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「原発マネー国家」日本/ 泊村〈原発立地交付金232億円〉漁業しかなかった過疎の村が裕福な自治体に

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週刊・上杉隆【第188回】 2011年8月18日
泊原発3号機、営業運転に移行――世界のどの国よりも早く原発再開に踏み出した「事故当事国」日本
 北海道の泊原発3号機の営業運転再開が決まった。高橋はるみ知事が認証し、きょう(17日)にも運転が再開される見込みだ。
〈高橋はるみ知事は17日、道庁で記者会見を開き、調整運転中の北海道電力泊原発(後志管内泊村)3号機の営業運転再開について「異議はない」とコメントし、容認する考えを正式表明した。知事は会見後に、海江田万里経済産業相に再開に同意する考えを伝達し、これを受け海江田氏は検査終了証を北電に交付。同日中に3号機は営業運転に移行する。
 東日本大震災後、定期検査中の原発が営業運転に移行するのは全国で初めて。3号機は1月から定期検査に入り、3月7日に調整運転に移行。調整運転は通常は1ヵ月程度だが、震災の発生により、営業運転移行前に必要な最終検査を受けないまま、調整運転を5ヵ月余り続けていた〉(北海道新聞/3月17日)http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/312306.html
 実は、地元の北海道新聞がこう報じた直後のきょう夕方、早速、営業運転が始まった模様だ。
*チェルノブイリを経験した欧州の伊・独の判断は
 3・11の福島第一原発事故以来、原発を持つすべての国の政府が原子力発電所の再検証や見直しを迫られている。
 そうした中でイタリアは再稼動の停止を国民投票によって、ドイツでは原発の将来の廃止が決まった。
 25年前のチェルノブイリの惨事を、身をもって体験している欧州では、そもそも原発事故への危機意識が高い。極東の島国の日本のこととはいえ、人類史上、最悪の原発事故を同時代に体験しているという認識の欧州では、こうした判断は当然のことなのだろう。
 ところが、こうした世界の趨勢の中、驚くことに事故の当事国である日本だけが、異例の対応をみせている。
 菅首相自らが求めていたストレステストや他国のような国民投票もなく、いきなり営業運転の再開を決めたのである。しかも、地方自治体の意思による決定である。
 福島第一原発の事故はいまだ収束していない。日々、放射能汚染水を海洋に流出させ、夜な夜なベントらしき水蒸気を発生させているのが事実だ。にもかかわらず、日本は原発再開へ、どの国よりも早く踏み出してしまった。いったい政府は何を考えているのだろうか。
*国や国民の関与がないまま再開決定を下した高橋知事
 高橋はるみ知事は経産省出身の元役人である。地方にありがちな中央とのパイプを旗印に2003年、北海道初の女性知事として自民党推薦で初当選を果たした。
 もちろん、経産省だからといって全員が原発推進派というわけではない。だが、かつて知事の献金先リストに「北海道電力」の文字が記されていたこと、さらには最多献金先が建設業界という事実は、彼女の政策を規定するのに十分な根拠となった可能性が高い。
 いずれにしろ、高橋知事は原発再開へ舵を切った日本で最初の「政治家」となったのである。
 きょう、筆者がMCを担当する東京FMの番組「タイムライン」に北海道大学大学院の吉田文和教授が電話で出演した。
 吉田氏は、営業再開の決定直前の15日、道内の学識経験者による泊原発再稼動の反対署名を集め、そのアピールを行なった代表者でもある。その吉田氏はこう話した。
 「明確な安全基準と原発再開の規制を国が決めないまま高橋知事は判断を下してしまいました。近くにあるとされる活断層に対する第三者機関の判断も、60キロメートルしか離れていない札幌市を含めた周辺自治体の参加もないまま、泊村周辺の4自治体のみの賛成で決定されてしまったのです。それは大きな問題です。とくに来年以降のプルサーマルの開始は、充分な話し合いと安全対策がなければ容認できないのです」
 実は、今回営業運転を開始した3号機では、MOX燃料によるプルサーマル発電を行うことが決まっている。
 来春にも稼動する見込みだが、そもそもプルトニウムを使ったプルサーマル発電の安全性は世界中で疑問視されているものだ。同じプルサーマル発電機の福島第一原発3号機の事故を鑑みれば、到底、簡単に再開というわけにはいかないはずだ。
*原発交付金の札束で頬を叩くような仕業
 にもかかわらず、北海道、いや日本は原発再開へ強引に舵を切った。いったいそれはなぜか。
 15日、北海道のローカル番組「U型テレビ」(UHB)のキャスター大村正樹氏は、当日の生放送の中で、その理由を次のように解説している。
 「原発立地による地方交付金が232億円も泊村に落ちているんです。そのおかげで、漁業しかなかった過疎の村は道内でももっとも裕福な自治体になったのです。医療費は無料、子ども手当ても国からとは別途支給、ゴルフも無料、村民は、道内でももっとも裕福な生活を送ることができるのです」
 まさしく札束で頬を叩くような仕業である。だが、タダより高いものはない。それはチェルノブイリやフクシマが証明しているはずだ。
 それでも、日本は原発マネーから脱却できそうもない。
 東京電力が事故処理の失敗と情報隠蔽を繰り返し、人類史上最悪の人災事故を起こしても、政府は損害賠償を求めないどころか、むしろ国費で東電を救済さえしようとしている。
 霞ヶ関はいわずもがなである。経産省、原子力保安院は事故の過小評価に終始し、これだけの犯罪を犯しながら、検察当局は捜査どころか証拠保全さえ行おうとしない。
 また、電気事業連合会から年間800億円以上の広告費で「買収」されているテレビや新聞の大手メディアは、東電の腐敗の本質をなにひとつ追及できずに、「安全デマ」を流すことで汲々としている。
 もはや日本は民主主義国家ではない。先進国とは言いがたい原発マフィア国家に成り下がったのである。いや、とうの昔に、その内奥まで原発マネーに冒された犯罪国家だったのかもしれない。
 だから、泊原発の営業運転再開という世界の認識から180度遊離しているような判断が普通にできてしまうのであろう。
 日本人はいったいいつになったら、世界の厳しく冷たい視線に気づくのだろうか。 *強調(太字)は来栖
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