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名古屋地裁判決文【確定判決前】 被告人 勝田清孝 昭和六一年三月二四日宣告 

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1審 名古屋地裁判決文 被告人 勝田清孝

昭和六一年三月二四日宣告 裁判所書記官 五藤一彦
昭和五八年(わ)第一四四号、第二七三号、第四三六号、第六六六号、第六九一号、第一一四一号、第一七五九号、昭和五九年(わ)第四五七号

判 決

  本 籍  京都府相楽郡木津町(略)
  住 居  京都市山科区椥辻東潰(略)
  無 職  勝 田 清 孝
  昭和二三年八月二九日生

  右の者に対する強盗殺人、同未遂、殺人、強盗強姦、強盗致傷、強盗、同未遂、窃盗、公務執行妨害、住居侵入、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反被告事件について、当裁判所は、検察官京秀治郎及び同山田弘司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主 文
  被告人を判示第一及び第二の各罪につき、それぞれ死刑に処する。
 押収してあるダイヤようの裸石一個(昭和五八年押第二二八号の一七一)は被害者識名ヨシ子の相続人に、拳銃一丁(同号の一四)、実包(同号の一五)及び弾丸二個(同号の二五及び二九)は、被害者梶浦(旧姓高橋)義明にそれぞれ還付する。

理 由
 〈被告人の身上経歴等〉(略)

 〈各犯行までの経緯及び罪となるべき事実〉

 第一 確定裁判前の事実

 一 中村博子強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、昭和四七年九月一三日午前二時ころ、金品窃取の目的で、普通乗用自動車(ギャランFTO)を運転して京都市東山区山科御陵別所町(現在山科区御陵別所町)三四番一及び三所在の河野駐車場南側路上に至り、同所に駐車し、約三時間付近を徘徊、物色し、数軒のアパートに侵入したものの目的を果たさず、更に付近を徘徊するうち、同町一〇〇番地の五所在の土居玉井所有のアパート裏の通路に入り込み、その隙間から室内灯の消えた同居室内を覗き込んだところ、ハンドバッグがあるのを見てこれを窃取しようと企てた。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、同日午前五時過ぎころ、前記中村博子方居室内において、手袋をはめた手で右ハンドバッグを窃取しようとしたところ、ベッド上で寝ていた同女が目を覚まし、「泥棒」と叫んだため、咄嗟に同女をその場に押し倒して、その顔面、頸部を両手で強く押さえつけ、「声を出すな。金を出せ」などと脅迫し、その反抗を抑圧して金品を強取しようとしたが、同女が恐怖の余り、「私の体でよければあげる」と言ったため、その姿態を見て劣情を催し、同女をベッド上に押さえつけ、顔を見られないように同女の顔面に枕を乗せたうえ、強いて同女を姦淫し、更にその直後室内灯を点灯して、右ハンドバッグ内から同女所有の現金一、〇〇〇円を強取したところ、同女が起き上がり被告人を睨みつけながら、「出て行って。警察に言ってやる」などと騒いだため、顔を覚えられた以上犯行の発覚を防ぐためには同女を殺害するほかないと決意し、付近にあったパンティーストッキングを同女の頸部に巻きつけ、よって、即時同所において、同女を絞頸により窒息死させて殺害したが、未だ官に発覚しない前の昭和五八年二月八日、愛知県警察本部司法警察員に対し右犯罪事実を申告して自首したものである。

