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遺族の弁護禁止/自治権なき中国弁護士/国民の「裁判を受ける権利」を支えるのが弁護士の務め

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中日新聞を読んで 「自治権なき中国弁護士」後藤昌弘(弁護士)
2011/08/07 Sun.
 中国の高速鉄道で起きた事故について、7月28日付夕刊に、興味深い記事が載っていた。
 見出しには「遺族の弁護禁止 司法当局が通達」とあり、事故現場の温州市司法当局が、市の弁護士協会に「事故の遺族の弁護を引き受けてはならない」との緊急通達を出したというのである。
 日本でいえば、岐阜県が岐阜県弁護士会所属の弁護士に対し、長良川水害による国家賠償請求事件について、被害者の依頼を受けてはならない、と通達を出したようなものである。弁護士が受任しなければ、法的知識のない市民が、独力で国を相手に損害賠償の訴訟を続けることは困難である。
 もともと弁護士は独立自営の存在である。事件の受任について、誰からも制約を受けることはない。「地方政府が地元の弁護士会に対して通達(行政上の命令)を出す」こと自体が日本ではあり得ないことである。
 聞くところでは、中国の弁護士には「自治権」は認められておらず、国の監督に服しているとのことである。政府が懲戒権を有し弁護士を監督している立場にあるのであれば、こうした通達を政府が弁護士会に出すこともあり得るということなのであろう。
 われわれ弁護士は、国家賠償訴訟や刑事弁護をする過程で国と戦うことは少なくない。だから弁護士には自治権が認められており、国の監督には服していない。これは、それだけ重い責任を課せられているということでもある。
 先日も、後見人の財産を横領したとして逮捕された弁護士が出た。このような事例があると、弁護士の自治権に対する批判の声が上がることも承知している。しかし、監督される立場の者が、監督権限を有する相手に対して、全力で戦えるのだろうか。
 国民の「裁判を受ける権利」を支えるのが弁護士の務めであるとすれば、弁護士の独立性や自治は、制度上必要なことだとあらためて思う。
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