産経ニュース 2014.12.24 07:42更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(1)前半】「記者証を見せなさい」誰何する女子中学生…“大虐殺”教材と授業は「口外禁止」令
「あなたの記者証をまず見せなさい」。南京市内で本紙記者が「南京事件」について話を聞こうと「外国の報道機関だが」と声をかけると、ジャージー姿の女子中学生はいぶかしげにこう言った。中国各地の取材現場で公安関係者らに誰何(すいか)されたことは何度もあるが、女子中学生に記者証提示を求められたのは初めてだった。
1937年12月の南京陥落の際に旧日本軍が引き起こしたとされる南京事件に焦点をあてた初の教材が9月以降、南京市内の学校で配布された。生徒らの受け止めを知りたく、2カ月近く江蘇省や南京市の関係当局にかけあったが、取材申請は却下された。
かくなる上は生徒への直接取材を試みるしかないと目立たないように声をかけたが、その女子中学生は「南京大虐殺の教材と授業について一切、外部の人に話してはいけないと学校で命じられている」とだけ答え、足早に立ち去った。その前にも10人以上に声をかけたものの、「外国の報道機関」と聞くだけでみなクモの子を散らすように逃げていった。
扶桑社教科書やり玉
94年から南京市などは毎年、旧日本軍が南京を占領した12月13日に、「南京大虐殺記念館」で犠牲者の追悼式典を行ってきたが、習近平政権は今年、「国家哀悼日」に“格上げ”した。記念行事として記念館の館長、朱成山らが新たに作った教材が「南京大虐殺死難者国家公祭読本」だった。
教材は3種類ある。小学5年生向け「血火記憶」と中学2年生向け「歴史真相」、そして高校2年生向け「警示思考」だ。
中国共産党機関紙、人民日報(電子版)によると、南京市内で約12万人がこの教材を使って学習した。同紙は「青少年に南京大虐殺の苦しみの歴史教育を強化することは、非常に重要」とする朱の話も伝えた。
高校2年生の教材は「日本の右翼勢力が南京大虐殺を否定している」との項目を10ページにわたって記述。扶桑社が出版した『新しい歴史教科書』をやり玉に挙げて「右翼勢力が歴史を歪曲(わいきょく)した」と指摘した上で、生徒に考え方を述べさせる授業を行っているようだ。
「模範解答」の発言
国営新華社通信が報じた南京第一中学(中国では高校も含めて中学と呼ぶ)の高校2年の授業では、日本に短期留学した経験があるという女子生徒が、「少数だが日本人には軍国主義の血が流れており、日本の右翼分子は強烈な反中感情をみせる」と話した。
男子生徒は、「国家は真に強大となり他国を心服させて初めて世界の最前線に立てる」と答えた。新華社電の伝える発言が「模範解答」だとすると、教材の狙いが透けて見える。
匿名を条件に取材に応じた教材作成に関わった学識経験者は「生徒に日本への恨みを抱かせることを目的にはしていない。南京大虐殺の歴史的事実を教えるとともに、中国がいまや強大な国になったことを伝えるための読本だ」と語った。今年に「国家哀悼日」と特別な教材がそろったのは、来年の戦後70周年に向け、国威発揚のねらいがあるといえそうだ。
「国家の統一見解」以外の個人の感想や考え方が外国人、ましてや日本人に漏れ伝わることは不利だと考えた当局が、学校側に生徒への「口外禁止」を厳命したと考えれば、生徒が話をしたがらなかった訳が分かる。教材の配布は来年以降、江蘇省から全土の学校へと広げられる計画だ。
* * *
中国内外で南京事件などを使った「宣伝戦」が活発に繰り広げられている。歴史戦第8部はこれらの動きに焦点をあてる。
【用語解説】南京事件
1937(昭和12)年12月13日、当時の中華民国の首都・南京陥落後、旧日本軍の占領下にあった最初の6週間に起きたとされる事件。犠牲者数について中国側は「30万人」と主張するが、平成22年に発表された日中歴史共同研究の報告書には「日本側の研究では20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている」とある。
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産経ニュース 2014.12.24 09:30更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(1)後半】中国中央テレビに登場した元朝日記者「“虐殺”の記憶」今も説き続け…
