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オウム平田信被告 第9回公判 2014.2.3.Mon. 井上嘉浩死刑囚の証人尋問 新証言=事件が「殺人」だった

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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(1)】声を張り上げ「全てのオウム事件被害者におわびします」
 産経ニュース2014.2.3 11:56
 《平成7年の目黒公証役場事務長、仮谷清志さん=当時(68)=拉致事件など3事件に関わったとして逮捕監禁罪などに問われたオウム真理教元幹部、平田信被告(48)の裁判員裁判の第9回公判が21日、東京地裁(斉藤啓昭裁判長)で始まった。この日は、仮谷さん拉致事件を指揮した井上嘉浩死刑囚(44)の証人尋問が実施される》
 《午前9時58分。東京地裁最大の104号法廷では、中川死刑囚の尋問時と同様、襲撃など不測の事態に備え、傍聴席の前に透明の防弾パネルが設置され、傍聴人に姿が見えないよう証言台と傍聴席との間に遮蔽板が設置されている。刑務官も10人以上が傍聴席の前に並び立ち、これ以上ない厳重な警備が、法廷内の緊張を高めている》
 《井上死刑囚が入ってきたようだ。がちゃがちゃと拘束を解く音が静寂に包まれた法廷内に響く》
 裁判長「井上さんですね」
 証人「はい」
 証人「宣誓。良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。証人、井上嘉浩」
 《男性検察官が立ち上がった》
 検察官「証人はこれから証言するにあたって、何か言っておきたいことがあるということですので、簡潔にどうぞ」
 証人「はい」
 証人「仮谷さんのお父さま、ご遺族の方々をはじめ、全てのオウム事件の被害者の方々、ご遺族の方々、今も後遺症で苦しむ方々に心より深くおわび申し上げます。そして社会の皆さま方に大変なご迷惑をおかけしたことをこの場をお借りしまして謝罪します」
 《声を張り上げ、神妙な話し方で被害者や遺族に謝罪した井上死刑囚。その姿を仮谷さんの長男、実さん(53)は、検察側の後ろから無表情で見つめていた》
 検察官「では尋問を始めます。証人はオウム真理教の出家信者でしたか」
 証人「はい」
 《今公判の最大の争点は、平田被告に仮谷さんを拉致するという認識があったかどうかだ。平田被告は拉致の認識を否定し、弁護側も逮捕監禁罪の幇助犯にとどまると主張。一方、検察側は認識があったとし、「幇助犯ではなく、犯罪を実行した正犯に当たる」と主張する》
 《検察官は、井上死刑囚が仮谷さん拉致事件に関与したことや、地下鉄サリン事件などで1審で無期懲役判決を受けた後、控訴審で死刑判決を受け、平成22年1月13日に確定したことなどを矢継ぎ早に確認していく。そして、本題である仮谷さん拉致事件に関する尋問を始める》
 検察官「証人は、拉致事件当時、教団内でどのような立場でしたか」
 証人「CHSという諜報省という省庁の長官でした」
 検察官「どんな活動をしていたのですか」
 証人「主に2つあります。一つは産業スパイ活動です。当時、教団は武力革命のための武装化を進めていて、役に立つ企業に勤めていた信徒さんからの情報収集をしていました。2つ目はいわゆる支部活動です。信者の獲得や布施集めなどです」
=(2)に続く
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 
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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(2)】平田被告は「拉致後『案外簡単にいったよ』と言った」
 産経ニュース2014.2.3 13:27
 《井上死刑囚は「諜報省(CHS)大臣」として地下鉄サリンなど10事件に関与したとして死刑が確定している。仮谷さん拉致事件では全体の指揮役を務め、平田被告の運転する乗用車に乗ったとされる》
 《平田被告はこれまで「(拉致の)認識の共有はなかった」と主張。拉致することを平田被告が事前に知っていたかどうかが最大の争点になっており、指揮役で打ち合わせでも説明したとされる井上死刑囚の証言が注目されている》
 《男性検察官は井上死刑囚らが麻原彰晃死刑囚(58)=本名・松本智津夫=から指示を受けた際のことを質問する》
 検察官「その場ではどんなことが決まりましたか」
 証人「仮谷さんの妹のAさん(法廷では実名)の居場所が分からないので仮谷さんを拉致して聞き出す。そして予定通り出家してもらい、お布施をいただくということです」
 検察官「役割も決まったのですか」
 証人「はい」
 検察官「被告の役割は」
 証人「レーザー(で目くらましをする)役です」
 《井上死刑囚は自身や中川智正死刑囚(51)の役割についても説明。検察官は拉致の目的などについて質問していく》
 検察官「そもそも多額のお布施を集める必要はあったのですか」
 証人「はい。当時は武力革命を目的としており、そのための人材の確保と資金集めをしていたので、資金集めにお布施は不可欠だった」
 《井上死刑囚は教団が武力によって国家を転覆しようと考え、そのため毎月約3億円のお布施のうち約2億円を兵器開発などに充てていたことも述べた》
