『週刊新潮』2015年2月12日号
ツイッターに「酒鬼薔薇君、大好き♪」「少年法マンセー!」 心に魔物を育てた老女殺害「名大女子学生」19歳の履歴書
「誰でもよかった」--。顔見知りの老婦人を絞殺して逮捕された19歳の名古屋大女子学生は、取調べにこう言い放ったという。ツイッターで少年犯罪を礼賛し、自らの犯行をも仄めかす。窺い知ることのできない心の深淵には、いかなる魔物が棲みついていたのか。
p130~
ノーベル賞の興奮も冷めやらぬ名古屋大に衝撃が走ったのは、1月27日のことだった。
愛知県警担当記者の話。
「その日の昼に、市内昭和区のアパートで年齢不詳の女性の遺体が発見された、という発表がありました。続いて15時、この部屋に住む19歳の女子学生を殺人容疑で緊急逮捕、との続報がもたらされたのです」
被疑者が名大の現役学生だと報じられるまでに、時間は要しなかった。
少年法は未成年者の犯罪につき、保護矯正の観点から身元の特定される報道を禁じている。が、その一方、2000年2月には大阪高裁で、社会の正当な関心事であり凶悪重大な事案であれば実名報道が認められる場合があるーーとの判断が下され、「違法性なし」の判決が確定している。
今回もまた、この「法律」の理念の空しさを浮き彫りにしたケースと言えよう。
逮捕されたMは、理学部の1年生。宮城県出身で、昨春、仙台市内のミッション系進学校から現役合格を果たし、現場となったアパートで一人暮らし。学内では、リーダー部(応援団)に所属する唯一の女子学生だった。
事件は2か月前に遡る。12月7日、Mは千種区に住む森外茂子さん(77)を自宅に招き入れて殺害。森さんは新興宗教「エホバの証人」(ものみの塔聖書冊子協会)の古参信者で、昨年10月に勧誘活動がきっかけでMと知り合っていた。ある信者によれば、
「訪問の際、一人暮らしの女性がドアを開けてくれること自体珍しいのに、10月の終わりに森さんは、“もう数回、2人で会っているの”と嬉しそうに話していました」
12月に入ると、距離はさらに縮まる。Mから携帯電話の番号を教わった森さんは、
〈これでいつでも連絡できる〉
そう喜び、7日には連れだって同団体の施設を訪れていた。そこでは、恒例の集会が開かれており、
「数十人の集まりでしたが、若くて新しい仲間ということで、終わってから皆で“住まいは?”“大学は?”と質問攻めにしました。小柄ですがボーイッシュな感じだったので、ある女性がつい“きれいな男の子ですね”と声を掛けたのです。そうしたら怪訝そうに、低い声で“いえ、女です……”と言われてしまって。何でも聞いてほしかったのですが、“あとで森さんに尋ねます”とのことでした」(出席者)
施設を後にした2人は、ほど近いMのアパートへ。1Kの自室に森さんを招き入れた直後、
「部屋にあった斧で背後から頭部を殴りつけたMは、さらに森さんが巻いていたマフラーを使って首を絞めにかかった。息絶えたところで服のまま森さんを浴室の洗い場に横たわらせ、その晩、自室で就寝しているのです」(前出記者)
同日、本人はツイッターに、
〈ついにやった。〉
と投稿。さらには、
〈少年は偉い。少年法マンセー!!〉
P131~
そんな他人の投稿をリツイート(引用)していたのだった。
犯行の前後、Mは学内の友人に、
〈経済的にきついので休学する。いったん帰省する〉
などと連絡し、一夜明けた8日には郷里の仙台まで深夜バスで帰っていた。
「家出人捜索願が出されていた森さんと最後に会っていた人物として、Mが浮上。県警は帰省中のMと電話でやり取りし、1月27日に名古屋で話を聞く約束を取り付けます。前日アパートに戻ってきたMは、再び遺体の傍らで一夜を過ごし、翌日、千種署に。その際、アパートの室内を見せるよう求められて拒んだため、署員が同行。浴室から遺体が発見されたのです」(同)
