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認知症 事故訴訟 大府市の認知症の男性が電車にはねられた…JR東海が遺族に賠償を求めた訴訟

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認知症 事故訴訟(上) 介護の家族ら 動揺と不安
 中日〈東京〉新聞 2014年4月16日
 愛知県大府市の認知症の男性=当時(91)=が電車にはねられたのは家族が見守りを怠ったからだとして、JR東海が遺族に電車の遅延などの賠償金約七百二十万円を求めた訴訟の控訴審判決が二十四日、名古屋高裁で言い渡される。昨年八月、名古屋地裁がJRの請求を全面的に認めた判決は、認知症の人を在宅介護する家族らに衝撃を与えた。家族らの現状と、芽生え始めた地域での見守りを二回に分けて伝える。
 「夜中でも出ていくので気が休まらない」。認知症の夫(87)と二人で東京・多摩地方に住む女性(80)は語る。二月下旬の午前四時ごろ、がちゃりと音がして目が覚めた。玄関の鍵を開け、夫が出ていったのだ。既に夫の姿はなく、行き先も分からない。
 連絡を受けて捜し回った息子が午前六時、約一キロ離れた駐車場に止めてあった他人の車の中で、震えているのを見つけた。以前、商売をしていた店の駐車場だった。二年前、行方不明になった経験から、ベルトにつける衛星利用測位システム(GPS)端末を市から借り、防犯会社に捜索を頼む対策は講じていたが、パジャマ姿での外出対策は盲点だった。以後、女性は玄関の鍵を二つ増やして、三重にした。「時間が稼げると思って」
 夫が脱出を試みることはないが「いつひょいと出ていくかと思うと心配。判決は、人ごとでない」と女性は話す。
 「認知症の人と家族の会」石川県支部の井沢恵美子代表(70)は、「認知症の人が出歩くのは必ず目的がある」と指摘。徘徊(はいかい)に悩んだ家族が、自分と認知症の人の手を縄でつなぎ、一緒の布団で寝ていても、縄と施錠を外して出ていった事例や、すべての出入り口に施錠をしたら、小さなトイレの窓から飛び降りた事例もある。
 井沢さんは「どんな思いで出ていこうとしているのかを、本人の目線で考えなければいけないが、家族は介護にくたくたでその余裕がない」と話す。

 同会三重県支部の下野和子代表(62)によると、昨年八月の判決直後、認知症の人を介護する家族から不安を訴える電話が三件、相次いだ。夫を一人で介護する七十代の女性は「うちも同じことになったらどうしよう」と吐露。「子どもには心配をかけたくない」と一人で悩み、電話してきた。
 昨秋、津市で開いた会員の集いでも、介護する家族の監督責任を重くみた判決に「家族にとって、閉じこめておけというに等しい」といった意見が出た。
 下野さんは「徘徊を百パーセント予見し、二十四時間監視するのは不可能。介護する家族は皆、経験的にそれを知っている。地域や社会の支えが必要」と話す。
 <認知症列車事故訴訟> 名古屋地裁判決によると、男性は2007年、同居する当時85歳の妻がまどろんだ間に外出し、大府市のJR共和駅の線路に入り、電車にはねられ死亡した。地裁は認知症の男性の徘徊を妻や長男は予見できたとして注意義務違反を認め、JR東海が求めた賠償全額約720万円の支払いを命じた。
 ◎上記事の著作権は[中日〈東京〉新聞]に帰属します
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認知症 事故訴訟(下) 地域で見守る仕組みを
 中日〈東京〉新聞 2014年4月17日
 「こんにちは。今日は空き缶の日と違うで、捨てたらあかんよ」
 三重県伊勢市に隣接する同県玉城町で三月下旬、認知症の人を支援している谷口恵津子さん(60)は、町内の集会所で患者役の女性に話し掛けた。
 認知症の人との接し方を町民に学んでもらう「徘徊(はいかい)SOSネットワーク」の講座。「笑顔で、前から、目を合わせて、優しく」。谷口さんが実演後、参加した三十人に“こつ”を伝授した。
 高齢者の徘徊を正しく理解し、気になる高齢者には声を掛けて、保護してもらう。認知症の人と家族を支える町の自主活動グループ「サポーターさくら」が昨年始めた。二地区で実施し、小学生からお年寄りまで百三十人が受講した。
 原点は「お互いさま」の心。「目の前の認知症の人は、将来の自分かもしれない。そのときに自分がしてほしいことをして、役に立ちたい」と谷口さん。目指すのは「だれもが安心して徘徊できる町」だ。
 同町の地域包括支援センター職員、野口美枝さん(49)によると、介護保険施行後、認知症の高齢者が行方不明となり、側溝や竹やぶで凍死するケースが町内で三件あった。「介護保険だけではカバーしきれない。地域全体で見守る力が必要」。さくらは二〇〇八年、認知症を理解し、地域で支援する町の「認知症サポーター」養成講座の受講生らがつくった。
 声掛けのほか、認知症の高齢者の通院に付き添ったり、同センターの介護予防事業に協力したり。一二年には実話をもとに、認知症の人への対応の仕方を寸劇で啓発するビデオを六種類作成。毎日、町のケーブルテレビで放映されている。
 野口さんによると、行方不明の高齢者を町民が保護する例も。町では同報無線で行方不明者の特徴を知らせ、協力を呼び掛ける仕組みはあるが、その前に住民が異変に気付き、保護するケースも少なくない。

 二十四日に名古屋高裁で控訴審判決が言い渡される、愛知県大府市の認知症の男性による列車事故が起きたのは〇七年。昨年四百七十万人を超えた認知症サポーターは当時約四十五万人。その後、玉城町のような取り組みが現れた。
 協力者の携帯電話にメールで行方不明者の特徴を配信し、捜索に協力を求める仕組みが出始めたのは、この五、六年のことだ。大府市は〇九年に愛知県で初めて配信システムを導入。一一年に導入した名古屋市では、一年半で六十六件の捜索の依頼があった。
 名古屋市社会福祉協議会の瑞穂区東部・西部いきいき支援センターは二月、徘徊対策の冊子「ひとり歩きさぽーとBOOK」をまとめた。衛星利用測位システム(GPS)機能付きの携帯電話を持ってもらおうと、携帯電話に孫の写真のシールを貼るなど、具体的なアドバイスを盛り込んだ。昨年八月の地裁判決で家族の不安が増していると感じ、作成を急いだ。
 「冊子で、認知症の人を地域で見守る意識が高まれば」と担当者は話す。内容は同センターのホームページ(センター名で検索)で閲覧できる。
 (この連載は佐橋大、山本真嗣が担当しました)
 ◎上記事の著作権は[中日〈東京〉新聞]に帰属します
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