 二 藤代鈴子強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、昭和五〇年七月初めころの深夜、金品窃取の目的で、義弟から借りた普通乗用自動車(サバンナ)を運転して、大阪府吹田市方面を徘徊、物色し、同市原町二丁目二、七五二番地の一(現在・同町二丁目五四番一)所在のマンション「プラザ千里山」を認めて、同マンション駐車場に同車を駐車させ、同マンション各室を物色したが、室内に侵入なかったため、同車に戻り、居住者の動静を見ながら運転席シートを倒して横になっているうち仮眠に陥ったが、折から帰宅した藤代鈴子(当時三五歳)から窓を叩かれ、「ここは、私の車を停める場所や。すぐ退けて」と注意されたため、しぶしぶ同車を移動させたものの、同女の言動に生意気な女だと立腹し、その腹癒せに同女方に空巣に入ろうと考え、同女の居室を確認したうえ、その二、三日後の同月六日午前零時三〇分過ぎころ、同車を運転して再度同マンション付近に赴き、居住者の目に触れるのを恐れて同マンションから少し離れた空き地に駐車させたうえ、手袋をはめ、同女方居室のほか各室の施錠の有無を確かめて廻ったがいずれも施錠されていたため、やむなく手袋を外して同マンション一階通路に下りて来た際、たまたま帰宅するため近づいてくる同女の姿を認め、直ちに同女のショルダーバッグをひったくろうと決意し、同通路手摺り内側に身を隠して同女を待った。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、同日午前一時過ぎころ、同通路において、同女の背後から同女が携帯していた右バッグをひったくろうとして、その手提げ紐を掴んで引っ張ったところ、同女が「泥棒」と叫んで振り向きざま、「あ、あんた」と言って右バッグを離さなかったため、右肩で同女に体当たりしてその場に転倒させ、両手で同女の口や首の辺りを押さえつけたが、同女がこれを振りほどこうとして激しく暴れ、叫び声を上げて抵抗したため、このうえは同女を殺害して右バッグを強取するほかないと決意し、付近にあった荷造り紐様の細紐をその頚部に巻きつけて両手で強く締めつけ、よって、即時同所において、同女を絞頚により窒息死させて殺害したうえ、同女所有の現金約一〇万円等在中の右バッグを強取したものである。

 三 伊藤照子強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、昭和五一年三月四日夕方、金品窃取の目的で、普通乗用自動車(トヨタ・センチュリー)を運転して名古屋に至り、数時間同市内を徘徊、物色した後、翌五日午前二時過ぎころ、同市中区新栄地内の千早交差点において、外車を運転して帰宅途中の伊藤照子(当時三二歳)を認めるや、同女の服装等から多額の売上金を持っている水商売の経営者と判断し、下車した後の隙を狙って同女から金員をひったくろうと企て、同車を追尾しながら両手に手袋をはめて準備し、同女が自宅である同区板横町二丁目四一番地(現在・中区千代田五丁目一六番地五号)所在の「第二鶴舞荘」から少し離れた駐車場に駐車させるや、付近路上に自車を停め、同女の帰路を予想して先回りし、民家の軒下で同女を待ち伏せた。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、同日午前二時三〇分過ぎころ、右「第二鶴舞荘」北側通路において、同女の背後から、同女が携帯していたショルダーバッグ及び紙袋をひったくろうとして、その手提紐を掴んで引っ張ったところ、同女が右バッグ等を離さず、悲鳴を上げて「泥棒」と叫んだため、「静かにしろ。声を出すな」などと脅迫し、同女を五、六メートル引き摺ったが、なおも同女が激しく抵抗して騒ぎ立てたので、同女から素顔をまともに見られたうえは同女を殺害して右バッグ等を強取するほかないと決意し、その場に同女を引き倒してその前頚部を両手で強く絞めつけ、更に同女が首に巻いていたスカーフ(昭和五八年押第二二八号一二八)でその頚部を緊縛し、よって、即時同所において、同女を絞頚により窒息死させて殺害したうえ、同女所有の現金約一二万円在中の右ショルダーバッグ等を強取したものである。

 四 増田安紀子強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、昭和五二年六月二九日昼過ぎころ、金品窃取の目的で、普通乗用自動車(フォード・マーキュリークーガー)を運転して名古屋市に至り、同日午後五時ころから同市内を徘徊、物色した後、翌三〇日午前二時前ころ、同市南区桜本町地内の路上に同車を駐車させ、盗みに入れそうな建物を探していたところ、同区笠寺町西ノ門四六番地所在の「鏡味ビル」を認め、両手袋をしたうえ同ビル一階から順次各室の施錠の有無を確かめているうち、同ビル四階四〇C号室増田安紀子(当時二八歳)方居室から寝巻姿の同女がドアの鍵を掛けないまま子犬を連れて階下へ降りてゆくのを認め、その隙に室内窃盗をしようと企てた。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、同日午前二時ころ、同居室内において、鏡台小引出内から同女所有の現金四万円を窃取して逃走しようとした際、帰宅した同女が大声で「泥棒。」と叫んで玄関方向に逃げようとしたため、罪跡を隠滅するためには、同女を殺害するしかないと決意し、やにわにその背後から、両手で同女の口、肩等を押さえつけて同女を同所北側寝室に引き摺り込み、布団の上に押し倒して、その頚部を右手で絞め、更に付近にあった細紐を同女の頚部に巻きつけて強く絞めつけ、よって、即時同所において、同女を絞頚により窒息死させて殺害したものである。

