【歴史戦第5部「朝日検証」の波紋(上)1】朝日新聞 22年前から女子挺身隊と慰安婦の混同に気付く ソウル発記事で疑義提議
産経ニュース 2014.8.23 07:30
慰安婦問題が日韓間で政治問題化していた平成4年1月の段階で、朝日新聞が女子挺身隊と慰安婦は別の存在だとの認識を示すソウル発の記事を掲載していたことが分かった。朝日新聞は今月5日付の「慰安婦問題を考える」と題した特集で「当時は研究が乏しく同一視」と書き、全く異なる両者を混同し、誤用してきたことを認めたが、22年以上前に社内で両用語の使用法をめぐり疑義が提起されていたことがうかがえる。
記事は4年1月16日付朝日新聞朝刊の社会面に掲載されたもので、【ソウル15日=波佐場清】の署名で、宮沢喜一首相(当時)訪韓直前の韓国世論の動向を伝えている。そこには「韓国のマスコミには、挺身隊イコール従軍慰安婦としてとらえているものが目立ち、韓国民の多くは『日本は小学生までを慰安婦にしていた』と受け止めている」と書かれている。
その5日前の1月11日付朝日新聞朝刊は、「太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」と両者を混同していたが、直後に「異論」が掲載された形だ。
ただ、ソウル発のこの記事は、東京本社版の早版に掲載されたが、紙面が確定する最終版からは抜け落ちていた。大阪本社版、西部本社版は同様の記事を掲載していたが、名古屋本社版(14版)が掲載した記事では、韓国内での挺身隊と慰安婦の混同を指摘するくだりが削られていた。
産経新聞は当時の朝日新聞の認識をただすため、現在、波佐場氏が上席研究員を務める立命館大学コリア研究センターを通じて取材を申し込んだが、波佐場氏は取材に応じなかった。
朝日新聞社にも、東京最終版が記事を掲載しなかった事情などを質問したが回答はなかった。同社広報部は、東京電力福島第1原発事故で、当時の吉田昌郎所長が政府の事故調査・検証委員会の聴取に答えた「吉田調書」に関する本紙記事の内容をめぐって、小林毅・東京編集局長に宛てた抗議書の中で「納得のいく回答が得られるまで、貴社の取材には応じられません。回答は保留させていただきます」とした。
【歴史戦第5部「朝日検証」の波紋(上)2】社内からの指摘を放置
産経ニュース 2014.8.23 09:08
平成4年1月16日付の朝日新聞朝刊で、韓国では「挺身隊イコール慰安婦としてとらえているものが目立つ」と書いた元ソウル特派員、波佐場清は、同年3月7日付朝刊コラム「透視鏡」でもこう指摘した。
「挺身隊と慰安婦の混同に見られるように、歴史の掘り起こしによる事実関係の正確な把握と、それについての(日韓)両国間の情報交換の欠如が今日の事態を招いた」
*「すぐ気づいたはず」
波佐場は産経新聞の取材申し込みに対し、所属する立命館大学コリア研究センターを通じ「お断りしたい。新聞紙上に自分のクレジットで載ったものがすべてです」と回答した。
社内からも慰安婦と挺身隊の混同を指摘する意見が出ていたのに、なぜ朝日新聞は今まで放置してきたのか。この混同こそが、韓国の反日団体などが主張する「慰安婦20万人強制連行」説のおおもとになったにもかかわらずだ。
今月5日付の朝日新聞は自社が女子挺身隊と慰安婦を混同し、誤用した理由について「原因は研究の乏しさにあった」と説明した。
「当時、慰安婦を研究する専門家はほとんどなく、歴史の掘り起こしが十分でなかった」「参考にした資料などにも混同がみられた」などとも記した。
元朝日新聞ソウル特派員の前川惠司(現在ジャーナリスト)は首をかしげる。「研究が乏しかったというが、当時は戦時中を知る人がたくさんいた。そうした人たちに取材すればすぐ違いに気づいたはずだ」
*「養父に連れられて」
前川は、5日付朝日新聞の特集が、韓国人元慰安婦、金学順を初めて取り上げた「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」(3年8月11日付)について、「意図的な事実のねじ曲げなどはない」としたことにも疑問を呈す。
「普遍的な人権を考えれば、元慰安婦の側に立つことは大事だ。でも、本当にそうならば、例えば金さんの話が『どうも違う』となったら、確認して報じるのが金さんのためだ。結局、金さんは最後まで批判者から嘘つき呼ばわりされて亡くなった」
「誇張した被害宣伝をすると、かえって信用されないと指摘するのも記者の役目ではないか。その記者(植村隆)は、後にソウル特派員にもなっているのだから、いくらでも確認が取れたではないか」
植村は3年12月25日付朝刊(大阪版)で、金の「証言テープを再現する」として、金が慰安婦とされたきっかけをこう書いている。
「『そこへ行けば金もうけができる』。こんな話を、地区の仕事をしている人に言われました。仕事の中身はいいませんでした」
