バイデン副大統領 22日来日
NHK8月22日 5時18分
アジアを歴訪しているアメリカのバイデン副大統領は、22日から日本を訪れ、滞在中、東日本大震災の被災地を訪れるほか、菅総理大臣と会談して、復興支援に引き続き取り組んでいくアメリカの立場を伝えることにしています。
バイデン副大統領は、6日間にわたって中国を訪れ、習近平国家副主席など指導部との一連の会談をこなし、モンゴルに立ち寄ったあと、22日夜から24日まで日本を訪れます。バイデン副大統領が日本を訪れるのは、就任後初めてで、23日は菅総理大臣と会談し、大震災からの復興や東京電力福島第一原子力発電所の事故への対応を巡って意見を交わすことにしています。そして、復興支援に引き続き取り組むアメリカの立場を伝える方針です。さらに宮城県の被災地を訪れ、アメリカ軍ががれきの除去などに当たった仙台空港で、被災者らに向けてメッセージを述べる予定です。今回の訪問は、来月上旬に予定されていた菅総理大臣とオバマ大統領の会談に先立って行うことで、政府要人の活発な交流による強固な日米同盟をアピールするねらいもありましたが、菅総理大臣が今月末にも退陣する意向を示したことで、中国訪問後の儀礼的な訪問にとどまる形となります。
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仏大統領が25日に北京訪問、胡錦濤・中国国家主席と会談へ
2011年08月22日[パリ21日 ロイター]
フランスのサルコジ大統領は25日に北京を訪問し、中国の胡錦濤国家主席と会談する。会談では、最近の世界の金融市場の混乱について話し合われる可能性が極めて高い。
フランスは今年、20カ国・地域(G20)の議長国を務めている。
サルコジ大統領は、フランスの海外領土である南太平洋のニューカレドニアに向かう途中で中国に立ち寄る。
大統領官邸によると、会談は現地時間午後5時(日本時間午後6時)に行われ、その後、大統領と国家主席は夕食を共にする。
サルコジ大統領の中国訪問は今回が6度目。
両首脳は仏独首脳会談で提案された金融取引税の導入や、G20の議題などについても話し合う可能性がある。
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中国の次期トップ2人が、国際的な注目浴びる
WSJ Japan Real Time2011年8月22日10:49 JST
中国の習近平国家副主席(58)と李克強副首相(56)は、来年から新指導部トップとして中国を率いることが有力視されている。この2人が先週、国際的なスポットライトを浴び、2人が現在の指導者といかに異なるかを垣間見せた。
習副主席は、次期共産党総書記(国家主席)に内定しているが、先週、訪中したバイデン米副大統領と数回会談した。帰国前日の21日には、四川省の省都・成都市のレストランで非公式の夕食を共にしたり一緒にお茶を飲んだりした。
一方、李副首相は香港を訪問し、英語でスピーチを行うなど次期首相候補としての能力を誇示した。
習副主席も李副首相も、こうした行事で共産党の路線に沿って発言しており、10年で一度の指導部交代を控えて2人を引き立てる狙いがあったとアナリストや外交筋はみている。ただし、党の路線に沿った発言とはいえ、2人とも多少オープンで世界的な指導者のスタイルを帯びていたと指摘する向きもいる。
習副主席の振舞いは、とりわけ米当局者の関心を引いた。バイデン副大統領とかなりの時間をともに行動したが、同副主席がこのように米政府当局者とこれほど長時間一緒に過ごしたことはない。また、来年まで米国を公式訪問する予定はないからだ。
米政府高官は、習副主席が米政府債務上限交渉をめぐる最近の舞台裏の駆け引きなど米国の政治に強い関心を示したと述べた。バイデン副大統領との先週の最初の会談は予定より45分間も延長された。
あるオバマ政権高官は「習氏は何を伝えたいか極めて明確なアイデアを持っておりアプローチが戦略的だった」との見方を示した。また同僚に対し自信に満ちた態度を示していたという。
また、「バイデン副大統領と同席するのを非常に楽しんでいた」と語った。同高官はまた、「習氏が米国は今後も太平洋の大国としての役割を演じ続けるとの持論を展開した」と語った。
