元検事の郷原氏、小沢氏初公判に「どこかが狂っている」
ニコニコニュース(オリジナル)2011年10月8日(土)12時15分配信
資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反で強制起訴された小沢一郎元民主党代表の初公判が、2011年10月6日に行われた。
この件に関し、元検事で弁護士の郷原信郎氏が、7日のニコニコ生放送「小沢一郎初公判をどう見るか」に出演。江川紹子氏、落合洋司氏との座談会の中で、「虚偽記入にあたらないことを弁護側が明確に主張しており、今後(検察官役の)指定弁護士側がくずせるのか疑問だ」とした上で、「小沢さんを政治家として評価しているわけではないが、刑事手続としての判断は別の問題。こんな事実や証拠関係でこういう目に遭わされているのはひどい。どこかが狂っている」と述べた。
■「どこかが狂っているとしか言いようがない」
小沢氏は、資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反罪で今年1月に強制起訴されたが、今月6日には東京地裁で初公判に臨み、改めて無罪を主張した。またこれに先立ち、すでに元秘書の石川知裕衆院議員ら3人に対しては、先月東京地裁で、有罪判決が言い渡されている。
小沢氏の初公判を受け、7日のニコニコ生放送では、ジャーナリストの江川紹子氏と、いずれも元検事で弁護士の落合洋司氏、郷原信郎氏が緊急座談会「小沢一郎初公判をどう見るか」に出演した。この中で郷原氏は、
「収支報告書への記載は虚偽記入でなく、政治資金規正法違反にあたらないことを、弁護側は明確に主張した。今後、(検察官役の)指定弁護士側が、それをくずせるか疑問だ」
との見解を示した。
また、元秘書との共謀については、「指定弁護士側の冒頭陳述は、元秘書の公判で却下された調書をそのまま引用するものだ。調書が採用されなかった場合、冒頭陳述で書かれてある事実は、ほとんど立証不能になることは明白だ」と、今後の裁判の見通しについて指摘。その上で、
「小沢さんを政治家として評価しているわけではない。しかし、そのことと刑事手続として判断が正しいのかは別の問題。こんな事実や証拠関係でこういう目に遭わされているのはひどい。ひいきするわけではないが、率直にどうしてこんなことになったのかと思う。どこかが狂っているとしか言いようがない」
と感想を述べた。
■なぜマスコミは小沢氏をたたくのか
さらに、視聴者から、「なぜメディアは検察と追従して小沢氏をたたくのか」等の質問が寄せられると、郷原氏は「国民的関心が高く、悪役的。取り上げれば取り上げるだけ、視聴率が上がり新聞が売れる。それと同時に、既存のメディア体制にとって小沢氏の目指すものは脅威であり、さらに陸山会事件はメディアが火をつけたからではないか」と、マスコミのあり方に疑問を呈した。
また落合氏は、共謀の認定について、「(例えば)殺人事件における犯人性の場面で状況証拠で認める例はあるが、知能犯についてもそれを当てはめてよいかという問題意識はもつべきだ」とした上で、
「政治責任を問われるべき人は、刑事責任も問われるべきだという報道があるが、両者は切り分けられるべき問題だ。あくまで刑事裁判なのだから、証拠によってどこまで立証できるかという観点から、冷静に見るべきだ」
と述べた。
一方、江川氏は、今回の初公判が強制起訴による裁判として初であったことに触れ、「検察審査会は調書を元にして議決する。その調書がどのような状況でつくられたか情報が入らなかった。取り調べの可視化の問題も含めて、制度を考えるきっかけにするべきではないか」と指摘した。
◇関連サイト
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(藤崎桂太郎)
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小沢裁判は本当に「どこかが狂っている」のか? 元検事・郷原信郎×元代議士・早川忠孝 対談全文
2011.10.20 17:11:03 ニコニコニュース
資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反で強制起訴された小沢一郎元民主党代表の裁判が、2011年10月6日より行われている。その小沢氏の公判をめぐり、元検事で弁護士の郷原信郎氏が10月7日のニコニコ生放送で「小沢氏初公判は”どこかが狂っている”」と発言し、疑問を投げかけた。
一方、元自民党代議士で弁護士の早川忠孝氏は、その郷原氏の発言とニコニコ生放送に対し、「ニコニコ放送というのは小沢氏の単独インタビューなどを好んで報道するようで、私のように批判的に小沢氏の一連の行動を見ている人間にはお呼びがかからないが、郷原氏の所論はどうにも決めつけが過ぎる」と自身のブログで批判を繰り広げた。そこでニコニコ生放送は10月19日、両氏を招いて対談形式で徹底討論してもらい、その模様を中継した。
以下、両氏の対談を全文書き起こして紹介する。
・[ニコニコ生放送]全文書き起こし部分から視聴 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv67659389?po=news&ref=news#00:48
■小沢支持者ではなくとも、擁護派の理論的支柱?
