【鈍機翁のため息】(138)間奏 III 貴重な「負」の歴史遺産
産経ニュース 2014.8.14 07:42
安らかに眠って下さい
過ちは
繰返しませぬから
原爆死没者慰霊碑に刻まれた文言をめぐっては、まったくかみ合わない論争が延々と繰り返されてきた。それは戦後日本の言論状況そのものだ。
昭和27年11月に広島を訪れたインドのパール博士は《原爆を落としたのは日本人ではない。落としたアメリカ人の手は、まだ清められていない》と、慰霊碑の文言を率直に批判した。見事なものだ。すると、文言の筆者である雑賀(さいか)忠義広島大学教授は《「原爆投下は広島市民の過ちではない」とは世界市民に通じない言葉だ。そんなせせこましい立場に立つ時は過ちを繰返さぬことは不可能になり、霊前でものをいう資格はない》と反論したのである。
真珠湾攻撃の報を聞くや講義を中断して「万歳」と叫んだ雑賀の「改心」ぶりは、敗戦を境にした日本人の心の変化を象徴するものだろう。また、雑賀自身が被爆者であったことも手伝って、当時の空気の中で彼の言葉は、神聖にして侵すことのできぬ権威あるものとして響いたに違いない。
慰霊碑の文言と雑賀の反論が、どれほど異様に映ろうと(もちろんそう感じない日本人も多い)、当時の日本人の多くはそれを受け入れたのだ。それも日本の歴史の一幕であり、この文言は貴重な「負」の歴史遺産として大切に保管すべきだろう。「そんな時代もあったのだ」と、振り返るよすがとして。(桑原聡)
◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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◇ 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」自虐のぬるま湯から出て日本が主張すべきこと 阿比留瑠比 2013-08-08 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
【阿比留瑠比の極言御免】原爆問題−自虐のぬるま湯から出て日本が主張すべきこと
産経新聞 2013.8.8 11:50
「私たち日本人は、唯一の戦争被爆国民であります。その非道を後の世に、また世界に伝え続ける務めがあります」
安倍晋三首相が6日に広島市で行われた平和記念式典でこうあいさつし、原爆投下について「非道」という言葉で非難したことに注意をひかれた。式典には米国のルース駐日大使も参列しており、首相は歴史問題でやんわりと米国を牽制したといえるからである。
折しも読売新聞には映画「プラトーン」や「JFK」で知られる米映画監督、オリバー・ストーン氏のインタビュー記事が掲載されていた。ストーン氏はこう語っていた。
「原爆投下は戦争を終わらせるために必要だったというのは幻想だ」「日本の人々も、米国の神話を受け入れず、なぜ原爆が落とされたかを学んでほしい」
このような見方は米国では必ずしも主流派ではないだろう。とはいえ多様な意見、見解が存在し、かつ堂々と表明されるのは米国らしい懐の深さだといえる。主要紙が平気で「原爆投下は神の懲罰だ」(中央日報)と書く一方で、自国に都合の悪い評論家、呉善花氏の入国は理由も示さず拒否する韓国とは全く違う。
ただ、日本も韓国を笑ってばかりはいられない。戦後ずっと、原爆投下の理非追及も不当性や被害を訴えるのも控えめで、「戦争に負けたから仕方ない」と自虐のぬるま湯に閉じこもり、問題をあいまいにしてきたことは否めない。
例えば、広島市の原爆死没者慰霊碑に刻まれた有名な碑文がある。
「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」
主語がはっきりせず、まるで日本人が「原爆を落とされるような悪いことはもうしません」と言っているかのように読める。
実際、東京裁判で被告全員無罪を主張したインドのパール判事が広島を訪れた際にこの碑文を知り、「過ちは誰の行為を指しているのか。原爆を落とした者は日本人でないことは明瞭である」と憤ったエピソードはよく知られている。
広島市のホームページによると、碑文の趣旨は「原爆の犠牲者に対して反核の平和を誓うのは、全世界の人々でなくてはならないというもの」だそうだが、そう読み取れるだろうか。
また、長崎市長を4期務めた本島等氏は平成10年8月掲載の産経新聞のインタビューにこう語っていた。
「日本がアジア太平洋戦争などで行った数々の悪魔の所業を思うと、原爆投下は仕方なかった、やむを得なかった、と言わざるを得ない。東京大空襲や沖縄戦も同じだ」
一般市民が無差別に大量虐殺された日本側がこんな状態では、米国が原爆投下の正当化姿勢を改めることは期待し難い。オバマ大統領が21年11月に来日して首相官邸で記者会見を行った際、幹事社だった筆者はこんな代表質問を用意した。
「過去に日本に2発の原爆が投下されたことについての歴史的な意味をどうとらえ、現在もその選択は正しかったと考えているか」
「核なき世界」を目標とする大統領も、この質問には一切答えずはぐらかした。防戦一方で勝てるゲームはない。歴史問題をめぐって日本も、たまには相手の痛いところを突くぐらいした方がよいはずである。(政治部編集委員)
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
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「日本への原爆投下の主たる目的はソ連への牽制。軍事的必要性なかった」
【産経抄】8月6日
産経新聞2013.8.6 03:04
昨年の原爆忌、広島と長崎で開かれた平和式典に、原爆投下を命じたトルーマン元米大統領の孫に当たるクリフトン・トルーマン・ダニエルさんが出席して、話題になった。今年の外国人参列者の「主役」は、米映画監督のオリバー・ストーンさんだろう。▼社会派監督として知られるストーンさんは昨年、第二次世界大戦前夜からオバマ大統領の登場までを、独自の視点で追いかけたドキュメンタリー「もうひとつのアメリカ史」を制作した。そのなかで、日本への原爆投下の主たる目的はソ連への牽制(けんせい)であり、軍事的な必要性はなかったと主張している。▼全米で論争を引き起こした番組の脚本は、アメリカン大学歴史学科のピーター・カズニック教授と共作した。カズニックさんは毎年夏、学生を連れて広島、長崎を訪れており、今回ストーン監督も同行したというわけだ。▼1995年、ワシントンのスミソニアン博物館が「原爆展」を企画したところ、退役軍人会などの反対で、事実上、中止に追い込まれたことがあった。そのとき近くにあるアメリカン大学で、広島、長崎の被爆資料の公開にこぎつけたのが、カズニックさんだった。▼「原爆のおかげで戦争が終わり、アメリカ兵だけでなく、多数の日本人の命も救われた」。大多数のアメリカ人が今もこう信じている。誤った歴史観を正すために、お二人には今後も奮闘していただきたい。ただ、気になることがある。▼カズニックさんは、最近の朝日新聞紙上で、核廃絶だけでなく、脱原発、憲法9条堅持、そして米国の軍事政策への反対を呼びかけていた。余計なお世話だ。きょうと9日は、何より原爆の犠牲者を哀悼する日でなければならない。政治を持ち込まないでほしい。
*上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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◇ 「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と自虐を祈り、「真の平和とは何か」を問わない日本の8月 2014-08-04 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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