21日には習副主席とバイデン副大統領は外交上の慣例を破って、2008年に大地震で最大の被害を受けた四川省の都江堰を一緒に訪れた。
習副主席は2009年にメキシコを訪問した際、先進国が中国を批判することへの不快感を示した発言が注目されたが、ウィキリークスが公表した外交電では駐中国米大使にハリウッド映画が好きだと話したことが明らかになるなど、これまで米国に対する姿勢は不透明だった。
一方、李副首相の香港訪問も同様に、同副首相をスポットライトを浴びさせる試みだったとアナリストはみている。同副首相は18日、香港大学で講演した際、最後の部分で英語を使い、これがとりわけ中国のネット利用者に注目された。現在の最高指導者たちに英語を使える人はほとんどないからだ。
李氏は、習氏とともに2007年に共産党政治局常任委員となって以降、2013年に温家宝首相の後を継ぐとみられてきた。同氏は温首相と親密とみられている。
ただ最近では、「王岐山副首相(金融担当)のほうがもっと有能な首相候補だ」という声も金融界を中心に強く出ている。最近、共産党幹部たちと話をしたある消息筋は「温家宝のような人物がまた登場するのを望まない人々が多い」と語った。
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対立を抱えながら共存の道を探る米中
日本経済新聞2011/8/20付
米国のバイデン副大統領が中国の習近平国家副主席の招きで訪中している。習副主席は来年秋に胡錦濤国家主席の後を継ぐ最高指導者になるとみられている。地方視察を含め足かけ6日、副大統領に同行する予定で、次の指導者として対米関係重視の方針を鮮明にしたといえよう。
米国債の格下げなどで世界的に金融市場が混乱している。いまや米中は世界1、2位の経済大国である。副大統領との会談で習副主席が「マクロ政策協調を強化する責任がある」と表明したのは当然だろう。
中国は米国債の最大の保有国。リスクが高まった米国債をこれ以上買い増したくない半面、保有する資産の価値を保つためにも米国債の売却を進められない微妙な立場だ。
今回、習副主席が米国の財政政策を直接批判した形跡はない。中国では米国の財政政策への不満がくすぶっているが、これ以上市場を混乱させたくないというのも本音だろう。
米国にとって中国は輸出市場として重要になった。米国内では輸出や投資の拡大の妨げになっている中国側の障壁への不満が強い。米側の説明では副大統領は人民元相場や知的財産権の問題を取り上げたのに、中国側の発表には一切出てこない。こうした問題での食い違いの表れであり、対立が続くことも示唆する。
米中は世界で1、2位の国防費を支出する軍事大国でもある。しかも政治体制の違いやアジアでの主導権争いなど火種は多い。両国が「戦略的な判断ミス」を避けるため交流を深めるべきだと副大統領は述べた。当たり前だが重要な外交の姿勢だ。
もちろん、米中が一本調子で連携を深めるわけではない。米国は今、中国の台頭に対応するため世界戦略の重心を中東からアジア・太平洋へと移しつつある。習副主席に対しバイデン副大統領は、アジア太平洋地域で米国が引き続き主導的な役割を果たしていく考えを伝えた。
一方、習副主席は世界的な問題では米国と共同で「建設的な大国」の役割を担いたいと表明した。具体的な意味は不明だが、かつて中国軍の高官が米軍高官に、太平洋を東西に二分して両軍で管轄を分け合おうと提案したことを考えると、単純に協調姿勢を示すわけではなかろう。
楽観はできないが、中国が本当の意味で「建設的な大国」になろうとするのなら、日本を含めた世界にとって利益だ。中国の隣国として、日本は米国以上に対中関係の深化を考える必要がある。同時に、他の友好国とも手を携えて米国のアジア関与を支えていかなければならない。
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金総書記が9年ぶりロシア訪問、金正恩は随行名簿に含まれず
中央日報/中央日報日本語版 2011年08月22日08時32分
北朝鮮官営メディアが21日に公開した金正日(キム・ジョンイル)のロシア訪問随行員は計12人。後継者の三男・金正恩(キム・ジョンウン)は随行名簿に含まれなかった。
