【単刀直言】「日本語として間違ってますから前文変えますと言えばいい」石原慎太郎氏
産経ニュース 2014.7.9 11:51
日本維新の会が分党することになった。考え方が違うんだから、自分の節を折ってまで数を増やしても、しようがない。橋下徹大阪市長が一緒になりたい結いの党の江田憲司代表は「集団的自衛権の行使はダメだ」「自主憲法制定なんて主張したら外国に何を思われるか分からない」と言うが、そんな手合いと一緒になる理由はないですよ。でも橋下君はその相手とくっつくという。分からないなあ。
■亀裂の始まりは…
振り返ってみると、維新の東京と大阪との二重執行体制は良くなかった。テレビで各党の政調会長が出た討論番組に、維新は国会議員の経験がない大阪の地方議員が出て、議員定数がどうこうと語っていた。もどかしいし、恥ずかしい。国民に対しても失敬だ。「みっともないから、やめてくれ」と言ったのだけれど、そこら辺が亀裂の始まりだったのかもしれない。
国政の体験がないのは致命的なんですよ。国家観、歴史観が違う。維新が滑り出したときに、坂本龍馬の「船中八策」のような基本政策を持たなきゃダメだと言ったら、「10年後に原発フェードアウト(徐々に減らす)」とあって、驚いたね。「10年は拙速ではないか」と追及すると、「じゃあ30年後にします」と言う。そのためのロードマップも決めていなかったので、「難しいかもしれないぞ」と言ったが、結局「2030年代にフェードアウト」となった。
でも橋下君は才能があるし、あれほど演説のうまい人はいない。国民を「なるほど、そうだ!」という気持ちにさせる話術を持っている政治家は、僕の知る限りでは、いませんね。強いて言えば田中角栄元首相だ。
僕は今でも橋下君が国政に出るべきだと思っている。心配しているのは橋下君が政治家を辞めることだ。彼が辞めて一番ほくそ笑むのは江田君だ。なにより、辞めたら橋下君が育てた大阪の人間たちもかわいそうだよ。
政治家というのは武士(もののふ)、侍だからね。吉田松陰にしろ、大塩平八郎にしろ、自分の信じていることを遂げるためには不幸、不義の道と分かっていても行動するわけだ。分党でこちらに残る人間が6、7人くらいになっても節を通そうと思ったが、有望な若い人を含め22人集まった。みんなが「自分の節を曲げたくない」という共通項を持っているから、とても頼もしいですよ。
■僕の役割は指南番
新党「次世代の党」の理念には、「自立」「新保守」とともに「次世代」を掲げました。執行部もどんどん若い人にやってもらったらいい。僕みたいに暴言、暴走はしないだろう。僕の役割は「指南番」だな。
今の政治家は歴史を知らないし、知ろうともしない。国会議員の中で東京裁判を傍聴したことがある人は一人もいないだろうな。僕は2回行ったんだ。げたを履いていたら米軍の憲兵隊に「ガタガタうるさいから脱げ、小僧!」と怒鳴られたこともある。傍聴していて一方的な雰囲気でした。
こちらは実体験としてそれが体の中にあるから、日教組の偏向教育を受けた戦後世代とは深層心理の格差がありますね。格差は埋めようとしてもなかなか埋めきれないけれど、せめて文章でもいいから、どんなことがあったかということを知ってもらいたいですね。
分党はしたけれど、当分野党再編はできないね。民主党がどう転ぶか分からない。橋下君たちが結いとくっついても野党第一党にはなれない。みんなの党も、代表になったばかりの浅尾慶一郎君は経験が少なく、にわかに事を決めきれないだろう。
■朝日新聞も賛成!?
究極の目標は自主憲法制定です。憲法の前文はメチャクチャな日本語だ。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」は、正しくは「公正と信義を」で、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ…」は、「欠乏を免れ」だ。助詞の間違いは日本語の文体を乱し、みにくい印象しか与えないんでね。国家の基本法を正しい日本語に直すことが自主、自立です。
安倍晋三君が首相でいる間に憲法改正をやってくれないとね。「日本語として間違っていますから前文だけ変えます」と言えばいい。とにかく助詞を変えるだけで、「9条はいじりませんから」と。朝日新聞だって日本語をしゃべり、日本語で新聞を書いているんだろうから、まさか「それは間違っている」とは言わないだろう。
(内藤慎二)
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