亀松太郎(ニコニコニュース編集長。以下、亀松): 皆さん、こんばんは。ニコニコニュース編集長の亀松太郎です。政治資金規正法違反の罪で強制起訴された小沢一郎民主党元代表の裁判の初公判が、先頃10月6日に行われました。ニコニコ生放送では、翌7日「緊急座談会小沢一郎初公判をどう見るか」と題して番組をお送りしましたが、その中でご出演いただいた郷原信郎氏の意見に対して、弁護士の早川忠孝氏が自身のブログで「郷原氏の所論はどうにも決めつけが過ぎる」と批判をされました。そこで今夜はそのお2人をお招きして、「小沢裁判は本当に”どこかが狂っている”のか!?早川忠孝×郷原信郎 緊急対談」と題しまして、今回の裁判を通しての両氏のご意見を徹底的にぶつけていただく場を設けました。それでは早速、今日のゲストをご紹介いたします。まず、弁護士で前衆議院議員の早川忠孝さんです。
早川忠孝氏(以下、早川): ご紹介いただきました、早川でございます。国会議員の時には、「ハヤカワチュウコウ」と言っていましたけども、昔から「ハヤカワタダタカ」と言っていました。ただ、なかなか言いにくいので「チュウコウ」で通しております。
それで私自身は、国会でまさにその政治資金規正法の改正作業を主として担当しておりました。自民党の衆議院議員で法務委員会に所属していた。ですから、立法者としての一つのものの考え方がある。それからもう一つは、自ら選挙をずっと戦っておりました。政治資金規正法に基づく収支報告書、結局事務所から十何回提出をしているわけです。当然会計責任者がいて、それを提出するというそういった作業を傍から眺めているということがあります。現実に検察庁の立場からいえば、私たちもある意味で調べられる対象になり得るという、そういった立場であります。
もう一つは弁護士ですから、本来的に検事ではなくて、むしろ弁護する観点での物の見方をやっております。それから自治省という役所に入りまして、富山県で選挙管理委員会の書記をして、市町村の選挙管理事務の指導をするということがありました。もう40年以上前の話ですけども、そういったさまざまな現場での経験を踏まえて、今回の政治資金規正法違反事件について、肌で感じるものがあるわけであります。その肌で感じるところを、ぜひ皆さんにご理解をしていただきたいということで、今日は参上いたしました。
われわれ弁護士ですと、ついつい”先生”とお互いに言いますけども、(ニコニコ生放送)視聴者の皆さんに大変申し訳ないので、”郷原さん”と今日はそういう風に呼ばせていただきます。郷原さんとは昨年、村上正邦(元参院議員)さんが主催される、当時は「日本の司法を考える会」で郷原さんの話を伺ったことがあります。ですから、面識が無いわけではありません。それから、今回出演させていただくということで勉強させていただきました。郷原さんが生粋の検察官であると。捜査検事としてのエリート中のエリートであるということは改めて理解をして、今日は参上しております。よろしくどうぞお願いいたします。
亀松: はい、よろしくお願いします。では、そのお隣に座っていただいているのが、弁護士で元検事の郷原信郎さんです。
郷原信郎氏(以下、郷原): はい。もう短くしましょうか(笑)。私は、検察を客観的に忠実的な立場から批判しているだけでして、決して小沢支持者でも擁護者でもありません。いつもここで、この番組でも何回も断っていますけども。とにかくこれまで、この2、3年の東京地検特捜部、大阪地検特捜部の批判は徹底的にやってきました。それだけの立場だと私は思っていますので、そういう立場から今日も、早川さんのご指摘に対してお答えをしたいと思っています。
早川: ただ一言だけ今の点で申し上げると私は、郷原さんはある意味で、小沢さんあるいは小沢擁護派、小沢弁護団の理論的支柱になっているという風に実は思っていまして、それこそ民主党の中でのさまざまな議員連盟での講演をされたり、民主党の中の第三者委員会の委員をされたり、あるいは政権交代が起きてから法務大臣に擁立しようという声が上がったり、さらには参議院選挙の時に民主党から擁立しようという話があって、これは郷原さんが自らお断りになったという話ですけど、結果的には自民党であまり私はお会いした記憶が無いものですから、ある意味では民主党の方々のほうが、大変頼りにされているという意味での理論的な支柱なのではないかという風に一応思っておりますのでお断りしておきます。