だが、金がこの記事が出る直前に日本政府を相手取って起こした慰安婦賠償請求訴訟の訴状では「養父に説得され、連れられていった」と証言している。植村が書いた「女子挺身隊の名で戦場に連行」が「事実のねじ曲げ」でなくて何なのか。(敬称略)
【歴史戦第5部「朝日検証」の波紋(上)3】信じたくない「吉田の嘘」
産経ニュース 2014.8.23 12:10
平成3年5月22日付朝日新聞朝刊(大阪版)は連載記事「女たちの太平洋戦争」で、自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治が朝鮮半島で行ったと証言した女性の強制連行を取り上げた。記事は、吉田の述懐を事細かに紹介している。
「私が今日、最も恥ずべきこと、心を痛めている問題の一つは、従軍慰安婦を九百五十人強制連行したことです」
「若い女性を強制的に、というか事実は、皆、木剣を持っていましたから殴る蹴るの暴力によってトラックに詰め込み、村中がパニックになっている中を、一つの村から三人、五人、あるいは十人と連行していきます」
反響は大きく「読者から驚きの電話が何十本も届いた」という。数日後には、吉田証言に対する読者の感想が掲載された。
「加害者としての勇気ある証言に接し、厳正な軍紀の下に統制されているものと確信していた旧軍隊への信頼感が、根底から覆されました」(5月28日付、和歌山市、81歳男性)
「ショックを受け、読み終えてしばらくぼうぜんとした。(中略)若い女性を強制連行し、軍人相手の慰安婦にしていたとは、記事を目にするまでは知らなかった。何とも破廉恥なことをしたものだ」(5月31日付、兵庫県、40歳主婦)
これら吉田の証言や読者の感想を伝えた連載は『女たちの太平洋戦争』(朝日新聞社)として刊行され、4年、日本ジャーナリスト会議賞を受賞した。
*16本の記事いつ掲載
吉田証言の虚偽性は現地調査をした現代史家、秦郁彦によって4年4月の時点で提起され、産経新聞も報じた。
朝日新聞元ソウル支局長で現在は東京本社報道局長の市川速水は、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘との対談『朝日VS.産経 ソウル発』(朝日新書、平成18年)で、3〜4年に慰安婦問題取材班の中心的存在だったことを明らかにしている。市川は「貧乏な家で、女衒(ぜげん)にだまされて、気がついたら戦地に行かされて、中国などで慰安婦をさせられた」との証言はあったとしながらも「僕の取材でも、腕を引っ張られて、猿ぐつわはめられて、連行されたという人は一人も現れていません」と語った。
だが朝日新聞が吉田証言を虚偽だと判断し記事を取り消したのは、秦の指摘から22年以上もたった今月5日。朝日新聞は5日付朝刊の特集記事「慰安婦問題を考える」で、吉田について「確認できただけで、16回、記事にした」と説明したものの、具体的にどんな記事だったかほとんど明らかにしていない。
産経新聞は朝日新聞社に対し、16本の掲載期日や紙面上でそれらを示す予定があるかなど書面で質問した。同社広報部は18日、産経新聞の福島第1原発事故をめぐる「吉田調書」報道に対する抗議書のなかで回答を保留するとした。重ねて見解を示すよう求めたが、提示した期限までに回答はなかった。
元朝日新聞編集委員の川村二郎は語る。
「朝日新聞は国民の知る権利と二言目には言うが、読者の知る権利もちゃんと保障すべきだ。報道機関として間違っている」
*疑問にコラムで反論
以前、朝日新聞は吉田証言をめぐる読者の声に反応した。4年1月23日付夕刊1面コラム「窓 論説委員室から」で、吉田証言を無批判に紹介。読者から「(強制連行について)そんなことは見たことも聞いたこともない。軍律、兵隊の心情にてらしても、それはありえない」との疑問が寄せられると、3月3日付の同コラムでこう反論した。
「知りたくない、信じたくないことがある。だが、その思いと格闘しないことには、歴史は残せない」
吉田の嘘は朝日にとって「知りたくない、信じたくない」ことだったろうが、いま朝日は「その思いと格闘」しているだろうか。(敬称略)
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【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(中)1】「歴史教育議連」を狙い撃ち 「常識発言」撤回に追い込む
産経ニュース 2014.8.24 13:00
終戦の日の15日、自民党本部で同党有志でつくる議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・国家公安委員長、古屋圭司)が会合を開いた。朝日新聞が自社の慰安婦報道の誤りを一部認めたことを受けたものだった。