 検察官「仮谷さんにAさんの居場所を聞き出した後はどうするつもりだったんですか」
 証人「(電気ショックで記憶を消す)ニューナルコをかけて帰すと思っていました」
 検察官「(麻原からの)指示があった後はどうしましたか」
 証人「中村(昇受刑者)さんが平田信さんに連絡を取って、平田さんが台所にやってきました。中村さんが指示を伝えました」
 検察官「どんなことを伝えましたか」
 証人「Aさんが出家しようとしていたところ、いなくなって居場所が分からない。兄が監禁しているかもしれない。平田さんの役割はレーザーの目くらましで、その隙に俺(中村受刑者)が拉致すると」
 検察官「お兄さんを拉致するとはっきり伝えましたか」
 証人「はい」
 《検察官は中村受刑者の声が聞き取りにくくなかったかなどを確認し、井上死刑囚と平田被告について話を移す》
 検察官「証人と被告の関係は」
 証人「古くからの仲間です」
 検察官「具体的には」
 証人「私が出家する前の先輩役。『信お兄さん』という感じのつきあいがあった。先輩なので何でも話し合う、当時は仲が良かったと感じていました」
 《検察官は2人が関わった平成5年の別の事件についても聞いていく》
 検察官「証人は以前、未成年者の少女の信徒を両親の承諾を得ないで自宅から連れ出したことはありますか」
 証人「はい。私がリーダーでやりました」
 検察官「被告は関与していましたか」
 証人「はい」
 検察官「この件と仮谷事件の違いは」
 証人「少女は実家にいるだろうと推測して行った。仮谷事件はAさんの居場所が分からないことが違います」
 検察官「自宅から連れ出したのですか」
 証人「正確には私が(少女の)父と話しているときに、裏から少女が出て平田信さんがキャッチしました」
 《質問は拉致事件の状況に移る。当初は目黒公証役場にそのまま突っ込むという案もあったが、レーザーが(試射の結果、効果がないため)使えないことや近くの店舗が店を開けたことでできなくなったという》
 検察官「(突っ込む案が)だめになってどんな方法をとることになったのですか」
 証人「仮谷さんの行方をワゴン車でふさいで、後ろから抱えて入れ込む方法です」
 検察官「この時の被告の役割は」
 証人「私が乗っているギャラン(乗用車)の運転手です」
 検察官「(レーザーの)試射の前に被告を入れた全員がワゴン車に集まった話し合いはありましたか」
 証人「全員は集まっていません。(平田被告とCさんを除く6人の名前を挙げる)」
 検察官「被告がいないのはおかしいのでは」
 証人「違います。私が平田信さんに説明すればいいだけです。実験するときに伝えました」
 検察官「その後、拉致の方法と役割は」
 証人「これも私が伝えました。平田さんにこういう形で拉致をやるから運転手役をしてくれと言いました」
 《拉致の方法が変わった後、実行グループはデリカ(ワゴン車)を移動してそれぞれが車内や路上で待機。井上死刑囚はその場所を図に書き込み、配置が法廷の左右にある画面にも写し出された》
 《仮谷さんと間違えて別人を尾行したことなどを話し、いよいよ拉致の瞬間に質問は移っていく》
 検察官「人間違いの後、周囲で気になることはありましたか」
 証人「対向車線でミニパトが駐車違反の取り締まりをしたり、(車を)止めている前のそば屋が不審そうにこちらを見たりしていました」
 検察官「どう思いましたか」
 証人「危険だと思いました。中村さんに『私がいい見張り場所を探しに行くから、それでなければやめよう』と言って車を降りました」
 《この時、無線機が3台あり、1台は井上死刑囚が持ち、後の2台はワゴン車と乗用車に置かれていたという》
 検察官「証人はどこへ行ったのですか」
 証人「回ったところにビルがあったので、屋上から見えるかなと上っていきました」
 検察官「そのとき何かありましたか」
 証人「無線で『ザッ』と聞こえて、その後『オッケ』と聞こえました」
 検察官「音を聞いてどう思いましたか」
 証人「混線か動きがあるのか分かりませんでした」
 検察官「『オッケ』というのは誰の声だと思いましたか」
 証人「平田信さんだと思いました。拉致が行われているのかなと。でも(正確には)分からなかったので、現場に戻りました」
 検察官「戻ったらどうなっていましたか」
 証人「丁字路の角に中村さんがかぶっていた帽子が落ちていたので拾い上げました」
 《井上死刑囚は上っていたビル、現場に戻ったルート、帽子の落ちていた位置を図に印し、それが再び画面に写し出された》
 検察官「通りに戻ってデリカやギャランは」
 証人「ギャランだけあったので、乗り込んだら平田信さんが発進させました」
 検察官「どんな話をしましたか」
 証人「『もうちょっと待って来なければ行こうと思っていた。案外簡単にいったよ』と言っていました」
 検察官「証人が尋ねたのですか」
 証人「違います」
 検察官「被告の様子は」
 証人「普段と変わりませんでした」
 検察官「話が戻りますが、無線機から聞こえた『オッケ』とは被告の声だとは断言できないですか」
 証人「100%とはいえません」
 《検察官はこれまでの取り調べや裁判でも、井上死刑囚が無線機の声を平田被告のものだと供述していることを確認。事件に話を戻した》
 検察官「現場を離れてからは」
 証人「デリカと連絡し、合流方法を決めて向かいました」
 検察官「その他にしたことは」
 証人「世田谷道場に連絡して仮谷さんを運ぶワゴン車を受け取りに行きました。怪しまれずに連れて行くには普段使っている教団の車がベターと考えたからです」
