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集団的自衛権 第3部 越えるべきハードル 歪な一国平和主義見直しへ 自衛隊は救出に行けるのか

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【集団的自衛権 第3部 越えるべきハードル(上)】いびつな一国平和主義見直しへ「パネルで勝負する」 首相8年越しの決意
 産経ニュース 2014.5.16 08:07
 「もはやどの国も、一国のみで平和を守ることはできない。これは世界の共通認識だ」
 安倍晋三首相は15日夕の記者会見でこう強調した。日本の安全保障政策は、米国に依存しながら米国は守らないといういびつな「一国平和主義」からの大きな転換期を迎えた。
 安倍首相は記者会見で、現在は政府の憲法解釈が禁じる「(海外で起きた紛争から逃げる)邦人輸送中の米輸送艦の防護」と、自衛隊が国連平和維持活動(PKO)中に日本の非政府組織(NGO)やPKO要員らが武装集団に襲われた際に駆け付けて救助する「駆け付け警護」の2枚のパネルを掲げ、こう訴えた。
 「(現行政府解釈では)自衛隊は彼らを見捨てるしかない。これが現実だ」
 パネルには子供や女性の絵が描かれており、安倍首相は「この(集団的自衛権の)議論は国民の一人一人にかかわる現実的な話だ」とも指摘した。実は、「パネルで俺は勝負する」と首相自ら図案を決めた。
 質疑では、憲法解釈変更は「(憲法に従い統治する)立憲主義の否定ではないか」との質問も出たが、安倍首相は再びパネルを示しながらこう反論した。
 「人々の生存権を政府は守っていく責任がある。『その責任を放棄しろ』と憲法が要請しているとは、考えられない」
 これに先立つ首相官邸4階大会議室。80人以上の報道陣が見守る中で、安倍首相は政府の「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の柳井俊二座長から報告書を手渡された。
 「(第1次安倍政権の)平成19年5月に懇談会を立ち上げてから、実に7年の月日がたった」
 安倍首相はあいさつでこう振り返った。首相の感慨はひとしおだったろう。数日前には、報告書を受け取る意義について周囲にこう語っていた。
 「画期的だ。ここまでくれば、あともう少しだ」
 安倍首相にとって集団的自衛権の見直しは、若手議員時代からの宿願だった。11年4月には国会質問で祖父、岸信介元首相の答弁を引いてこう訴えている。
 「岸首相が『日本の憲法を見ると、自衛隊が海外まで出かけていってその国を防衛するという典型的な例は禁止しているが、集団的自衛権とはそういうものだけではない。学説が一致しているとは思わない。あいまいな点が残っている』と答弁している」
 一定の歯止めを設けた上で集団的自衛権行使を認めようという現在の「限定容認論」は、当初から安倍首相が一貫して主張してきたことなのである。
 安倍首相が集団的自衛権の見直しを進めるのは、日米同盟関係をより強固で対等なものとし、米国に対する発言権を強めると同時に、日本の抑止力を高めるためには、集団的自衛権の行使容認は不可欠だと考えているからだ。
 また、膨張する中国や核開発を進める北朝鮮など「前回の報告書提出時より、わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している」(柳井氏)との現状認識がある。
 野党やメディアには「集団的自衛権の行使を認めると日本が戦争に巻き込まれる」(社民党の吉田忠智党首)との「巻き込まれ論」も根強い。だが、米国が「米国は世界の警察官ではない」(オバマ大統領)と宣言した現在、集団的自衛権の見直しはむしろ尖閣諸島(沖縄県石垣市)有事などの際に、米国を巻き込むために必要とされている。
 「私の代では憲法改正までは届かないかもしれないが、集団的自衛権見直しはぜひやりたい」
 安倍首相は1次政権発足前にはこうも語っていた。それから8年近く。その双方が首相の手によって成し遂げられる可能性が高まってきた。(阿比留瑠比)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 
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【集団的自衛権 第3部 越えるべきハードル(中)前半】法制局は再び牙をむくか
 産経ニュース 2014.5.17 10:30
 「治療に専念したい」
 15日午後、安倍晋三首相を官邸に訪ねた小松一郎内閣法制局長官は、体調不良を理由に辞意を伝えた。集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ有識者会議が、首相に報告書を提出した約1時間後のことだった。わずか4分間の面会だったが、首相は「やむを得ない」と退任を了承した。
 小松氏は、集団的自衛権行使容認に向けて首相が法制局に送り込んだ存在だったが、病状の進行は待ってはくれなかった。大きな節目となる報告書提出を見届けての辞任となった。
 「適材適所で任命した」