名簿には含まれていないが、金玉(キム・オク)が5月の中国訪問に続いて今回も随行した。金玉は金正日の夫人・高英姫(コ・ヨンヒ)が04年に死亡した後、ファーストレディーの役割をしてきた。金正日の健康問題を管理している可能性がある。金玉は今回もウグイス色のスーツを着て目を引いた。
キム・ヨンジェ駐ロシア大使とシム・グクリョン・ナホトカ総領事を除いた10人のうち経済専門家は5人で、今回の訪問は朝ロ間の経済問題に焦点が置かれていることを表している。
労働党秘書で随行員に含まれた太鍾守(テ・ジョンス、総務担当)は、大安(デアン)重機械連合企業所の責任秘書などを務めた実物経済専門家。また朴道春(パク・ドチュン、軍需担当)は軍需分野に明るい。それぞれ咸鏡南道(ハムギョンナムド)と慈江道(ジャガンド)の党責任秘書を務め、昨年、金正日に抜てきされた。
党機械工業部長の朱奎昌(チュ・ギュチャン)は核・ミサイル開発などの責任を負う軍需専門家。政府当局者は「ロシアからの軍事武器導入が議論される可能性もある」と述べた。オ・スリョン咸鏡北道党責任秘書はロシアと接する地域の責任者資格で随行したとみられる。職権乱用などで07年4月に首相を解任され、順川(スンチョン)ビナロン連合企業所の支配人になった後、昨年、党第1副部長に復帰した朴奉珠(パク・ポンジュ)も随行員に含まれた。
金正日の妹婿である張成沢(チャン・ソンテク)国防委副委員長と金養建(キム・ヤンゴン)党秘書は大豊(デプン)グループなど対北朝鮮投資誘致を担当しているという点で関心を引く。一部では、党対南秘書の金養建がロシア天然ガスパイプラインの南北貫通問題のために随行員に含まれたという観測もある。
姜錫柱(カン・ソクジュ)副首相と金桂寛(キム・ケグァン)第1外務次官は6カ国協議の調整を担当するとみられる。軍部では金英春(キム・ヨンチュン)人民武力部長が唯一含まれた。
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クローズアップ2011:金総書記、9年ぶり訪露 北朝鮮、バランス模索
◇対中依存、低減狙う
ロシア大統領府と北朝鮮の朝鮮中央通信は20日、北朝鮮の金正日(キムジョンイル)総書記がメドベージェフ大統領の招請を受けてロシアの非公式訪問を開始したと発表した。東シベリアのウランウデで23日前後に開かれる見通しの首脳会談では、核問題をめぐる6カ国協議の再開問題などが話し合われるとみられる。南北、米朝の対話が進む中、ロシアと北朝鮮が急接近した形で、朝鮮半島を取り巻く構図に変化が生じる可能性が出てきた。【モスクワ田中洋之、北京・米村耕一】
20日午前、金総書記を乗せた特別列車が国境の豆満江(トゥマンガン)を越え、ロシア側に入った。現地メディアによると、特別列車は17両編成で、うち3両は総書記専用の執務室と寝室、通信室、残りは随行員が使っているという。ハサン駅では歓迎式典が開かれ、イシャエフ極東連邦管区大統領全権代表やダリキン沿海地方知事ら政府要人が出迎えた。特別列車にロシア側の用意した4車両が連結され、イシャエフ全権代表も同乗。約3700キロ先のウランウデに向けシベリア鉄道を走り始めた。
金総書記が9年ぶりのロシア訪問に踏み切った背景には、対中依存度が極端に高まる対外関係を多様化させたいとの狙いがあるようだ。こうした「バランス外交」は北朝鮮が伝統的に取ってきた手法でもあり、6カ国協議再開に向けて交渉を有利に進めるための戦略のようだ。
北朝鮮とロシアの経済関係強化は徐々に進められてきた。
北朝鮮が「経済特区」として力を入れている羅先(ラソン)特別市を8月中旬に訪問した中朝貿易関係者は、ロシアからのトラックが資材を積んで市内を多数行き来しているのを目撃した。鉄橋補修工事などもロシア企業が請け負っていたという。
貿易や経済協力の規模は対中関係が圧倒的だ。ただ、中国には明確に北朝鮮を改革・開放に誘導する狙いがあり、インフラ投資などの経済協力もそれが前提だ。これに対しロシアは、中国のような意図は強くなく、北朝鮮側に一定の便宜を図ることが少なくないという。「重油なども中国は安くしないが、ロシアは特別価格で売ってくれる」(北朝鮮当局者)という例もある。
6カ国協議は7月に南北、米朝が対話し、韓国や中国が提案していた「3段階案」に沿った前進がみられている。北朝鮮は米韓が26日までの予定で実施している軍事演習に激しく反発しているものの、一方で朝鮮戦争時に行方不明となった米兵の遺骨発掘作業再開をめぐる米朝協議に前向きな姿勢を見せている。対話を断ち切る考えはないようだ。