=(3)に続く
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します  
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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(3)】「急に光り出して亡くなった」と中川死刑囚、仮谷さん事件で
 産経ニュース2014.2.3 15:26
 《男性検察官は仮谷さんを拉致した後の行動について質問する》
 検察官「(仮谷さんを運ぶ)ワゴン車を受け取るまでの間、何かありましたか」
 証人「(元信者の)Hさん(法廷では実名)から『(仮谷さんの妹の)Aさん(同)が出家をやめる』と連絡がありました。中川(智正死刑囚)さんも驚いていました」
 検察官「そのほかに何か聞きましたか」
 証人「Hさんが『警察が青山道場に来た』と」
 検察官「被告はどのような様子でしたか」
 証人「不安そうでした。被告に『警察が動いているし、(電気ショックで記憶を消す)ニューナルコをかけて帰すしかないだろう』と話しました」
 検察官「被告の反応はどのようなものでしたか」
 証人「『そうするしかないだろう』というニュアンスのことを言いました」
 検察官「Hさんとは会いましたか」
 証人「会いませんでした。いわゆる、Hさんは布教の顔で、警察も動いているなかでHさんまで逮捕されると教団へのダメージが大きいと判断しました」
 検察官「その後、(元教祖の)麻原(彰晃死刑囚)から指示はありましたか」
 証人「ありませんでした」
 検察官「そうした場合はどうするのですか」
 証人「任務を遂行します」
 《その後、井上死刑囚らは仮谷さんの保温用の毛布などを調達し、山梨県旧上九一色村の教団施設へと車を走らせた。斉藤啓昭裁判長が休憩を告げた》
 《35分間の休憩を挟み、審理が再開される》
 検察官「場面は変わって、仮谷さんが亡くなったときのことをうかがいます。証人は仮谷さんが亡くなったことをいつ知りましたか」
 証人「(平成7年)3月1日の昼過ぎ、上九一色村のサティアンで中川さんから聞きました。中村(昇受刑者)さんも一緒でした」
 検察官「どのような内容でしたか」
 証人「(刺殺された元最高幹部の)村井(秀夫)さんが『(元信者の)G君(法廷では実名)にポアさせようと思ったが、仮谷さんは死んでしまった』と言っている。G君には仮谷さんの首を絞めさせるので、その後は遺体を焼却施設に運ばなければいけない。手伝ってほしい、ということでした」
 《Gさんは村井元幹部から、首を絞めて殺すよう指示されていたため、指示通り、亡くなった後の仮谷さんの首を絞めたとされる》
 検察官「どう思いましたか」
 証人「とっさに、誰かがポアしたのだと思いました。中川さんが事情を話してくれるのを待ちました。中川さんが『どうせポアさせることになると思っていたので、この際、ポア、殺害できる薬物の効果を確かめてみようと思った。めったにできることではないので、薬物を点滴したところ、仮谷さんが急に光り出して亡くなってしまった』と言いました。処置しようと思ったけれど、もう光り出したのでそのままにしたということでした」
 検察官「光り出すとはどういうことですか」
 証人「教団内の言い方で、魂が肉体から解き放たれるということです。中川さんは死の過程を体験したのだと思いました」
 《これが事実なら、中川死刑囚ら仮谷さん事件に関与した者たちの罪名は逮捕監禁致死ではなく殺人だ。だが、中川死刑囚は面会した仮谷さんの長男、実さん(53)に「積極的に何かをしたということはない」と否定。21日の尋問でも「(話した事実は)ありません。井上君が自分の責任で言うことであれば私がどうこういうことではないが、嘘はついていません」と色をなして反論した。死刑囚2人の証言が真っ向から対立する異例の事態だ》
 検察官「このことは誰かに話しましたか」
 証人「7年の逮捕直後、弁護人の先生には話しました」
 検察官「その後、自身の裁判や、証人として出廷した際に、法廷でこの話をしなかったのはなぜですか」
 証人「弁護人の先生から、他人のことはとやかく言うなと言われました。殺人の共謀罪になるとも言われました」
 検察官「なぜ今日話したのですか」
 証人「自分の2審判決前に、(仮谷さんの長男の)実さんが接見に来てくださいました。中川さんが話すべきだと思っていましたし、殺人の共謀罪になる可能性もありました。また、死刑回避のために中川さんに罪をなすりつけているではないかと思われたくなかったのです」
 《マイクを通して聞こえる証人の声は、ときどきかすれる。感極まっているのか、「っく…」としゃくり上げる音、鼻水をすする音も混ざるようになった。》
 証人「死刑が確定し、考えました。実さんが、愛するお父さんの最期の様子も知らないのは、あまりに無念に思っているにちがいない。接見に来てくれたのに、伝えられなかった自分が情けなくて、苦しくて…」
 証人「そんなころ、中川さんの最高裁判決が近いと聞きました。死刑が確定すれば、死刑囚はごく限られた人としか接見できません。実さんが中川さんと接見できる可能性も低くなる。もう自分がどう思われようと関係ない。一人の人間として伝えるべきだと思いました。21年8月のお盆前、両親を通じて実さんに伝えました」
 《これまで、実さんは井上死刑囚の言葉に「罪を償うと言っているが、響いてこない」と不満を示していた》