 菅(すが)義(よし)偉(ひで)官房長官は16日の記者会見で、小松氏の後任に横畠裕介内閣法制次長を昇格させる人事について、こう言い切った。横畠氏の法令審査を受けた経験がある防衛省幹部は「厳しいが、プロの仕事だ。解釈の薄皮一枚のところまでギリギリの判断をする。適任だろう」と評価する。
 横畠氏は16日、記者団に「(憲法解釈変更は)およそ不可能という前提には立っていない。遅れることなく、しっかり研究していきたい」と行使容認に含みを持たせた。
 だが、この人事は政権内に一抹の不安も残す。
 法制局は従来の解釈との整合性にこだわり、集団的自衛権行使をめぐる解釈見直しにも反発してきた経緯がある。首相が法制次長を昇格させる慣例人事を破り、駐仏大使の小松氏を長官に起用したのも法制局に不信感があったからだ。
 横畠氏も歴代長官と同様、法制局で参事官、総務主幹、第1部長などを務める典型的な出世コースを歩んだ。だが、小松氏の長官就任に伴い、杉田和博官房副長官(事務)が解釈見直しに協力するよう「横畠氏の首根っこを押さえた」(首相周辺)といわれる。
 首相は15日の記者会見で、国連平和維持活動(PKO)の他国部隊が武装勢力に襲われた際の自衛隊の「駆け付け警護」を禁じたままでいいのかと問題提起した。だが、これまで法制局はこれを認めるのに否定的で、横畠氏もその一人だったとされる。
 「首相の意向に従うとの見方と、今後の人生を考え、『解釈見直しを認めた長官』とのレッテルを貼られないために、最後でちゃぶ台返しをするとの見方がある。動向は注意しないといけない」(外務省幹部)
 法制局が抵抗すれば、行使容認の閣議決定が遠のく。首相の意向も一顧だにせず、法律を自分たちに都合良く解釈する「法匪」として再び牙をむきやしないか…。政権の一部にはこうした懸念も広がる。
 16日に首相から辞令交付を受け、記者団に囲まれた横畠氏は饒(じょう)舌(ぜつ)だった。
 「(首相からは)『しっかりと仕事をせよ』と。アハハ。ちょっと端折ったから、そのまま(コメントとして)引いちゃダメですよ」(峯匡孝)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します 

【集団的自衛権 第3部 越えるべきハードル(中)後半】閣議決定時期でも自公にずれ
 産経ニュース 2014.5.17 11:23
 内閣法制局が集団的自衛権の行使容認に向けた閣議決定の中身を左右しかねない「後門の狼」なら、「前門の虎」は閣議決定自体の先送りをもくろむ与党の公明党だろう。
 16日に国会内で行われた自民党の役員連絡会。高村正彦副総裁は、ある「国家間の約束」を錦の御旗に、公明党を牽制した。
 「日米ガイドラインをにらんで、できるだけ早く自公協議が調うことが望ましい。調わなければ閣議決定はできないので、じっくり、それなりに“急いで”やっていきたい」
 政府・自民党が描くスケジュールでは、年末に再改定の期限を迎える「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)が大きな意味を持つ。
 ガイドラインは有事などでの自衛隊と米軍の役割分担を定めるもので、「集団的自衛権の行使容認は再改定の前提」(政府関係者)。年末の再改定から逆算すれば、夏頃には憲法解釈変更の閣議決定を行う必要がある。
 与党協議には(1)集団的自衛権(2)武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」(3)自衛隊の海外活動−という大きく3つの論点があるが、まずはグレーゾーン事態への対応から議論が始まる見通しだ。グレーゾーン事態への対応は憲法解釈の変更を伴わないため、自公の溝が際立たないためだ。
 自民党の石破茂幹事長は16日の記者会見で、与党協議について「毎週1回はマストだと考えている」と述べ、ハイペースでの議論を念頭に置く。「集団的自衛権、グレーゾーン、自衛隊の海外活動の3つをセットで閣議決定する」(石破氏)のが政府の基本方針だからだ。閣議決定後、政府は秋の臨時国会に関連法案を提出することになり、悠長に構えている余裕はない。
 だが、与党協議を長引かせて、憲法解釈変更の閣議決定を先送りする−という、公明党の基本戦略に今のところ、変更はない。16日の公明党参院議員総会で山口那津男代表は「与党協議の結果なくして政府が独断で決めることはない。議論を尽くすことが重要だ」と強調した。
 当面はグレーゾーン事態への対応に時間を割き、集団的自衛権の議論をずるずる先延ばしにする戦略だ。北側一雄副代表は16日夜のBSフジ番組で、潜没潜水艦の領海内航行などグレーゾーン事態への対応に関連し、「海上警備行動や治安出動の際、自衛官の武器使用についてもう少し柔軟なことができないか、検討の余地がある」と述べ、武器使用基準を緩和する法改正に言及した。
 秋の臨時国会は集団的自衛権の閣議決定を行わないままグレーゾーン対処の法改正に費やし、越年させてしまえば、来春の統一地方選への影響を回避するため、首相は集団的自衛権に関する閣議決定を棚上げせざるを得なくなると踏んでいるからだ。
 もっとも、首相の閣議決定に対する思いは並々ならぬものがある。連立政権離脱のカードを封印している以上、この戦術にもおのずと限界がある。
