集団的自衛権:行使の範囲「新事態」で歯止めどう変わる?
毎日新聞 2015年03月06日 21時25分(最終更新 03月06日 21時46分)
政府は6日、安全保障法制の整備に関する与党協議会で、武力攻撃事態法を改正し、日本と密接な他国が武力攻撃を受けた場合に集団的自衛権を行使できる「新事態」を盛り込む方針を伝えた。昨年7月の閣議決定を受け、政府が想定する安全保障関連法案の大枠が、これですべて示されたことになる。今後は集団的自衛権行使の歯止めをどう確保するかなどが、与党協議の焦点となる。
自民、公明両党は関連法案の整備に向けた考え方を今月下旬に取りまとめる予定で、政府はこれを受け、具体的な条文作りに入る。
武力攻撃事態法は、日本への武力攻撃に対処するために▽自衛隊の防衛出動が可能になる「武力攻撃事態」▽待機命令が出せる「武力攻撃予測事態」−−を規定している。武力攻撃事態はさらに、(1)武力攻撃が発生した事態(2)武力攻撃が明白に切迫した事態−−に分類されている。従来は憲法解釈上、自衛隊が武力行使できるのは、実際に武力攻撃が始まる(1)のみとされてきた。
これに対し、政府は昨年7月の閣議決定で、憲法9条の解釈を変更した。日本が直接攻撃を受けていなくても、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由などの権利が根底から覆される明白な危険がある場合」などの新3要件を満たせば、「自衛の措置」としての集団的自衛権の行使が可能との方針を打ち出した。
政府は与党協議会で、3要件を満たす「新事態」を新たに規定し、自衛隊法と武力攻撃事態法に盛り込む方針を伝えた。武力攻撃事態とは別に「新事態」を設ける理由について「新事態と武力攻撃事態は重なることがあるが、(日本への武力攻撃があるかないかの)評価の軸が異なる」と説明した。
武力攻撃はないが、切迫している「切迫事態」や事前に準備が必要な「予測事態」は、集団的自衛権の「新事態」と並行して発動される可能性があるということになる。
公明党は、集団的自衛権の行使の範囲が拡大解釈されることを懸念しており、法律に明確な歯止めを盛り込むよう求めている。北側一雄副代表は協議会で、政府が新3要件に該当する状況を「我が国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況」と国会で答弁したことから、「政府答弁をしっかり踏まえた法制にしていかなければならない」とけん制。また、新3要件のうち「他に適当な手段がない」との要件を条文に盛り込むよう要求した。
政府は、集団的自衛権の行使に関し、武力攻撃事態法などの改正に加え、米軍など他国軍の支援を可能とするための米軍行動関連措置法、日本への武力攻撃をしている他国軍に武器などを輸送する艦船を規制する外国軍用品海上輸送規制法なども改正する方針を示した。【飼手勇介】
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政府 集団的自衛権で「新事態」の方針示す
NHK NEWS WEB 3月6日 12時11分
安全保障法制の整備に向けた与党協議が開かれ、政府は集団的自衛権の行使を巡って、武力行使の新たな3要件に該当する新たな事態を「新事態」と位置づけ、日本が武力攻撃を受けていなくても、自衛隊が武力を行使できるよう法改正を行いたいという方針を示しました。
6日開かれた与党協議では、安全保障法制の整備で焦点となっている、集団的自衛権の行使の議論に入りました。
この中で、座長を務める自民党の高村副総裁は「武力行使の新たな3要件にあたる場合は、集団的自衛権も行使でき、あたらない場合は行使できないことは、自民・公明両党に共通認識があるので、法案化に向け、建設的な議論をしたい」と述べました。
また、座長代理を務める公明党の北側副代表は「先の閣議決定の内容や、政府の答弁を的確に反映した法制をつくり、法的な整合性をしっかりとらなければならない」と指摘しました。
続いて政府が、去年7月の閣議決定に盛り込まれた3要件に該当する新たな事態を「新事態」と位置づけ、武力攻撃事態対処法を改正し、日本が武力攻撃を受ける「武力攻撃事態」などと区別して、「新事態」という概念を加える方針を説明しました。
そして「新事態」に対応するため、日本が武力攻撃を受けていなくても、自衛隊が防衛出動し、集団的自衛権の行使として武力を行使できるよう自衛隊法76条などを改正する方針を示しました。
この「新事態」について与党内では、「存立危機事態」という名称にする案などが検討されています。政府の説明に対し、自民党からは「切れ目のない安全保障の法整備を進めるうえで、必要不可欠な改正だ」などと支持する意見が相次ぎました。
一方、公明党は「政府の言う『新事態』の定義にはあいまいな点があり、今の法律で規定されている『武力攻撃事態』などと、どこが違うのかがはっきりしない」などとして、「新事態」の定義を明確にするよう求めました。
また、「新たな3要件に沿って、『他国に対する攻撃であっても、国民を守るために、他に手段がないとき』に限って、自衛隊の武力行使を認めるという点を、より明確に法律に書き込むべきだ」という指摘も出され、引き続き協議することになりました。
さらに、自民・公明両党は、今後の協議の進め方について、今月中に与党としての考え方の方向性を取りまとめたうえで、政府が法案化作業を終えた段階で、与党協議を再開することを確認しました。
*高村副総裁 自公に共通認識できている
与党協議の座長を務める自民党の高村副総裁は記者会見し、「自民・公明両党は去年7月の閣議決定のときに共通認識ができており、それが崩れたということは全くない。これから法案化の作業が残っているが、今の段階で両党に大きな差があるわけではない」と述べました。
*北側副代表 最終合意は来月以降に
公明党の北側副代表は記者会見で、「今月中になんらかの取りまとめはしなければならないとは思っているが、政府側から公明党が出しているさまざまな宿題の回答がまだ十分にないこともあり、基本的な方向のようなものの取りまとめになるのではないか。最終的な合意は、政府から法案の文章が出てこないとできないので、来月以降になる」と述べました。
*日本攻撃と同様の他国攻撃とは
政府の去年7月の閣議決定は、日本の武力行使の要件を、日本に対する武力攻撃に限定したものから、日本と密接な関係にあるほかの国に対する武力攻撃を含むものに広げました。
武力行使の新たな3要件の1つとして示された「明白な危険」について、ことし1月、政府が閣議決定した答弁書は、「他国に対する武力攻撃が発生した場合において、武力を用いた対処をしなければ、国民にわが国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況である」と説明しています。
また、横畠内閣法制局長官も、去年7月以降の国会で繰り返し同じ内容の説明をしています。
一方で、答弁書は、「いかなる事態が該当するかについては、個別具体的な状況に即して、政府がすべての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなるため、一概にお答えすることは困難である」としており、日本が攻撃を受けた場合と同様の被害が国民に及ぶことが明らかなほかの国への攻撃とは、どのような状況を想定しているのかが焦点の1つとなっています。
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