全国紙社会部デスクが言う。
「本人は現在、すでに複数の弁護人を選任したと見られています。調べには終始、落ち着いて応じていますが、逮捕直後に“幼い頃から人を殺してみたかった”と供述。以後も“たまたま森さんを狙うことになってしまい、申し訳なかった”と話すなど、犯行とその言葉には依然、大きなギャップが見られます」
先のツイッターでも、そうした殺人願望を裏付けるかのように、
〈「殺したい」人はいないけど「殺してみたい」人は沢山いる〉(昨年5月12日)
〈日常を失わずに殺人を楽しめることが理想なんだと思う〉(9月13日)
〈名大出身死刑囚ってまだいないんだよな〉(12月5日)
などと常軌を逸した“つぶやき”が並んでいる。
そうした衝動は一体、どのようにして形成されていったのか。
山も別荘もマンションも
Mは両親と2歳下の妹の4人家族で、現在の実家は、8年前に仙台市青葉区の北西部に新築した一軒家。以前は、同区中心部に近い住宅街にある祖父母の自宅敷地で別棟に住んでいた。祖父は東北大教授も務めた岩手大名誉教授で、流体力学が専門の物理学者である。
M家を古くから知る近隣住民によれば、
「おばあちゃんにあたる方も、仙台では有名な画家で、若い頃はPTA活動にも熱心に取り組んでいました。ご夫婦は、毎年季節になるとタケノコをどっさり持ってきて下さった。何でも県南に山を持っていて、そこで採れたものだとか。また、青葉区内に3階建てのマンションをお持ちで、作並温泉にもアトリエ代わりに使っていた別荘がありました」
資産家でもあった祖父は03年2月に他界している。
「その直前、奥様の勧めでプロテスタントに入信しています。葬儀も、教会で執り行われました」
教会に聞くと、
「亡くなる2、3ヵ月前からこちらに通われて、(p132~)ごく短期間で洗礼を受けました。“余命幾ばくもないから受けさせてほしい”とのお話でしたが、その後はあっという間でした。お若い頃にキリスト教に触れ、最期は教会で、と決めておられたのではないでしょうか」
あるいは、“聖母”を意味する孫娘の名にも、そうした思いが込められていたのかもしれない。
「謎キャラ」と刃物
その夫婦の息子、つまりMの父親は、地元の高校を卒業後、
「“いくつかの大学に通って、最後は東北大で農学の博士号を取ったのよ”と、奥様は自慢のように話していましたね。お孫さんは、可愛らしい活発そうな女の子が2人いたのを覚えています」(前出の住民)
畜産学の専門家として米国に留学、帰国後は東北大講師も務めた父親は、数年前に研究職からリタイア。祖父母が建てた前出のマンションの管理業務を譲り受け、現在は家賃収入で生計を立てている。
一方、母親は地元の生協に勤務。新居に越したのちも、旧居が学区内であり、越境通学が多いことで知られる名門の公立中にMを通わせるなど、やはり教育熱心で通っていた。
そして“活発な子”はいつしかあらぬ変貌を遂げていくーー。
「Mさんはお父さんのお兄さんにピアノを習っていて、いつも練習する音が聞こえてきました。コンクールにも出るほどの腕だと、お母さんは話していました」
とは、新居近くの住民。その一方、
「お父さんの仕事柄でしょうか、実験で使うような道具や薬品がそこらじゅうに散らばっていると聞きました」(同)
今回用いた斧も“中学時代から所持していた”と供述しているMには、当時、互いの家を行き来するような間柄の親友がいた。彼女に代わり、その父親が振り返る。
「小学校の頃からあの子(M)を知っていますが、中学に入ってからおかしくなったんだと思います。いつもカバンにハサミやカッターナイフを入れて持ち歩いていて、うちの娘が理由を尋ねると“誰かに襲われたら、これで刺す”なんて説明していた。一番怖かったのは、うちに遊びに来た時、飼っている猫に刃物を向けて“これで尻尾を切ったらどうなるんだろう”って言った時でした」
