小沢一郎 すべてを語る TPP、消費税、政治とカネ、原発… 聞き手;鳥越俊太郎(サンデー毎日2011/11/27号)
「僕なら米国と率直に話し合いをし、普天間問題にケリをつけられる」。意ならずも法廷に立たされた小沢一郎元代表(69)は健在だ。TPPから消費税、原発、あの「4億円」――。?剛腕?とジャーナリスト・鳥越俊太郎氏(71)が縦横無尽に語り尽くす。
「尿管結石が見つかって、その後、何にもないから変だなと思ったら、医者は『(結石が)砕けて(体外に)出たんですかね』と言うんですよ」自身の資金管理団体・陸山会の土地購入をめゞる政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で、政治家として初めて検察審査会によって強制起訴された小沢氏。初公判があった10月6日の夜、尿管結石のため腰の痛みを訴え、日本医科大病院(東京都文京区)に一時入院した。その音、小沢氏は甲状腺がんを、鳥越氏は肺がんを患った経験がある。対談は、小沢氏の冗談めいた語り口で始まった。
鳥越:心境はどうですか?
小沢:体は元気です。ただ、何でもないと思っていても、やはりストレスがたまるんでしょう。肩が凝ったりね。
鳥越:政治情勢にストレスを感じませんか。
小沢:それはもう、ちょっとしんどいですね。
鳥越:民主党の政権運営については、期待通りにいっていないように国民に映っています。自民党はダメだが民主党もダメだな、という雰囲気を感じます。
小沢:事実その通りでしょうね。ですから、非常に危険な状態だと思います。政党不信、政治不信というか、政党はどっちもダメとなると、左であれ右であれ、極端な議論が出てくるんですね。日本人は情緒的ですからバーッと走る可能性がある。今、その境目に来ている。これ以上おかしくなると、本当に悲劇になっちゃうんじゃないか。
鳥越:米国でも、共和党もダメで民主党もダメ。何となく世界中、既存の政党がダメになっている。
小沢:欧州もそうです。極右、極左の政党が票を伸ばす。米国も2大政党ですが、共和党の中のティーパーティー、民主党サイドといわれる若い人のデモも現象のひとつじゃないでしょうか。既成の政党、既成の体制、既成の秩序に対する不信感。
鳥越:今、TPPが一番の問題になっています。国民はあまり知らされていないというか、知らないんですよね。
小沢:直接的に、すぐ実害が国民の懐に及ぶ問題と捉えにくいですからね。
鳥越:どういうふうにご覧になっています?
小沢:ひとつは自由貿易という基本的な経済原則の要素。もうひとつは米国特有の思惑があります。自由競争、自由貿易の原則は誰も否定できない。できる限り世界中で自由な経済取引が行われることは良いことですが、今、米国が主張しているTPPをそのまますぐ受け入れることとは別問題。日本の国民生活をちゃんと守るシステムをつくったうえで、吟味してやらなければならない。(現時点で交渉に参加すれば、米国の)意のままにやられてしまいます。(参加国の間で)経済の深化の程度、レベルの差があったり、国情・民族の差があったりしますから、お互いうまく障害を取り除きながら、合意できるところからやっていくことしかない。米国の場合はちょっと金融で走りすぎて失敗しました。何とか挽回しなきゃいけないと、またもや米国のシステムでみんなを統一しちゃおうという思惑があるものですから、米国にビシッと言わないといけないと思いますね。
鳥越:まったくその通り。関税を100%撤廃するやり方は米国の戦略ですね。農業も医療も日本には固有の事情、歴史や伝統がある。急に100%関税を撤廃してやっていけるのか、ちょっと難しいな。
小沢:米国は農業でも自分の都合の良いことを言っているんですよ。自分の大事なものは保護しておいて、他国には「全部撤廃しろ」と。なんぼでも議論できるんですよ。農業だけじゃない。
次に分かりやすいのは医療です。米国は国民皆保険ではありませんが、日本は皆保険。その制度を自由診療などで崩そう――という意図があるわけです。制度そのものが崩壊に導かれる可能性もあるし、米国の健康保険、医療制度でよいとは思えません。
鳥越:民主党政権になれば米国に対し、もう少し対等に、言うべきことは言う姿勢で臨んでくれることを国民は期待したと思います。でも鳩山由紀夫元首相は別にして、菅直人前首相や野田佳彦首相は、ほとんど米国の言いなりですね。