 証人「遺族の気持ちより、自分を大切にしたからです。慚愧の念に耐えません。全ての責任は私にあります。本当に申し訳ありませんでした」
 《井上死刑囚のすすり泣きがまだ響くなか、マンション爆破事件と火炎瓶投げ込み事件について尋問が始まった》
 《当時、教団内では、爆破事件と火炎瓶投げ込み事件、地下鉄サリン事件の計画が同時並行的に進められていたという》
 検察官「話し合いはどこで行われていましたか」
 証人「東京にある、CHS(諜報省)の拠点にしている教団施設の一軒家です」
 検察官「被告の役割は」
 証人「地下鉄サリン事件の運転手から外され、ばつが悪そうでしたが、『こっちも人が必要だから手伝ってよ』と声を掛けると、新たな役割ができて安心した様子でした」
 検察官「爆破事件の目的は」
 証人「教団は、警察の強制捜査が近いと思っていました。松本サリン事件について捜査を受けるだろうと思っていたので、そうなれば教団への影響や麻原の逮捕は免れない。そこで、宗教弾圧を受けているという状況をつくりだし、警察の強制捜査も弾圧の一環なのだと知らしめようとしました。そのためには、爆発が大きなニュースになる必要がありました。爆発後に警察に電話をかける、(爆発が小規模だった場合)青山だけでない他の道場にも火炎瓶を投げ込むなどの案も考えていました」
 検察官「爆弾を仕掛ける実行役は誰でしたか」
 証人「(元信者の)P君(法廷では実名)にやらせようとしましたが、私がやりました」
 検察官「なぜですか」
 証人「タイマーがかけられているのですが、一度失敗しており、自爆する危険性があったからです。P君には見張り役と、犯行声明を投函(とうかん)する役をお願いしました」
 検察官「運転手が必要だったのはなぜですか」
 証人「爆弾を仕掛ける私とP君が捕まったら、教団による自作自演であることがばれてしまうので、素早く現場を離れる必要がありました」
 《正午を回ったため、マンション爆破事件の途中で、斉藤裁判長が休廷を告げた》
=(4)に続く
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *リンクは来栖
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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(4)】爆破事件の打ち合わせは「こたつの部屋で」
 産経ニュース2014.2.3 16:55
 《昼の休憩をはさんで審理が再開》
 裁判長「それでは証人の方、午前中に引き続き、検察官からの質問になります」
 《男性検察官が井上死刑囚に対して尋問を始めた。午前中の審理に引き続き、検察官は地下鉄サリン事件の前日に発生した、東京都杉並区にあった宗教学者、Bさん(法廷では実名)の元自宅マンション爆破事件について質問していく。平田被告はこの爆破事件にも関与したとして起訴されているが、平田被告の弁護側は「指示や打ち合わせはなかった」と無罪を主張している》
 《井上死刑囚は事前に教団施設で打ち合わせをした際に、事件にかかわったメンバーに自ら指示した内容などを説明。記憶に残っている点とあいまいな点をしっかりと区別し、言葉を選びながらはっきりとした口調で証言していく》
 検察官「(打ち合わせに)集まったのは誰でしたか」
 証人「私、平田信さん、Gさん(法廷では実名)、Pさん(同)です」
 検察官「集まった後はどうしたのですか」
 証人「(爆破現場の)マンションの地図をこたつの上に広げました」
 検察官「その後、証人はどうしたのですか」
 証人「私が(マンションの位置を)示して、Bさんのところに『爆発物を仕掛ける』といいました。『私が仕掛ける』と」
 検察官「証人はPさんに何といいましたか」
 証人「『犯行声明文を(マンションの)ポストに入れてほしい』と。Pさんに犯行声明文のビラを見せました」
 《「今こそ裁きのとき 許すまじ 三宝誹謗(ひぼう)の大罪 邪教オウム真理教の歩く広告塔 B 死すべし」と書かれた犯行声明文が法廷内の左右両側に設置された大型モニターに写し出される》
 《井上死刑囚が犯行声明文の意味を説明する。爆破事件は、捜査を攪乱(かくらん)するため、オウム真理教に敵対する何者かが教団を狙って犯行に及んだと見せかけることが目的の自作自演だったという》
 《検察官は犯行時のそれぞれの役割分担について質問していく》
 検察官「(打ち合わせのときに)証人は林(現姓・小池)泰男(死刑囚)さんに何か声をかけましたか」
 証人「林さんに『こっちも手伝ってください』と私が声をかけました」
 検察官「そのとき林さんはどこにいましたか」
 証人「たぶん台所です」
 検察官「その後、林さんはどうしましたか」
 証人「こたつの私のそばに座ってくれました」
 検察官「どうして林さんに声をかけたのですか」
 証人「私が爆発物を仕掛けるときに、自爆して負傷する可能性があった。そのときに機転を利かせて私を助け出せると、ふと思ったからです」
 検察官「自爆して負傷するとはどういうことですか」
 証人「私は爆発物を仕掛けます。犯行声明文のビラを(現場マンションに)投函(とうかん)するPさんも自爆する可能性があります。(逃走用に)Gさんが止めている車までは距離がありました。そうすると平田信さんに(負傷した自分たちを)回収してもらうことになりますが、2人とも自爆してしまったら平田信さん1人では難しいだろうと」
 検察官「林さんに声をかけた後、証人はどうしましたか」