Mはまた、しばしば“人を殺したい”と口にしていたと言い、
「娘もびっくりしていたけど、まさか冗談だろうと思っていた。でも、あの子の家に行ったら、足の踏み場もないくらい散らかっていて、そこに斧があったそうです・・・。それから、何だか薬品にも詳しかったみたいで、“タリウムを飲んだらどうなる”だとか、やたら難しい話をしていたと娘は言っていましたね」(同)
空恐ろしい光景である。学校生活では、
「中学の卒業文集に、クラスごとにアンケートで選んだランキングが載っているんです。あいつ(M)は、見た目が男っぽかったから、『将来組長・番町になりそうな人』で、女子の3位に入っていた。あと『謎キャラな人』でも3位。よく休み時間に独りごとを言ってたし、3年の時は“死”という字を彫刻刀で机に彫って先生にむちゃくちゃ怒られて、弁償する騒ぎになったって聞きました」(同級生の男性)
折しもMの自宅付近では、以下のような事件が相次いでいた。近所に住む60代女性が明かす。
「私はこれまで、野良猫を拾っては育ててきました。あれは08年でしたか、数が増えたので2匹に避妊手術を施したのですが、まだ抜糸もしていない頃、揃って近くの道路脇で死んでいた。轢かれたにしては出血もなく、一緒に死んでいたのも不思議でした。そして11年初め。クロちゃんという真っ黒な仔がいたのですが、外の散歩から帰ってきたら、しきりに背中を舐めている。見ると白っぽい液体が掛けられていて、ベタベタしてタオルで拭いても取れないのです。その晩はエサを吐いてしまい、衰弱するばかりでした。動物病院でも原因不明と言われ、1週間ほどで死んでしまったのです」
p133~
さらに2年前にも、
「別の黒猫が散歩から戻らないので、家の周りを探したら、裏手の窓の外で弱々しい鳴き声がする。事故かなと思いましたが、よく見ると長い尻尾の半分が真っ平に潰されていて、左前脚は完全に動かない形に折られていた。でも胴体にはかすり傷もないし、家の裏は急な崖で、その体で登って来られるはずがないのに、周囲には1つも血痕がなかった。結局、足と尻尾は切断することになり、その仔も1年足らずで亡くなりました」(同)
同級生の一生を変えた
高校に進学したMは、刃物や薬品への傾倒を深め、ついに生身の人間をも巻き込んでしまう。
捜査関係者の話。
「すでに、逮捕前の任意聴取の段階で“高校時代に同級生に毒を飲ませたら、障害が残った”などと、悪びれずに話しています。高2だった12年6月、同じクラスの男子生徒が突然視力を失い、杖なしでは歩けない状態に陥った。その年の暮れに傷害容疑で被害届が出され、宮城県警は薬物中毒と見て、学校側の了承を得て理科室の薬品などを調査。さらに複数の生徒を含む学校関係者にも話を聞いたのですが、一向に解明されませんでした」
男子生徒はその後、休学を経て県内の視覚支援学校に転校。辛うじて失明は免れたものの、今も障害が残っているという。
「その症状から、タリウム中毒の疑いが濃厚で、今回、愛知県警の捜査でも現場のアパートからタリウムと見られる薬品が押収されました。今度の殺人は間違いなく家裁から地検へ逆送されるケースで、警察庁との協議を踏まえ、宮城県警もタイミングを見計らって立件する意向を固めています」(宮城県警担当記者)
とはいえ、遅きに失した感は否めない。
「実は当時、生徒の間から、“普段から薬がどうのこうのと話しているMが怪しい”との声が上がり、学校側も把握していたのですが、それを伝えて警察と連携することなく、うやむやにしてしまったのです」(学校関係者)
当の高校に聞くと、