 そこで浮上しているのが、「社会保障と税の一体改革」の道筋を示すプログラム法のような形で自公が歩み寄り、集団的自衛権部分の日程を後回しにした法案を閣議決定するという“奇策”だ。だが、これも形を変えた先送り戦術に変わりはなく、政府・自民党と折り合える可能性は低い。(千葉倫之、岡田浩明)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します  
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【集団的自衛権 第3部 越えるべきハードル(下)】同意なくても救出できるか 韓国の理解どう醸成
 産経ニュース 2014.5.18 16:14
 「領域国の同意がない場合にも(中略)ほかに救済の手段がない場合には、自衛権の行使として許容される場合がある」
 政府の有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」の報告書の中にある在外自国民の保護・救出についての記述だ。
 会議のメンバーはこの記述を次のように説明する。
 「意図するところは、自衛隊が北朝鮮による拉致被害者を救出できるようにすることだろう」
 邦人救出では、日本人10人も犠牲となった2013年1月におきたアルジェリアでの人質事件が記憶に新しいが、政府高官は「最大の課題は朝鮮半島有事」と指摘する。
 本紙記者はこの高官に「相手国が反日的な政権である場合、自衛隊は救出に行けるのか」とただした。この高官は即座に答えた。
 「自衛隊は行けません」
 では北朝鮮にいる拉致被害者の救出はどうか。この高官は、韓国が憲法で半島全体を「韓国領」としている点を踏まえ、「(北朝鮮内でも)韓国の同意が必要になるかもしれません」と答えた。
 高官の発言には、報告書に対する韓国サイドの反応が念頭にあったようだ。韓国外務省は、報告書に対し「周辺国の疑念と懸念を払拭すべきだ」との見解を発表したからだ。
 「韓国に行ったら、『日本の集団的自衛権行使は韓国のためだ』と伝える」
 16日午前、米国の保守層に影響力を持つ米シンクタンク「ヘリテージ財団」のジム・デミント所長は、官邸に安倍晋三首相を訪ね、自身の意向をこう伝えた。これに、首相は「集団的自衛権行使で韓国と戦争になることは、百パーセントない」と応じた。
 菅(すが)義偉(よしひで)官房長官も16日の記者会見で「中韓以外の周辺国は理解をしている」と述べ、中韓に理解を求める考えを強調した。
 日米両政府は年内に「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」を再改定するが、米側は、集団的自衛権問題で日本に何を期待し、どのような青写真を描いているのか。米太平洋軍司令官を務めるなど、日本の事情にも詳しいデニス・ブレア前米国家情報長官はこう強調する。
 「米軍と北大西洋条約機構(NATO)のように、米軍と自衛隊を運用できるようにしたい。日米の相互運用性を高め部隊を統合的に運用する。こうした協力は、集団的自衛権のもとで可能になる」
 ブレア氏は集団的自衛権が必要な事例として、尖閣諸島(沖縄県石垣市)に中国軍が上陸する事態を挙げる。
 「日本が米国に奪還作戦を期待し、米軍と自衛隊が共同で実施したとする。そのときに、日本の艦船と航空機に許可されていることが、自身を防衛することだけとしたら、日米にとり危険な状況を招く」
 ブレア氏は北朝鮮に対するミサイル防衛(MD)についても、集団的自衛権を行使できない場合、「日本のレーダーもミサイルシステムも、単に日本だけを防衛することに使用され、地域の防空に日本が貢献することを妨げる。こうした制約は北朝鮮の挑発を増大させる」と警告する。
 米政府内には、日本の集団的自衛権を朝鮮半島有事の際に、韓国の要請を前提に適用できるようにしたいとの構想がある。日本の集団的自衛権によって日米同盟を進化させるのみならず、日米韓3カ国の同盟ネットワークを構築するという発想だ。こうした青写真も描きつつ、日本の集団的自衛権が韓国にもたらす安全保障上のメリットについて、いかに韓国の理解を醸成するか、米政府にとっても課題となる。
 ガイドラインでは、新たな作戦領域とされる「サイバー攻撃」も大きな課題になる。報告書はサイバー攻撃と自衛権の関係について方向性を出すことはなかった。しかし、物理的な軍事行動の前に、サイバー攻撃によって日米の防衛基盤への破壊工作を仕掛ける可能性が高い。米国は集団的自衛権によってサイバー攻撃に対処する態勢を固めようとするが、日本は出遅れており、早急な対応が迫られている。
 安保法制懇のメンバーで防衛大学校の佐瀬昌盛名誉教授はこう指摘する。
 「日本のいい手本になるのがNATOだ。時代に合わせた変遷をたどり、冷戦時代に旧ソ連を見事に抑止した。日本は遅ればせながら、その復習みたいに後追いしている」
 (ワシントン 青木伸行、政治部 峯匡孝)
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *リンクは来栖
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