国家レベルに格上げされた南京事件をめぐる宣伝戦は教育現場だけにとどまらない。江蘇省南京市の「南京大虐殺記念館」は7月、インターネット上で事件を多角的に取り扱ったサイト「国家公祭網」を開設した。疑似的な献花ができるほか、生存者の証言などさまざまな情報を公開している。
9月に同サイトはスマートフォンのアプリでも見られるようになった。若者への浸透を狙ったものだ。
7月にはマンガ『南京1937』が出版された。事件の生存者、夏淑琴(85)の証言などが基で、133ページ全編を通じ、旧日本兵が行ったという強姦(ごうかん)や殺戮(さつりく)も含む残虐なシーンが一方的に“史実”として描かれている。
夏は12月13日に「南京大虐殺記念館」で行われた追悼式典で国家主席、習近平とともに、青銅製の巨大な鼎(かなえ)の追悼モニュメントの除幕に立ち会った。
12月7日には歴史公文書を扱う国家档案局が公式サイトでネット動画の配信を始め、当時の南京住民が残したとする写真や記録などを公開した。その中でも注目されたのが、陥落前後の南京の様子をつづった日記を紹介した映像だ。
37年当時、62歳だった執筆者の程瑞芳は南京城内の金陵女子文理学院で学生寮の監督をしていたという。戦時下におかれた女性による日記という観点から、中国版『アンネの日記』と呼ばれ始めている。中国が南京事件を、ナチス・ドイツのホロコースト(ユダヤ人大虐殺)と同列に扱おうとする狙いがうかがえる。
「世界文化遺産に」
南京市が12月8日に「南京大虐殺記念館」と周辺地区330ヘクタールの新たな都市開発計画を発表した際、当局者はこの地区が「アウシュビッツ強制収容所と同じく世界文化遺産になってほしい」と述べた。南京市は国連教育科学文化機関(ユネスコ)に記憶遺産として申請する準備も始めている。
習は3月の訪独時にベルリンで演説し、中独関係に関わりのない南京事件に言及し「30万人以上が殺害された」と強調した。国際社会に旧日本軍の「残虐行為」を宣伝することで、世界の世論を誘導し、日本に対する包囲網を構築しようとしている。
誤りの事実「なし」
中国共産党の「喉と舌」とされる国営メディアの報道で、12月13日前後は「日本人による証言」が目立った。国営新華社通信は記者を日本に派遣し、事件に関する日本側の研究者や、加害者としての反省を説く日本人活動家、旧日本軍人の「証言」などを12回にわたって11月から報道した。
京都の真宗大谷派(東本願寺)教学研究所の研究員、山内小夜子は新華社の取材に、「小泉(純一郎元首相)や安倍(晋三首相)による靖国神社参拝は違憲だ」と語った。山内は12月9日、「南京大虐殺記念館」が行った今年の「特別貢献賞」を受賞した。11人の受賞者のうち唯一の日本人だという。
過去の受賞者には「南京大虐殺」を定着化させた『中国の旅』などの著書がある元朝日新聞記者の本多勝一もいる。
本多は中国中央テレビ(CCTV)が12月12日から5回連続で放送した番組「1937南京記録」に登場した。インタビューの中で、本多は「私が書いた文章にもし誤りがあれば訂正してもよいが、誤ったとの事実は存在しない」と言い切った。
番組は「本多は今も日本国民に南京大虐殺の記憶を説き続け、右翼勢力から攻撃を受けている」と好意的に紹介した。
こうした日本人の声を報道で強調する意図を解くカギは、12月13日の式典で習が行った演説にある。
「極めて野蛮で残虐である日本の侵略者に偉大な愛国主義精神を持つ中国人民は屈せず、侵略者と徹底的に戦うとの闘志で抗日救国を行った」
「一つの民族の少数の軍国主義分子が侵略戦争を起こしたことをもってこの民族を敵視すべきではない」
72年の日中国交正常化にあたって毛沢東や周恩来が用いた「軍国主義者と一般人民を区別する二分法」と呼ばれる考え方を改めて持ち出した。歴史認識では一歩も譲らない一方で、「反省する」日本人には好意を示し、日本国内を分断する狙いがみえる。
国家を挙げて「宣伝戦」を展開する中国の姿勢は明確だ。(敬称略)
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2014.12.25 07:15更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(2)前半】習近平中国が血道を挙げる「勝利館」建設“抗日ビジネス”
