認知症で行方不明 1年で1万人近くに
NHK NEWS WEB 4月16日 19時00分
認知症やその疑いがあり、「はいかい」などで行方不明になったとして警察に届けられた人が、おととし1年間に全国で延べ1万人近くに上り、このうち死亡が確認されたり行方不明のままだったりする人が合わせて550人を超えることが、全国の警察本部への取材で分かりました。
こうした実態が明らかになるのは初めてで、専門家は「まだまだ氷山の一角で、国は詳しい分析を行い有効な対策を打ち出す必要がある」と指摘しています。
NHKは、ことし2月、おととし1年間に認知症やその疑いがある人が「はいかい」などで行方不明になったケースについて全国の警察本部を対象にアンケート調査を行いました。
その結果、行方不明になったとして警察に届けられた人は全国で延べ9607人に上ることが分かりました。
このうち、川に転落したり交通事故にあったりして死亡が確認された人は351人に上りました。
さらに、その年の末の時点でも行方不明のままの人も208人いたことが分かりました。
都道府県別で死者数が最も多かったのは大阪で26人、次いで愛知が19人、鹿児島が17人、東京が16人、茨城が15人となっています。
行方不明のままの人の数は愛媛が最も多く19人、次いで愛知が17人、兵庫が16人、東京が15人、大阪が14人となっています。
警察への届け出はいずれも延べ人数で、家族などから通報があれば原則受け付けている大阪が最も多く2076人、次いで兵庫が1146人に上りましたが、最も少ない長崎で7人、山梨が8人と大きな開きがありました。
正式な届け出前に保護されたり死亡が確認されたりする人もいるほか、神奈川、千葉、埼玉の3つの警察本部では、いち早く捜索を行うため、正式な届け出前に電話などでの連絡と同時に一時的所在不明者として受理する制度もあり、実際の死者や行方不明者の数はさらに多いとみられます。
こうした実態が明らかになるのは初めてで、認知症の問題に詳しい認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子部長は「今回明らかになったのはまだまだ氷山の一角で、今後、認知症による高齢者は増え『はいかい』の問題はより深刻化していくことが予想される。国は、正確な実態を把握するとともに詳しい分析を行って、有効な対策を打ち出していく必要がある」と話しています。
*はいかい 国の施策は
「はいかい」は認知症の症状のひとつです。
自分のいる場所や時間の見当がつかなくなる認知機能の障害が主な原因とされ、長年の生活習慣などと結びつき、いろいろなパターンの「はいかい」を引き起こすとされています。
初期のころは、方向感覚が薄らいでも周辺の景色をヒントに道を間違えないで歩くことができますが、暗くなると道に迷うこともあります。
症状が進行すると、近所で迷子になったり、夜、自宅のトイレの場所が分からなくなったりするほか、到底歩いていきそうにない距離を歩いて出かけようとすることもあります。
さらに不安や緊張などが加わるとその傾向が一層強くなり、自宅で暮らし続けることが難しくなるケースもあります。
国は、認知症になっても病院に入院せずできるだけ自宅で暮らし続けられるよう、訪問介護や訪問看護のサービスの充実やグループホームなどの施設の整備を進めています。
さらに行方不明になった場合、警察や行政、それに地域が連携して地域ぐるみで捜す「SOSネットワーク」と呼ばれる取り組みも行われています。
この取り組みは、平成7年警察庁が全国の警察本部に呼びかけたことをきっかけに全国的に広がり、厚生労働省も自治体に財政支援をするなどしてネットワーク作りを促しています。
しかしネットワークの中にはほとんど稼働していないケースもあり、認知症の人が安心して外出できる街をどのように実現していくのか課題となっています。
*おととし時点で高齢者の15%と推計
厚生労働省の研究班によりますと、国内の認知症の高齢者はおととしの時点で462万人に上り、高齢者の15%に達すると推計されています。
また、認知症の予備軍とされる「軽度認知障害」の高齢者は400万人に上ると推計され、国内の認知症とその予備軍の高齢者は合わせて860万人余り、高齢者の4人に1人に上っています。
厚生労働省によりますと、このうち介護サービスを利用する認知症の高齢者は305万人と推計されています。
高齢化が進むにつれて今後も増え続けると予測されていて、来年には345万人、6年後には410万人、団塊の世代が75歳を迎える11年後、2025年には470万人に増加する見通しです。
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認知症と気付かぬうち行方不明になるケースも
NHK NEWS WEB 4月16日 22時03分
認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明となる人が年間1万人近くに上っている問題で、NHKが行方不明になった人の家族などを取材した結果、周囲の誰も認知症だと気付いていない段階で行方不明となり、なかには死亡して見つかる人も出ていることが分かりました。
認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして警察に届けられた人は、おととし1年間に全国でおよそ9600人に上り、このうち351人の死亡が確認されています。
NHKは詳しい実態を調べるため、過去5年間に全国で行方不明になったとして警察や自治体に届けられたおよそ400人について取材しました。
このうち、家族や介護関係者などから当時の状況について詳しく取材できた60人を分析した結果、およそ10%に当たる少なくとも7人が、家族など周囲の誰も認知症だと気付いていない段階で行方不明になっていたことが分かりました。
なかには死亡したり今も見つからなかったりする深刻なケースも3人いました。
いずれの人も行方不明になってから家族が振り返ってみると、親戚の名前が分からなくなったり、ごみ捨て場所を間違えたりするなど、認知症の前兆のような行動があったということです。
認知症に詳しい本間昭医師は「はいかいはある日突然起こるのではなく、はいかいに至る前には認知症の進行を示すいろいろなサインが現れている。早く治療すれば徘徊のリスクを減らすことができるので、ふだんの生活で少しでもおかしいと気付くときがあれば、年のせいだと片づけずに早く受診してもらいたい」と話しています。
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