大反響第6弾 われらの年金を返せ! 1500万円も高い公務員の「お手盛り年金」 この国は役人のためにあるのか
現代ビジネス2011年11月10日(木)週刊現代
支給開始年齢の引き上げが詐欺なら、こちらも詐欺ではないか。「年金に払うカネがない」と言いながら、役人たちは自分の老後を豊かにするべく既得権益を守り続ける。この国は腐っている。
*地方公務員はもっと高い
「一般のサラリーマンに支払われる厚生年金の平均月額は7万3573円なのに対して、国家公務員の年金支給額は13万6109円です。また、地方公務員は16万1380円と、厚生年金の2倍以上支払われている。しかも、彼ら公務員の保険料率は15.862%と、厚生年金の16.412%に対して低く抑えられているので、将来の年金のために支払う額は少なくて済んでいるんですよ。民主党はこの問題に真っ先に取り組むべきなんです」
みんなの党の政策調査会長、浅尾慶一郎衆議院議員が年金の「官民格差」を指摘する。浅尾氏によれば、国家公務員に支払われている共済年金(サラリーマンの厚生年金に相当)の月額は、民間企業より6万3000円も多い('09年度)。1年当たりでは75万6000円、60歳定年として男性の平均寿命である80歳まで20年間もらい続けるとすると、実に約1500万円もお得な計算になるのだ。地方公務員に至っては、民間より約2100万円も多い。それに加えて、公務員が在職中に支払う保険料は、サラリーマンより年間24万円も少なくて済む(年収500万円の男性の場合)---。
厚生年金の支給開始は、'25年までに65歳に上がるが、厚労省は今後さらに68~70歳まで引き上げる検討をしている。将来的に年金支給は「70歳から」が現実となりつつあるいま、もっとも懸念されるのは、支給額の大幅減額だ。一方、引き上げを主導する役人たちの年金は、「聖域」として手つかずのままなのである。
なぜそんなに差が出るのか。公務員の共済年金には、民間の中小企業には見られない「職域加算」という制度があるからである。
年金制度は、「基礎年金(国民年金)」という1階部分の上に、厚生年金や共済年金の2階が乗る仕組みだ。公務員の職域加算はその上の3階部分にあたり、在職20年以上なら、支給額が一律2割増しとなる。
「役人に、なぜ職域加算があるのかを尋ねると、『公務員が身分上持っている守秘義務などの制約に対する代替措置』と説明します。『守秘義務は民間にもある』と反論すると、『就業規則によるものと、法律で縛られている守秘義務とでは違う。それが月額の差に表れる』と言う。
でもたとえば、外務事務次官が核の持ち込みについて守秘義務を怠ったからといって、年金を減らされたという話は聞かない。だから、職域加算には根拠がないんですよ。'86年に、厚生年金と共済年金の基礎年金部分が統合された際、支給額が民間より高いことを隠すために、職域加算という制度を新たにつくった」(前出・浅尾氏)
公務員の既得権が侵害されるという危惧から、職域加算制度は導入された。まさに、自分の利益になるように取り計らう?お手盛り年金?である。
職域加算以外に、共済年金には「追加費用」と呼ばれるものもある。これは、'59年まであった恩給制度から保険制度の共済年金に切り替えられた際、それまで保険料を払ってこなかった恩給世代に払う年金の一部を、税金で補填するものだ。この追加費用が、毎年1兆円以上かかっている。
*「我々試験に合格してますから」
なぜ、職域加算や追加費用という聖域はなくならなかったのか?目白大学教授の宮武剛氏が、解説する。
「'07年に安倍晋三内閣が、共済年金と厚生年金の一元化法案を提出した。合併するときに職域加算を廃止し、追加費用についても、原則27%カットという思い切った施策を打ち出しました。厚労省も財務省も年金記録問題で責められているときだったので、『やむなし』と法案提出が実現したんです。ところが、その法案は一度も審議されないまま廃案になってしまった。当時、野党だった民主党が反対し、自民党もまったくやる気が出なかったのです」
公務員年金優遇は現在の与党・民主党によって維持されたのである。厚労省OBは当時を振り返り、「民主党は公務員の組合を支持母体にしているので、『一元化はけしからん』となった」と内情を明かす。
安倍政権のとき公務員制度改革を進めた、元財務官僚の高橋洋一氏が語る。
「役人はよく、『民間と比較して』と言いますが、『民間』とは大企業の正社員を意味しています。中小企業の人から見れば、公務員は恵まれていると思えるのも無理はありません。安倍さんの公務員制度改革でも、メディアの大批判にあったり、役人の反発は強かった。年金のお手盛り部分は、役人側から止めましょうと言うわけがありませんから、政治主導でやっていくしかない」