◇ロシア「6カ国」へ存在誇示
ロシアが金総書記を招請したのは、来秋に極東ウラジオストクでロシアが初めて主催するアジア太平洋経済協力会議(APEC)の成功に向け、北東アジアでの発言権を高めておきたいという思惑があるようだ。
00〜02年には当時のプーチン大統領(現首相)が金総書記と計3回会談するなど、ロシアは北朝鮮に対する一定の影響力を持っていた。だがその後、首脳の接触は途絶え、08年にメドベージェフ大統領が就任した後も事態打開は図られず、6カ国協議の枠組みでも中国や米国、韓国に比べ、ロシアの影響力は極端に低下していた。
ロシアはAPECを極東発展につなげる一大事業と位置づけ、大統領が6月に現地を視察するなど国家を挙げて準備に取り組む。APEC成功には、朝鮮半島情勢の安定が不可欠であり、今回の金総書記招請を契機に緊張緩和の道筋をつけたいところだ。
また、ロシアはサハリン産天然ガスを北朝鮮経由で韓国に送るパイプライン構想に意欲をみせる。ただ、北朝鮮経由は「政治的リスクが高い」との懸念が強く、ロシアの政府系天然ガス企業「ガスプロム」は、韓国に直結する海底パイプライン敷設▽液化天然ガス(LNG)に転換して韓国にタンカーで輸送する−−という代替案を検討している。
今回開催が見込まれる首脳会談では、このパイプライン構想も主要議題となりそうだ。北朝鮮にはパイプライン通過料として年間1億ドル以上の利益があるとの目算があり、首脳会談を通して一挙に具体化させたい考えと見られる。両国は既に実務接触を繰り返しており、首脳会談での一定合意を目指して、ぎりぎりの折衝が続けられている模様だ。
毎日新聞 2011年8月21日 東京朝刊
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〈来栖の独白〉
金総書記の(主に経済問題について話し合う)ロシア訪問、そして米国バイデン副大統領の中国訪問という大きな動きを、日本のメディアは小さな報道にとどめている。相も変らぬ「なでしこ」のその後と川下りの船の転覆等々、3面記事ばかりが賑わう。菅政権居座り中は国際社会から相手にされないという事情はあるにせよ、メディアが国際社会の動向に目を向けなくなって久しい。いや、国際社会にばかりではない。国内の政治の深層や福島第1原発の事故・放射能を取り巻く状況についても報道しない。「我欲」と「エンタメ」の国になってしまったか。
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◆国民栄誉賞=スピンコントロール(政府が、その政権運営、権力維持、情報管理のために行うメディア戦略)2011-08-04 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
国民栄誉賞と10シーベルト――あまりに幼稚な日本政府のスピンコントロール
Diamond online『週刊上杉隆』2011年8月4日 上杉 隆
結局、なでしこジャパンへの国民栄誉賞の授与が決まった。先週のコラムでの提言は徒労に終わった。政府の厚顔無恥、協会の権威主義には改めてあきれてしまう。
繰り返しになるが、今回の受賞は、団体としては初、これまでは長期にわたる実績を認められた個人にのみ贈られたき同賞が、一度の世界一で、まだ発展途上の選手たちに授与されたという異例のことになる。
3・11震災後の日本に勇気を与えたというのが主な受賞理由だそうだが、職業柄、素直に喜べない。私はひねくれているのだろうか。
これも繰り返しになるが、なにしろ、チーム団体での世界一ならば過去にも多くの例があるはずだ。近年でもWBCでの世界一、女子ソフトボールでの世界一、枚挙にいとまがないではないか。
他とのバランスで考えれば、内閣総理大臣顕彰などが妥当ではなかったか。その考えはいまなお変わらず、政府が国民栄誉賞を持ち出してきた背景を考えると、暗澹たる気持ちになる。これはのちに説明しよう。
*日本のメディアだけが扱わない言葉「スピンコントロール」