 証人「こたつの上に地図が広がっていたので、それを示しながら指示しました。Bさんのところに“やらせ”で爆発物を仕掛けると説明し、マンションの場所や爆発物のタイマーが3分という趣旨の説明もしました。第三者のふりをして、爆発物が爆発したかどうか確認してほしいとも。(確認するのに)『ここに駐車場があるから、ここがいいんじゃないか』という趣旨のことをいいました」
 《検察官が井上死刑囚に爆破現場周辺の地図を差し出し、待機場所として適切だと判断した駐車場の位置などを赤色のペンで書き込むよう促す。平田被告は地図にペンを走らせる井上死刑囚の様子をじっと見つめている》
 検察官「ここ(井上死刑囚が赤色のペンで印をつけた駐車場)が適切と判断した理由は」
 証人「確実に爆破を確認できる。爆発物の性能からして、(現場マンションの)目の前だが、危害が及ぶことがない」
 検察官「証人は爆発物の威力はどれくらいだと認識していたのですか」
 証人「自作自演と聞いていたので、ばかにされないというか、ニュースになる程度。それでいてBさんを傷つけない程度」
 検察官「打ち合わせでほかに何か話題に上がったことは」
 証人「打ち合わせに使った地図を…林さんと平田さんのどちらに渡したかは覚えていませんが、地図を2人に渡るようにして、自作自演ということで(爆破を確認する役割の2人は)第三者を装う必要があったので、『別行動で』と伝えました」
 検察官「こたつの部屋での打ち合わせの後、証人はどうしましたか」
 証人「出発する準備です」
 検察官「準備とは」
 証人「変装です」
 検察官「証人はどんな変装をしたのですか」
 証人「背広にコート、あとマスクです。オウムのサマナ(出家信者)と分からないよう、3月に街中を普通に歩いている人のような服装にしました」
 検察官「その後はどうしましたか」
 証人「出発しました。Gさんが運転するマスターエース(ワゴン車)で。Pさんも乗っていました」
 検察官「そのほかの車には」
 証人「林さんと平田信さんも乗用車のはずです」
 《井上死刑囚は、ワゴン車で現場に向かった後、打ち合わせ通りPさんが犯行声明文をポストに投函し、自身が玄関に爆破物を仕掛けたことを説明。3分ほど経過したときに爆竹のような大きな音とともに爆破が起こったと証言した》
 検察官「ワゴン車で現場を後にするときに何か変わったことはありましたか」
 証人「パトカーと遭遇しました。そこでPさんが『日本の警察は優秀ですね』と。Gさんが『まさかここに犯人がいるとは思わないでしょうね』という趣旨の発言をしたので、私もそれに同調しました」
 《検察側によると、井上死刑囚は、林死刑囚らに爆破の確認場所としてマンション前の駐車場が適切だと指示したことについて、ほかの共犯者の公判に証人として出廷した際には証言していなかったという。検察官がその理由を井上死刑囚に尋ねる》
 検察官「駐車場の件についてこれまで証言しなかったのはなぜですか」
 証人「林さんと平田さんは逃亡されていました。弁護士から、まだ逃走されている人のことについては(証言を)最低限にしておくべきだとのアドバイスがあったので、それに準じて証言を避けました。私自身は(現場で2人を)見たという記憶は残っているが、(現場で)話した記憶はないので」
 検察官「では今回の公判ではなぜこの件について証言したのですか」
 証人「平田さんが逮捕されて、(身柄を拘束された)こういう状況なら、私が話したとしても捜査官が本人に確認を取ることもできますから」
 検察官「証人が(教団施設に)戻った後、被告は」
 証人「すでにこたつの部屋にいました」
 検察官「こたつの部屋では何をしましたか」
 証人「まず平田さんから報告を受けました。実際の言葉は覚えていませんが、趣旨としては『爆発は大きかった。人は通っていなかったので、人に被害はないよ』ということを教えてくれました」
 検察官「ほかに被告とやりとりは」
 証人「これも言葉としては覚えていませんが、『やらせにしたって、なんでBさんなの』と」
 検察官「証人は何と答えたのですか」
 証人「『敵対している何者かが教団を狙っているようにしたかった。Bさん殺害が目的ではない』と説明しました」
 検察官「被告が、爆発物を仕掛けることを知らなかった様子はありましたか」
 証人「ありません」
 《その後、検察官の質問は、爆破事件と同じ日に発生した教団総本部に火炎瓶を投げ込んだ事件についての内容へと移っていく》
 《平田被告は時折目線を下に向けることもあったが、ほぼ終始、井上死刑囚の方をまっすぐ見つめながら証人尋問に耳を傾けていた。そんな平田被告の表情をうかがう裁判員の姿もあった》
=(5)に続く
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 
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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(5)】「サリンまいたらどうなるかな」と麻原死刑囚
 産経ニュース2014.2.3 18:06
 《仮谷さんの拉致事件を始め、今回の3事件すべてで指揮者や責任者を務めていたとされる井上死刑囚。男性検察官は教団総本部に火炎瓶を投げ込んだ事件について質問を投げかけている》
 検察官「どのように火炎瓶を作ったのですか」
 証人「コーラの瓶の中を捨てます。そして(刺殺された元最高幹部の)村井(秀夫)さんから受け取っていた混合油を入れ、布きれを入れて作り上げたということです」