既得権と官民の不公平こそが、年金制度一元化を阻んでいる。給付水準の低い厚生年金にそろえようとすると、公務員の側は既得権の侵害と言うし、高い公務員のほうにそろえようとすると、厚生年金の保険料を上げるなど財政の負担を増やすしかない。
高額の年金によって、老後の安心が保証されている公務員。しかし、当然のように、年金制度だけが優遇されているわけではない。前出の浅尾氏が批判する。
「民間の場合、退職金の半額が企業年金として支われるため、実際の退職一時金は1445万円です。それに対して、国家公務員の退職金は2960万円と、2倍以上の格差がある。
また、昇給制度も民間とは違います。勤務成績が良好な人だけが昇給するよう、公務員の昇給制度に、5段階の評価を取り入れた。しかし、5段階のA~Eまで正規分布にするかと思いきや、昇給額が従来通りか1.5~2倍になるA~Cが97%、半分になるDと、昇給ゼロのEは全体の3%しか出なかった。何故偏るのかと役人に質すと、『公務員は試験に合格して仕事をしているので、みんな一生懸命。デキない人はいない』と言う。そんな言い訳は民間では通用しませんよ」
厚労省の外郭団体に勤めた体験から、公務員の特権を批判し続けるジャーナリストの若林亜紀氏もこう述べる。
「そもそも、公務員の給料が民間よりだいぶ高い。一般男性の平均年収も男性は515万円なのに対し、'09年の公務員の年収は、636万円と発表されています。しかし、これは額を低く見せるためのウソの数値。課長以下のいわゆる組合員平均というもので、国会答弁で明らかにされたところによれば、公務員の平均年収は926万円、自衛官などを除くと、実に1043万円にもなります」
国民のために汗水垂らして必死に働いてくれるなら、多少、優遇されても目をつぶれるが、その仕事ぶりは真逆である。
「私が働いていた団体では、出勤時刻は9時だったのですが、9時30分になっても誰も来ない。出勤しても、仕事が与えられずにヒマでした。課長が出勤するのは、会議がある週に1回だけ。部長に至っては月に1回しか出勤してこなかった。それでいて、課長の年収は1200万円、部長は1400万円以上、もらっていました」(同)
ちなみに、この外郭団体は民主党の事業仕分けで廃止が決まったというが、それもどこ吹く風でまだ存続しているという。
「公務員は大変なんです」
十分すぎるほど老後の安泰が保証されている共済年金制度の批判を、公務員の労働組合はどう考えているのか。日本国家公務員労働組合連合会幹部が取材に応じた。
「公務員の給与や退職金、年金、どれをとっても優遇されているとは思いません。マスコミは公務員の一側面を切り取って、優遇されているなどと面白おかしく比較しますが、もっと全体像を見てほしい。公務員として窮屈なこともたくさんありますし、保険料率の違いもほんのわずかなことですよね。このご時世、われわれは、賃金の引き下げに歯止めをかけるべく頑張っていますが、それは民間の方々に頑張っていただいてなしうるものですから、労働環境を改善する策を先にとるべきではないでしょうか。組合の立場でも厚生年金と共済年金との一元化には決して反対していませんし、そうなることを私たちも願っていますよ」
公務員のお手盛りを批判する前に、民間のほうがもっと頑張れと言う。こんな態度では、公務員亡国と言ってよいギリシャの二の舞になりかねない。この国は役人のためにあるのではないのだ。
ちなみに、放送法で規定される特殊法人・NHKの年金も潤沢だ。NHK職員の平均年収は1041万円、一般的モデルでの退職金の額は2019万円、保険料負担は公務員の共済年金よりも軽いという。
元NHK幹部が、手厚い年金制度について語る。
「入局の際、重役から『NHKは給料が安い代わりに年金はとにかくいいんだ』と言われました。厚生年金に上乗せされる3階部分の企業年金が充実しているのです」
実際はどうなのか。NHK広報局が回答した。
「年金の掛け金は労使で折半しており、支給月額は、現在、平均で約12万円となっています。また本人が死亡した場合、残りの年金の半額を、一時金として遺族に支給しています」
運用利回りが予定利回りに達しなかった場合は、受信料から補填される可能性もあるという。その一方で、受信料の値下げは少しずつしか進まない。
旧態依然のシステムを改善せず、年金制度の危機をここまで放置していた責任は、官僚にもある。その「当事者」がお手盛りの手厚い年金にしがみついているのは、何をかいわんやだ。真面目に掛け金を払い込む気が、どんどん失せていく。
「週刊現代」2011年11月12日号より
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