それにしても、案の定だが、大手メディアは今回の受賞を手放しで褒め称え、報じ続けている。そう、それが実は政府のスピンコントロールである可能性が高いにもかかわらず、一切そうした点への検証はない。相変わらず、おめでたい人たちである。
政府が、その政権運営、権力維持、情報管理のために行うメディア戦略をスピンコントロールという。情報統制の基本中の基本で、もはや世界中の国では常識となってさえいるこの言葉を、日本のメディアだけが扱わない。
米国ではベトナム戦争の70年代、そして冷戦末期の80年に、メディア統制のために盛んに語られた政治用語のひとつでもある。実際、ホワイトハウスの記者会見場は“スピンルーム”とも呼ばれ、日常的に、記者たちが政府のスピンを警戒する空気ができている。
政治権力とメディアの緊張関係の有無を確認する際、スピンという言葉が多用されだしたら、政府の不健全な目論見が存在するというシグナルにもなっている。つまり、それほど米国の政界やメディア界においては、一般化されている用語なのだ。
英国でも同じような状況だ。いや90年代以降は、英国こそスピンコントロール大国となり、政府とメディアの数々の戦いが見られた。スピンドクターのアラステア・キャンベル首相補佐官へのニュースの扱いだけをみても、スピンに対するメディア側の警戒ぶりがわかるというものである。なにしろ、彼は、英国では、スピンによってイラク戦争を開戦させた男として認識されているほどだ。
いずれにしろ、そうしたスピンは世界中の政府内で実行され、また世界中のメディアやジャーナリストたちが、その目論見と戦っているというのが現状なのである。そう、世界で唯一、記者クラブのある日本を除いては――。
断言しよう。なでしこジャパンへの国民栄誉賞は、日本政府のスピンである。しかも、世界のレベルからみたら、あまりに単純で幼稚なスピンコントロールである。
だが、日本のメディアはその程度のスピンすら見抜けない。きっと、よほど愚鈍の集まりなのだろう。なぜならば、仮にスピンだと知っていて報じていないのならば、相当悪質な集団ということになる。それは次のニュースで明らかだ。
*国民栄誉賞のリークと同時に何が起きていたか
政府が、なでしこジャパンへの国民栄誉賞検討のリークをはじめた8月1日、何が起きたか考えてほしい。それは、世界中の科学者たちを震え上がらせる、とんでもないニュースとして、日本でも報じられている。
〈東京電力は1日、福島第1原発1、2号機の原子炉建屋の西側にある排気塔下部の配管の表面付近で、計測器の測定限界に相当する事故後最高値の毎時10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上もの高い放射線量を計測したと発表した――(以下略)〉(毎日新聞)。
新聞・テレビはこの恐ろしいニュースをこの日以降、十分に報じたとはいえない。10シーベルトという致死量を軽く上回る放射線検出の大ニュースは、国民栄誉賞という人体に何の影響もないどうでもいいニュースに取ってかわってしまった。
とくに民放テレビは、このニュースを朝から晩まで流しつづけ、政府のスピンに自ら協力しているかのようである。
3月、筆者は、測定器の不備による作業員への被曝の可能性を危惧して、その安全管理と健康調査の是非を公開するよう、東京電力の記者会見で繰り返し質問した。
当時、東京電力は1シーベルト以上の放射線を測る機器はないと断言し、2号炉外のピット周辺で計測した作業員の健康調査の結果すら発表しようとしなかった。
ところが、ふたを開けてみれば、10シーベルトである。しかも、きちんと測れる機器があるではないか。東京電力はまたしても記者会見でうそをついていたのである。
3月以降、作業に携わった作業員はのべ何万人にも上る。その作業員の被曝の可能性は否定できない。早急な検査が求められる。
なにしろ10シーベルトを超える放射線が検出された場所の近くで、鉛などの防護服や遮蔽壁などを使わず、彼らは普通に作業してきたのだ。
しかも、3桁の作業員の行方がわからないという。いったい政府はその責任をどう取るつもりなのか。また、メディアはなぜ、この人類史上、類を見ない大ニュースを大きく扱わないのか。
なでしこも世界一ならば、10シーベルト超の検出も世界一である。せめて同程度に報じて、国民に知らせるべきではないか。政府のスピンに甘んじて乗って、自らの仕事をサボっている場合じゃないのである。