【正論】東海大学教授・山田吉彦 離島の民生安定で国の安全守れ
産経新聞2013.9.19 03:25
《対馬の自衛隊周辺地また買収》
国境の街、対馬ではこの6月、また自衛隊施設の近隣の土地が韓国資本に買収された。海上自衛隊対馬防備隊本部に隣接して建設され、かねて問題になっている韓国人向けホテル「対馬リゾート」と地続きの土地である。購入した韓国企業は、対馬リゾートと同様のホテルを建設する計画だ。水源地や国防に関係する土地の外国人による買収は、社会問題になっている。しかし、現行法でそうした売買を制約するのは難しく、今も自由に売買されている。自衛隊施設を囲むような韓国人リゾートの形成は、有事の際の不安要因となるにもかかわらず、である。
絶滅危惧種である「ツシマヤマネコ」が生息する対馬市上県(かみあがた)町の森林が売りに出され、外国資本が買うという噂が立った。森林は、生態系の保全のみならず、周辺地の水源の役割も果たす重要な土地である。市は購入を検討したものの金額が折り合わず、一時は購入を断念した。が、乱開発されては取り返しがつかなくなるという財部能成(たからべ・やすなり)市長の決断で、最終的に市が買収する方向となった。税収が少ない市の負担は大きく、国としても対応を考慮すべきだ。
昨年1年間に、対馬(長崎県)を訪れた韓国人観光客は約15万人に上る。対馬の人口は約3万2千人。年間でだが、その5倍ほどの韓国人観光客が流入しているわけだ。今年は、さらに19万人にまで増加する見込みという。
過疎化や経済の不振に悩む対馬は、韓国との交流に活路を見出そうとしてきた。今年、韓国人が現地にもたらす経済効果は30億円に達すると予測される。半面で、悪しき影響も無視できない。
第一、韓国人旅行者の急増に、受け入れ態勢の整備が追いつかない。韓国と日本との習慣の違いや韓国人旅行者のマナーの悪さが問題視され、韓国人のこれ以上の流入に否定的な住民も多い。韓国人窃盗団によって対馬の寺社から盗まれた2体の仏像が、韓国当局から返還されないことも、住民の嫌韓意識を増幅させている。
《嫌韓ムードで祭りも様変わり》
30年余続いてきた「厳原(いずはら)みなと対馬アリラン祭り」が、「対馬厳原みなと祭り」に改名され、祭りの中心だった「朝鮮通信使行列」の再現も中止され、親韓色を消して実施されたのも、そのためだ。友好と経済効果だけでは市民の暮らしは守れず、独自の文化の維持に弊害をもたらすという危機感が住民に芽生えているのだ。
対馬での韓国資本による土地購入、無秩序な旅行者受け入れの問題が指摘されて5年余が経つ。しかし、日本の政府は、何ら対応策を取ってこなかった。韓国系のホテルや飲食店が開業されるようになるに及んで、肝心の経済利益すら韓国に吸い上げられだしたことに、住民は落胆している。
歴史的に国境を守り続けてきたという自負を持つ対馬の住民の目は、国の無策に向けられている。窃盗の常習者が自由に入国して、重要文化財を簡単に持ち出せるといった、出入国管理および税関の体制のあり方に対する不満の声が強い。対馬にある厳原港や比田勝(ひたかつ)港の入管、税関の人手不足は、これまでも指摘されてきたところである。今回、仏像が持ち出された博多港の状況も同様である。
民主党政権は平成21年、「海洋管理のための離島の保全、管理の基本方針」を定め、離島対策の方向性を示した、しかし、期限を迎えていた「離島振興法」の改正継続にとどまり、国境を意識した具体策は施されてはいない。
《急げ「特定国境離島振興法」》
自民党政権は、「国境離島の保全、管理および振興に関する有識者懇談会」を開き、6月に中間提言を発表した。政権交代でようやく動き出したというところだ。この提言はしかし、国境離島という言葉の定義や管理指針に関するもので、施策の具体化には至っていない。外国人による土地売買の規制についても、国際条約上、難しいという見解が示されているだけで対応策への言及はない。
対馬だけではない。与那国島、五島列島など国境離島では、外国人参政権導入の議論、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に伴う農産品の競争力低下などの問題に危機感を募らせる。
今、早急に求められるのは、国境離島の人々の生活を経済的、精神的に安定させる政策である。それは地方自治体だけでなく、国が率先して行うべきだ。環境を守る公共投資や出入国管理、税関および自衛隊、海上保安庁などの公務員を重点的に配備することなどが有効だ。それは、ひいては国の安全を守ることにつながる。
広大な管轄海域の基線となり、隣国との交流の接点となる国境離島の公共性に鑑みて、そこでの土地取引は「許可制」「事前届け出制」「国による買い取り収用」などにする法整備が必要だ。
その施策の基盤となる「特定国境離島振興法」の制定を急ぎ、速やかに具体的行動に移らなければならない。すでに不法占拠されている竹島、脅かされ続ける尖閣の教訓を忘れてはいけない。(やまだ よしひこ)
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◇ 対馬の森競売 国土保全の法整備を急げ / 対馬の森売却 「国境守る基金の創設を」 2013-09-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
【主張】対馬の森競売 国土保全の法整備を急げ
産経新聞2013.8.31 03:30
