光市母子殺害:元少年の実名本「違法性なし」が確定
毎日新聞 2014年09月29日 20時00分(最終更新 09月29日 21時35分)
元少年側が敗訴、最高裁第1小法廷決定
山口県光市で1999年に起きた母子殺害事件で死刑が確定した元少年(33)=事件当時18歳=が、実名を載せた本を出版されプライバシーを侵害されたとして、出版社と著者に出版の差し止めや賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(横田尤孝<ともゆき>裁判長)は25日付で、元少年側の上告を棄却する決定を出した。元少年側敗訴とした2審・広島高裁判決が確定した。
本は2009年10月に出版。タイトルや本文に元少年の実名が入り、中学校の卒業アルバムから顔写真も転載された。1審・広島地裁は、差し止め請求を退ける一方で、プライバシー侵害を理由に66万円の賠償を命じた。これに対し広島高裁は、少年法を考慮しても違法とはいえないと判断、賠償請求も退けた。【川名壮志】
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光市母子殺害の実名本、死刑囚側の敗訴確定 最高裁
日本経済新聞 2014/9/29 20:16
山口県光市母子殺害事件で当時18歳だった大月(旧姓福田)孝行死刑囚(33)が、実名や顔写真を載せた本の著者や出版元に、出版差し止めと損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(横田尤孝裁判長)は29日までに、大月死刑囚側の上告を退ける決定をした。権利侵害はないとした二審・広島高裁判決が確定した。決定は25日付。
著者は増田美智子さんで、2009年10月に出版社のインシデンツ(東京)から、実名や顔写真を掲載した「福田君を殺して何になる」を出版。大月死刑囚は、少年の身元がわかる記事などの掲載を禁止する少年法61条に違反し人格権も侵害されたとして、出版の差し止めと約1300万円の損害賠償を求めていた。
一審・広島地裁はプライバシー権や肖像権の侵害を認め、著者側に66万円の支払いを命じたが、出版差し止めは(1)出版当時は成人で死刑判決も確定している(2)事件は社会に大きな影響を与え少年事件への国民の関心も高まっている――などの理由で退けた。
二審・広島高裁は「大月死刑囚は取材に積極的に協力し実名表記や手紙の引用に同意していた」として一審判決を取り消し、賠償請求を棄却。出版差し止めも一審に続いて認めず、大月死刑囚側の全面敗訴とした。
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〈来栖の独白 2014/09/29 Mon. 〉
「出版当時は成人で死刑判決も確定している」「事件は社会に大きな影響を与え」というが、実名公表の意図は、「売らんがため」であろう。社会正義などとは無縁だろう。
裁判所は「死刑判決も確定」「事件は社会に大きな影響」などとおかしな大義名分を引き寄せ、メディアは「大月死刑囚」と明記して、人を晒し者にする。
そもそも本件は、「小さくされた」人を出汁に金儲けを目論む増田美智子氏の醜悪から始まった。
◇ 光市母子殺害事件 実名本で元少年が提訴、出版差し止めなど求める 2009-11-02 | 光市母子殺害事件
山口県光市の母子殺害事件の被告で当時18歳だった元少年(28)=死刑判決を受け上告中=を実名表記した本の販売をめぐり、元少年が著者の増田美智子氏(28)と出版元「インシデンツ」(東京都日野市)の寺沢有代表(42)を相手取り、出版差し止めと慰謝料など1100万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴したことが分かった。元少年は出版差し止めを求める仮処分申請を同地裁に申し立てているが決定は出ていない。
提訴は10月15日付。訴状などによると、増田氏らは元少年に対し、文書を発表する時は、原稿の内容などを事前に確認すると約束していたのに、守られなかったと指摘。さらに、出版された本は元少年の実名をタイトルに入れ、表紙にも大きくデザインするなどしており、少年の実名の出版物への掲載を禁じた少年法61条に反しているなどと主張している。
出版元側代理人の堀敏明弁護士は「まだ訴状を読んでいないが、これまで通り出版に違法性はないと主張していく」と話している。(朝日新聞2009年11月2日)
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〈来栖のつぶやき 2009/10/12〉
光市事件の元少年被告人の実名を記した(というよりタイトルにした)本が出版され---そのまえに弁護団が出版の差し止めを求めた---著者側は「被告人の了解は得た」と言い、弁護団は「被告人は了解していない」と主張。了解如何に係わらず、少年法に抵触する行為だ。売らんかな、の底意が見えている。これは先の草薙厚子氏の『ぼくはパパを殺すことにきめた』も同様である。醜悪な行為だ。
ところで、「虐待を受けて育った人は周囲の人の云うことに自分を合わせる、気に入られようとするものです」、ご自身も虐待の中で育ったある人から、私はそのように聞かされた。ならば、光市事件被告人も、おそらくは増田氏の申し出に「否と云えなくて」「歓心を買いたくて」実名出版を了解したのではないか。
不幸な境遇に育った少年である。父親の虐待に怯え、母親とは共依存の間柄で、独立し(解放され)た自分の意見など持ち得なかった(人に合わせることしか知らない)。
彼の弁護人の安田好弘氏は、2006年6月19日の講演「光市最高裁判決と弁護人バッシング報道・・・裁判から疎外された被告人」で、次のように云う。
「私は、少年と今年の2月27日、広島拘置所で会いました。彼はたいへん幼かったというか、大人ずれしていないというか、25歳になろうという年齢でしたが、見た目では中学生あるいは高校生といっていいくらいの印象をうけました。容貌、相貌もそうでした」
幼かった理由を
「18歳1ヵ月で逮捕され、そのまま独居房に隔離されて身柄拘束されているわけですから、成長の機会が完全に奪われたままであることも確かです」
と云われる、が、これは少し違うかもしれない。虐待のなかでは、心も体も育たない。逮捕後に成長の機会が完全に奪われたのではないだろう。
生まれてきてよかったと思える日々、楽しい、嬉しいと感じる日々が元少年に幾日あっただろう。増田氏には、被告人の哀しみが一つもお分かりになっていないのではないか。わずか25回の接見では無理もないが。被告人の孤独な佇まいが、如何にも無残だ・・・。
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◇ 光市母子殺害事件実名表記本「利益優先」「増刷行為=決定を待つのが出版倫理ではないか」 2009-11-12 | 光市母子殺害事件
◇ 光母子殺害実名本「安易に一線越えた」作家ら疑問の声も 2009-10-14 | 光市母子殺害事件
◇ 光市事件
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