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『パンドラの約束』 あと10年もして客観的に状況を見られるようになれば、人々は原子力を求めるようになる

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 2014年02月19日18:24 池田信夫blog
パンドラの約束

  パンドラの約束予告編 You Tube

  「原発推進映画」として話題のドキュメンタリーの試写を見た(4月19日から上映)。率直にいって、教科書としてはよくできているが、映画としてはおもしろくない。監督の主張が表に出過ぎていて、観客を引き込む力がない。
 ただ、アメリカの状況はよくわかった。原発は非常に政治的な問題で、民主党が人々の不安を「命か金か」というプロパガンダに利用してきた。これはスリーマイル島やチェルノブイリ事故の恐怖が強かった80年代には大きなインパクトがあり、「チャイナ・シンドローム」などの映画や"NO NUKES"などのコンサートが人気を博した。
 私も当時、NHKで原子力の番組をつくったが、当然ストーリーは反原発だった。「原発は危ない」という話は映画や音楽になるが、推進派の話はならない。この映画のように、論理が必要だからである。映画に登場する多くの人も、最初は反原発の活動家だったが、彼らが「転向」した理由は地球温暖化だという。
 安いが危険な軽水炉が最初に実用化したのは不幸だった。もともと本命は増殖炉だったが、政治的に挫折した。それは技術的な理由というより、プルトニウムを大量生産する核拡散のリスクが原因だった。この映画の推奨するIFRも、アメリカではだめだろう。「シェール革命」で資源輸出国になるアメリカで、そんなリスクを取る理由がない。
 この映画の指摘は、むしろエネルギー自給率が4%しかない日本に当てはまる。OECD諸国の中で安いほうだった日本の電気料金は3・11以降、30%以上も上がった。このまま原発を止め続けたら2倍以上になり、逆進的な「電気税」が貧困層の生活を直撃するだろう。
 日本にイノベーションの余地は少ないが、ビル・ゲイツの進行波炉などの第4世代原子炉を開発しているのは日本メーカーである。この分野では、アメリカを逆転できる可能性もある。あと10年もして客観的に状況を見られるようになれば、人々は原子力を求めるようになるだろう。そのときのために、原子力技術は温存したほうがいい。
 ◎上記事の著作権は[池田信夫blog]に帰属します 
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反原発を放棄した人々 冷厳な事実描いた『パンドラの約束』ロバート・ストーン監督 2014-02-11 | 政治/原発(核兵器) 
 反原発を放棄した人々 冷厳な事実描いた「パンドラの約束」 湯浅博
 産経ニュース 2014.2.11 13:02
 3年前、東日本が大津波で壊滅的な被害を受けたさい、首都圏のサラリーマン諸氏までが「自粛バージョン」であった。テレビCMは地味な映像を流し、夜の巷(ちまた)は閑古鳥が鳴いた。これでは経済が回らず、「自粛不況」で被災地の復興支援もできない。「元気な企業や人は街に出てカネを使おう」とコラムに書いたら、「不謹慎だ」と一部からお叱りを受けた。
 大勢に逆行することを口にするのは難しい。仮の話ではあるが、「原発ゼロ」を訴えた元首相の細川護煕さんや小泉純一郎さんが、都知事選の敗北を受けて「反原発は誤りだった」と容認に転向したらどうだろう。小欄は歓迎するが、支持した人々は裏切られたと激怒するに違いない。
 それでも世界には、公益のために前言訂正に踏み切る勇気ある人々がいる。世界的に著名な環境保護活動家の中から、「やはり原発を推進しないと、地球温暖化や人口増加に対応できない」と転換した人々が出てきたのだ。
 原発問題を題材にしたロバート・ストーン監督は、ドキュメンタリー映画「パンドラの約束」で、そうした環境活動家がエネルギー事情を知るに連れ、原発推進派に転向していく様を描いている。情緒的な感覚から反原発論者になるタレント文化人が多いなか、試写会では見る者に冷厳な事実を突きつけてくる。
 彼らは非難を承知でカメラの前に身をさらし、反原発を放棄することになった経緯を語る。その一人、環境活動家のシェレンバーガーさんは、福島第1原発事故のテレビ映像が米国で流されたとき、茫然自失の状態になったと証言した。反原発の旗手から一転、原発推進に宗旨変えした直後だったからである。
 シェレンバーガーさんだけでなく、同じように原発推進派に転向した英国人作家のライナースさんもまた、福島事故で「パニックになりそうだった」と振り返る。ライナースさんは東日本大震災から1年後に、福島市を訪ねて、その実態を探っている。
 彼らに影響を与えたのは米国環境保護運動の“巨頭”ブランドさんで、エネルギー研究会に参加するうちに、原発こそが地球温暖化の解決手段であるとの結論に行き着く。彼は「数十年にわたって環境保護派をミスリードしてきたことを後悔した」と述べる。
