて翌年に施行された日本国憲法の第9条です。戦力の放棄を定めたこの条文によって、日本は軍隊をもたない国となりました。
しかし、軍隊をもたずに国家を維持することはできません。かつて日本社会党が唱えた「非武装中立」などというものは、単なる絵に描いた餅です。安全保障のためには、当然、何か別の手立てが必要になる。そこで登場したのが、日米安全保障条約です。
(p45〜)日本の戦後を考える上で、憲法9条と日米安保条約はワンセットでかんがえるべきでしょう。
そしてこれは、アメリカが日本という「馬」をコントロールするために用意した2本の手綱のようなものでした。憲法9条によって日本を弱体化させ、さらに安保条約によって米軍基地を日本国内に駐留させる。これによってサンフランシスコ講和条約の発効で日本が独立を回復して以降も、ある種の「占領状態」を続けることができたわけです。
さらに、日米安保条約は、米軍基地内においては米軍が第1次裁判権を持つことを定めた日米地位協定とワンセットになっています。その安保条約と地位協定の両方を主管するのが、外務省にほかなりません。
ちなみに、この2つを実際に担当する北米局日米安全保障条約課は、外務省の中でももっとも優秀なエリートが登用されるセクションです。いずれ事務次官やアメリカ大使になるような人材が、ここに配属される。安全保障は国家の最重要課題ですから、それも当然でしょう。しかし、ここでアメリカの「伝声管」を務めたエリートたちが省内で出世するとなれば、外務省全体がアメリカの言いなりになりやすくなるのもたしかです。
p46〜
ともあれ、戦後の日本では、本来は外交を担当する官庁―外務省―が、日米間の条約や協定をコントロールするという名目の下に、実質的な「安全保障庁」として機能してきました。
p170〜
戦後から今にいたる現実
そして現在も、日本人のインテリジェンスに対する姿勢はあまり変わっていません。
p171〜
自分の出身母体の悪口はあまり言いたくありませんが、旧日本軍時代よりはさまざまな点で進歩したとはいえ、防衛省のインテリジェンス機能もまだまだ十分なものとはいえないでしょう。
「第1国防省」である外務省の外交インテリジェンスとの棲み分けがきちんとできていないこともその一因ですが、防衛省自体にも問題がないわけではありません。第1章に「外務省はアメリカの伝声管になっている」といった意味のことを書きましたが、防衛省や自衛隊にもアメリカに依存する体質はあります。
たとえばアメリカに赴任する防衛駐在官は、独自のインテリジェンス活動をほとんどする必要がないと言われます。ワシントンの米軍関係者から情報をもらうのも、日本国内で在日米軍から情報をもらうのも、その中身に大差はないからです。自衛隊の中でも昇任の序列が高いエリートが箔をつけるためにそのポジションに就くのですが、それだけに、ある種の名誉職になっているのは否めません。
何度も述べてきたとおり、今後も永遠に日米安保体制が続き、日本がアメリカの属国のような立場でいることを受け入れるならば、それでもいいでしょう。(p172〜)しかしアメリカの国力や軍事力が凋落を始めている今、インテリジェンスをアメリカにばかり頼るわけにはいきません。
防衛駐在官としてアメリカに乗り込むなら、ただアメリカがお仕着せで与えてくれる情報を取るだけではなく、むしろアメリカが日本に知らせたくない情報こそ入手すべきです。アメリカが日本国内でやっているように、日本もアメリカにスパイを送り込んで、盗聴をはじめとする諜報活動をを行う。それが本来あるべきインテリジェンス活動というものでしょう。その際、イスラエルの対米諜報活動が参考になることでしょう。
ところが防衛省や自衛隊にかぎらず、日本人はそういうことをあまりやろうとしません。しかも、外国にはスパイを送り込もうとしないのに、国内では外国のスパイたちにやりたい放題やられている。いわゆる「スパイ防止法」が存在しないためです。法案は国会に提出されたことがあるものの、報道の自由を制限されることを懸念するマスコミの反対などもあり、実現していません。いつまで経っても、日本は「スパイ天国」と揶揄される状態にあります。
p173〜
民間企業も大学もやられ放題
情報のプロテクトが甘いのは、国家レベルだけの話ではありません。民間企業も同じようなものですから、これは日本人に共通の性質といわざるを得ないでしょう。
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