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トヨタ燃料電池車(FCV)特許すべての無償提供 / トヨタでも「燃料電池車」を普及させられない理由

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「ものすごい英断」と驚きの声、トヨタ燃料電池車の特許無償開放
 REUTERS 2015年 01月 7日 00:34 JST  
[東京 6日 ロイター] - トヨタ自動車が単独で保有する燃料電池車(FCV)関連の特許すべての無償提供を6日発表したことについて、日系自動車メーカー各社からは「ものすごい英断」の志賀俊之副会長)などと驚きの声が多く上がった。
  FCVは燃料となる水素のインフラが必要になるため、台数の拡大が急がれている。トヨタは1社の努力だけでは限界があり、他社を巻き込むことで市場創造を加速したい考えだが、次世代エコカー戦略に対する自動車メーカー各社の思惑はさまざま。トヨタの狙い通り、実際に競合他社がトヨタの技術を採用するかどうかが注目される。
  日本自動車工業会(自工会)の池史彦会長(ホンダ会長)は同日、自工会主催の賀詞交歓会で記者団に対し、「将来を考えると、燃料電池車はポテンシャルが大きい」とし、特許の無償開放は参加企業を増やし、燃料電池車分野で日本メーカーによる国際標準化がより進むとして「歓迎すべき動き」と評した。
  日本メーカーはこれまで自前主義が多く、個社で技術を囲い込んだ結果、「ガラパゴス化して世界標準になりにくかった」と日産の志賀副会長は指摘。特許の無償開放によって「量が増えてコストが下がり、燃料電池が普及する。そうすればインフラがついてくる」と述べ、トヨタの判断は「非常に賢い」として拍手を送った。
  自動車メーカーは通常、技術流出などを警戒し、特許は有償かつ提携先に限ることが多いのが一般的。トヨタにとっても、不特定の企業などに対して無償で特許を提供するのは今回が初めてで、異例の決断だ。
  しかし、トヨタの特許技術を実際に使うかどうかを問われると、各社幹部らは「まだ中身がわからないが、現実はなかなか(難しい)」などと口が重い。電気自動車(EV)を推進している日産の志賀副会長も、自社としては「必要であれば」と述べるにとどめ、むしろ採用するのは海外メーカーだったり、「自動車メーカーよりもサプライヤーが使うのではないか」との見方も示す。
  トヨタの技術を採用することはトヨタに事実上、次世代エコカーの本命とされるFCVの主導権を握られることにもつながりかねず、各社の慎重な姿勢が垣間見える。
  また、FCVの開発には莫大な資金が必要なため、経営資源の少ないメーカーは「まだ取り組める段階ではない」(富士重工業幹部)という。ホンダ、日産は開発を進めて一般向け販売を予定しているが、富士重やマツダなどはFCV参入は未定だ。
  FCVを着実に皆で心一つに進めていくことこそ、水素社会の実現、持続的成長につながる――。トヨタの豊田章男社長はFCVの普及加速に期待を込めるが、狙い通りに進むかどうか。  (白木真紀)
 ◎上記事の著作権は[REUTERS]に帰属します
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トヨタ燃料電池車の特許提供 参入促し普及急ぐ
 中日新聞 2015年1月7日 朝刊
 トヨタ自動車が走行中に水しか排出しない燃料電池車(FCV)の関連特許の無償提供に踏み切る。開発した技術を囲い込むことが製造業の生命線だが、トヨタは方針を転換し普及を優先させる。トヨタは世界初の市販FCV「ミライ」を国内に投入したばかり。決断の背景には燃料の水素を供給する拠点整備を促し、自社技術の量産コストを下げる狙いがあるようだ。 (後藤隆行、太田鉄弥、平井良信)

      

 「参加者を増やすことが未来につながる」。トヨタの豊田章男社長は六日、特許を無償提供する理由を語った。対象となる特許内容は計約五千六百八十件。大半が心臓部の燃料電池、高圧水素タンクなどFCVの土台を支える基幹技術だ。システム制御では、開発陣が苦労を重ねた氷点下始動の技術も含む。
 日本政府やエネルギー業界は二〇一五年度末までに水素ステーションを百カ所整備する計画だが、その後の方針はまとまっていない。ミライの売れ行きや、一五年度中にも市販するホンダの動向などを見極めたいからだ。
