中日新聞 2015年1月16日 夕刊
美濃加茂、贈賄業者に実刑判決 地裁「市長へ30万円」認定
岐阜県美濃加茂市のプール水浄化設備導入をめぐる汚職事件の贈賄罪と、金融機関に対する詐欺罪に問われた設備会社「水源」社長中林正善被告(44)=愛知県春日井市=の判決公判が十六日、名古屋地裁であり、堀内満裁判長は起訴状通りの事実認定をした上で「贈賄については公務員の職務の公正さを毀損(きそん)し、社会に大きな影響を及ぼした」と述べ、懲役四年(求刑懲役四年六月)を言い渡した。中林被告側は控訴しない方針。
中林被告からの事前収賄などの罪に問われている市長藤井浩人被告(30)は、別の裁判長の下で進められている公判で一貫して無罪を主張。判決は三月五日に予定されている。
判決理由で堀内裁判長は、贈賄事件について「自己の経営する会社の利益を図るため、計三十万円という少なくない現金を渡しており、政治活動の廉潔性や市民の信頼も損なわせた」と指摘した。融資詐欺に関しては「複数の金融機関から多額の現金詐取を繰り返しており、計画性や常習性が認められる。偽造した印鑑を使って架空の発注書を作るなど、手口は極めて巧妙で悪質だ」と非難した。
弁護側は公判で「藤井被告に暗に要求されたもので額も少ない。融資詐欺についても反省している」と寛大な判決を求めていた。
判決によると、中林被告は二〇一三年三月、当時は市議だった藤井被告に、市内の小中学校に設備を設置できるよう取り計らってほしいと依頼。四月二日、市の担当課に導入検討を促してもらうなどした見返りに十万円、同二十五日には、市長就任後も便宜を図ってもらうよう依頼するなどして二十万円を渡した。
また、美濃加茂市と設備の賃貸契約を結んだなどとうそを言い、一二年七月~一三年八月、金融機関から三回にわたり計六千百万円をだまし取った。
■市長判決には影響せず
<解説>
美濃加茂市長に三十万円を渡したとして贈賄罪に問われた中林正善被告の有罪判決は、被告が全面的に起訴内容を認める中で導かれたものだ。無実を訴える市長藤井浩人被告の判決は三月に予定されているが、異なる審理内容を基に別の裁判長が有罪か無罪かを判断するため、今回の判決が影響することはない。
過去にはリクルート事件の一審で贈賄側の江副浩正元会長が有罪になる一方、収賄側の藤波孝生元官房長官は無罪(二審で逆転有罪となり確定)になるなど、判断が分かれた例もある。
中林被告の公判では、検察側、弁護側ともに事実関係に争いはなく、証言台に立ったのは中林被告だけ。それも「反省している」と情状酌量を求めるもので、有罪判決は必然だった。
しかし、藤井被告の公判で検察側、弁護側は「現金授受の有無」をめぐって真っ向から対立。藤井、中林両被告や各証人ら七人が証言台に立った。
弁護側は両被告の会食に同席した知人から「授受の機会はなかった」との証言を引き出した。一方、検察側は中林被告の知人二人から「現金を渡したと聞いた」との趣旨の証言を得た。
授受の現場を防犯カメラがとらえるなどしていたわけでなく、唯一の直接証拠と言えるのは中林被告の贈賄供述のみだ。知人らの証言など中林被告の公判では存在しなかった審理内容を基に、藤井被告の判決が贈賄供述の信用性をどう評価するか。争いのない今回の公判に比べ、核心に迫った判決となるに違いない。 (社会部・池田悌一)
<美濃加茂事件>美濃加茂市長の藤井浩人被告が市議時代の2013年4月、設備業者中林正善被告から計30万円の賄賂を受け取ったとされる贈収賄事件。起訴状によると、藤井被告は中林被告の浄水設備について、市議会で導入の検討を促す発言をしたり、市の課長に資料を渡すなどしたとされる。設備は市長就任後の13年8月、市立中学校に設置されたが、実証実験が目的で市の支出はなかった。
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