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「いつまでもお元気ですね」高齢者をおだて、社会保障予算を削る…超高齢化社会に対する巧妙なやり方

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「高齢者には未体験ゾーンの始まり」 五木寛之氏年頭特別寄稿
 日刊ゲンダイ 2015年1月1日Thu.  
 新しい時代がはじまろうとしている。
 「少子・高齢化社会」の声が高まる一方で、最近、正反対の意見もでてきた。
  六十代を高齢者とみなすのは時代おくれである、という説である。今後、六十五から七十代半ばまでは、高齢者、老人あつかいすべきではない、というのだ。
  たしかに周囲を見まわしても、元気な六十代、七十代は増えている。このグループに年金をあたえて、優雅な停年後の生活を保障する余裕は、もうないというわけだ。労働人口の枠をうんとあげて、七十代まで現役で働かせようという声が高まってきている。
  七十歳までを「中年」として、高齢者あつかいしない、といわれて、さて、喜ぶべきか、それとも腹を立てるべきか。
 「いつまでもお元気ですね」
 と、おだてておいて、医療や年金の保障をカットするというのは、たしかに超高齢化社会に対する巧妙なやり方ではある。
  そうか、おれはまだ老人じゃないんだ、世の中がそう認めてくれてるんなら、がんばってもうひと働きするか、と元気づく人も中にはいるかもしれない。
  高齢者、老人をいじめるのではなくて、おだててその気にさせる空気が、次第にひろがりつつあるような気がするのだ。
  格差社会における格差とは、経済の問題だけではない。老人にわずかな年金をあたえて、社会のお荷物あつかいするのは、老若格差である。しかし、あなたがたはまだ高齢者じゃありませんよ、とおだてて、最後の労働力の一滴までしぼりつくそうというのは、あこぎにすぎる。「最後の御奉公」という昔の言葉を、ふと思いだしてしまうのだ。
■高齢者をおだて社会保障予算を削る意図ではないか
 世界の先頭に立つこの国の高齢者対策は、私たちが感じている以上に国外から関心をもたれている。利口な日本人が、この問題をどのようにスマートに解決するか、各国がかたずを飲んで注目しているのだ。中国も、インドも、日本の対応をみつめている。
  六十代、七十代を高齢者あつかいしない、というのは、はたして喜ぶべき風潮だろうか。簡単にいうと、国は面倒をみないよ、ということではないのか。
  それだけではない。あなたがたはまだ十分に働ける、もうひとがんばりして世のため人のために勤めなさい、と、おだてつつ、社会保障の予算を削減しようという意図なのではあるまいか。
  老人の自立、ということを私は以前から言い続けてきた。国に依存すべきではないが、国民の権利だけは強く主張し、守らなければならない。
 歴史はくり返す、といわれるが、必ずしも同じようにくり返されるわけではない。若者をおだてて社会を前進させようというのが、戦後のこれまでの方向だった。いま私たちは、未曽有の体験ゾーンに突入しようとしている。それは老人を「楢山送り」するのではなく、尻を叩いて最後のエネルギーのすべてを吸いつくそうという社会である。
  高齢者も積極的に社会に参加すべきだ、と私は思っている。だが、それは社会的貢献としての活動に残されたエネルギーを注ぐことだ。それを可能にするための保障は、今よりさらに手厚くなされなければならない。未体験の序曲が、いままさにはじまろうとしているのである。
▽いつき・ひろゆき 1932年生まれ。「さらばモスクワ愚連隊」でデビュー。「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞。「青春の門・筑豊篇」で吉川英治文学賞、「親鸞」で毎日出版文化賞。
 ◎上記事の著作権は[日刊ゲンダイ]に帰属します
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