 五 識名ヨシ子強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、昭和五二年八月一二日夜、金品窃取の目的で、前記普通乗用車を運転して名古屋市に至り、同日午前一一時ころ、同市昭和区阿由知通三丁目一〇番地所在の飲食店「称もと」付近路上に同車を駐車させ同店で飲食したが、同店の西方に同区小桜町二丁目二九番地の二所在の「寿マンション」(現在・小桜レジデンス)を認め、同マンションで空巣をしようと企て、同日午後一一時四〇分ころ、変装用に用意した防止やサングラスを着用し、手袋をはめたうえ、同マンションの各室のドアの把手を回してみたが、いずれも施錠されており、やむなく窃盗を断念して、同マンションの三階廊下を階段の方に向かって歩いていた。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、同日午後一一時四〇分過ぎころ、同マンション三階三〇一号室識名ヨシ子(当時三三歳)方居室前廊下において、突然玄関ドアが開き、顔を出した同女から「あんた。何してるの」と声を掛けられるや、咄嗟に同女から金品を強取しようと企て、その肩を両手で掴んで同女を玄関口から室内に押し戻し、驚いて逃げる同女を南側和室のベッドの上に押し倒し、「静かにしろ。金を出せ」などと申し向けて脅迫したうえ、付近にあったタオルで覆面し、その際に玄関の方へ逃げた同女を再度ベッドうえに押し倒し、同所において、悲鳴を上げる同女の口に衣類(同号の一五八)を押し込み、その下半身を裸にし、更に付近にあったパンティーストッキング(同号の一五七)で同女の足を縛ろうとしたが、激しく抵抗する同女に覆面用のタオルとサングラスを剥ぎ取られて素顔を見られたため、このうえは同女を殺害して金品を強取するしかないと決意し、右パンティーストッキングを同女の頚部に巻きつけ、消防ロープ結索法の「八の字結び」に結んで緊縛し、よって、即時同所において、同女を絞頚により窒息死させて殺害したうえ、その右手指から同女所有のプラチナ台ダイヤモンド指輪一個(同号の一七一はその裸石、時価約四五万円相当)を抜き取り強取したものである。