 検察官「素手で作業しましたか」
 証人「違います。軍手をしました」
 検察官「それからどうしましたか」
 証人「Pさん(法廷では実名)に渡しました。(Pさんが)素手で取り出したので、指紋が付くと思い、もう1本作ってそれを渡しました」
 《井上死刑囚は犯行声明文から「幸福の科学」と入れていた文字を切り取ったことを説明。法廷内左右の大型モニターに犯行声明文の写真が写し出された》
 《Pさんは火炎瓶を投げると「うまく投げられました」と戻ってきたという》
 検察官「その後、証人たちはどうしましたか」
 証人「現場で別れました。途中で平田信さんから『これでいいんだよね』と電話がありました」
 検察官「証人たちは渋谷へ向かいましたね。なぜですか」
 証人「地下鉄サリン事件に関する村井さんの指示を伝えるためです」
 検察官「その後、自作自演事件で行ったことは」
 証人「Hさん(法廷では実名)に電話しました。午後10時から10時半の間ぐらいです」
 検察官「Hさんは何と」
 証人「『青山(道場)に火炎瓶が投げ込まれて大変なのよ』と言っていました。元顧問弁護士(法廷では実名)に報告したか聞いたら『もちろん』と」
 検察官「どうしてそう聞いたのですか」
 証人「自作自演なので、弁護士がマスコミなどにアピールすると思っていたので、その確認です」
 検察官「その後は」
 証人「麻原(彰晃死刑囚=本名・松本智津夫)に(平成7年)3月20日の午前2時ごろ報告しました」
 検察官「なんと言いましたか」
 証人「『やってきました。P君(法廷では実名)がやってきました』と。麻原は不機嫌な様子でした」
 検察官「なぜ不機嫌だったのですか」
 証人「『サリンは村井に任せておけ』と。私が(地下鉄サリン事件に)タッチしたことに怒っていたという趣旨でした」
 《ここで、休廷が告げられ、約30分後、白いアコーディオンカーテンが引かれて井上死刑囚が入廷した》
 検察官「それでは自作自演事件の経緯について聞いていきます。平成7年の1月1日はどんなことがありましたか」
 証人「読売新聞のスクープがありました。第7サティアン周辺の土壌からサリンが検出され、山梨県警などが動いているというもので、松本サリン事件が教団の犯行と示唆する内容です」
 検察官「それを受けて教団は」
 証人「前の年から強制捜査が危ぶまれていましたが、それに輪をかけて危ぶむようになりました」
 検察官「1月は阪神大震災がありましたが、震災と強制捜査の関係を麻原はどう考えていましたか」
 証人「『阪神大震災があったから強制捜査がなくなったのだろう。次に入りそうになったら石油コンビナートでも爆破すればいい』と」
 《当時は他にも強制捜査の対象となりそうな事件が多数あったが、教団はそれで武装化をあきらめるどころか麻原死刑囚がラジオで11月に宗教戦争を起こすことをほのめかし、幸福の科学の大川隆法総裁へマイクロ波を使った犯行計画も立てられていたという》
 検察官「仮谷事件後、教団はどうなりましたか」
 証人「直後から警察が動き始めました。元顧問弁護士が促して、表面上は捜査に協力しようという姿勢をとっていました」
 検察官「平成7年3月の事件はほかに何がありましたか」
 証人「アタッシェケース事件を起こしました。アタッシェケースに噴霧装置を仕掛けて、(毒素の)ボツリヌストキシンを仕組みます。それを霞が関で噴霧します」
 《検察官は成功した場合の被害について質問しようとしたが、弁護側から異議が出て質問を変更。井上死刑囚は事件後のアタッシェケースは平田被告が創価学会の仕業に見せるため、創価学会関係者に送りつけるはずだったことを述べた》
 検察官「事件の結果はどうでしたか」
 証人「結果は(ボツリヌストキシンが)出ませんでした。私はボタンが押せませんでした」
 《再び弁護側は「平田被告がいた場の話ではない」などとして異議を申し立て、検察官は平田被告がアタッシェケースを回収できなかったことだけを確認した》
 《検察官は7年3月18日に麻原死刑囚が都内から山梨県の旧上九一色村へ向かうリムジンの中で、教団幹部らに地下鉄サリン事件を指示したとされる際のことに質問を移す》
 検察官「リムジンに乗る前はどんなことをしていましたか」
 証人「都内の教団の飲食店でステージの昇格祝いをしていました。私も正悟師に昇格しました」
 検察官「その席ではどんなことを話していましたか」
 証人「麻原からXデーが来るみたいだと。Xデーは強制捜査のことです」
 検察官「元顧問弁護士はなんと」
 証人「『ええ、やはり来るでしょう』と」
 検察官「どうして証人はリムジンに乗ったのですか」
 証人「レンタカーに残っていたEさん(法廷では実名)の指紋を除去することと、Gさん(同)を運転手にする許可を得る相談のためです」
 《車内では元顧問弁護士から麻原死刑囚へ強制捜査の見通しについて話があり、武力革命をいつ行えるか暗に尋ねる質問が出たという》
 検察官「麻原はなんと答えましたか」
 証人「『なあ村井、11月ごろかなあ』と」
 検察官「他にはどんな話がありましたか」
 証人「地下鉄サリン事件の話がありました。麻原が『(サリンを)まいたら強制捜査はどうなるか』と聞いて、私は『遅れるかもしれませんが来るでしょう』と答えました」
 検察官「その後はどうですか」
 証人「『捜査中にまいたらどうなるか』と麻原が言いました。私たちは『止まることはないでしょう』と答えました。具体的なことは決まらずに終わりました」