郷原: それに関して言わしていただければ、私はいろんな場でこの小沢事件、陸山会(小沢一郎氏の資金管理団体)事件について話をしてほしいと言われてお話をしてきましたけども、それをどのように民主党の議員の方々が受け取られるかと、これはもう私が話した後のことですし、特に小沢さんのグループだけに理論的な面でアドバイスをしたとかいうことでもありませんし、あくまで私が一般的な世の中に対して言っていることがそういう風に民主党サイドでいろいろ利用されたということに過ぎないと思います。
政治資金問題第三者委員会(政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会)というのも、あくまで民主党が設置したいろんな分野の行政法学者の櫻井(敬子)さんであるとか、政治学者の飯尾潤さんとか私のような立場の人間が集まって話をしただけで、特に色が付いているわけではないと思うんです。自民党の方々とも私はお付き合いはいろいろありますし、例えば内閣府で開かれたタウンミーティング調査委員会、あれは林芳正(参院議員)さん、世耕(弘成:参院議員)さんと一緒に委員を務めましたし、その後は世耕さんの地元の和歌山県の公共調達検討委員会の委員長をやりましたし、いろんな自民党の方々ともお付き合いはありましたし、特に裁判員制度に反対する立場からは、超党派の議連(議員連盟)がありましたよね。そこには参加してお話をさせていただいたし、その時にも早川さんいらっしゃいましたよね。
早川: 裁判員制度の関係では、私は裁判員制度を推進する立場で一貫してやっておりましたので、だから直接、郷原さんとどの程度の話をすることがあったかというのを覚えていませんけども、ただ私自身が非常に興味を持ったのは、2003年に「検察官のための捜査戦略論」というのをお書きになっているというのを勉強させていただきました。あれがある意味で郷原さんの原点なのではないかなと。まさにその広島地検やあるいは長崎地検で、自らが政治資金規正法違反事件等について立件をされ、起訴をされて、まあ言ってみればその分野で政治資金規正法違反とかあるいは公職選挙法違反を的確に効率的に捜査するその手法を、ある意味で先頭に立って開発されたのではないのかな。ですから本来であれば、そのまま東京地検の方に残って、むしろ全国のそういった事件についての捜査をする立場になられる人ではなかったのかなと。なぜその途中で退職されたのか。
郷原: あの時には私が東京地検の特捜部に行くという観測があったんですけども、結果的には、私は公判部の窓際の方に追いやられたということを当時、田原総一朗氏がギロン堂(週刊朝日のコラム)に書いて検察当局を批判したんですよ。いい迷惑ですよね、こっちは。何も頼んだ覚えも無いのにそういうことを言われたために、ますます検察部内では白い目で見られて、私が田原氏とつるんでいるように見られて、それからますます検察の内部では浮いてしまいましてね。ですから、そういう組織なんですよ。検察というのはやはり大きな政治関連事件は特捜部がやるのが当たり前で、私のように長崎地検のような西の果ての中小地検で、当時その自民党の地方組織の集金構造そのものを明らかにする、そして政治資金パーティの集金構造を明らかにする事件をやるということは、本来許されないわけです。自民党との関係でも当時いろいろありました。そういうことをやったことについて、検察部内で捜査手法的に評価するかというとそうではないんです。
早川: ただ僕は、あの段階で思ったのは小泉(純一郎:元内閣総理大臣)さんの時の段階ですからね。
郷原: 絶頂期です、小泉政権の。先に進めましょうか・・・