「(南京)大虐殺記念館のような悲惨な記憶ばかりではなく、中国が勝利国であることを強調する記念館を造るべきだ」
今年はじめ、中国国家主席、習近平は周辺にこんな指示を出した。共産党関係者が明かしたもので、南京市にある「南京大虐殺記念館」の隣で進められている「抗日戦争勝利館」の建設は、習肝いりのプロジェクトだという。
中国は今年から9月3日を「抗日戦争勝利記念日」と定めた。「勝利館」は来年の記念日までの完成を目指している。この日に開かれる式典は「史上最大規模になる」と中国メディアは予測するが、開催場所は決まっていない。記念館関係者は「式典にはロシア大統領、プーチンや韓国大統領、朴槿恵(パククネ)も招待されていると聞いている。ぜひ南京で開きたい」と話す。
「勝利館」は当初、1千億円以上の予算が組まれたが、土地の立ち退き問題などが続き、2度予算が追加されたとの情報もある。
文化財などを管理する国家文物局は8月に北京で「抗日文化財の保護と利用」をテーマとするシンポジウムを開催した。各地で残っている日中戦争時代の監獄、兵器工場、裁判所などをいかに記念館などに改修し宣伝するかの議論が交わされた。
文物局長、励小捷は「抗日文化財には国民を教育し、啓発する重要な役割がある」と強調した上で、今年末までに全国で新たに9つの抗日記念館、展示館、29カ所の抗日スポットがオープンすることを明らかにした。すでにあるものと合わせると、国が認定する抗日施設は224カ所となる。省や市などの認定を加えると、全国の「抗日施設」は千カ所を軽く超えるといわれている。
「抗日戦争勝利記念日」の式典の開催場所として、「私たちの所こそふさわしい」と名乗り出ている場所もある。湖南省芷江(しこう)県だ。1945年8月21日、旧日本軍少将、今井武夫が降伏覚書に署名した町で、すでに小さな記念館があるが、地元はこれを拡大することを計画しているという。同省選出の全国人民代表大会代表(国会議員)、蒙蘭鳳は3月の全人代で同県を「抗日戦争勝利の地」と指定することを提案した。
抗日記念館を造り、大規模な記念イベントを開催することは、地元指導者の業績になるだけではなく、国から資金援助を得られ、観光客誘致にもつながる。
北京の人権派弁護士は過熱する“抗日ビジネス”を痛烈に批判する。
「文化大革命や天安門事件など記念すべき事柄はあるのに、政府は国民の記憶から消し去ろうとしている。今頃になって、抗日記念館ばかりを造ることは時代錯誤というほかない」
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2014.12.25 08:35更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(2)後半】台湾人冷ややか中国「抗日共闘の誘い」…「日本より、中国の外省人支配の方がずっと厳しかった」
台湾引き込み 共闘アピール
北京市の中心部から南西へ約20キロ離れた場所にある盧溝橋は、1937年に日中戦争が勃発した場所として知られる。すぐ近くには敷地面積2万6千平方メートルの巨大な「中国人民抗日戦争記念館」がある。中国政府による国家プロジェクトとして建設され、戦争勃発50周年記念日の87年7月7日に開館した「愛国主義教育基地」の一つである。
北京では近年、朝の散歩で公園に入るのにも5元(約90円)ほどのチケットを買うのが一般的になっている。ところが、大金を投じて建設された記念館は、全国各地の抗日記念館と同様、無料で見学できる。
館内には「日本軍暴行ホール」「抗日烈士ホール」など複数の展示室があり、大きなパネルや復元された現場模型が飾られている。中には直視できないほどの悲惨な写真や、日本の歴史学者から「修整されたもの」と指摘された写真も「日本軍の蛮行の証拠」として飾られている。
12月中旬、極寒の中、河北省から来たという小学生を乗せたバス数台が記念館にやってきた。入館する子供たちに女性教師は「中に入ったら笑ってはいけない。日本軍が中国で何をしたのかをしっかりとみるように」と指示した。
親日感情が強く
記念館の東側では、昨年末から工事が急ピッチで進められている。関係者によれば、建設されているのは「台湾館」。中央政府から直接指示された計画で、来年9月3日の「抗日戦争勝利記念日」までに完成しなければならないという。
同年9月3日には同館で大規模な記念行事が開催される予定。その際、台湾の指導者を招待し、中台の“対日共闘”の場面を国内外にアピールすることが中国政府の思惑とみられる。
