TPP問題「米韓FTA」に乗り遅れるな!の大間違い
[慶大教授 金子勝の天下の逆襲]日刊ゲンダイ2011/11/09
TPP交渉参加をめぐって激しい対立が起きている。
推進派や大手メディアは、とりあえず交渉に参加してルール作りに関与すべきだという。だが、米政府との事前協議に3カ月かかることを政府は隠していた。日本が参加を表明しても、議論に参加できるのは半年後だ。来夏にルールを決定するというのに、どうやってルール作りに参加できるのか。
さらに推進派は、米韓FTAに乗り遅れるなという。だが、米韓FTAによって韓国が本当に利益を得られるのか。
たとえば米国は2・5%の自動車関税を撤廃するというが、韓国車は小型車中心で、輸出単価1万5000ドルルのうち、300ドル程度の引き下げ効果しかない。逆に米国製トラックは、排出基準の変更などで3000ドルル近くも値下げ効果がある。繊維品も「原産地主義」が糸に適用されるので、生地の海外生産を進める韓国にはほとんどメリットがない。
医薬品についても、米国の医薬品メーカーは自社製品の薬価が低く決定されたと訴えることができる。医薬品の認可が遅れたら、損害補償を要求できる。さらに米国は高度な医療機械を輸出し、保険外の高額医療を拡大するつもりだ。
もし、韓国政府がそれを健康保険でカバーしようとしたら、米国の民間保険会社は領域を侵していると、「ISD条項」で訴えることができる。ISDとは、企業が相手政府を訴えることができる条項。韓国はISD条項をのまされた。健康保険制度も危ない。
郵便局、農協、漁協、信用組合が提供する「保険サービス」も、3年以内に民間保険と同じ扱いにする等々。オバマ大統領が、米韓FTAで7万人の雇用を増やしたと表明したように、韓国の国益につながる条項はほとんどない。
サムスンの生産額がGDPの4分の1を占める韓国は、格差社会だ。しかも、韓国経済は短期資金に依存していてもろい。米韓FTAは韓国国会で審議中だが、韓国国民も米韓FTAの危険性に気づき始めた。ソウル市長選では市民団体出身の野党候補が当選してしまった。
米韓FTAはモデルになるどころか、むしろ「他山の石」にすべきなのだ。だまされてはいけない。
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TPP首相対応 拙速参加に「亡国」の危うさ
2011年11月9日 琉球新報
環太平洋連携協定(TPP)への拙速な対応で「亡国への道」を歩んではならない。野田政権は国民の声に耳を澄ますべきだ。
政府は7日、TPP交渉参加問題に絡み、保険適用の診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁が今後「議論される可能性は排除されない」との見解を初めて明らかにした。
野田佳彦首相のTPP交渉参加への態度表明をめぐり民主党内の対立が激しさを増す中、不都合な情報を小出しにする政府のやり方はあまりにも姑息(こそく)である。
日本医師会は、TPP参加を医療への市場原理主義の導入、金持ち優遇策だとして懸念を表明している。具体的には外国資本が日本に自由価格の医療市場の要求を強め「混合診療の全面解禁」「医療ツーリズム」「株式会社参入」などが進めば、日本の公的医療保険制度、つまり国民皆保険制度が崩壊しかねないと警戒している。
「混合診療の全面解禁」によって、自由診療拡充で商機を狙う外資が日本に対し医療保険関連の規制撤廃要求をエスカレートさせる可能性が高い。その先に待つのは民間医療保険への加入、非加入による「医療格差」の拡大であろう。
米国は今年2月、貿易や規制の在り方を協議する「日米経済調和対話」の中で約70項目の対日要望を提示。郵政改革や民間保険に比べて優遇されがちな共済制度の見直しなどを求めたとされる。日本で未承認の医薬品や食品添加物の承認を促すなど国民生活の安全に関わる項目も含まれている。
今後、米産業界が政治的影響力を行使し、これらの規制撤廃を日本のTPP交渉入りの条件として要求することも懸念される。こうした可能性を、野田政権はまともに説明していない。
日本社会を混乱、疲弊させる急進的な関税や規制の撤廃に異を唱えると、自由貿易自体を否定しているかのように反対意見を曲解するTPP推進論に違和感を覚える。
「混合診療」の全面解禁も農産物の関税完全撤廃など農業問題も、国民の命に関わる大事だ。米国への安易な譲歩や無原則な外資依存は、国民の生命や安全を守るべき国の主権放棄にも等しい。
野田首相が国民的議論が生煮えの中、TPP交渉参加を表明するのは権力の乱用だ。拙速な交渉参加表明は断念すべきである。
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◆TPPとは、米国による属国化政策/意に沿わないと訴えられる/FTAに頼った韓国の大誤算は明日の日本の姿2011-11-07 | 政治(経済/社会保障/TPP)
◆『TPP亡国論』/怖いラチェット規定やISD条項(毒まんじゅう)/コメの自由化は今後こじ開けられる2011-10-24 | 政治(経済/社会保障/TPP)
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韓国も米韓FTAの危険性に気づき始めた/TPP=国民皆保険制度の崩壊 混合診療解禁 医療ツーリズム
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