講師に招かれたジャーナリストの櫻井よしこは、この中でこう指摘した。
「5日の(朝日)1面には、朝日があたかも被害者であるかのようなことを書いている。(朝日報道で)『いわれなき中傷』を浴びたのは日本国だ。先人たちだ。私たちだ。未来の子供たちだ。朝日ではない」
議連は党として独自の検証を行うべきだとの方針を確認した。
*初代会長に中川昭一氏
この議連の歴史は長い。17年以上前の平成9年2月、慰安婦募集の強制性を認めた河野洋平官房長官談話を反映して、8年の検定で合格した中学歴史教科書すべてに慰安婦の記述が載ったことの当否に疑問を覚えた議員らが結成した。
初代会長は元財務相の故中川昭一、初代事務局長は現首相の安倍晋三だ。現官房長官の菅義偉もメンバーに名を連ねている。
そして議連は、当然のごとく朝日新聞に目の敵にされていく。
10年7月には当時、小渕恵三内閣の農林水産相だった中川が記者会見で、慰安婦問題に関して次のように述べたことがやり玉に挙げられた。
「議論の分かれるようなことについて、すべての義務教育の教科書にほぼ同じ記載がされていることに疑問を感じ、いろいろな方の話を聞き(議連で)一冊の本にまとめた。強制性があったか、なかったか、それをわれわれが判断することは、政治家として厳に慎まなければいけない」
「大半の専門家が納得できるような歴史的事実として教科書に載せることについて、われわれはまだ疑問を感じている」
*「韓国世論」持ち出し
今からみればごく常識的なことを抑制的に語っているだけだ。ところが、朝日新聞は同年7月31日付夕刊で「慰安婦問題『事実としての教科書掲載、疑問』」「中川農水相未明発言」などと、中川が議連会長であることを含めて大きく報じ、発言要旨も掲載した。
さらに8月1日付朝刊でも「日韓漁業交渉に影響も」「韓国世論反発の恐れ」との見出しで続報を載せ、「中川氏が交渉責任者として関係する日韓漁業協定問題の決着に、影響を与えることになりそうだ」との見通しまで示した。「これで『外交の小渕』か」と題し、小渕政権を批判する社説まで掲載した。
中川は発言撤回に追い込まれた。(敬称略)
【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(中)2】慰安婦強制への疑問も批判対象
産経ニュース 2014.8.24 14:40
平成10年7月、慰安婦問題を歴史教科書で取り上げることに疑問を示した当時の農水相、中川昭一を朝日新聞が強く批判したことについて、元週刊朝日副編集長の評論家、稲垣武は産経新聞の取材にこう語っていた。
「所管外の歴史認識を無理やり聞き出し、『近隣諸国は反発している』と問題化するという、いつものやり口だ」
中川が会長を務める自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(後の議員の会)事務局長だった現首相、安倍晋三はこうコメントした。
「朝日は『中川氏が会を脱会する』と報道しているが、中川氏は『脱会ではなく、閣僚期間中は会を休むだけ』と言っている。自説を変えたわけではない」
*透けてみえる悪意
朝日新聞はその後も自社の論調に合わない中川や議連を批判し続けた。
第1次安倍内閣の19年3月27日付夕刊の1面記事「ニッポン人・脈・記 安倍政権の空気(15)」は、中川の写真を添えて議連についてこんな見出しで報じた。
「慰安婦の強制 疑う集団」
まるで議連が怪しい集団であるかのようだ。朝日新聞は今月5日の慰安婦問題の特集記事で「軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません」と認めたが、それまでは強制に疑問をはさむことも朝日の批判対象だったということか。
記事本文にはこうある。
「今年1月、米下院に出された日本に謝罪を求める『慰安婦決議案』に対し、首相の安倍は『当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった』と弁明した」
だが、安倍は「言い訳」の意味もある「弁明」をしたのではなく、単に「説明」しただけだろう。ここにも朝日新聞の悪意が透けてみえるようだ。
*対応鈍い地方議会
こうした朝日新聞の積年の一方的な報道は、中央政界だけでなく地方にも影響を及ぼしている。
特に民主党政権下では、慰安婦問題にからみ政府に「誠実な対応」を求める意見書の採択が各地の地方議会で相次いだ。意見書の前提にあった5年の河野洋平官房長官談話が実証的な根拠のない日韓合作であることが明らかになったにもかかわらず、地方議会の対応は鈍い。
その一つ、韓国の不法占拠が続く竹島(島根県隠岐の島町)を抱える島根県議会は、国際問題に敏感であるはずなのに、過去の意見書について一向に修正の動きが見えてこない。