 原子力の利用は1948年に、米国でウランが熱を効率的に発する実験に成功して始まった。米政府は商業化を決意し、「平和のための原発利用」が進む。「夢のエネルギー」が「悪魔」のそれに変わったのは、79年のスリーマイル島の原発事故からだった。ちょうど原発事故を扱った映画「チャイナ・シンドローム」が公開されたばかり。主演女優のジェーン・フォンダが、すぐに反原発運動の先頭にたった時代だ。
 だが、ブランドさんやライナースさんは石油など化石燃料を燃やしていれば、世界で年間300万人が大気汚染で死んでいると強調する。原発は風力についで安全な上に、太陽光は日照時間が足らない。米国の電力の20%が原発で賄われ、その半分がロシアの核兵器廃棄から再利用されるという。
 原発の怖さは誰もが知っている。できれば避けたいが、貧困地帯に病院ができ、エアコンで快適な生活が広がれば、エネルギー使用量は増していく。「核の廃絶」を望まぬものもまたいない。だが、良心的な開発者が手を引いたとして、そうでない核開発者が携われば事態はかえって悪化する。評論家の福田恆存氏は「悪魔は一度地上に出現してしまった以上、二度と地下に戻らぬよ」という過酷な現実を語った。原発も核も、英知と技術を結集してどうコントロールするかにかかる。(ゆあさ ひろし)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 
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 「パンドラの約束
 この、ロバートストーン監督による映画は、まさに“パンドラの箱”を開けてしまった時のように、エネルギーを考えるあらゆる立場の人々にとって衝撃的な内容を持っている。原子爆弾やフクシマ事故は、原子力の安全神話を完全に破壊してしまった。しかし、もしその観念が間違っているとしたら?……観客は、我々が恐れている原子力というテクノロジーこそが、地球を気候変動から守ってくれること、そして途上国に住む何十億人もの人々を貧困から救うということを目撃することになるだろう。
 この映画でストーン監督は、自分自身の環境保護論者としての日々と、映画出演によってキャリアと評判が失墜するリスクを負ってまで“転換”を述べる元・反原発主義者たちを、力強く描写している。また、スチュアート・ブランドを始めとする数多くの環境活動家を紹介するなかで、環境保護論者によくある議論の弱点を追求している。この映画こそ、環境保護を考える際に陥りがちな感情面が優先した賛否論を、合理的・科学的な議論へと転換するための金字塔となるはずである。
 人類はこの数十年の間に、途上国における人々の生活水準の向上のために、現在の2倍どころか3倍ものエネルギーを必要とすることになる。クリーンで二酸化炭素を排出しないエネルギー源が出現しないかぎり、地球の温暖化は免れない。世界はエネルギー枯渇に直面しつつあり、結果的に環境危機をよぶことから地球単位のサバイバルの始まりとなる。この現状に対して、風力と太陽光しかないというジレンマが、環境運動の主だった潮流を完全にバラバラにしてしまった。この問題に正面から向きあったのがこの映画である。3年の歳月を費やして、海外4カ所でのロケを敢行、こと細かく事実調査を行った本作では、化石燃料に代わる唯一のエネルギー源が環境保護派の最も恐れる原子力であることを描いている。
 何の権力に縛られることなく製作されたこの「パンドラの約束」でストーン監督は、環境保護派であるマーク・ライナース氏と、フクシマの立ち入り規制地域にも足を踏み入れて撮影を行った。その後、あのスリーマイル島やチェルノブイリにも赴いた。これまでの反原発論者が示してきた、ヒロシマへの原爆投下や、東西冷戦時に暗い影を落とした核実験の数々が、原子力と核兵器の混同を呼んできたと述べる。作品中では、増え続ける原子力賛成論への転換者たちの話に魅了されるが、監督は特に5人にスポットを当てている。スチュアート・ブランド氏、リチャード・ローズ氏、グイネス・クレイヴンズ氏、マーク・ライナース氏、そして、マイケル・シェレンバーガー氏だ。彼らがなぜ、そしてどうやって転換したかを映画では克明に描いている。さらに、レン・コッホ氏、チャールズ・ティル氏という、原子力に携わるパイオニア的人物の、さらに安全な最新原子炉への挑戦も追い続けた。
 環境保護派のなかでも新世代は、気候とエネルギーの関連性に関して、左派だろうが右派だろうが、原子力利用の是非は避けられない論議だと感じている。有名な神話である「パンドラの箱」では、開けたとたん全ての邪悪なものが霧散してしまう。しかし、忘れてはならないのは、その箱の底には「希望」が入っていたことである。
*上映情報 愛知
 伏見ミリオン座(名古屋市中区栄一丁目4-16 052-212-2437)
上映期間:4月12日(土)〜
HPリンク http://www.eigaya.com/theater/million/
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