 六 兵庫労働金庫強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、同僚に誘われて猟銃の取扱に関する講習を受け、昭和五二年一月、猟銃等講習課程修了証明書を付与され、そのころから、猟銃所持許可を有する友人と足繁く猟銃や射撃場に出かけていたが、同年二月ころ、猟銃と散弾実包を借り受けて一人で狩猟に行った際、将来狩猟に利用するつもりで散弾実包四発を返還しないまま自宅に保管していたところ、同年一一月初めころ、猟銃を使用して集金帰りの銀行員やスーパーマーケット内から金員を強取することを計画し、狩猟期間中に銃砲店前に駐車する自動車を狙えば猟銃を入手できると考え、狩猟期の到来を待って(一)の犯行により散弾銃を手にし、同月下旬ころ、自ら金鋸、電気ドリル、電気溶接機等を使用し、銃身及び銃把を一部切断するなどして、右散弾銃を携帯しやすく改造し、同月二八日ころ、奈良市内のテント店で釣竿袋と偽って右散弾銃用の銃袋を作らせ、同日夕刻、京都府内の雑木林において、自宅に保管しておいた前記散弾実包一発を使用して発射機能をテストした後、残りの散弾実包三発を右散弾銃の弾倉内に装填して準備したうえ、同年一二月初めころ、人気のない場所で集金帰りの銀行員に右散弾銃を突きつけ金員を強取しようと企て、その際の足代わりとして利用する自動車を入手するため、(二)の犯行を犯し、同月一二日正午ころ、右散弾銃の散弾実包一発を弾倉内から薬室内に移し、銃身をダンボールの切れ端で包んで銃袋に入れ、手袋をはめ、サングラスと帽子で変装したうえ、右窃取にかかる普通貨物自動車を運転して、大阪市に至り、約三時間にわたり同市内を走行して集金帰りの銀行員を狙ったが、機会を得られずやむなく自宅に戻り、翌一三日(三)の犯行を犯した。
 〈罪となるべき事実〉
 被告人は、
 (一)同年一一月二〇日午後六時三〇分ころ、軽四輪貨物自動車(スズキ・キャリー)を運転して、奈良市北市新道町六一番地所在の精宏社銃砲火薬店の近くに至り、同店前路上に駐車中の普通乗用自動車後部トランクが僅かに開いているのを認めるや、同所において、右トランク内から、尾崎 茂所有の自動装填式散弾銃一丁(同号の六四、SKB・一三〇〇VA型、銃番号S一三〇二六八〇、時価五万円相当)を窃取し、
 (二)同年一二月八日夜、新幹線を利用して名古屋に至り、同市内を徘徊して後記(三)の犯行に使用する自動車を物色し、翌九日午前六時ころ、同市中川区柳川町二丁目七三番地(現在・柳川町一、〇〇二番)所在の加野青果株式会社駐車場において、エンジンキーを付けたまま駐車中の池野清光管理の普通貨物自動車一台(時価五〇万円相当)を窃取し、
 (三)同月一三日午前一〇時三〇分ころ、前日同様に変装して窃取にかかる右自動車に乗って大阪市に至り、終日同市内を物色した後更に神戸市に至り、同日午後五時ころ、同市葺合区(現在・中央区)脇浜町二町目先路上において、軽四輪乗用自動車を運転走行中の兵庫労働金庫神戸東支店職員井上裕正(当時二五歳)を認めるや、その服装、所持品、車種等から同人が集金帰りの銀行員であることを見抜き、同車を約五〇〇メートル余り追尾し、同人が同町三丁目五番五号所在の川崎製鉄株式会社労働組合連合会館ビル駐車場に入るのを見て、付近に自動車を駐車させ、逃走に備えてエンジンを掛けたまま下車し、右散弾銃を銃袋から取り出して、安全装置のロックを外し、これに鉛管服を被せて隠し持ったまま同人の方に向かい、同日午後五時過ぎころ、同ビル北側通路において、黒色手提げ鞄を提げて歩いてきた同人と擦れ違いざまに同人に散弾銃を突きつけ、「静かにしろ。金を出せ。」などと申し向けて脅迫し、金員を強取しようとしたが、同人が「何をっ」と叫んで右手で銃身を掴み、左手で右手提げ鞄を振り回し、更に銃身を押して被告人を押し倒すなど激しく抵抗したため、同人を射殺するほかないと決意し、同人の胸部めがけて散弾一発を発射し、同人に左肺臓射創の傷害を負わせてその反抗を抑圧し、同人管理の現金合計四一〇万二、三六一円及び小切手二通(金額合計五一二万八、〇〇〇円)等在中の右手提げ鞄一個(同号の六七)を強取し、右射撃により、同月一五日午後四時五三分ころ、同町三丁目五番二二号所在の小柴外科病院において、同人を右傷害に基づく多量出血により死亡させて殺害したものである。