亀松: プロフィール紹介から一気に議論に入ってもらい、すごくありがたいんですけれども、今回その小沢さんの裁判について特にどこが対立しているのかを主にお話いただければと思います。今チーンって(ゴングを)鳴らしました。今日は立ち位置もお2人が本当に膝がくっつくぐらいの距離で、基本的にはどんどんお話を進めていただきたいんですが、さっき(視聴者)コメントでも「司会の仕事しろ」とか時々入っていたんですけれども、どうしても先に進めたい時に、このチーンとかカンカン(ゴングの音)こういうのを入れたりして、場面転換というかリングを変えるみたいなことをやっていきたいと思っております。
■「4億円の虚偽記入は検察のとらえ方に問題がある」
亀松: ではまず論点ということで、こちらで一つ用意させていただいたのが、「収支報告書への虚偽記載」についてということで、これは小沢事務所が当然政治資金収支報告書というのを提示しなければいけないんだけれども、それの記載に虚偽があったと。実際には小沢さんから4億円は借り入れがあって、それを土地取引に充てたという記載が無かった。それがちゃんとその時期に記録されていなかったということが主張されているわけですけれども、この点について郷原さんは、前回のニコニコ生放送の番組で「収支報告書への記載は虚偽記入ではなく、政治資金規正法違反に当たらないことを弁護側は明確に主張したと。今後この弁護側の主張を、検察官役に当たる指定弁護士側が崩せるか疑問である」というように仰りました。これを受けて早川さんが翌日のブログで書かれたことが、「虚偽記載、不実記載の立証責任は、もともと検察側、今回で言えば指定弁護士側にあるので、これは物の考え方の順序が違っているのではなかろうか」という風に批判をされました。ということで、この虚偽記載を巡っての発言に関して批判されたということで、ここについて立場から言うと郷原さんが先に・・・。
早川: 郷原さんが先に説明されたほうがいい。
亀松: お願いします。
郷原: この4億円の虚偽記入のことは私、以前からいろんな場で、この検察のとらえ方には問題がある、マスコミの報道の仕方にも問題があるということを言ってきました。まず大きな目で、大きな観点でとらえると、この世田谷の不動産というのは4億円弱、約3億6000万ぐらいの代金です。
早川: その細かいのはまた今度聞いて、とりあえず・・・。
郷原: ですから、4億円の借り入れを小沢氏からして、その4億円を原資にして不動産を購入したと。基本的にはその構図なんですね。そして陸山会の収支報告書には、4億円の小沢氏からの借入金は記載されている。そして世田谷の土地を購入したということも記載され、その代金の支払いも記載されている。基本的な構図は十分記載されているわけです。これが、なぜその政治資金規正法上、重要な事実が収支報告書に記載されていないという風にとらえられるのかと、まず根本的に疑問があるんですね。その点なんです。
早川: まず立証責任の話に1回戻っておきますけれども、基本的には検察官が構成事実の立証に必要な証拠を提出するわけです。ですから、そういう意味での立証責任はまずは検察側にあって、弁護側がいくら法律的な主張をしてもそれをひっくり返す立場ではないと思うんです。
郷原: ちょっと待って下さい。立証責任がある側が、逆に立証責任のない側にその立証を阻却するというか、その立証に反する事実を立証できてしまったら、一層その立証責任を負っている側は苦しいじゃないですか。そんなことは別に立証責任を負っている、負っていないということは関係ないですよ。
早川: そこで郷原さんと僕が違うのは、何といっても、いわゆる小沢秘書裁判について裁判所は法的な判断をもう既に下しているわけですよね、いずれにしても。
郷原: ちょっと待って下さい。法的な判断を裁判所が下したか下していないかということではないんですよ。今事実に基づいて、虚偽記入をどう考えるかということを聞いているんです。ですから、今私が言ったように、基本的に大きな構図として4億円の借入金で4億円弱の不動産を買った。それが収支報告書に記載されている。その大きな構図が記載されているのに、なぜ4億円の虚偽記入だと。収入について4億円が記載されていないという構成になるのか、ここがまず最大の問題です。ここをどういう風にお考えなんですか。