小沢:米国の注文を聞いてくる窓口は官僚ですが、彼らの言う通りでは、おっしゃるように、何のための政権交代かという議論が出てくるのは当然です。僕が民主党の一員として見れば、やはり政治的な経験が非常に浅く、まだ実践を踏んでいませんからどうしても役人に頼るところがあるんです。もう少し勉強し、勇気を持たないといけません。
鳥越:民主党にとっては試練、訓練の期間だったということでしょうか。このままだと次の衆院選はどうなるか分からない。
小沢:それが怖い。自民党が政権を取って代われるくらいピシッとしているのかというと、自民党もダメですね。このままだと、どこも過半数を取れない。悲劇ですね。カオス(混沌)の状態になっちゃう。
*基礎訓練なしに偉くなっても
鳥越:そういう中で、政権の組み替え、政党の再編成は考えられますか。
小沢:民主党が2年前に国民が期待したことをやろうと一生懸命頑張っている姿を見せさえすれば、支持は戻ると思う。悪戦苦闘しているけれども進もうとしている姿に、国民は良い感情を持つのではないか。みんな自覚を持って頑張らないと。それぞれの部署の人が責任を持ち、決断してやっていくということじゃないでしょうか。責任を持たないと、結局、役人の言う通りになっちゃいます。
鳥越:次期衆院選や民主党次期代表選について考えることはありますか。
小沢:野田総理も(安住淳)財務大臣も、消費税(増税)をやるって言っているでしょ?来年1月の通常国会に(関連法案を)出すとなると、来月にはおおよその成案を作っておかなければならない。消費税は直接、個々の国民全部に響きますからね。まして今は世界的大不況が来るかもしれないという時、国内では東日本大震災の影響がある時に、消費税増税というのは、僕は納得できない。もうひとつ、2年前に「(衆院議員任期の)4年間は(消費税増税を)やりません」と約束して政権がスタートしたわけですから、それを反故にすることにもなる。両方の面で、ちょっとどうかなと思います。
鳥越:小沢さんは消費税を上げることには反対?
小沢:今、現時点で上げることには賛成できないですね。ただ、総理と財務大臣が(消費税増税を)言っちゃってますからね。12月には成案、来年1月の通常国会には法案を出すと、よその国まで行って話しているわけですから、ちょっとこれはしんどい。このまま衆院選をすれば問題にならない。ベタ負けですね。
鳥越:あまり明るい材料がありませんね。
小沢:初心に帰ることだと思います。人間ですから約束したことが100%できないのは仕方ない。しかし、約束を守ろうと努力する姿が尊い。最初からやれないとというのでは「一体、何のための政権交代だったんだ」ということになる。真摯な努力の姿を原点に返って取り戻すというのが、いいのではないでしょうか。
鳥越:しかし、小沢さんがそう言っても松下政経塾出身の政治家たちは全然違う動きをしています。
小沢:彼らもそういう公約の下で当選してきた。
鳥越:でも公約がほとんど実行されていません。
小沢:それがちょっと問題でしょうね。困ったことですけど……。
鳥越:困ったとおっしゃいますが、国民も困っているんです。
小沢:そう。そのツケが国民に行くから、国にとっても国民にとっても困ったことになっちゃうということ。非常に心配です。
鳥越:小沢さんがもう一度、政権運営に携わる道はないのでしょうか。
小沢:僕自身は別にどうでもいい。問題は、民主党の場合はみんな基礎的な訓練をしないままポッと偉くなっていること。ベースがないので、何か問題に突き当たった時に「これはこうしよう、ああしよう」という判断ができなくなっているのではないか。仕方ない面もありますが、世界、世の中は待ってくれない。
鳥越:ギリシャに端を発した金融。経済危機ですが、良いのは中国くらいで、ほとんどダメですね。
小沢:欧米がダメになれば中国にも影響するでしょう。中国のバブル経済が弾けそうになっていますが、本当に弾けたら動乱です。中国は政治的動乱を伴うので大変ですよ。
鳥越:経済や金融がグローバル化した結果、一国の問題が世界に波及する事態になった。ギリシャがデフォルトでダメになれば欧州の銀行や米国の銀行がダメになり日本も影響を受ける。そういう時に国民にしっかり支持されている政権がないと困ります。打つ手はありますか?
