「日本と戦争だ」と当然のように話す中国人たち たとえガス抜きをしても崖っぷちの共産党
JBpress 2013.09.10(火) 姫田 小夏
9月5日午後(日本時間同日夜)、ロシア・サンクトペテルブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議に先立ち、安倍晋三首相が中国の習近平国家主席と握手をした。両首脳があいさつレベルとはいえ、直接会話したのは初めてだ。
日本側は「短時間だが、両首脳の就任後、直接言葉を交わした意義は大きい」とし、また中国側も「中日関係が直面する困難な状況は中国も望まない」と、決着に向けて動き出すことへの期待をにじませた。
中国のメディアも「(中国の)大国の余裕を見せた」という評価を加えながらも、「大変礼儀のあるもので、かつリラックスしたものだった」と、前向きな報道を繰り返した。
他方、全世界の華人向けに放送する鳳凰衛星テレビが行ったアンケート調査によれば、「この握手が今後の日中関係に影響をもたらすか」という問いに対して、「ない」との回答が87%にも上ったという。両首脳の握手ごときでは関係の修復などあり得ないということなのか。なぜそれほど否定的な見方なのだろうか。
■売れていながら撤退する日本ブランド
筆者は9月8日、上海出身の女性経営者と買い物に出かけた。彼女のお目当ての品は、1着2500元(約4万円)もする日本ブランドの下着だった。「非常によく設計されている」と絶賛し、惜しみなく大枚を叩く。
だが、売り場で彼女を驚かせたのは、「当店はこの秋に閉店します」という店員の一言だった。そのブランドは中国から全面撤退するという。「こんなによく売れているのに撤退するなんて、私も信じられないんです」と、店員も驚きを隠さない。
あの反日暴動から、ちょうど1年。上海の街中では、下着に限らず日本ブランドが間違いなく復活している。地下鉄の中で日本語を話しても、突き刺さるような視線はなくなった。日本料理店にも中国人客が戻ってきている。夏休みを終えた中国への帰国便は、中国人旅行者で満員だった。民間の経済活動だけ見ると、2012年9月以前に戻ったかのようにも見える。
筆者とその女性経営者は、ショッピングの後、喫茶店に向かった。その日は何人かの中国人の中小企業経営者と合流することになっていた。
我々が着席すると、すぐに例の日本ブランドの撤退に話が及んだ。「その日本企業は、もしかして資金凍結を恐れたのでは?」 1人の中国人男性がそう指摘すると、周囲がそれに同意した。
彼らに共通するのは「数年のうちに戦争があるだろう」という見方だった。そういえば、ここ数日、どの業界も低迷している中で、軍需関連の株価だけは上昇している。日本に「尖閣諸島を舞台とする戦争をそろそろ仕掛けるのでは」という予測買いが進行している、と見ることもできる。
■ゲーム感覚で戦争を語る若手経営者たち
万が一、中国が日本に戦争を仕掛けるとしたら、その理由は他でもない。政権に対する庶民の不満をかわすためである。日本との間で一戦を交えないでは済まされないほど、国内は病んでいるのだ。
浙江省出身の経営者はこう言う。
「そもそも、戦後68年の歴史の中で日本と中国が一度も戦争をしなかったことの方が不自然ではないか。ケンカしたことのない夫婦なんてあり得ないのと一緒だ。だから、一度(戦争を)はやってみてもいいと思う。ただし、釣魚島での局地戦を前提に、だ」
黒竜江省出身の若手経営者が続ける。
「互いに艦船を2つずつぐらい壊して、それで終結にすればいいじゃないか。互いに戦費が持続しないから長期戦はあり得ない。婚礼と同じさ。3日間かけて大々的にやるけれど、それ以上だとカネが持たない。パッとやってサッと引く。これがポイントなんじゃないかな」
「演技よ、演技。互いに面子を保つための演技をすればいいじゃない。戦ったけど勝負はつきませんでした、という結果を国民に示して、半永久的に棚上げの講和条約を結べばいいんじゃない?」と、女性経営者も開戦論に同意する。
彼らの唱える“戦争論”はどこか「ゲーム感覚」で、筆者の耳にはあまりにもお気楽すぎるように聞こえた。我々日本人とは異なり、戦火を交えることへの躊躇など、微塵も感じさせない。
■人民解放軍のジープはなぜポンコツだらけなのか
筆者は「もし中国が負けたら、どうなるの」と無邪気なふりをして尋ねてみた。
すると、その場の空気は一転して重いものになった。その空気から察するに、「負ける」というシナリオは十分に考えられる事態のようだ。
浙江省出身の経営者はすかさずこう続けた。
「確かに、負けるかもしれない。このまま戦争をしたら日清戦争の繰り返しが起こるはず」
日清戦争(1894〜95年)の敗因は、他でもない清朝の腐敗にあった。当時、戦雲がたれこめているにもかかわらず、国の予算は西太后の隠居後の住まいの建設に向けられた。装甲艦など戦いに必要な軍備には資金を回さず、数千万両の白銀がこの建設に流出したと言われている。
現政権においても、官僚の堕落と腐敗が敗戦をもたらす、というのだ。
黒竜江省出身の経営者が「こんな笑い話がある」と切り出した。
「数年前、軍用ジープ8台が北京を出発して広東省に向かったところ、途中で7台が破損した。無事現地にたどり着いたのはたったの1台。その原因をたどると、やっぱり汚職だった」
つまり、軍用ジープのメーカーは、人民解放軍から発注をもらうために軍の担当者にリベートを渡す。リベートの費用を確保するためには、生産コストを削らなければならない。結果的に、造られるのは粗悪な品質のジープばかり、というわけである。
汚職まみれの政権で、十分な戦費を捻出できるのか。むしろ、戦争は官僚の懐をますます肥えさせることになるかもしれない。その一方で、遺族への償いが十分に果たされなければ、激しい民主化運動が勃発し、政権が追い詰められないとも限らない。
ちなみに、日清戦争当時、敗戦がもたらした結果は、知識分子による政治改革の動きだった。「軍備を高めることが富国強兵ではない」という認識のもと、清王朝の無能な専制政治を打倒するという立憲運動につながっていった。
■ガス抜きをしても露呈するのはやはり腐敗問題
話を冒頭の疑問に戻そう。日中両首脳の握手は、今後の日中関係の改善に影響をもたらすのか。世界の華人の9割近くが否定的な見方を持っていることは前述した通りだ。
その原因の1つは、恐らく、尖閣諸島をめぐる問題の本質が、中国国内の政権維持の限界に起因していることを見抜いているためではないか。もはや戦争を仕掛けることでしか収まりがつかなくなっているほど、国内は病んでいると実感しているのかもしれない。
しかし“ガス抜き”として戦争を仕掛けたところで、露呈するのはやはり腐敗問題だ。戦争をやっても、やらなくても、共産党政権が崖っぷちにいることは変わりがないのである。
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◇ 「日本を弟分に従え、アフリカでは新宗主国となり、アジアでもその覇権を握りたい中国」 姫田小夏 2013-05-10 | 国際/中国/アジア
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「日本と戦争だ」と当然のように話す中国人 病んでいる中国 崖っぷちの共産党 姫田小夏
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