 七 瀬戸信用金庫強盗事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、猟銃を利用して、集金帰りの銀行員から金員を強取することを計画し、先ず(一)及び(二)の各犯行により散弾銃及び実包を入手した後、昭和五五年一月初旬ころ、自ら金鋸等を使用して銃身及び銃把に一部を切断して右散弾銃を携帯しやすいように改造し、銃番号をやすりで削り取り、京都府内の山林で前記散弾実包一発を使用して発射機能をテストし、その場で散弾実包二発を弾倉内、一発を薬室内に装填して準備したうえ、自動車の中から散弾銃を突きつけて金員を強取する方法を考えつき、同年二月一四日、その足として使う自動車を入手するため、名古屋市に向かう途中(三)の犯行により普通乗用自動車を窃取し、同車に前記散弾銃を積み替え、翌一五日昼ころまで同車内で仮眠した後、名古屋市内を走行して集金帰りの銀行員を物色し(四)の犯行を犯した。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、
 (一)昭和五四年一二月八日、普通乗用自動車(セリカリフトバック。以下「セリカ車」という。)を運転して名古屋市内に至り、銃砲店前に駐車する車両を狙っていたところ、同日午後五時四〇分ころ、同市中区内の曽根銃砲店前に駐車中の普通乗用自動車を認め、同車に猟銃が積み込まれているものと判断して様子を窺い、間もなく同店から出て来た鈴木登が同車に乗り込むのを見てこれを追尾し、同日午後五時五〇分ころ、同市千種区千種三丁目二七番三〇号先路上において、同人がエンジンを掛けたまま下車して近くの店舗に入るや、直ちに同車に乗り込んで発進させ、もって、同人管理の普通乗用自動車一台及び同車に積載の散弾実包一七五発(時価合計約二四一万一、九〇〇円相当)を窃取し、
 (二)更に猟銃を窃取しようと企て、同月二九日、セリカ車を運転して名古屋市内を走行していたところ、同日午後六時過ぎころ、同市千種区内のガソリンスタンドにおいて、駐車中のワゴン車内に猟犬が乗っているのを認め、同車内に猟銃が積み込まれているものと判断してこれを追尾し、やがて同車を運転していた鈴木實が猟銃を持って同車から降り、同市名東区西里町四丁目二六番地所在の同人方居宅に入るや、自らも下車して様子を窺い、間もなく同人及びその妻が相次いで同人方から外出するのを見て、その際に右猟銃を窃取しようと考え、同人方玄関先で「今晩は。」と声を掛けて室内に人がいないことを確かめたうえ、同日午後六時四〇分過ぎころ同人方居宅内において、同人所有の自動装填式散弾銃一丁(同号の八八、フジスーパーオートM二〇〇〇型、銃番号F〇五一七一五、時価約十六万円相当)を窃取し、
 (三)昭和五五年二月一四日、セリカ車を運転して三重県四日市市に至り、同市内を物色し、同日午後一〇時ころ、同市西浦一丁目三番一五号先路上において、エンジンを掛けたまま駐車中の伊藤尋之管理の普通乗用自動車一台(時価一〇〇万円相当)を窃取し、
 (四)同月一五日午後二時三〇分ころ、名古屋市瑞穂区瑞穂通六丁目一番地先の瑞穂運動場前交差点において、原動機付自転車に乗って走行中の瀬戸信用金庫瑞穂通支店職員津田嘉男(当時四三歳)を認め、その服装、所持品、車種等から同人が集金途中の銀行員であることを見抜き、同車を三〇〇メートル追尾し、同人が同区甲山町一丁目一番地所在の駐車場で黒色手提鞄を持って下車するや、同人が得意先へ集金に出かけたものと考え、同車付近に駐車して同人を待ち伏せ、同日午後三時五〇分ころ、同駐車場において、右手提鞄を携帯して戻って来た同人に対し、自車助手席窓から右散弾銃を突きつけ、「こっちへ来い。鞄を渡せ。来ないと撃つぞ。」などと申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧して、同人管理の小切手三通(金額合計二六万三、七二四円)及び収入印紙二一枚(金額合計二、一〇〇円)等在中の右手提鞄一個(同号の九一)を強取したものである。