 《続いて車内では、宗教弾圧を受けているように見せかけるための話題に移った。元顧問弁護士が、教団を擁護していた宗教学者のBさん(法廷では実名)の家に爆弾を仕掛けることを提案したという》
 検察官「証人はどう思いましたか」
 証人「(Bさんでは)距離が遠いので直接狙われた方がいいと思う。それで『青山道場に仕掛けたら』と言いました」
 検察官「麻原はどう言いましたか」
 証人「『Bさんのところに爆弾、青山に火炎瓶を投げればいい』と言いました。具体的なことは決まらずに終わりました」
 《そしてリムジンは上九一色村に到着。麻原が瞑想(めいそう)に入ろうとしたため、井上死刑囚は追いかけて指紋を除去することなどの許可を得た》
 検察官「その後事件の動きはどうでしたか」
 証人「私が自衛隊員にイニシエーション(宗教的儀式)をやっている最中に村井さんが来て『自分がサリンをやるから井上はその前に爆弾と火炎瓶をやってくれ。人選は任せる』と言われました」
 検察官「本人からの指示だと思いましたか」
 証人「麻原からの指示だと思いました」
 《井上死刑囚はBさんの住居について元顧問弁護士の部下から紙を受け取り、その後、倉庫の鍵をとるために東京へ赴き、再び上九一色村に戻った》
 検察官「その後どうしましたか」
 証人「林(現姓・小池泰男死刑囚)さんのところへ行って(サリンについて)聞いてみようと思いました。行くとサリンをまく際の運転手役について悩んでいるようだったので、『村井さんに聞けばいい』と言いました」
 検察官「林さんはどうでしたか」
 証人「行きづらそうだったので『俺も行くから』と言いました」
 《その後、検察官は村井元幹部の場所へ行ってからの話に移そうとしたが、弁護側から地下鉄サリン事件の詳細はこれ以上必要ないと異議。検察官は話題を変えることを了承した》
=(6)へ続く
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【オウム法廷再び 井上死刑囚尋問(6)完】「やる気ないならやめるか」麻原死刑囚からプレッシャー
 産経ニュース2014.2.3 19:54
 検察官「宗教学者のBさん(法廷では実名)の自宅マンション周辺を下見した目的は」
 証人「防犯カメラがないか確認し、ポストの中身も見ました。あまりポストが使われている様子がなかったので、住んでいないのかな、とも思いました。爆発物を置く場所なども確認しました。その後は都内の教団施設に戻って休みました」
 検察官「翌日は何をしましたか」
 証人「午前9時に起きてテレビをつけ、教団に強制捜査が入っていないことを確認しました。P君(法廷では実名)に再度下見に行くように伝え、変装道具も用意させました」
 検察官「再度下見させた目的は」
 証人「昼の様子も知っておくためです」
 検察官「上九一色村(山梨県旧上九一色村)に戻った後は何をしましたか」
 証人「(刺殺された元最高幹部の)村井(秀夫)さんから爆弾や火炎瓶を受け取るために、村井さんを探しました」
 《村井元幹部と合流した井上死刑囚は元教祖の麻原彰晃死刑囚(58)=本名・松本智津夫=に面会に行ったところ、思わぬプレッシャーをかけられたという》
 検察官「麻原に会った目的は」
 証人「Bさんがマンションに住んでいない様子も気になったので、失敗してから報告するよりも事前に伝えておこうかと思いました。麻原は私たちに『やる気がないようだから、やめにするか』と言いました。思わず、2人とも黙りこみました。さらに麻原は『どうだ』と」
 検察官「何と答えたのですか」
 証人「指示に従います、と答えました。村井さんも『もう下見をしてあります』と答えていました」
 検察官「麻原は何か言いましたか」
 証人「『任せる』と。これは『やれ』という意味です。古くから弟子の関係にあるのでわかりました」
 《村井元幹部はすでに決まっていた地下鉄サリン事件の運転手役について、あえて麻原の指示を求めた》
 証人「村井さんは『運転手はどうしましょうか』と聞きました。『やる気がない』と言った麻原に対し、(麻原の機嫌や、その場の雰囲気をとりなすように)あえて村井さんが下手に出たのだと思いました」
 検察官「運転手役に被告は入っていましたか」
 証人「入っていませんでした」
 《はっきりとした井上死刑囚の言葉にも、平田被告は姿勢を変えることなく、伏し目がちに一点を見つめたままだ》
 《井上死刑囚はその後、マンション爆破事件と地下鉄サリン事件の実行役と運転手のペアを伝えたり、地下鉄サリン事件の実行メンバーに東京・渋谷の活動拠点に集合するよう指示を出す。また、爆破事件に向け、爆弾のタイマー実験にも同席するなど、準備を着々と進めていった》
 検察官「タイマーについて、注文をつけていますね。どんな内容ですか」
 証人「記憶では3分間だったと思うのですが、最大限にしてほしいとお願いしました。実験では一度失敗しています。確実に逃げる必要がありました」
 検察官「都内に向かう途中で、サリン事件の下見をしているメンバーから電話がかかっていますね」
 証人「村井さんから電話するように指示があったようです。サリン事件メンバーではない私が、いろいろと指示を出しているので、その内容を信じてもらうための村井さんの計らいだったのだと思います」
 検察官「話題を変えます。被告は平成23年12月31日に自ら出頭してきたわけですが、そのことを聞いてどう思いましたか」
 証人「正直、生きていてよかったと思いました。仮谷さん事件(の裁判)が始まるだろうから、証人として呼ばれたら、今日ここで話したことを伝えようと思いました」
