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好評だったダボス安倍演説を台無しにした、戦争前夜発言と靖国擁護 北村 隆司

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好評だったダボス安倍演説を台無しにした、戦争前夜発言と靖国擁護
 アゴラ 2014年1月26日 北村 隆司
 日本の首相として初めて開会式の基調講演を行った安倍首相の演説は、欧米の主たるメディアでも概ね好評で、日本としては久方振りに国際舞台の表に登場した感があった。
 米国で放映されたTVで見る限り、安倍首相の英語演説は声も内容も大変明快で、会場を埋め尽くした聴衆も熱心に耳を傾け、中々聞かせるものがあった。
 アメリカの有力メディアも首相の演説内容を詳しく伝えながら「疲れ果てて復活の気力を失い、世界の舞台から消えつつあった日本が、再生する可能性を示した」と書いた位である。
 それに比べ、朴槿恵大統領の演説が米国のメディアでは殆ど話題にもならなかった事に落胆したのか、嫉妬深い韓国のマスコミは、安倍首相が朴大統領の演説会に出席し拍手までしたのは、押しかけ「ストーカー外交」だとか、「Korea Night(韓国の夜)」と言うパーテイーに下村文部科学相が姿を現すと「例え招待状を受けたからと言って、反韓教科書の旗振り役である事を棚に上げてずうずうしくて出てきた」と言う韓国政府筋の意向を報道するに至っては、こんな哀れな国を祖国とする韓国国民には、慰めの言葉もみつからない。
 好評だった安倍演説も「靖国参拝擁護」や現在の日中関係を「第1次世界大戦前夜」に例えた部分は、中韓以外の諸外国でも大不評で、政府が「外交ルートを通じて首相の真意をしっかりと説明する」と何度繰り返しても、挽回する事は至難の業だと思われる。
 首相の靖国参拝は、個人的信条だけに演説を通じて海外の懸念を払拭する事は不可能に近く、全く意味の無い余計な発言であった。
 その証拠に、安倍首相が靖国に触れるたびに日本の友邦諸国まで困惑する事に危機感を強めた米国政府は、日本政府に安倍首相が靖国神社を再び参拝しないとの保証を非公式に求めていると伝えた有力紙もあった程である。
 普段は靖国の存在も知らないのが海外の実情である事も事実なら、靖国参拝が問題になる度に、海外諸国の大半が靖国を 国家主義のシンボルだと考え、懸念を示す事も事実である。
 物事には順番があり、説明は物事を実行する前に行なって初めて効果を持つ。
 安倍首相が諸外国の解釈を誤解だと主張するなら、参拝する前に説得すべきであり、参拝した後の後追い説明は「殴った後」の弁明のように、常識的には説明とは言わず「弁解」と言う。
 好評だったダボス経済フォラムの演説で、安倍首相が刺身のつまのように加えた「靖国擁護」発言がこれほど大きな問題になる事実は、好むと好まざるを問わず「靖国参拝」が日本の国内問題の域を超え、国際問題化している証左である。
 歴史は勝者が書く、とよく言われるが、最近では世相の変化が歴史の解釈に大きな影響を持つようになった。一方、変らぬ伝統的価値観との対立と言う矛盾も現存し、その狭間に入って苦労しているのが「ソチ」の冬季オリンピックである。
 近年急速に世界に広まった「同性愛者の権利容認」と言う新しい価値観を否定したロシアに対し、欧米各国の首脳はソチオリンピックの出席ボイコットで対抗し、ロシアが伝統的な回教価値を否定した事で始まったコーカサス回教諸民族との抗争は、「ソチ」オリンピックの安全に重大な脅威を与えている。
 蛇足になるが、安倍首相が欧米諸国の首脳の意向に反して、ソチ五輪出席を決めたことは、微妙な対ロ関係や2020年に東京オリンピックを控える日本の首相としては、国益に沿った正しい決定である。
 宗教や人種の対立が少なく、地続きの国境を持たない日本では、国際的な「人権」や「価値観の変化」に疎い傾向があり、全てを自分の価値観で判断し勝ちな事が災いしている場合が多い。
 日中と日韓を同じように扱う日本の風潮も、日本の国際音痴の典型で、中韓両国と同時に事を構える二正面作戦は一刻も早く改める必要がある。
 中韓が反日で連携出来る唯一の問題が靖国であり、首相が靖国参拝さえ控えれば、韓国に比べて遙かに大人の国である中国との緊張緩和は可能である。
 日中の緊張関係が緩和すれば、韓国の反日政策は国際的に孤立し、日本を必要とする韓国は、ほっておいてもついて来る事は間違いない。
 その間、民間レベルで韓国を批判するのは兎も角、外交レベルでは、昨年の拙稿「対韓外交は、『無為』『無策』『無関心』の『三無』に限る!」に述べた通り、韓国は当面無視すべきである。
 日本と北方領土問題を抱えるロシアのプーチン大統領は、日中の対立を巧みに利用した対日外交を展開しており、日中間の緊張が緩和すればロシアの「中国カード」も弱まり、日本に有利に作用する可能性も大である。
 安倍首相はこの際、領土問題で日本の立場を支持する国は多いが、靖国参拝や歴史観については批判を控える国はあっても、積極的に支持する国は皆無である事実を認識し、中韓両国の外交上の最良の友人となった国際感覚ゼロの「ネットウヨク」の挑発を退け、自分の個人的信条を抑え、靖国参拝を控える事こそ国益に沿うものである。
 2014年1月26日 北村 隆司
 ◎上記事の著作権は[アゴラ]に帰属します
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