同館関係者は「国民党の副主席クラスには来てもらいたい。抗日戦争の勝利に台湾同胞も大きく貢献したことを国民に広く知ってもらいたい」と話す。
「中華民族の偉大なる復興」など民族主義をあおるスローガンを掲げる習近平政権は、国内に向けて、台湾が50年間(1895~1945年)も日本に植民地支配を受けた歴史を「民族的な屈辱」と喧伝している。
しかし、台湾の一般民衆は日本にあまり厳しい感情を持っておらず、むしろ親日感情が強い。台湾島内に抗日記念館は一つもないのがその証拠といわれる。
敷地確保できず
中国の対台湾関係者によると、中国当局は当初、台湾の親中的な政治家や企業家に、台北などで抗日記念館の建設を呼びかけた。資金支援も示唆したが、敷地が確保できないなどの理由で、進展しなかったという。
そこで、中国当局は台湾の人たちが日本の植民地支配に抵抗したとされる写真や記念品、当時の日本政府が台湾で発行した旅券なども「皇民化の証拠」として大量に買い集めた。抗日戦争記念館の副館長、李宗遠は中国メディアの取材に、これまでに同館のスタッフを計3回台湾に派遣し、約700点の展示物を集めたことを明らかにした。
李は「台湾同胞が日本の植民地支配に抵抗した努力を反映しており、両岸の歴史交流に大いに役に立つ」と強調する。
中国当局のやり方に多くの台湾人は冷ややかな反応を示している。ある北京在住の台湾ビジネスマンは「日本の後に中国からやってきた外省人政権の支配のほうがずっと厳しかったと思っている。台湾人が抗日戦争の勝利に大きく貢献したというのは嘘だと思うし、台湾館ができても行く気にならない」と話す。(敬称略)
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2014.12.26 07:38更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(3)前半】アイリス・チャンの“業績”を踏襲せよ! 「ホロコースト」と結びつけ反日攻勢
「南京大虐殺はアジアのホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺)だ」
壇上の発言者が声のトーンを上げると、多くの参加者がうなずいた。米カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のミルピタス市にあるホテルの会議室。先月14~16日、中国系の反日団体「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」の2年に1度の研究会が開かれた。参加したのは北米やアジア、欧州の代表や中国の歴史学者ら約60人。
抗日連合会の幹部はこれまでも、南京事件とホロコーストを結びつける発言を繰り返してきた。ホロコーストを学ぶ機会の多い欧米を舞台に反日活動を展開するうえで、最も理解を得やすい手法だからだ。
壇上の発言者は続けた。
「われわれの力はまだまだ弱い。もっと力を注がなければならない」
参加者の一人は本紙の取材に「抗日連合会は今後『ハード』と『ソフト』の両面で国際社会に訴えていくのだと感じた」と話した。
ハード面とは博物館などのハコモノの設置だ。サンフランシスコでは、女性実業家、フローレンス・ファン(中国名・方李邦琴)を中心に抗日連合会も関与する形で、中国以外で初めて抗日戦を顕彰する「海外抗日記念館」を来年8月に開館する計画が進んでいる。
カナダ・トロントからの参加者も同様の記念館を設置したいと表明したといい各国に広がる恐れもある。
ソフト面では「南京大虐殺」や「戦時中における日本軍の蛮行」を宣伝する教材やビデオなどの発行、普及が計画されている。
登壇者は、中国政府が6月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に「南京大虐殺」と「慰安婦」を登録申請したことに触れ「登録が認められれば、(各国の)歴史教科書にも盛り込みやすい」と、抗日連合会としても働きかけを強める考えを示した。
1994年に発足した抗日連合会は設立20年の節目を迎えた。この間、米国や諸外国で反日宣伝活動を行ってきた。中国系米国人ジャーナリスト、アイリス・チャン(故人)の著書『ザ・レイプ・オブ・南京』(97年)の宣伝、販売はその「成功例」といえる。
