刑務所視察
中日新聞夕刊「紙つぶて」2011/08/20Sat.杉 良太郎
15歳の時に刑務所の慰問を始めて、今年で52年になる。日本社会の高齢化が進むにつれて受刑者の高齢化も進み、これが問題になってきている。
もともと高齢者は病弱で、刑務所にいる間にもあらゆる病に侵されていく。介護を要する者が各施設で1%以上いるのが現状だ。食事や排便、体の移動さえできない受刑者の世話は、刑務所しょくいんがしている。介護士になるために刑務所職員になったわけではないが、誰もやる者がいないので仕方なくやる。受刑者の方も申し訳ない気持ちになる。
こういう受刑者にとって、刑期を終え出所することは死を意味する。娑婆に戻っても身寄りがない。身内がいても迷惑をかけられているから引き取らない。受刑者はそれを知っているから出たがらない。担当官に「何とか置いてくれ」と頼む。「2度と戻ってくるな」と言われると、担当官をみらみつけ「鬼」と言って出て行くが、またすぐに罪を犯して戻ってくる。
一方、受刑者の中には、社会に出て更生したい者も多くいる。そこで私は、刑務所内に「準介護士制度」をつくり、希望に応じて受刑者が受刑者を介護することを提案したい。出所後、正規の介護資格を取り直すことで受刑者の就職難を緩和できるし、社会問題の介護士不足の改善にもつながると思う。何より、刑務所職員が本来の仕事に専念でき、刑務所が介護施設にならないようにすることが大事なことではないか。(法務省特別矯正官僚監、歌手・俳優)
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◆「岡山刑務所」塀の中の運動会/塀の中の暮らし
◆「岡山刑務所」塀の中の運動会/塀の中の暮らし2011-01-05 | 死刑/重刑/生命犯 問題
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刑務所内に「準介護士制度」をつくり、希望に応じて受刑者が受刑者を介護する/杉良太郎
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