 トヨタがFCV関連の特許を無償提供する期間は、市場導入初期の二〇年末まで。既にトヨタは独BMWと組んで次期モデルの開発に着手し、二〇年から市場投入する計画だ。その後、本格普及期に入れば「協調」から「競争」へ情勢が変わる。「次の(技術の)特許をどんどん取りに行く」(加藤光久副社長)と、先行逃げ切りの絵を描いている。
 ◎上記事の著作権は[中日新聞]に帰属します 
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トヨタでも「燃料電池車」を普及させられない理由
 PRESIDENT Online スペシャル 2014年7月15日(火)  
 著者  ジャーナリスト 井元康一郎=文
■トヨタ「燃料電池車」はコストダウンで700万円
 バッテリー式EVに続く次世代エコカーと言われる水素燃料電池車は、今度こそ発進することができるのか――。6月25日、トヨタ自動車が燃料電池車の生産型プロトタイプ(試作モデル)、「トヨタFCV」を発表した。
 加藤光久副社長は発表会のプレゼンのなかで「新型FCVセダン(トヨタが使用する燃料電池車の呼称)は08年に投入した『FCHV-adv』の20分の1。2010年に市販燃料電池車の開発に取り組んで以降、頑張ってここまで(販売価格700万円)たどりつけた。ファン・アンド・クリーンビークル(楽しく環境性能に優れたクルマ)をお届けしたい」と気勢を上げた。また、資源エネルギー庁燃料電池推進室の戸邉千広氏は、「エネファーム(家庭用燃料電池発電・給湯システム)が8万台設置ずみであるなど、燃料電池は日本が世界をリードしている分野。経産省としても導入支援に力を入れていきたい」と、後押しの意欲を見せた。
 燃料電池とは、水素、あるいは水素を含む化合物と酸素を反応させて水を作り、そのときに余る電子を電気エネルギーとして取り出す装置。排出ガスに含まれる物質の大半は水蒸気で、走行段階ではバッテリーEVと同様、ゼロエミッション(有害物質ゼロ)であるのが特徴だ。バッテリーEVに対し、エネルギー補給の時間がはるかに短い(水素補給に要する時間は数分)、航続距離が長い、車体を軽量に作ることができるといったメリットがある。車としての便利さの面ではEVをはるかにしのぐ。ネックとなっていたコスト問題が解決され、水素補給インフラの整備が進めば、一気にエコカーの主役となるのではないかという見方も出てきている。
 トヨタや経産省は、2020年頃にはEVの本格普及期が到来すると主張している。またライバルの日産、ホンダも2015年には燃料電池車の市販開始を表明。まさにちょっとした“燃料電池車ウォーズ”の様相を呈しているが、本当に燃料電池車の未来はすぐそこまできているのだろうか。
■燃料電池車の普及は遠い未来の物語
 結論から言えば、水素エネルギーがエネルギーインフラのメインストリームとなり、燃料電池車が今日におけるEVのように多数走るようになるのは、依然として遠い未来の物語であるということに何ら変化が起こっているわけではない。これは自動車業界、エネルギー業界で研究開発の最前線にいるエンジニア、サイエンティストの多くが共有している認識だ。
 燃料電池車の実用化を阻む要素としてよく、小型化しやすく自動車用の動力に向いている固体高分子型燃料電池が貴金属である白金を使用するため資源量の制約を受ける、白金を使用するため製造コストが高い、水素供給インフラが整っておらず、限られたエリアでしか使用できない――といったことが取り沙汰されるが、これらは実は一般に考えられているほど大きな問題ではない。
 たとえば白金。「地球上に数万トンしかない白金を燃料電池車などに使ったらあっという間に枯渇するのではないか」という声やよく聞かれる。が、実はここに可採埋蔵量のトリックがあると語るのは、生産技術研究所サスティナブル材料国際研究センター長でレアメタルに詳しい岡部徹氏。
 「地球はそんな小さなものではない。白金の存在量は実は100年分以上あるんです。100年というのはこれ以上カウントしても無駄という意味で、資源自体の枯渇を心配するような状況ではない。可採埋蔵量を少なく見積もるのは、資源をコントロールしている国際資本の常套手段ですから」
 もちろんコストの問題は残る。「白金は1トン掘り出した鉱床のなかにパチンコ球1個分くらいしか含まれておらず、採掘して精錬するコストが1グラムあたり2000円ほどかかる。現在、白金の国際相場はグラム4000円くらいですが、それが大幅に下るということは考えにくい」(岡部氏)という。