 八 松坂屋ストア強盗殺人事件
 〈犯行までの経緯〉
  被告人は、引き続き前記散弾銃を使用して、スーパーマーケットから金員を強取することを計画し、昭和五五年七月三〇日午後五時ころ、軽四輪貨物自動車(スズキ・キャリー)を運転して名古屋市内に至り、同市名東区高社二丁目一二九番地及び一三〇番地所在の株式会社中部松坂屋ストア一社店を認めるや、同店から売上金を強取しようと企て、逃走経路を確認するため予め同店の周囲を走行して下見し、同店が道路を挟んで南館と北館の二棟に分かれ、閉店時刻は南館が午後一〇時、北館が午後七時で、南館の方が遅いことを知って、南館を襲うことに決め、その足として利用する自動車を入手するため同市内を走行して物色し、(一)の犯行により、普通乗用自動車を窃取し、同車に前記散弾銃を積み替えたうえ、同日午後九時三〇分ころ、前記一社店南館裏口付近に同車を停め、閉店後同館から最後に出て来る同店責任者を襲うため、同車内で待ち伏せし、やがて同館裏口から従業員三名に続いて出て来た同店課次長本間一郎(当時三五歳)が裏口に施錠するのを見て、同人が責任者であると判断し、同人を同店北館裏口まで追尾した後、一旦南館裏口付近に戻ってサングラスとフルフェイス型ヘルメットを着用して変装し、手袋をはめた手で右散弾銃を持って再度北館裏口付近に至り、(二)の犯行を犯した。
 〈罪となるべき事実〉
  被告人は、
 (一)同日午後八時ころ、同市中区栄五丁目一、一〇八番地所在の大東観光株式会社駐車場において、エンジンキーを付けたまま駐車中の普通乗用自動車を認め、自車を同区新栄一丁目四六番一七号所在の名昭油業株式会社昭和石油丸田町給油所に駐車させたうえ、同日午後九時ころ、前記駐車場において、阪井幸次管理の右普通乗用自動車一台(時価七〇万円相当)を窃取し、
 (二)同日午後一一時過ぎころ、前記松坂屋ストア一社店北館北側駐車場において、帰宅のため普通乗用自動車の運転席に着いていた前記本間に対し、前記散弾銃を突きつけ、運転席ドアを開けて銃身で同人の顔面を小突くなどしながら、「早く降りろ。静かにして言うことを聞けば何もしない。店の中の金庫を開けろ。売上金を出せ。」などと申し向けて脅迫し、その反抗を抑圧したうえ、同人を同店北館事務所内へ連行したが、同事務所内の金庫が開かず、同人が「ここの金庫には一〇〇万円位しか入っていない。南館の金庫には五〇〇万円位入っている。」と言ったため、付近にあった座布団で右散弾銃を包み隠して同人を同店南館事務所内へ連行し、同所において、同人から同事務所内の金庫のダイヤル番号が記載された金庫取扱説明書を受け取り、同人を床にうつぶせに寝させたうえ、自らダイヤル番号を合わせて金庫を開け、同金庫内から同店店長田口則澄管理の現金及び商品券金額合計五六七万八、九四六円を強取し、引き続き逃走するため、同日午後一一時三〇分過ぎころ、同人を前記窃取にかかる普通乗用自動車の運転席に乗せ、自らはその助手席に乗って同人の左脇腹に右散弾銃を突きつけながら、同人に同市中区方面に向かって同車を運転させ、前記給油所に依然自車が駐車してあることを確認したうえ、その付近に駐車できる場所を物色し、同区栄五丁目一九番地一一号所在の橋本久子方車庫を認めるや、翌三一日午前零時二〇分ころ、同車車庫内に右普通乗用自動車を駐車させ、逃走の機会を掴むため、同人に対し、「後ろへ行け。変な真似をするなよ。」と命じて同人を同車後部座席に移動させ、更に「ネクタイを外して足を縛れ。」と命じたが、間もなく同人の様子から足を縛ったものと判断して右散弾銃から左手を離し、着用していたヘルメットを脱ごうとしたところ、同人がいきなりその銃身を掴んで引っ張り、右散弾銃を奪おうとして抵抗したので、このうえは安全かつ確実に逃走するためには右散弾銃で同人を殺害するほかないと決意し、同日午前零時三〇分ころ、同車内において、右散弾銃の安全装置のロックを外したうえ、同人の胸部めがけて散弾一発を発射し、よって、即時同所において、同人を前胸部射創に基づく心・左肺・胸部大動脈等損傷により失血死させて殺害し、(三)法定の除外事由がないのに、同月三〇日午後一一時過ぎころから翌三一日午前零時三〇分ころまでの間、(二)記載の各場所等において、猟銃である右散弾銃一丁及び散弾実包三発を所持したものである。

⇒ 名古屋地裁判決文【確定判決後】 被告人 勝田清孝 昭和六一年三月二四日宣告


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