「今まで県議会から何の音沙汰もない。県民の声をどう思っているのか」
島根県出雲市の主婦、金築倫子(64)が憤りをあらわにした。
金築は今年3月、意見書の撤回を求めて有志らと「日本を愛する島根女性の会」を発足、6月には県議会に約3600人の署名に添えて抗議文を提出したものの、県議会に具体的な動きは一切ないという。
意見書は25年6月、民主、共産などに加え自民も退席した1人を除いて賛成に回り可決されたものだ。米下院決議を引用し「旧日本軍が女性を強制的に性奴隷にした」との文言まで盛り込まれた。
*「まずは国会が…」
なぜ、自民すら修正に動こうとしないのか。関係者によると、民主、共産と歩調を合わせて意見書の採決を主導した自民の重鎮議員が若手議員を率いており、ベテラン議員のグループと反目、まとまる状況でないという。
「河野談話が間違っていたなら、それは国家の問題だから、まずは国会が修正しないといけない」
自民議員の1人はまるで人ごとのように言う。
金築は「認識が低すぎる。地方議員であろうとしっかりとした国家観を持つべきだ」とあきれている。地方議員の意識の低さもまた、メディアのあり方と無縁ではない。(敬称略)
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【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(下)1】慰安婦問題「オールコリア態勢」 クマラスワミ氏取材を韓国外務省サポート
産経ニュース 2014.8.25 07:41
聯合ニュースや進歩系のハンギョレ紙、保守系の中央日報が発行する英字紙、KBSテレビなど大手韓国メディアは今月中旬、国連人権委員会(現人権理事会)の慰安婦問題などに関する特別報告官として、いわゆる「クマラスワミ報告書」を作成した女性法律家、ラディカ・クマラスワミへのインタビューを相次いで報じた。
インタビューはスリランカ・コロンボにあるクマラスワミの自宅で行われ、ニュース映像には複数の韓国記者が取り囲んで取材している様子が映し出されていた。聯合ニュースの記事には「韓国外務省合同取材団」とあった。産経新聞が韓国外務省に確認したところ、同省が取材記者を募り、渡航費などの負担はしていないものの外務省職員らがサポートしたという。
クマラスワミ報告書は朝鮮半島で女性を強制連行したとの自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治の証言などを引用しながら、慰安婦を「性奴隷」と定義し、その人数を「20万人」と記述。日本政府に対し法的責任の受け入れと被害者への補償などを求めており、韓国側の主張とも一致するものだ。
日本政府が6月に慰安婦問題に関する平成5年の河野洋平官房長官談話の検証結果を発表したことなどを受け、反発を強める韓国政府による対抗措置の一環といえる。
聯合ニュースは12日、慰安婦問題についてクマラスワミが「再び後退している」「日本政府は強硬な姿勢へと向かっている」との懸念を示したと報じた。
インタビューが行われたのは9日。朝日新聞が5日に吉田証言を「虚偽」と認めた直後だったが、クマラスワミはこれには直接触れず、「明らかに大部分で強制性があった」と河野談話の検証を批判したという。
日韓関係に詳しい静岡県立大准教授、奥薗秀樹はこう指摘する。
「慰安婦問題について韓国では、政府はもちろん、保守系マスコミも進歩系マスコミも一つの声をあげるオールコリア態勢ができている」
その姿勢は朝日報道への対応でも変わらない。
【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋(下)2】韓国紙が「朝日助ける方法あるはず」とまで擁護するのはなぜか
産経ニュース 2014.8.25 12:19
朝日新聞が今月5、6両日に掲載した慰安婦問題の特集記事について、6日付の主要韓国紙は「朝日新聞、安倍に反撃…“慰安婦問題直視を”」(朝鮮日報)「朝日、右翼に反撃」(中央日報)との見出しを掲げ、「自由を奪われた強制性あった」という朝日の主張を全面的に支持した。
*保守勢力に警告
旧日本軍が慰安婦を「強制連行」したという誤解を韓国側に植え付けるきっかけの一つとなった自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治の証言を朝日が「虚偽」と認め、記事を取り消したことを、韓国メディアは問題視していない。むしろ「自己反省した」(朝鮮日報)「潔い反省」(中央日報)と評価している。
なかでも朝鮮日報は、吉田証言を、記事中で「証拠が裏付けされていない証言」といった曖昧な表現にとどめ、朝日の誤報には直接触れていない。それどころか「安倍首相と産経新聞など極右メディアは朝日新聞を標的にし、『慰安婦=朝日新聞の捏造(ねつぞう)説』まで公然と流布させている」と、朝日の慰安婦報道を追及してきた側を非難している。
