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松坂大輔がどんなに落ちぶれても「メジャー」にこだわる3つの理由 臼北信行のスポーツ裏ネタ通信

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臼北信行のスポーツ裏ネタ通信:松坂大輔がどんなに落ちぶれても「メジャー」にこだわる3つの理由
2013年09月05日 06時30分 更新 [臼北信行,Business Media 誠]
 **2013年8月、メジャーリーガー・松坂大輔のニュースが久しぶりに話題となった。自ら3Aを退団し、登板機会を求めてニューヨーク・メッツへと移籍したのだ。**
 かつて「怪物」と呼ばれた男が、もがき苦しんでいる。メッツ・松坂大輔投手のことだ。9月2日のブレーブス戦で今季3試合目となるメジャーリーグの先発マウンドに上がったものの3ランを浴びるなど3回7安打6失点で3連敗。防御率は10.95にまで悪化し、新天地でもいよいよ崖っぷちに立たされてしまった。
 2013年8月20日にマイナー契約を結んでいたクリーブランド・インディアンスに契約解除を申し入れ、先発のコマ不足に悩んでいたニューヨーク・メッツと同22日にメジャー契約。しかし初陣となった23日のタイガース戦は5回6安打5失点、続く28日のフィリーズ戦も5回を持たずに6安打4失点といずれも散々の内容で黒星となり、今回の背信投球も加わって首脳陣の信頼を大きく損なった。
■松坂が日本球界に復帰しない理由とは?
 メッツとの契約延長、あるいは他球団とのメジャー契約をつかむためにもレギュラーシーズンが終了する残り約3週間で結果を残さなければならないが、それは極めて厳しいイバラの道と言わざるを得ないだろう。この体たらくを見る限り、今後の展開次第ではシーズン終了を待たずしての「リリース(解雇)」も十分に考えられる。
 さて、こうなると当然ささやかれ出すのが松坂の日本球界復帰だ。一部報道でもあった通り、オリックスやDeNAが来季獲得に向けた調査に乗り出すなど複数の国内球団が水面下で松坂に興味を示している。ところが、当の松坂は一貫して「日本に復帰するつもりはない」という姿勢を曲げていない。
 今後どんなに落ちぶれようとも元怪物は最後の最後までメジャーリーグのマウンドを追い求めていく腹積もりだからだ。そこには日本プロ野球では得ることのできない「エンジョイ」と「一獲千金のチャンス」、そしてプライベートでの「カカア天下」という意外なキーワードも隠されている。
 メッツから松坂に支払われるサラリーは、わずか10万1748ドル63セント(約1000万円)。これはメジャー最低年俸の49万ドル(約4900万円)を、メッツ在籍となる38日間(1シーズンは183日間)で日割り計算した額だ。「オリックスやDeNAは2年契約、年俸1億円を基本線に交渉を進めようとしている」(事情通)だけに、もし日本球界復帰を選べば少なくとも今のサラリーの10倍の年俸を得られるはず。それでも松坂サイドは今のところ「色よい返事どころか、われわれに関心すら示してくれない」(オリックス関係者)というからかたくなだ。
■メジャーリーガーはマスコミに追いかけ回されない
 なぜ、ここまで「メジャー」にこだわってイバラの道を突き進もうとするのか。松坂は2011年6月にトミー・ジョン手術で右ひじにメスを入れたことを踏まえ、こう説明している。
 「今までのボクの野球人生が順調すぎたのかもしれませんね。確かに手術を受けてから先は苦難の連続になるかもしれない。でも、それも覚悟の上ですよ。ボクは今、野球を『エンジョイ』できている。メジャーリーグという舞台は、そういう環境なのです。たとえ、どんなに泥水を飲むことになってもメジャーの舞台を目指して戦い続けたいですよね」
 単なる開き直りのように聞こえるかもしれないが、決してそうではないようだ。世界最高峰のプロ野球リーグで強打者たちと対峙したい。そしてゾクゾクするような緊迫感のある戦いをしたい。そういう強い思いがあるからこそ松坂はメジャーリーグのマウンドを追い求め、自分の欲望を満たそうと必死にもがくことで「エンジョイ」できているという。
 しかし松坂がメジャーリーグにこだわる訳は、それだけではない。実はグラウンド外の意外なところにも、2つの理由が隠されている。
■プライベートで息を抜くヒマもない日本球界
 松坂によれば、日本でプレーを続けていた西武ライオンズ在籍時代にはプライバシーの侵害による閉塞感を覚えることがあったという。日本では試合だけでなくプライベートの場でも報道陣に追い掛け回されることが多々ある。家族を誰よりも大切にする松坂にとって、これはかなりの息苦しさにつながってしまっていたようだ。
