保釈率の上昇 「人質司法」見直しを進めたい
2015年02月23日 01時31分
否認すると身柄拘束を解かれない。そんな「人質司法」に改善の兆しが出てきたのだろうか。
逮捕した容疑者に関する検察の勾留請求を裁判所が却下する割合や、起訴後に被告の保釈を認める割合が、近年、上昇傾向にある。
勾留請求の却下率は、2004年の0・5%から13年は2%に、被告の保釈率も、04年の13%から13年は22%に伸びた。ともに、09年の裁判員制度導入を境に上昇が目立っている。
裁判所が勾留の必要性を厳格に判断し、その結果として、過剰な拘束が減っていると、好意的に捉える司法関係者は多い。
裁判員制度の導入により、裁判所が国民の目を従来よりも意識し、公正な運用に努めている側面もあるのではないか。
昨年11月には、最高裁が、地裁の保釈決定を取り消した高裁の判断を退け、保釈を認めた。その際、最高裁は、保釈については地裁の判断を尊重すべきだとの初判断を示した。保釈拡大の流れを後押ししたと言えよう。
容疑者や被告を拘置所などに拘束する勾留は、憲法で保障された身体の自由という重大な権利を制約する手続きである。
それゆえ、証拠隠滅や逃亡の恐れがどの程度あるかを、裁判官が事件ごとに勘案した上で、限定的に行うのが原則だ。
ところが、被告が否認している場合、裁判官は必要以上に保釈に消極的だった。
電車内の痴漢行為による迷惑防止条例違反など、執行猶予付きの判決が予想される比較的刑が軽い事件でも、勾留が続くケースが少なくなかった。
大阪の郵便不正事件では、無実を訴えた厚生労働省の村木厚子さんが、起訴後も5か月近く、勾留されている。
勾留中には、拘置所の面会室でアクリル板越しにしか弁護士と打ち合わせができず、裁判の準備をする上で大きな制約を受ける。被告の防御権を確保する観点から、徒に勾留を長引かせるべきでないのは明らかだろう。
長期の拘束が、自白を迫る圧力となり、冤罪の一因になってきたことを忘れてはならない。
法務省は、今国会に提出する刑事訴訟法改正案で、裁判官が保釈の是非を判断する際に留意すべき点を明文化する方針だ。
あいまいに運用される余地を残さないためにも、国民が理解しやすい具体的なルールを示すことが肝要である。
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◇ 人質司法 2012-10-29 | 社会/検察/司法
◇ 日本は人質司法 罪を認めなければ保釈されない 後藤昌弘(弁護士) 2010-02-23 | 後藤昌弘弁護士
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◇ 検察を支配する「悪魔」 田原総一朗+田中森一(元特捜検事・弁護士)
普通の人は、連日、検事から責められて辛い思いをすると、事実とは違っていても認めてしまう。しかし、裁判で事実を明らかにすれば覆ると思っているので、裁判に望みを託す。
日本の場合は人質司法で、罪を認めなければ保釈されないので、なおさらこの罠にはまりやすい。何日も自由を拘束されて、厳しい取調べで肉体的にも精神的にも苦痛を受け続けると、一刻も早く家に帰りたいと思うようになる。
事実であろうが、なかろうが、罪を認めれば、帰れる可能性が出てくる。そして、その場から逃れたい一心で、検事の言うがままになる。だが、これは、非常に甘い考えです。
と言うのも、一度、調書がつくられて、それにサインしてしまえば、それが事実ではなくても、裁判でも通ってしまうからです。客観的なアリバイなど、よほど明白な証拠でもない限り、弁護士でも検事調書の内容をひっくり返すのはむずかしい。
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「人質司法」見直しを進めたい 保釈率の上昇
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