【尖閣国有化1年 国境の島が危ない】日台漁業取り決めの“重い代償” 頭越しの締結に沖縄漁業者が激怒!★(4)
zakzak 2013.09.06
「漁業者1人ひとりの声をうかがう機会がなかった。非常に申し訳ない」
沖縄県石垣市の八重山漁業協同組合で4月20日、水産庁の本川一善長官は陳謝した。日本と台湾の「漁業取り決め」が、八重山の漁業者の頭越しに締結されたのだ。尖閣諸島問題で、中国と台湾の共闘を封じるために政府が打った手だが、地元漁業者はマグロ好漁場を突然、台湾に奪われ、怒りが収まらない。
昨年9月、尖閣国有化に反発した台湾の漁船団約40隻と台湾の巡視船が領海侵犯した。尖閣周辺を航行する中国公船は台湾船を後方支援する動きを見せ、日本側を慌てさせた。
ただ、台湾の狙いは領有権というより漁業権の主張だ。中国とは違い妥協の余地がある。日本政府は台湾漁業者の不満を抑えるため、取り決め締結を急いだ。その結果、石垣島と尖閣の間にあるマグロ好漁場を、台湾漁船に無制限に開放したのだ。
ところが、地元漁業者は締結後に初めて取り決めの中身を知った。怒りの声が沸き上がったのは言うまでもない。
数で圧倒する台湾漁船は、以前にも地元漁業者のはえ縄を切断したり、漁具を損壊したりするトラブルを頻発させていた。ここ数年、水産庁が取り締まりを強化して台湾漁船を締め出しため、ようやく安全操業が実現できたところだったのだ。
5月の取り決め発効後、トラブルを恐れる地元漁業者は周辺海域への出漁を自粛。地元漁業者は「マグロ好漁場を台湾に実効支配されてしまった」と憤る。
日本政府は「トラブルが起こった場合は補償する」と出漁を促すが、漁業者は500万円もするはえ縄が被害を受ければ、生活が成り立たない。
八重山のマグロ船主、名嘉全正氏は「補償金は使ってしまえば終わりだ。宝の海は子孫に残さないといけない」と、取り決めの白紙撤回を要求する。
尖閣問題に冷淡な沖縄のマスコミも、この時ばかりは漁業者に肩入れし、日本政府を大々的に非難した。「取り決めは、県民の頭越しという点で基地問題と構図が同じだ」と言うのである。政府の対応のまずさが、反基地運動も活気づける結果になった。
確かに、政府や台湾にも問題はあるが、漁業者を苦境に追いやった真犯人は中国であることにも注意すべきだ。
取り決めが中台共闘を封じた意義は大きいが、締結を急ぎ過ぎた代償は重い。来年のマグロ漁シーズンに向け、台湾漁船の隻数制限など、地元漁業者が納得できるルール策定が求められている。
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