「日本軍は南京で30万人の市民を虐殺し、2万-8万人の婦女子を乱暴した」などと書かれた“歴史”は事実誤認や無関係の写真掲載が出版当初から問題となったにもかかわらず、米メディアが称賛し、「日本軍の残虐さ」を植え付けるのに一役買った。
「アイリス・チャンがやったことを、われわれは踏襲しなければならない」
登壇者は参加者に向かってそう訴えた。会場にはチャンの両親の姿もあったという。(敬称略)
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2014.12.26 08:30更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(3)後半】「40万人虐殺」米の教科書に堂々と載る屈辱 誤りは断てるか
米カリフォルニア州サンフランシスコ近郊のロスアルトス市の小高い丘の上にある広大な墓地。緑の芝生の間に整然と敷き詰められた墓碑の中に、アイリス・チャンの墓はあった。
「最愛の妻で母、作家、歴史家、人権活動家」。墓碑にはそう刻まれている。
同州サンタクララの自宅近くの路上に止めた乗用車の中で、拳銃自殺してから10年。命日の先月9日には親類や知人らが墓前に集まり、追悼した。
その様子を報じた中国メディア「人民網」によると「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」創設メンバーのイグナシアス・ディンもその場を訪れ、チャンと著書『ザ・レイプ・オブ・南京』についての思い出を語った。
「アイリスは小さい頃から祖母や父母から南京大虐殺について聞かされ、ずっと興味を持っていた。彼女は米国で何冊もの本を読んだが、英文の本の中には1冊たりとも日本軍の南京での暴行に関し報告はなかった。教科書にもなかった」
だから、チャンは「歴史を紹介する機会を作ろうとしたのだ」と。
日本の学者や歴史家らが再三、『ザ・レイプ・オブ・南京』の記述や写真の「誤り」や「偽り」を指摘したにもかかわらず、抗日連合会は宣伝、販売を強化し、米メディアを効果的に利用した。主要メディアが大々的に紹介することで、ベストセラーになり、全米各地の大学や図書館にも置かれるようになった。その結果「南京大虐殺」は米国の教育現場にも“史実”として顔を出している。
米大手教育出版社「マグロウヒル」(本社・ニューヨーク)が出している高校世界史の教科書「トラディションズ・アンド・エンカウンターズ(伝統と交流)」。この教科書には、旧日本軍が戦時中、慰安婦を強制連行したとする記述があり、日本の外務省が「不適切な記述」として、先月、記述内容の是正を要求したばかりだ。南京事件に関する記述も載っており、その項目はチャンの著作と同じ「ザ・レイプ・オブ・南京」と書かれている。
《日本軍は2カ月にわたって、7千人の女性を強姦(ごうかん)し、数十万人の非武装兵士と民間人を殺害、南京の住宅の3分の1を焼いた。日本兵の銃剣で40万人の中国人が命を失った》
南京住民は、「戦争への情熱と人種的優越感に駆り立てられた日本軍」の被害にあったとされ、その象徴が「ザ・レイプ・オブ・南京」だと主張されている。
南京事件から77年が経過した今月13日、南京市の「南京大虐殺記念館」での追悼式典で国家主席、習近平は「30万人の同胞が痛ましく殺戮(さつりく)された」と述べたが、その数字を上回る記述が米国の高校の世界史の教科書にあることは深刻だ。
慰安婦の項目にはこんな記述もある。
《慰安所設置のきっかけは、南京大虐殺からきた。多くの中国人女性が強姦された》
ロサンゼルスで中韓の反日行動を阻止しようと活動している日本人男性は「外務省は出版社に慰安婦の記述について抗議したというが、『南京』の件も一緒に是正要求したのだろうか。慰安婦についてだけだと、南京の記述は認めたことになってしまうのではないか」と危機感を募らせる。
サンフランシスコのチャイナタウンにある「文化センター」で今月13日、抗日連合会などが主催して南京事件の犠牲者を追悼する恒例の「南京祭」が開かれた。会場には「日本軍が占領した南京」や「虐殺」の写真が展示され、赴任して間もない駐サンフランシスコ中国総領事の羅林泉やサンフランシスコ市議、カリフォルニア州議会議員ら約400人が訪れた。
「アイリス・チャンの本で巻き起こした『南京大虐殺』キャンペーンを、戦後70年を機に、もう一度やろうとしているようだった」
会場を訪れた男性はそう語った。(敬称略)
