石巻3人殺傷事件控訴審判決 控訴棄却、死刑支持
河北新報 2014年01月31日金曜日
宮城県石巻市の3人殺傷事件で殺人、殺人未遂、未成年者略取などの罪に問われた元解体工の男の被告(22)=事件当時(18)=の控訴審判決で、仙台高裁(飯渕進裁判長)は31日、求刑通り死刑を言い渡した一審仙台地裁の裁判員裁判判決を支持、被告の控訴を棄却した。裁判員裁判で死刑判決を受けた少年事件は唯一で、控訴審の判断が示されたのは初めて。被告側は上告した。
事件当時の少年に対する死刑相当の判断は2012年の山口県光市母子殺害事件の差し戻し上告審(死刑確定、再審請求中)以来となる。
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元少年、二審も死刑「回避の理由なし」 宮城・石巻3人殺傷
産経ニュース 2014.1.31 21:04
宮城県石巻市で平成22年2月、元交際相手の姉と友人の2人を殺害し、男性1人に大けがを負わせたとして殺人罪などに問われ、1審仙台地裁で少年事件の裁判員裁判としては全国初となる死刑判決を受けた石巻市の元解体工の男の被告(22)=事件当時(18)=の控訴審判決公判が31日、仙台高裁で開かれ、飯渕進裁判長は「極めて身勝手で短絡的な犯行で、死刑を回避する理由はない」として、1審判決を支持、弁護側の控訴を棄却した。被告側は即日上告した。
飯渕裁判長は、最高裁が死刑判断の基準として示した「永山基準」に沿い、無抵抗の被害者を何度も牛刀で刺した殺害方法の残虐さや、若年の3人の男女を殺傷した結果の重大性について強調。被告が当時18歳だったことや、幼少期に虐待を受けて育ったことなど、「酌むべき事情は最大限考慮した」上で極刑が相当と判断した。
判決によると、元少年は22年2月10日朝、元交際相手の少女宅に押し入り、少女の姉、南部美沙さん=当時(20)=と友人の大森実可子さん=同(18)=を牛刀で刺殺し、男性1人に重傷を負わせ、少女を車に乗せて連れ去るなどした。
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1983年7月8日最高裁第二小法廷(裁判長裁判官大橋進)宣告
主文
原判決を破棄する。
本件を高等裁判所に差し戻す。
理由
〔一〕第一審判決は、犯行の動機に同情すべき点がなく、ピストルに実包を装填して携帯する計画性があり、その態様も残虐で、四人の生命を奪った結果が重大で、遺族らは精神的、経済的に深刻な打撃を受け、「連続射殺魔」と報道されて社会的影響が大きく、被告人に改悛の情の認められないことを総合すれば、生育環境、生育歴に同情すべき点があり、犯行当時は少年であったことを参酌しても、死刑の選択はやむをえないとした。
〔二〕第二審判決は、不利な情状を総合考慮すれば、死刑判決は首肯できないではないとしながら、被告人にとって有利な情状を考慮し、第一審判決を破棄して、無期懲役に処した。
〔三〕死刑は残虐な刑罰にあたるものではなく、死刑を定めた刑法の規定が憲法に違反しないことは、当裁判所大法廷の判例にあるが、生命そのものを永遠に奪う冷厳な極刑で、究極の刑罰であることにかんがみると、その適用が慎重におこなわれなければならないことは、第二審判決の判示するとおりである。
しかし、犯行の罪責、動機、態様、殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状などを考察したとき、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見地からも、極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される。
本件犯行についてみるに、犯行の罪質、結果、社会的影響はきわめて重大である。殺害の手段方法は、凶器としてピストルを使用し、被害者の頭部、顔面などを至近距離から狙撃して、きわめて残虐というほかなく、名古屋事件の被害者・佐藤秀明が、「待って、待って」と命乞いするのを聞き入れず射殺し、執拗かつ冷酷きわまりない。
遺族らの被害感情は深く、佐藤秀明の両親は、被害弁償を受け取らないのが息子に対する供養と述べ、東京プリンスホテル事件の被害者・村田紀男の母も、被害弁償を固く拒み、どのような理由があっても被告人を許す気持ちはないと述べており、その心情は痛ましいの一語に尽きる。
被告人にとって有利な情状は、犯行当時に少年であったこと、家庭環境がきわめて不遇で、生育歴に同情すべき点が多々あり、第一審の判決後に結婚して伴侶をえたこと、遺族の一部に被害弁償したことなどが考慮されるべきであろう。幼少時から赤貧洗うがごとき窮乏状態で育てられ、肉親の愛情に飢えていたことは同情すべきであり、このような環境的な負因が、精神の健全な成長を阻害した面があることは、推認できないではない。
しかし、同様の環境的負因を負う兄弟は、被告人のような軌跡をたどることなく、立派に成人している。犯行時に少年であったとはいえ年長少年で、犯行の動機、態様からうかがわれる犯罪性の根深さに照らしても、十八歳未満の少年と同視することは困難である。そうすると、犯行が一過性のもので、精神的な成熟度が十八歳未満の少年と同視しうるなど、証拠上明らかではない事実を前提として、国家・社会の福祉政策を関連づけることは妥当でない。
第一審の死刑判決を破棄して、被告人を無期懲役に処した第二審判決は、事実の個別的な認定および総合的な判断を誤り、はなはだしく刑の量定を誤ったもので、これを破棄しなければ、いちじるしく正義に反するものと認めざるをえない。
〔四〕よって第二審判決を破棄し、本件事案の重大性、特殊性にかんがみ、さらに慎重な審理を尽くさせるために、東京高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
一九八三年七月八日
最高裁第二小法廷
裁判長裁判官 大橋 進
裁判官 木下忠良
裁判官 鹽野宜慶
裁判官 宮崎悟一
裁判官 牧 圭次
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