 一方のメジャーリーグでは選手と報道陣との間に一定の距離が保たれている。取材場所は原則として球場のクラブハウス(ロッカールーム)のみ。それも試合前と試合後に決められた時間内だけだ。球団側の許可なくエリア以外の場所で取材を行ったメディアは、取材パスをはく奪される可能性もある。
 選手や監督の自宅にアポなしで押し掛けたりするような、いわゆる日本流の夜討ち朝駆けはタブー中のタブー。だからメジャーリーグでプレーしている間は日本のようにパパラッチの陰におびえる必要もなく、取材対応は基本的に試合のときだけでいい。松坂自身も「この環境は、本当に何物にも代え難い」と、はっきり言い切っている。
 現在日本でプレーする元メジャーリーガーも、こう言う。
 「些細なことかもしれないけれど、実は選手ってグラウンド以外のところでストレスを感じることが多いんですよ。日本の場合はテレビ、ラジオや新聞だけじゃなくて、写真週刊誌も僕らのスキを狙っている。家族の写真も平気でパシャパシャ撮られるし、プライベートでも息を抜くヒマもないというのが正直なところ。あるスター選手の奥さんが『これじゃあ、気楽に買い物もできない』と愚痴をこぼす毎日が続いてノイローゼになってしまったケースもある。だからメジャーリーグでプレーするほうが家族ともども余計な神経を使わなくていい。家族思いの松坂が『メジャーのほうがエンジョイできる』と思う気持ちは何となく分かりますね」
■一獲千金は妻と3人の子供のため
 そして、もう1つ。松坂がメジャーリーグでのプレーを望む理由は「米国に残留しながら一獲千金のチャンスがある」からだ。確かに日本球界Uターンを決意すれば、前出のオリックスやDeNAなどが提示するとみられる「年俸1億円」を手にできるだろう。とはいえ、その後はどんなにいい成績を残したとしても大幅な上積みはまず望めそうもない。
 「仮に松坂が日本でそれなりの活躍を果たしたとしても、日本の球団は前年比で彼の年俸を数千万円程度アップさせるぐらいだろう。日本の多くの球団には『メジャーリーグからUターンした選手の年俸はアップ率が低い』『野手と違って投手には高い年俸を払わない』などという不文律があるからだ」(球界関係者)
 日本では、どんなに頑張っても手にできる年俸は1億円強。だが選手との契約に「完全実力主義」を反映させているメジャーリーグの球団であれば、その後の活躍次第で青天井のごとく年俸が跳ね上がる可能性がある。球団との契約の時点で盛り込んだインセンティブの条件をクリアすれば、さらなる上積みも得られることになるから、なおさらだ。
 「大輔はボストンの自宅に妻と3人の子供を残し、ニューヨークに単身赴任している。妻の倫世さんは3人の子供に全米でも屈指の学術都市であるボストンで英才教育を受けさせる方針を固めていて『子供たちのためにもできることならば、米国のメジャーリーグでプレーしてほしい』と夫の大輔に要望しているのです。3人の子供はいずれもボストンのセレブの子たちが通うプレスクールに通っていて、習い事などの費用も含めれば1人年間で少なくとも約7〜8万ドル(700〜800万円)もの養育費がかかる。
 大輔も姉さん女房の倫世さんには頭が上がらないところがあるから、米国での生活費と3人の子供の養育費を捻出するため、努力次第では日本以上に大幅な年俸アップが望めるメジャーリーグでのプレーを熱望しているのです。まあ、今の大輔の力ではそれも難しいのかもしれないけれど……。でも、彼は『可能性がある限り、頑張って米国でビッグマネーを稼ぎたい』と言っていましたしね」(松坂に近い関係者)
■何だか身につまされる思いがする
 こうした背景を考えると松坂家はなんだかカカア天下で、家庭内での松坂はうだつの上がらない亭主のような存在にも思えてしまう。メジャーリーグでプライバシー侵害による閉塞感を覚えずに「『エンジョイ』できている」と言ったのも、日本に戻ることになれば写真週刊誌から何かとターゲットにされやすい「ママタレ」の倫世夫人の機嫌を損なう心配がないからなのかもしれない。いずれにしても世のビジネスパーソンの中には、妻の前では平身低頭の松坂の姿に「まるでわが家みたいだなあ」と共感を覚える人も多いのではないだろうか。
 9月13日に33歳となる松坂は、気が付けばベテランと呼ばれる立ち位置になった。ここまで続く不振を見る限り、もしかしてメスを入れた右ひじは全盛期のように復調しないのかもしれない。それでも、まだまだ老け込むような年齢ではないはずだ。家庭を支えるビジネスパーソンの星・松坂には困難を乗り越えてメジャーリーグでの復活を果たし、心の底から「この環境は何物にも代え難い」とあらためて力強く言い切ってもらいたいものである。
 <筆者プロフィール>
 臼北信行
 日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。
 *上記事の著作権は[Business Media 誠]に帰属します
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