■水素は取り扱いの難しいエネルギー
 今日、技術革新によって燃料電池の出力1kWあたりの白金使用料は1グラムを大きく下回るようになっているが、それでもかりに燃料電池車1台に50グラム使うとして、白金だけで20万円。これだけで大衆車用エンジンの10倍程度のコストである。が、もともとエンジンの価格が高い高級車向けの動力として使うならば、そのコストも十分に吸収可能であろう。また、白金に置き換えられる安価な代替材料の研究が世界で進められており、何らかのイノベーションが起これば燃料電池の価格が大衆車用動力として使用可能な水準に下がる可能性も出てくる。
 燃料電池車の実用化が難しいと多くの科学者、技術者が考える理由は、実は車側の問題ではない。かといって、水素供給インフラ整備の問題でもない。燃料電池車がユーザーにとって大金を払ってでも乗りたいという商品になれば、インフラは最初にある程度補助金を注入してブーストをかけてやることで自ずと整備が進むはずだ。
 燃料電池車の前途に待っているのがバラ色の未来ではなく茨の道と言われる最大の要因は、実は動力用の燃料である水素そのものにある。加藤副社長は「水素は200年以上前に街灯の燃料として使われ、今はロケットの液体燃料から工業原料まで幅広く利用されている身近な物質」と、利便性をアピールした。
 そんなに便利なものなら今日、燃料としてもっと普及していてもいいはずだ。石油やガスを改質したり水を電気分解することで水素を生産するのはエネルギー効率上もったいないが、少なくとも石油精製や製鉄所のコークス炉で副産物として発生する膨大な量の水素は一次エネルギーも同然なので、工業原料としてだけでなくエネルギーとしても利用する潜在価値は十分にある。
 実際にそうなっていないのは、水素がそれだけ取り扱いの難しいエネルギーだからである。トヨタが今回発表した新型燃料電池車はいわば第3世代で、燃料電池車はすでに限定的ながら日本の道を走っている。90年代に本格的な実用性を持つ第1世代燃料電池車が試作車として登場。2002年にはトヨタとホンダが政府向けに公道での使用に耐えうる第2世代の燃料電池車を納入した。
■その始まりは奥田社長の「安請け合い」?!
 もともと2002年、世界に先駆けて日本の道を燃料電池車が走り始めたきっかけは、時の総理大臣だった小泉純一郎氏が盟友にして当時、トヨタ自動車社長であった奥田碩氏に「日本の成長戦略の象徴になるようなネタが自動車業界にないのか」と持ちかけ、奥田氏が「燃料電池車ならすぐにでもできる」と返したことだった。この“安請け合い”をきっかけに政府から燃料電池車プロジェクトを持ちかけられた自動車メーカー各社の燃料電池のエンジニアは、まだ生煮えだった燃料電池車を懸命に改良し、何とか公道を走れる状態に仕立てた。それでも水素補給から運用に至るまでエンジニアは燃料電池車につきっきりの状態だった。
 実はこの時期、産官学で水素エネルギー利用に関するさまざまな実証実験が行われたのだが、そこであらためて浮き彫りになったのは、水素を燃料として利用するのがいかに高コストで、車を走らせるのに不適当かということだった。水素はたしかに石油やガス、バイオエタノール、電気分解、製鉄所や製油所からの大量の副生水素など、いろいろなところから得られるエネルギー。とくに副生水素は商用化した場合、価格も安価ですむとみられていた。
 各地にさまざまな水素ステーションが建設され、ステーション内でガスや石油を改質して水素を作り出すオンサイトと呼ばれる方式、あらかじめ作られた水素を液体水素や圧縮水素の形で輸送するオフサイト方式など、多角的に技術が検証された。
 結果は惨憺たるものだった。もっとも安かったのは、副生水素から不純物を除いて燃料電池に使用可能にしたものを圧縮水素としてローリーで運ぶオフサイト方式であったが、それでも水素の末端コストは同じ熱量のガソリンと比べ物にならないほど高くなってしまったのだ。
■水素は量産すれば何とかなるというものではない
 水素を大量に運ぶには液体水素にすればいいのではないかと思われがちだが、水素が液体になる融点は実にマイナス260度。絶対零度であるマイナス273度まであと13度、海王星の衛星トリトンや冥王星よりも低い温度まで冷却してやらなければ液体水素は作れないのだ。そのときに使われるエネルギーは、液化する水素の持つエネルギーの3割にも達するほどで、コスト面でもエネルギー効率面でも、タンカーで水素を運ぶようなシーン以外ではおよそ成り立たないのだ。もちろん圧縮水素も膨大なエネルギーを使って数百気圧という深海潜水艇の隔壁が受けるような圧力をかけ、ローリーで空気を運ぶようなもので非効率きわまりないが、それでも現状ではそれが一番高効率という有様である。