 《井上死刑囚の表情はうかがえないが、午前に続き、再び感極まっているかのような、震えた声がマイクを通じて聞こえる。井上死刑囚はこの日、法廷で懺悔(ざんげ)の言葉を重ね、中川智正死刑囚(51)が仮谷さんを殺害したとほのめかす証言をした。一つ一つの言葉は、約2年前から考えられてきたものだということなのか》
 検察官「死刑執行については、どう思いましたか」
 証人「それどころではないだろうと思いました」
 裁判長「本日の審理はこれで終わります。証人はお疲れさまでした。明日からもまだ続きますからね」
 《午後3時42分、斉藤裁判長が閉廷を告げる。広げられた白いアコーディオンカーテンの向こうから、退廷の準備をする音が聞こえる。井上死刑囚に対する証人尋問の1日目が終わった》
=完
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平田被告公判:井上死刑囚「殺人」証言…仮谷さん長男困惑
 毎日新聞 2014年02月03日 19時20分(最終更新 02月03日 21時10分)
 元オウム真理教幹部、平田信(まこと)被告(48)の裁判員裁判の公判が3日、東京地裁(斉藤啓昭裁判長)であり、元教団幹部の井上嘉浩死刑囚(44)が証人出廷した。仮谷清志さん監禁致死事件(1995年2〜3月)について、井上死刑囚は「平田被告は拉致計画を事前に認識していた」と指摘。中川智正死刑囚(51)から「ポア(殺害)できる薬物を注射したら死亡した」と聞いたとも証言し、事件は殺人だったと示唆した。
 仮谷さんの長男、実さん(54)は閉廷後に記者会見し、井上死刑囚が「事件は殺人だった」と示唆したことについて、「今までの証言は何だったのか。彼の言葉をすぐ信じられるまでには至っていない」と述べた。
 検察官の後ろの席に座った実さんによると、井上死刑囚は証言の際、椅子から立ち上がり、涙ながらに実さんに頭を下げた。「証言したこと自体は感謝するし、一生懸命だったと信じたい」としつつ、「証言(の真偽)を慎重にとらえたい」と重ねた。
 井上死刑囚との対面は、東京拘置所で2004年に面会して以来。「髪の毛に白いものが交じり、10年分、年をとった。頬がたるんでいた」と描写した。
 井上死刑囚と面会を続ける住職の平野喜之さん(50)も傍聴し、「人に罪をなすりつける証言は控えるよう伝えていたが、彼の中では証言したことが真実なのだろう。遺族は翻弄され、苦しいと思う」と語った。【川名壮志】
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再開・オウム裁判:あすから2死刑囚尋問 仮谷さん事件、「殺意」巡る証言鍵に
 毎日新聞 2014年02月02日 東京朝刊
 元オウム真理教幹部、平田信(まこと)被告(48)の裁判員裁判で、東京地裁(斉藤啓昭(ひろあき)裁判長)は3、4日に井上嘉浩死刑囚(44)、5日に林(小池に改姓)泰男死刑囚(56)の証人尋問を実施する。死刑囚の尋問は先月21日の中川智正死刑囚(51)以来。井上、林両死刑囚は平田被告との関係が深く、事件の核心に踏み込む証言が出そうだ。
 井上死刑囚は高校卒業とともに出家。松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(58)から「修行の天才」と呼ばれ、教団「諜報(ちょうほう)省」トップとして多くの非合法活動に関わった。仮谷清志さん監禁致死事件(1995年2〜3月)では指揮役で、拉致現場では平田被告が運転する車に乗った。
 宗教学者宅爆破と教団東京総本部火炎瓶投てきの2事件(同3月)では指揮・実行役を務めた。平田被告の役割について検察側は、爆破事件では爆発の確認と報告、火炎瓶事件では逃走の手助けをしたと指摘している。
 一方、林死刑囚はインド放浪を経て出家し、松本死刑囚の警護などを担当。95年3月の地下鉄サリン事件では、平田被告を実行メンバーから外すよう他の幹部に進言した。爆破事件では平田被告とともに現場で爆発を確認したとされる。
 地裁は中川死刑囚の尋問と同様に、傍聴席と証言台の間に遮蔽(しゃへい)板と防弾パネルを設置するとみられる。【石川淳一、山本将克】
 *遺族への手紙、「殺人」を示唆−−井上死刑囚
 井上死刑囚は2011年、仮谷さんの遺族に「中川死刑囚から『ポア(殺害)できる薬物を点滴したら死亡した』と聞かされた」とする手紙を送り、事件が「殺人」だったと示唆した。確定判決は「仮谷さんは全身麻酔薬の副作用で死亡した」として殺意を認めていない。関係者によると、井上死刑囚は周囲に「自分の裁判では弁護方針と合わずに主張できなかった」と話しているといい、今回の尋問で証言する可能性がある。
 中川死刑囚は先月21日の尋問で検察側からこの点を問われ、「これはないんじゃないかと思った。(事件から)16年もたって、胸を張って言うのはあんまりじゃないか。井上君は考えてほしい」と声を震わせ反論。「うそはついていません」と改めて殺意を否定した。手紙を受け取った仮谷さんの長男、実さん(54)は「井上死刑囚には真実を語ってほしい」と話している。
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オウム平田信被告 第4回公判 〈詳報〉 中川智正確定死刑囚の証人尋問  2014.1.21 Tue.   


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