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産経ニュース 2014.12.28 09:38更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(4)前半】騒動に巻き込まれた英国人
中国が主張する「南京大虐殺」は「事実ではない」と主張する英国人ジャーナリストがいる。米紙ニューヨーク・タイムズ元東京支局長で日本滞在50年のヘンリー・S・ストークスだ。「歴史の事実として『南京大虐殺』はなかった。中華民国政府が捏造したプロパガンダ(謀略宣伝)だった」と強調する。
昨年12月に発売した著書『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』(祥伝社新書)は10万部を超えるベストセラーとなった。ところが、この本をめぐってストークスは今年5月、共同通信の記事により「歴史騒動」に巻き込まれた。
共同通信が5月8日に配信した記事で、問題とした記述は次の通りだ。
「国際委員会の報告によれば、南京に残っていた人口は、南京戦の時点で20万人だった。しかし、南京が陥落してから人口が増え始め、翌1月には、25万人に膨れ上がった。戦闘が終わって治安が回復されて、人々が南京へと戻ってきたのだ。このことからも『南京大虐殺』などなかったことは、明白だ」
共同はこの箇所について「著者に無断で翻訳者が書き加えていた」と伝えた。同書は国際ジャーナリストの藤田裕行が翻訳した。
翌9日、ストークスは祥伝社を通じ「共同通信の記事は著者の意見を反映しておらず、誤り」「本書に記載されたことは、全て著者の見解。訂正する必要はない」との声明を発表した。
藤田も「共同の記者には問題とされた部分についてのストークスの英文見解をEメールし、誤解ないよう電話で念押しをした。記者は『指摘があったことは了解した』と答えたが、直後に無視し記事を配信した。明らかに意図的な捏造で悪意のある虚報だ」と語る。
共同通信社総務局は9日、「翻訳者同席の上で元支局長に取材した結果を記事化した。録音もとっている」と反論した。
あれから7カ月、ストークスは「記者の質問の趣旨を誤解して答えた。だから共同の記事の内容は自分の意見ではない」としたうえで、「南京大虐殺」がなぜ「事実でない」との結論にたどり着いたかを語り始めた。(敬称略)
2014.12.28 11:10更新
【歴史戦 第8部 南京「30万人」の虚妄(4)後半】「責任は敵前逃亡した蒋介石に」 NYタイムズ元東京支局長に聞く
--なぜ『南京大虐殺』は事実ではないのか
「文献によると、南京市内のあちこちで散発的な暴力行為はあったが『大虐殺』という言葉を使って南京で起きたことを語るべきではない。虐殺はとても血なまぐさく目撃した人の記憶に残るものだが、むしろ日本軍が占領したことで、治安が回復した。『虐殺』より『事件』と呼ばれるべきだ」
--その理由は
「そもそも国民政府の蒋介石や軍幹部が首都陥落直前に敵前逃亡し、南京ではあまり戦闘はなかった。中国兵が軍服を脱いで(民間人に偽装した)便衣兵や不良捕虜となったため、日本軍は処断を余儀なくされた。こうした捕虜の処断は国際法に準じて行われたが、大量に処断された。このことは悲惨だった。ただし、日本軍による中国人の処断の数について中国政府が主唱し、一部の識者が追随している万の単位を超えるようなものではなく、20万、30万人という虐殺などあったはずはない。中国の反日プロパガンダ(謀略宣伝戦)だ。(事態を招いた)責任は第一義的に敵前逃亡した国民政府にある。日本軍だけに責任を負わせるのは非道で、蒋介石の責任が問われるべきだ」
--「外交は無形の戦争である」と語った蒋介石は国際情報戦に力を入れた
「国民政府は戦わず情報戦を仕掛けた。中央宣伝部が巧みに欧米のジャーナリストを取り込み『大虐殺』を捏造した」
英語で立場発信を
--著書では、慰安婦問題について「実体は、『性奴隷』では全くない。『売春婦』だ」と記した
「中国と韓国は日本が反論しないため、捏造してプロパガンダを繰り返し、欧米のメディアが追随している。『南京』も『慰安婦』も、このままでは世界から糾弾され続ける。日本は全ての事実を明らかにし、英語で日本の立場を世界に発信してゆくべきだ。訴え続けなければ歴史的事実として確定してしまう」
--『虐殺』の存在を否定した欧米人ジャーナリストとなった