さらに「(朝日は)慰安婦の強制動員を証明する資料が多い点も強調した」とし、「朝日の今回の記事は『慰安婦の強制動員はなかった』という考えを持つ安倍首相への直撃弾でもある」とまで言い切った。
この記事を書いた同紙の東京特派員は後日、別の記事中でも「極右から『反日的』と攻撃されながらも数十年にわたって旧日本軍の慰安婦問題の真実を伝え『日本の良心』と評される朝日新聞の根気と執念」と手放しでたたえた。
中央日報も同様で、次のように解説した。
「慰安婦関連報道の先駆者の役割を果たしてきた朝日は『慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質』とし、日本国内の保守勢力の『責任否定論』に対し警告した」
東亜日報も「朝日は、極右が否定している強制連行について『本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった』と指摘した」と報じた。いずれも、「強制性」を主張する元慰安婦たちの証言があるため、朝日の記事取り消しは韓国側の主張を覆すものではないとの認識が根底にある。
*「強制性」を死守
韓国メディアの一方的な報道について、静岡県立大准教授、奥薗秀樹はこう解説する。
「慰安婦問題には2つの側面がある。1つは日韓間の戦後補償問題であり、もう1つは女性の人権蹂躙(じゅうりん)という普遍的な国際問題という側面だ。後者の側面から見ると、韓国としては慰安婦問題を国際問題化することに成功した今となっては、吉田証言が虚偽であったとしても、そのことに大した意味はない」
朝日の慰安婦報道が韓国政府や韓国メディアに少なからぬ影響を与え、日韓関係悪化の発端になったことは完全に度外視されている。逆に朝日擁護の姿勢を強めている。
朝日の検証に対し、日本国内で非難が高まると、「日本の保守勢力、“朝日の慰安婦報道”総攻勢」(京郷新聞電子版、6日)「日本の右翼が朝日の慰安婦報道総攻撃」(東亜日報、7日付)と、その動きを批判した。
朝鮮日報国際部長(元東京特派員)は「朝日新聞の孤立」と題するコラム(9日付)でこう主張した。
「旧日本軍慰安婦をめぐる朝日新聞の闘いは20年以上になる。加害者の国の新聞が常に被害者側で闘ってきたのだから、孤立し疲れが見えてきた。知恵を絞って助ける方法が韓国政府にはあるはずだ」
ここまでして韓国メディアが、朝日を必死に守ろうとするのはなぜか。韓国メディア関係者が語る。
「韓国は安倍政権が『検証するが見直しはしない』と言いながら河野談話を骨抜きにしようという底意を持っていると真剣に疑っている。安倍への強い不信感があるので、安倍政権に厳しい姿勢を見せる朝日を守るのは当然だ」
しかも「強制性」の部分は、韓国にとっても慰安婦問題で死守しなければならない要ともいえるため、朝日に同調する論調に終始しているというわけだ。
韓国の報道姿勢について、同国のメディア事情に詳しい専門家はこう断じるのだった。
「誤報には目をつぶり、自分たちの都合の良い部分ばかりに焦点を当てるのは韓国の対日姿勢を象徴している」(敬称略)=第5部おわり
この企画は有元隆志、阿比留瑠比、大竹直樹、田北真樹子、原川貴郎、水沼啓子が担当しました。
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◇ 【歴史戦 第4部 利用される国連】慰安婦問題世界拡散は、左派系市民団体による国連働きかけが原因 2014-07-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 【歴史戦 第3部 慰安婦・韓国との対話(1)】 元慰安婦、死してなお反日の道具 / 日常溶け込む反日 2014-06-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 【歴史戦 第3部 慰安婦・韓国との対話(3)】慰安婦も安重根も一緒くた 史実無視、中韓連携の不可解 2014-06-25 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第3部 慰安婦 韓国との対話(4)】振り上げた拳の着地点 2014-06-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第3部 慰安婦 韓国との対話(5)】「歴史戦」第3部 終り 阿比留瑠比 / 水沼啓子 2014-06-27 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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