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【歴史戦 第3部 慰安婦 韓国との対話(5)】「歴史戦」第3部 終り 阿比留瑠比 / 水沼啓子

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【歴史戦 第3部 慰安婦 韓国との対話(5)】慰安婦、無意味な配慮より韓国元高官も求める論争を ただしメディアは反日一色
 産経ニュース 2014.6.26 13:17
 「歴史戦」第3部の連載を終えるに当たり、阿比留瑠比・政治部編集委員と水沼啓子・前ソウル特派員が今月9日から12日までの韓国での取材を振り返った。
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 韓国政府が慰安婦問題を再び取り上げるようになったきっかけは、2011年8月に韓国憲法裁判所が「具体的な措置を取ってこなかったのは違憲」とする判決を下したためだ。韓国政府は問題を提起し続けなければならなくなった。自民党幹事長、石破茂は当時、党の会合でこう嘆いた。
 「これは未来永劫続くんでしょう。(韓国としては問題提起を)やめちゃったらダメなんでしょ」
 何とも絶望的な状況だと考えていたが、今回の取材で元韓国外務省東北アジア局長、趙世暎(チョセヨン)は、それは誤解だとしてこう指摘した。
 「判決は日本に補償や誠意ある措置を求めたものではない。そうではなく『論争しろ』というものだ」
 昭和40年の日韓請求権協定には、その解釈に関する紛争は第三国の委員も含む仲裁委員会に付託しその決定を受けるという条文がある。趙はこう続ける。
 「論争した結果、韓国が負ける可能性だってある。日本側は論争が日韓関係に及ぼす影響とかいろいろ考えて応じなかったようだが、論争しないことが日韓関係のためになっているか。そうはなっていない」
 「淡々と協議した方がいい。それが日韓が大きく対立しているように見えても、むしろしこりが少なくてすむ方法という気がする」
 趙は23日付のハンギョレ新聞(電子版)でも、次のように書いていた。
 「交通事故に比喩してみると、運転者同士が顔を赤らめて取り組むよりは、弁護士を通じて法規定により淡々と処理することだ」
 もちろん、解決済みの問題について協議に応じることは相手の土俵に立つことになるとの見方もあろうが、趙の意見もうなずける。このまま外交的な対立を続けて両国の国民感情が悪化するのに任せるよりも、当面は仲裁機関に委ねるのも選択肢として検討すべきアイデアだと感じた。
 日本が波風を立てないように積み重ねた外交的配慮が結局、韓国に通じなかったのは官房長官、河野洋平の談話の検証結果を見ても明らかだ。ならば、堂々と論争して決着をつけることも一考に値するのではないか。
(阿比留瑠比)
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 今回の取材で、複数の韓国識者から「多元」という言葉を何度か耳にした。韓国は民主主義国家なので、以前と比べて多元主義化しており、さまざまな声が出てくるようになったということだった。
 ただ残念ながら、「多元化した」と言いながらも、いまの韓国では日本絡みの新たな声はほとんど無視されるか、あるいは封印されている。
 今月8日に死去した元慰安婦の?春姫(ペチュンヒ)が生前、「日本を許したい」と話していたことや「日本びいき」だったという複数の関係者の証言を22日付で紹介すると、韓国の大手紙がさっそくかみ付いた。中央日報はこれらの証言を取り上げ、「行き過ぎた恣意(しい)的解釈が多い」と非難した。聞いたままを記事にしただけだが、韓国にとって都合の悪い話は色眼鏡で見られ、闇に葬られてしまう。同紙は証言者を匿名にしたことも問題視した。証言者の“犯人”捜しも行われているという。
 韓国で産経新聞は“極右”と位置づけられている。産経記者の取材に応じるというだけで韓国では“親日派(チニルパ)”(売国奴)のように見られかねない。ソウル特派員だった2010年、日韓併合100年の連載をしたが、「産経新聞の取材はちょっと…」と何人もの韓国人に断られ、取材がなかなか進まず難儀した。
 しかも今回は長年慰安婦問題に取り組み、韓国の主張を批判してきた先輩記者の阿比留と同行するので何が起こるかと緊張した。
 しかし、取材そのものは妨害にあうこともなく順調に進んだ。取材を依頼した韓国の識者全員が悪化した日韓関係をなんとかしなければ、そんな気概で応じてくれた。執拗(しつよう)に日本をおとしめ続ける韓国にも、大局的に見ている人たちがいると安堵(あんど)の思いで帰国の途に就いた。
 ところが、中央日報の記事のように連載が始まると韓国内で反発を呼び、せっかく取材に応じてくれた人たちも戸惑っている様子だった。韓国で混迷の度を深める慰安婦問題の難しさを改めて痛感し、虚無感すら覚えた。
(水沼啓子)
 =敬称略
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します  
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