早川: その最大の問題というところについて、私どもは中身を知ることは出来ません。結果的には小沢秘書裁判についての判決書き、これはまだ作成されていないはずですから、多分郷原さんも見ておられないし、私も見ていないと思う。あるのは、せいぜい判決の要旨だけかと思うんですね。
郷原: いや、要旨だけ見ても分かるじゃないですか。収支報告書に記載されていることですから、それがどこが虚偽なのかということです。
早川: だから、分かっているんですよね。それで私が判断をする時には、まず小沢秘書裁判について、検察側の冒頭陳述で何と書いてあったのだろうか、判決ではどういう風にそれを認定したんだろうかと。これで大体その証拠の存在というのが分かるわけです。
郷原: だから、ではどう書いてあったんですか。
早川: それについて私の理解するところでは合計4億円ですけども、これは(2004年)10月の初旬から10月27日までに合計4億円とこういうことが検察官の冒頭陳述に書いてあるという、これが上脇(博之:憲法研究者)さんの・・・。
郷原: それは、どこから入ったという話ですか。
早川: 上脇さんの、憲法研究者の研究事実。
郷原: だから、その事実というのは4億円のお金がどこから入ったお金として・・・。
早川: 4億円の合計の金額について入ったのか入らないのかということについて、4億円は入ったという事実は銀行の通帳、銀行取引記録を見れば分かるはずです。
郷原: いや、入っていますよ。
早川: 当然入っています。陸山会にとにかく4億円入っていると。4億円じゃないです、実は手付金は違いますから。
郷原: それで? 入ってもいいんです。
早川: ですから、結局その4億円のお金がどこから来たのかという、それについて説明が出来るのか出来ないのかというのが一番大事なんです。
郷原: 小沢さんから来たと説明しているじゃないですか。小沢さんから現金で預かって入金したということをちゃんと言っているじゃないですか。
早川: そこで、これは私のブログで指摘しておきましたけども、その石川(知裕:衆院議員、小沢氏の元私設秘書)被告は4億円を一括して現金で預かったと。それこそ記者会見等で4億円分の紙袋を持っていたとこういう風な・・・。
郷原: ちょっと待って。紙袋かどうかという話ではなくて、大きな流れとして小沢さんから現金で4億円が入ってきました。それはそれで前提とすればいいじゃないですか。
早川: 一括なのかそれとも分割なのかという、非常に重要な問題があるわけです。
郷原: それで何なんですか、それが。
早川: 説明が出来るお金なのか、出来ないお金なのかというのが重要なんです。小沢さんは、例えば自分のお金、あるいは奥さんのお金、いろんな説明の仕方はしているのだと思うんですけども。
郷原: いや、原資の話ではないんですよ。小沢さんから入ったということは認めているわけですから、現金として。
早川: ところがですね、これは大事なことは、4億円の現金が仮にここにあったとします。そこから実は4億円のお金は10月12日に受け取ったというのが石川さんの主張のようです。でも手付金は10月5日に払っているはずなんです。10月12日に受け取ったお金の中から10月5日分を払うことは出来ませんから、結果的には3億何千万かのお金ということになります。しかも、それを分割して通帳に入れていますので、結果的に小沢さんが一括して4億円渡した、受け取ったというこの部分についての議論が残るわけです。
郷原: これはですね、政治資金規正法違反の起訴事実について今議論しているんですよ。その途中経過で、何が怪しいとかここから入ってきたのがここに行ったのか、あっちに行ったのかという話ではなくて。少なくとも概ね合計4億円という現金が陸山会に入っているか入っていないかということについての基本的な事実について、今お尋ねしているんですよ。そこなんです。
早川: そこで大事なのは、いっぺんに受け取ったのか、分割して入ったのかと。ここが事実としては重要なんです。
郷原: それが虚偽記入とどう関係するんですか。
早川: いや、結果的にはそれでもって不動産の購入を実はしているわけですよ。
郷原: 代金を支払った。
早川: 10月29日の段階で、午前中に全額決済をしたというのがどうも関係証拠から明らかなようですし。