「学校は警察ではないので、捜査のようなことはしていません。ある程度の調査はしましたが、特定の生徒に話を聞いたかなど、具体的な内容も把握していません」(事務局長)
だが、実際にツイッターでも、
〈酒鬼薔薇君もタリウム少女も大好きですよ♪〉(昨年12月5日)
そううそぶくMだが、父親に尋ねると、
「すみません。事件についてはお断り申し上げております」
と言うのみ。何ひとつ不自由させずに育てたつもりが大誤算だった家庭、事を荒立てぬよう汲々とした学校、踏み込めなかった警察……。不作為の三重奏が、人面獣心の所業を増幅させてしまったのだ。
◎上記事は『週刊新潮』2015年2月12日号]から書き写し。なお、『新潮』紙上では実名で記載されているが、「M」と表記した(=来栖)
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社会的利益より会社的利益!? 「週刊新潮」が未成年の女子学生を実名報道したワケとは
2015年2月12日 13時0分 日刊サイゾー
名古屋市昭和区のアパートで無職の女性を殺害した疑いで名古屋大の女子学生(19)が逮捕された事件で、5日発売の「週刊新潮」(新潮社)が女子学生の実名と顔写真を掲載した。
女子学生は昨年12月7日、アパートの自室で顔見知りだった森外茂子さん(77)の頭を斧で数回殴り、マフラーで首を締めて殺害した疑いが持たれている。愛知県警の取り調べに女子学生は「相手は女性でなくてもよかった」と供述。女子学生のものと見られるTwitterには事件当日、「ついにやった」との投稿があり、取り調べでは人を殺した達成感を口にしているという。
同Twitterにはこのほか「硫酸タリウムの半数致死量は1グラム(成人男性)だろ?」という書き込みや、2008年に東京・秋葉原で起きた無差別連続殺傷事件の加藤智大被告の名を挙げ「なんとなく人間らしさがありますよね」と述べている。
衝撃的な事件を受け、ネット上では女子学生の顔写真や実名が瞬く間に拡散したが、一方で女子学生の地元である愛知県弁護士会は「少年本人とわかる報道を禁じた少年法61条に明らかに違反する。厳重に抗議する」「少年の社会との関係を断ち切り、更生を妨げかねない。メディアによる私的制裁だ」という声明を出している。
「新潮」編集部は「事件の残虐性と重大性に鑑み、19歳という加害者の年齢も加味して総合的に判断した上で、顔写真と実名を報道することにした」と説明しているが……。
「ジャーナリズムではなく、売り上げ増を狙ったものですよ」とは出版関係者。
ライバルの「週刊文春」(文藝春秋)が雑誌業界で“一人勝ち”なのを尻目に、「新潮」はここ数年、売り上げが落ち込んでおり「新潮社の中でも、大赤字媒体で有名。取材にかかる経費も、以前に比べて切りづらくなったそうだ。なかには『5年以内に潰れる』という人もいるほど」(関係者)という。
今回の実名報道も、ジャーナリズムよりも、話題性による売り上げアップを狙った部分が大きいという。とはいえ、逮捕された女子学生は近く精神鑑定を行う見込み。
「それで異常が認められれば、犯罪そのもののトーンが変わる。新潮が批判を受けることは免れない」(週刊誌記者)
新潮が優先したのは、“社会的利益”よりも“会社的利益”だったようだ。
◎上記事の著作権は[livedoor・NEWS]に帰属します
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◇ 殺人容疑の名大の女子学生 鑑定留置へ 2012.2.12.
◇ 名古屋老女殺害容疑の女子学生 ツイッターに「酒鬼薔薇聖斗」、麻原彰晃、加藤智大らの名前… 2015-01-28 | 社会/生命犯 問題
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