小沢:妙薬というのはないですね。国民との約束を守る姿勢で政権を運営することからですね。
鳥越:強制起訴による裁判が続いています¨行動の自由を奪われているということはありますか。
小沢:「そんな立場なのに何だ」と、また批判されますからね。あまり過激な言動をするわけにはいかないし、多少は制約されますね。元私設秘書の石川知裕衆院議員ら3人に対する東京地裁の有罪判決は、びっくりしました。
鳥越:驚きました。全部「推認」でした。「多分そうだろう」と(笑)。
小沢:ハッ、ハッ。
鳥越:三重県の中堅ゼネコン・水谷建設の社長(当時)が5000万円ずつ2回、運んできたということが認定されています。
小沢:推認ね(笑)。ただびっくり。前代未間の法廷じゃないでしょうか。(通常の裁判は)裁判官が捜査機関の証拠資料を見て判断しますが、「多分そうなんだろう」ということで判決を出されちゃうとねえ……。
*マスコミ報道は日本の悲劇だ
鳥越:マスコミからも批判が出ました。ただ、その中でどうしても引っかかるのは(陸山会による土地購入の原資になった)4億円のカネの出所の説明が二転三転していると思えることです。胆沢ダム(岩手県奥州市)建設をめぐり、建設業者からの裏金が渡って原資の一部になった、それがはっきり言えないので説明が二転三転した―― マスコミを含めて、いろいろな人が指摘しています。僕らには真相が分からないのでお聞きしたい。あの4億円の出所、原資は何ですか。
小沢:僕のお金です。今のお話も全部、多分そうじゃないかという類いの話。マスコミも国会も忘れているのは、僕も後援会も秘書たちも、2年近くにわたって国家権力によって強制捜査されているということ。僕の知らないことや忘れたことまで(東京地検特捜部は)全部分かっています。捜査機関が強制捜査したにもかかわらず、不当“違法な金銭の授受はないことが明らかになったんですから、個人が勝手に説明する以上に確かな説明じゃないだろうか。あとはまったくのプライベートな話。何も悪いことがないのにプライベートを全部、説明しなきゃならないという理屈はおかしい。
鳥越:すると4億円の出所についても検察の事情聴取はあったと?
小沢:ぜ〜んぶ(笑)検察は知っています。預金通帳から何から、銀行の原簿まで持っています。強制捜査ですよ、鳥越さん。
鳥越:一部説明をしていましたが、お父さんからの遺産も……。
小沢:もちろんそれもあります。親からの相続は(4億円の中では)大きかった。僕自身だって稼いでいます。印税だけでも1億何千万円もありますし。
鳥越:あの本(『日本改造計画』)は売れましたから。
小沢:本はそれだけじゃないですから(笑)。
鳥越:そこに建設業者からの裏献金が紛れ込んでいることは?
小沢:絶対ありません。第一義的には、後援会のお金と私有財産は絶対混同しないようにずっと心がけてきていますし、もし違法献金があるなら、これだけ調べたら必ず出てくるでしょう。検察は噂の類いから全部、全員を呼んで調べているんですから。それでも出ないんですから。ないものは出るはずがありません。カネがなくなっちゃうということだから、用立てしたということ。
鳥越:そのお金の流れが、何となく不審を感じたところかもしれない。
小沢:「(土地を)買うと、事務所の運転資金、運営費がなくなっちゃう」と。それでは、僕の手持ちのカネを当面、用立てようと。
鳥越:それを抵当にして、また銀行からお金を借りている。
小沢:事務的な話です。(事務所に)まったく任せていますから。強制捜査した結果として何もないにもかかわらず、どうして「違法なカネに違いない」ということが、マスコミをはじめ無関係の人に分かるのでしょう。
鳥越:では、小沢さんは新聞・テレビの報道をどのようにご覧になっていますか。
小沢:日本社会の悲劇ですね。これが戦前、「一億玉砕」を唱えたこともあり、一度は国を滅ぼした。これから戦争が起きるということではありませんが、このままだと民主主義の否定になります。政治不信は民主主義の否定ですから。一体どういう社会をメディアは望んでいるのか、僕にはまったく分からない。ただ悲劇だと思う以外にないですけれど。
鳥越:明るい材料はないですかねえ……。今日は小沢さんに明るい材料をいただかないと(笑)。
小沢:日本人が豊かな情緒と精神文化を持っているのはいいのですが、国際社会の中で生きているのですから、民主主義をきちんと理解することが大切でしょう。それから、もう少し理性的。論理的な発想で自立しなければダメですね。政治でも、みんなで何となく決めるでしょ?誰が決めたのか分からないうちに決まってくる。
日本の合議制というのは、誰も責任を取らなくていいシステムなんです。うまくいっている時はそれでもいいが、問題が起きた時には「誰も決めない」ということになっちゃう。だから、さらに激変が予測されるような時は、論議を尽くしたうえで、その立場にある人が最終的に自分の責任で決める――「自立と共生」を僕はずっと主張しています。自分で考え、自分で決断し、自分の責任でやる。その要素をもう少し身に着けないといけません。
鳥越:時間がかかりますね。小沢さんと僕とはそんなに年齢が変わらないけれど、われわれが生きている間は無理かも(笑)。
小沢:無理ですね。日本人の中身まで変わるのは無理ですが、頭の中だけでも……。ただ、こう言うと笑う人がいるけど、僕も本質は情に樟さして流されるタイプの典型的日本人なんですよ。でも、政治家はそれではいけない、理性で考えて結論を出さないといけない、と常に言い聞かせています。「冷たい人間だな」とは言われますが(笑)。
*原発は過渡的…反省してます
鳥越:ところで、今回の震災については?