郷原: それで、それと虚偽記入がどうつながるんですか。
早川: ですから結果的には、陸山会で土地を購入した、その購入資金については小沢さんから受け取ったお金で購入をしたという流れ。
郷原: そうです。さっきからそれを前提にしようと言っているじゃないですか。
早川: ですから、それは陸山会に4億円の金が入っている。
郷原: ええ、そうです。
早川: もう一つあるのは、銀行から融資を受けました。これは10月29日の、どうやら午後の段階。要するに決済が全部終わってから、それも銀行の必要な書類がそろっていないという事情の中でやったと。
郷原: だから、その銀行の話も、もう客観的な事実ですからいいんですよ。小沢さん名義で銀行から借り入れて、その代金が貸し付けられたという話ですよね。
早川: そう。ですからそれは・・・。
郷原: それは陸山会名義の4億円の定期預金が担保にあったわけですね。だからその関係について、これは私が以前から言っていることですけれども、小沢さんから入った4億円というのは、言ってみれば一時立替というか、一時的に不動産を購入するのに必要な資金として入ったとすると、その後、そのお金が4億円が銀行から入ってくれば、振り替わったという風に考えれば、小沢さんのお金は定期預金担保のこの定期預金に変わっているだけじゃないですか。
早川: いや、そこはあくまでも私は冒頭陳述書で考えると、そうではなくて・・・。
郷原: それはなぜそうじゃないんですか。
早川: 結局、預金担保になった10月29日の段階で、急きょ陸山会の口座にあちこちのところから合計で・・・。
郷原: いや、あちこちから入ってきたかどうかじゃなくて。
早川: 入れたということで、結果的にはその10月29日の段階で、銀行から融資を受けた後の担保としての預金が・・・。
郷原: 私が言いたいのは、不動産の購入に必要なお金は4億円なんですよ。銀行からの借入金4億円と、その現金で入った4億円と合わせたら8億円じゃないですか。
早川: うん、8億円になります。
郷原: 不動産の購入資金の4億円という必要なお金は4億円なのに、なぜ借入金が8億円という記載じゃなければいけないのか。まず、そこに基本的な疑問があるんですよ。そこはどう考えられるんですか。
早川: そこは全く「何でそんな不自然なことをするのだろうか」ということで、その不自然な理由というのを解明しなければいけないわけです。結局8億円入っているということは、ほぼ間違いないわけです。
■政治家は事務所の経費が足りなくなるとき、どうする?
郷原: ちょっと全然別の観点から聞きますけども、それでは早川さん、政治家として正式に収支報告書を毎年提出されていましたよね。
早川: はい。
郷原: じゃあ事務所に入ってくるお金、出ていくお金、全部1日1日正確に記載されていました?
早川: いやいや、それは私は会計責任者ではありませんので。結果的には・・・。
郷原: 会計責任者がやったことは全部責任を取れというご意志じゃないんですか。
早川: いやいや、私がそう言ったんじゃなくて。要するにそういう例えば1万円とか50円とかどうなっているかというのは分かりません。
郷原: 少なくとも政治資金というのは、収入はたくさん入る時とそうじゃない時ってありますよね。その事務所の経費が足りなくなる時だってあるじゃないですか。人件費は・・・。
早川: いや、私の場合は、どちらかというと・・・。
郷原: いつも余っていました?
早川: 自分のお金を・・・。
郷原: ええ、そうですよね。
早川: 出していますので。
郷原: そうですよね。出しますよね。
早川: 足りなくなりますからね。
郷原: そうすると、足りなくなったお金ですね。その政治団体に早川さんがお金を入れられたというのは、全部収入として書いていました?
早川: 当然そうでしょう。
郷原: そうですか。じゃあ代表者本人からの立替金、立替金、立替金って。
早川: それは立替金とは書きません。われわれが出すときは戻らないお金ですから。
郷原: いや、戻らないお金じゃなくて、一時立て替えておいたら後から寄付金が入ったから、これは必要じゃなかった時はありません?