長崎県対馬市の広大な森林地が競売にかけられていた問題は、市が森林を購入することで債権者と合意し、競売の中止に至った。
絶滅危惧種の「ツシマヤマネコ」が唯一生息する森林として知られるが、深刻なのは国境近くの重要な離島において、大規模な土地が近隣諸国など外国勢力の手に渡りかねない懸念があったことである。
そうした事態を回避した市の対応は評価できる。この問題は離島や海岸、水源地、森林など、国土をいかに守っていくかという課題を政府に提起したといえる。
同様の事態は今後も各地で起こり得る。国土の保全に向け、法規制など抜本的な処方箋をまとめることが急務である。
私有財産である土地の取引は原則自由だが、国防や公益を阻害する恐れがある場合に歯止めをかけるのは当然、必要なことだ。
これまでにも、北海道の自衛隊施設近くの広い土地などを、外国資本が所有していた例が表面化した。水源地のある森林などが、外国資本に相次ぎ買収されたことも判明している。林野庁によると、平成23年末までに全国で49件、計760ヘクタールの森林が外資に買収された。転売の末、所有者不明の土地も多い。
国は昨年4月、森林所有者に届け出を義務づける森林法改正を行ったが、取引自体を止められるものではない。水源周辺を公有地化したり、独自の条例によって規制を強化したりする自治体の動きも広がっている。国と自治体との情報共有や連携が重要だ。
日本が米国などと異なるのは、世界貿易機関(WTO)に加盟するさい、土地取引に例外や条件を設けなかったことだ。このため、外資を対象とした規制はWTO規定に抵触しかねず、法規制を難しくしている面がある。
だが、国防に支障を来すような取引は、外資か否かを問わず認めない法規制なら整備できるだろう。生態系の保全など自然保護を理由とした土地の利用規制などは諸外国にもみられる。政府は検討を急いでほしい。
超党派議員らは「水循環基本法案」をまとめている。水資源を「国民共有の財産」として守る責務を国や自治体に求める内容だ。通常国会では廃案となったが、水源保全への第一歩として早期成立を図るべきだ。
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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【読者サービス室から】対馬の森売却 「国境守る基金の創設を」
産経新聞2013.9.6 13:29
長崎県対馬市の約260万平方メートルの森林地が競売入札に付され、韓国企業が関心を示していることを8月29日付の朝刊で報じると、「韓国人に島が乗っ取られないよう東京都の尖閣基金や新たな募金で対応できないか」(29日)▽「東京都の尖閣基金に寄付したが、この寄付金を入札に使ってほしい」(同)▽「国境の島々は国防の重要地域。都尖閣基金を充てられないか」(同)▽「全国に募金を呼びかけるしかない。年金生活だが協力する」(同)と懸念する声が相次ぎました。
反響の大きさもあり、金額などで折り合わなかった同市が購入を決めましたが、「今後も同様の事態に備えて、国民の支援で基金を作ったらどうか」(30日)▽「外国資本の買収に備えて沖縄を含む国境地域を守るための基金を作るべきだ」(同)という提案が寄せられました。
消費税増税を予定通り来春に実施すべきかどうかについて「国民だって仕方がないと思っている」などという声がある一方で、「末端の賃金が上がるまで2、3年待つべきだ」(9月2日)▽「デフレからの脱却、景気回復が課題だが、今増税しても景気は回復しないのでは」(同)という意見のほか、「増税より多過ぎる公務員の人数や給与を削減することで財政再建を図るべきだ」(28日)という指摘もありました。
貧しい暮らしの中で父親が土産に買ってくれた「ボンタンアメ」の口当たりや味を80年たっても思い出せると福島県いわき市の87歳の女性が、30日付の「談話室」に投稿。これに対し、川崎市の80代の男性から2日に、「鹿児島出身なので、好きで時々買う。東京なら、有楽町のアンテナショップかごしま遊楽館にある」と電話がありました。メーカーのセイカ食品(鹿児島市)によると、今も当時のデザインの外箱に1粒ずつオブラートで包まれて入っており、JR売店のキヨスクとスーパーのイオンなら、ほぼ全国で買えるそうです。(8月28日〜9月3日までの意見)
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◇ 日米資源同盟で中国と対峙せよ/櫻井よしこ×山田吉彦 『Voice』2013年6月号 2013-06-08 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◆ 「日本人漁師守れ」 自国の海を守ることに躊躇してはいけない 山田吉彦 2013-03-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 中国 東京都の尖閣購入計画に態度硬化させ軍艦等派遣も検討/「日本は20年後には地上から消えていく国」 2012-05-18 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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【離島の民生安定で国の安全守れ】対馬の自衛隊周辺地 また買収 山田吉彦
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