 副生水素以外の、いわば水素生産を目的として作られたものについては、電気分解だろうと改質だろうと、また圧縮水素だろうと液体水素だろうと、いずれも同熱量のガソリンに例えればリッター300円、方法によっては400円という価格になってしまうことが明らかになった。資源エネルギー庁の戸邉千広氏は「風力や太陽光の電力で水素を作ればCO2排出ゼロ」と強調したが、水素を作るより電力のまま使ったほうがいいに決まっている。また余った電力の貯蔵に使うとしてもダムを利用した揚水発電に比べてエネルギー効率ではるかに劣っているというのでは、これまた話にならないであろう。
 今日、水素の使いにくさを打開するために、圧縮水素、液体水素以外の第3の方法の開発も進められている。水素を他の物質と組み合わせ、再び水素に戻しやすい液体である有機ハイドライドだ。水素ステーションの設備費を若干下げる効果はあるものの、輸送コストの改善効果は圧縮水素との比較では微々たるものにとどまっている。
 この有機ハイドライドをガソリンのようにタンクに入れ、車のほうで水素を取り出せるようなコンパクトな装置が開発されれば、ガソリン1リットル換算で100円前後もかかる高圧ボンベへの充填コストが省けるようになるが、それでようやくガソリンとコスト的に勝負ができるようになるかどうかといったところ。これら水素価格の問題は、量産すれば何とかなるというものではないだけに厄介だ。
■「長い長いチャレンジ」を続ける価値ある技術
 燃料電池車にもメリットはある。消費した燃料のうちどれだけをパワーに変えることができるかを示す熱効率は、現時点でバッテリー方式のEVに次いで高い。熱効率の表し方にはいろいろなものがあるが、エンジン車と同じ基準で見れば、2015年にトヨタ、ホンダ、日産が投入する第3世代モデルの燃料電池の効率は走行中の平均で60%前後に達するとみられる。内燃機関では高効率な方式であるディーゼルエンジンの1.5倍に相当する数字で、ガソリン換算でリッター40kmを超えるレベルである。
 商品としての魅力も高い。以前、ホンダが08年にリース販売を開始した2.5世代の燃料電池車『FCXクラリティ』で都内をドライブしてみたが、静粛性の高さ、加速の良さ、重い物が車体の中心線に沿って配列されていることによる抜群の運動性能などを持っており、次世代車らしい雰囲気は濃密だ。航続距離がEVに比べてはるかに長く、安心して乗れるのも魅力だ。
 が、それらのメリットを勘案しても、燃料電池車は現時点では、石油やガスの価格が車を走らせられないほどに高騰するかもしれないという将来リスクを回避するエネルギーセキュリティ面以外、普及させる合理性をまったく持てていない。致命的なのはやはり、前述のとおり水素製造・輸送・貯蔵コストの致命的な高さである。トヨタの佐藤康彦常務役員は「エネルギー業界には、現在のガソリン車もしくはガソリンハイブリッド車と同等のコストで走行できる水準になるようお願いをしていく」と語っていたが、そもそものベースコストがそれを実現できないくらいという現状を何とかできないうちは、エネルギー業界側としてもそんなお願いをされても困るというのが正直なところだろう。
 加藤副社長は自らのプレゼンテーションの最後で、「長い長いチャレンジ」という言葉を使っていた。官民一体の夢想的なプランを語る中で見せた、ベテランエンジニアとしての良心が垣間見える言葉だ。燃料電池車はエネルギー利用の選択肢のひとつとして、長い長い挑戦を続けていく価値のある技術ではある。
 リーマンショックと前後して華々しく登場しながら、なかなか飛べないバッテリーEVを一気に抜き去って次世代のエコカーのメインストリームになるといった空想的な煽り立てでユーザーに過剰な期待を抱かせるのは、長期的に見ればマイナス効果しかない。水素に関して“不可能を可能にする”ためのチャレンジは、今からゼロベースで始まるに等しいのだ。経産省・資源エネルギー庁も自動車業界も、大事な技術と思うのであれば、今は一層自制すべきだろう。
 ◎上記事の著作権は[PRESIDENT Online]に帰属します
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