早川: そういうことはありません。
郷原: それじゃ、もしそうだったら、どうしたらいいんですか。人件費が毎月これだけのお金がかかって、寄付が入ってくるのが遅れれば、政治家として当然そこを埋めないといけないですね。その埋める立替金は収支報告書に記載しないといけないんですか。
早川: 実際の会計事務の流れから考えると、結局いろんな支払いのためのお金が足りなくなります。そうすると、どうしても事務局からお金を出してくれという風な要請があります。
郷原: ええ、そうでしょう。
早川: そうすると、自分の個人のお金を政治団体に入れます。それで入れて多分限度額が決まっていますので、限度額を超える以上になった時には寄付と貸付金に2つに分けるんです。
郷原: ということは最終的に正式に収支報告書を記載する時に、ある程度その出入りを総括して評価をして記載することに当然なりますよね。
早川: だからそれは実務としてはあり得ることです。
郷原: あり得ますよね。ということは、いちいち現金の出入り、預金口座の出入りがすべて収支報告書の記載事項になるということは、これは基本的にないんですよ。
早川: ただね・・・。
郷原: だからそれを言っているんです。だから・・・。
早川: そうは仰ってもね。
郷原: 先ほど私が言っているのは、小沢さんから現金4億円が入りました。しかし、それはまだ銀行からの4億円が入っていなかったから、とりあえず小沢さんから現金4億円を持ってきたということであって、その後その小沢さんのお金が、陸山会名義の定期預金に回って、それが担保になって銀行預金が借りられたのであれば、それは実質的にこれが振り替わっているだけだし定期預金は小沢さんのお金じゃないですか。
早川: そこは仮定があるわけですよ。
郷原: 仮定って、何の仮定ですか。
早川: 要するに、小沢さんのお金が定期預金にそのまま回っていると。要するに、細かく集めた4億円の金が定期預金になったというのではなくて。
郷原: だから、それがこの弁護側の主張じゃないですか。弁護側はそう主張しているんですよ。
早川: だから、弁護側はそれを主張しても、弁護側の主張でもって検察官のそれを覆すということではなくて、むしろそうではなくて、その土地の購入資金について石川被告の立場から言うと、10月12日に一括して4億円預かったと、小沢さんも一括して4億円渡したと言っているようです。個人の金庫から渡したと。僕はそんなことは普通あり得ないと思っているんですけども。しかし、現実にはその前の10月5日の段階で手付金やら、あるいは不動産の仲介手数料が払われている。
郷原: 少なくとも、あの定期預金が小沢さんのお金じゃなくて、陸山会のお金だという前提ですよ、検察官の主張は。そこがそうじゃなくて、小沢さんのお金だという前提で考えられるのであれば、検察の主張はその部分は崩れるじゃないですか。そういうことを言っているんですよ。
早川: 結局ね、事実の評価というのをどうするかということなんです。私自身が物を見た時の見方からすると・・・。
郷原: ちょっと・・・。
早川: 基本的にはこの不動産の購入は小沢さんの個人の資産形成のためにやろうとしたんだなと思う。
郷原: だから、そういう主観的な見方の問題じゃなくて。私は基本的な流れがちゃんと開示されていればいいじゃないかという考え方に対する反論を聞いているんです。
早川: いや、そうではなくて。その辺についてがまさに法律上の解釈の問題です。だから・・・。
亀松: すみません。ちょっと平行線になって・・・。
早川: 郷原さんはそういう解釈の仕方をするけれども、しかし私はそういう解釈は出来ないと。
亀松: 平行線になりましたので、次のテーマに行きたいと思います。⇒小沢一郎裁判は本当に「どこかが狂っている」のか? 元検事・郷原信郎×元代議士・早川忠孝〈2〉
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関連;「小沢一郎裁判はドレフェス裁判だ」/角栄をやり、中曾根をやらなかった理由/絶対有罪が作られる場所2011-11-12 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
問題は、法学者のみならず右翼・保守陣営と称される人々・メディアまでもが、小沢氏糾弾という、右翼が最も嫌うはずの人民裁判に熱狂していることであり、左右両陣営の熱狂に後押しされて、裁判所が法をねじ曲げ、人民裁判所と化しつつあることだ。 . . . 本文を読む