「この10年で北村稔、東中野修道ら日本の学者によって研究が進み、中国側史料からもいわゆる『虐殺』はなかったということが明白になってきたからだ。日本を深く知れば知るほど、『南京虐殺』に対する認識が変わった」
--他の欧米ジャーナリストから批判されたか
「出版以来、外国特派員の同僚や英国の友人から『クレージー』『子供じみている』など多くの批判を受けた。しかし、仲間から『リビジョニスト(歴史修正主義者)』『右翼』などと呼ばれようと自分の主張は変えない。この主張に自分の存在をかけている。たとえ1人で孤立しても、それを誇りに、信念を持って世界に伝えたい」
東京裁判は復讐劇
--「勝者の裁き」を受け入れた「東京裁判史観」からの脱却を著書で訴えた
「来日当時は戦勝国史観を疑うことなく信奉していたが、半世紀にわたり日本と日本人を知るうちに、そもそも東京裁判は戦勝国の復讐(ふくしゅう)劇であると考えるようになった。戦勝国が全能の神であるかのように日本の罪を裁くことに違和感を覚えた。実際にインド人判事のラダ・ビノード・パールは『全員無罪』とした。オーストラリア人高裁判事のデール・スミスは30年研究して『司法殺人?』と題する本を出版している。ところが戦後の日本が東京裁判に基づいた歴史観を受け入れたかのような政治・外交姿勢を取り続けているのは、情けなく愚かなことだ。史実に反するプロパガンダである東京裁判史観から脱却しなければいけない」
--具体策は
「外務省はじめ政府が真実を世界に発信しなければいけない。国を挙げて宣伝のためのシンクタンクを設立するのも一考だ」
【プロフィル】ヘンリー・S・ストークス
1938年英国生まれ、61年オックスフォード大学修士課程修了後、62年英紙フィナンシャル・タイムズ社に入社し、64年に初代東京支局長に就任。その後も英紙タイムズや米紙ニューヨーク・タイムズの東京支局長を歴任した。作家の三島由紀夫とも親交があった。
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この企画は岡部伸、上海・河崎真澄、田北真樹子、ロサンゼルス・中村将、北京・矢板明夫が担当しました。次回は南京攻略に参加した日本兵の証言を特集します
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◇ ヘンリー・S・ストークス 【目覚めよ日本】慰安婦問題 南京大虐殺 東京裁判 三島由紀夫 安倍首相の実力 2014-04-20 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 【歴史戦 第7部 崩れ始めた壁】慰安婦強制連行 世界に浸透してしまった誤った認識を覆すのは簡単ではない 2014-10-31 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第6部「主戦場」米国】 中国が正面に 狙いは「日米離反」 終わらない「慰安婦」糾弾 2014-09-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第5部 「朝日検証」の波紋】 2014-08-25 | メディア/ジャーナリズム/インターネット
◇ 【歴史戦 第4部 利用される国連】慰安婦問題世界拡散は、左派系市民団体による国連働きかけが原因 2014-07-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第3部 慰安婦・韓国との対話(1)】 元慰安婦、死してなお反日の道具 / 日常溶け込む反日 2014-06-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第2部 慰安婦問題の原点 1~3】慰安婦問題を広めた人たち 吉田清治氏 千田夏光氏 朝日新聞 2014-05-24 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
◇ 【歴史戦 第1部 河野談話の罪 1~5】裏付けなき糾弾許した日本外交 名誉のため正面から戦っていくしかない 2014-04-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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