小沢:原発事故は深刻ですね。1970年代、僕が科学技術政務次官だった頃に原発が始まりましたが、過渡的なエネルギーとしては仕方がないと最初から主張していた。新エネルギーを見いださないといけないという思いは、ずっと持っていました。今も原子力の結論は出ていないんですよ。高レベル廃棄物の処理はどこの国もできていない。一局レベルは、どこも受け入れないでしょ?
鳥越:将来的には原発をなくしていく方向でしょうか。
小沢:最終処理が見いだせない限り(原発は)ダメ。新エネルギーを見いだしていくほうがいい。ドイツには石炭などの資源がありますが、日本はない。ですからドイツのように10年で原発を止めるわけにはいかないかもしれないが、新エネルギー開発に日本人の知恵とカネをつぎ込めば十分可能性はあります。思えば、過渡的エネルギーだと分かっていながら原発に頼りすぎました。「もう少し強く主張しておけば良かった」という反省はあります。
鳥越:日本人のモノ作りの伝統からいうと、新エネルギーをつくり出すことについて僕は悲観的ではありません。太陽光発電や風力発電、水素エネルギーなどいろいろあります。それにしても(福島第1原発を)廃炉にするだけでも、時間もカネもかかりますね。
小沢:残滓をどうするかが一番の問題です。使用済み核燃料棒をどうやって取り出すのか、取り出したものをどこに置くのか。できないことを言っても仕方がない。何十兆円かかろうが、何とか封じ込める策を講じないと日本の将来はありません。「冷温停止」と言いますが、爆発しないようにするだけで汚染はどんどん進むし、未来永劫、水をかけっ放しになっちやいます。これを解決しないと日本はダメでしょうね。
鳥越:東京電力だけでなく、国、政治の責任でもある。
小沢:東電を矢面に立て、国が後ろから支援する今のシステムはダメだど思います。国が前面に立ち、その下に東電や原子炉メーカーなどを付け、全力でやるようにしないと。原発の封じ込めは東竺電だけではできません。
鳥越:今、どうしても言いたいことは何でしょう。
小沢:やはり原発問題。これを抱えていたのでは日本の未来はない。どんなにカネがかかっても衆知を集めて封じ込めないといけない。これが第一。それから役所中心の日本の仕組みを改める。そのためには、みんなが民主主義を正確に理解しないとね。個人の自立と民主主義。これがないと、いくらテクニカルな話をしてもダメ。日本に民主主義が定着するかどうか、今が胸突き八丁、境目だ。
鳥越:「官から民へ」と言いますが、官僚は同じ場所で勉強して政策に通じ、優秀です。民主党の若手議員は負けていますね。
小沢:官僚と闘うレベルを間違えているんです。もっと高い次元の理念・見識で闘わないといけない。細かいことは、専門家である官僚のほうが知っているに決まっています。「この理念に基づいて社会をつくりたい。だから協力しろ」と筋道の通った議論がなされれば官僚は抵抗できません。
*中国にもズケズケ言ってるよ
鳥越:では、具体的に聞きます。沖縄県の普天間(飛行場移設)問題です。
小沢:僕は、いつでも米国とケリをつけられると思っています。あの沖縄のサンゴの海を埋め立てるなんてバカげたことをする必要はない。普天間(に駐留する米軍)の必要はないですよ。前線から実戦部隊を引ぐのが米国の軍事戦略の基本。欧州からも兵力を引いている。米軍が引くと中国の軍事力にやられるというのは一面の事実ですが、日本が「こういう役割を果たすから、この部分はいなくていい」と言えない。これこそが問題ですね。沖縄は日本の国上ですから日本が守るのは当たり前。3K(きつい、汚い、危険)はやらずにカネさえ出していればという感覚だから、米国人にバカにされちゃう。
鳥越:鳩山由紀夫元首相が突き当たった「抑止力」ですね。これについてはどう考えますか。
小沢:僕も必要だと思います。米国のプレゼンス(存在)が極東アジアからまったくなくなるのは良くないっよく「日米同盟」と言いますが、だったら、それなりの役割を日本も果たさないといけない。「日本の領土はちゃんと日本が守る、トータルな抑止力の一部は担う、緊急の時には米軍が来てください」と。
鳥越:米軍はグアムなリハワイなりで……。
小沢:十分。情報を探ったり警戒・監視したりすることは日本でできる。尖閣諸島も日本の領上で、一度も中国の領土になったことはない。中国にも面と向かって言ってますよ。「どの王朝の時に、お前らの領上になった?」「ここは琉球王国の領上で琉球は日本と合併した」と。「その問題は?小平(元最高指導者)先生が『後世に任せようと言った』」と言うが、あれから20年も30年もたっているじゃないか(笑)。
鳥越:それは誰に?
小沢:唐家璇(とうかせん)が国務院国務委員の時かな。中央対外連絡部(中連部)なんかともズケズケやってますよ。
鳥越:日本人は、米国にも中国にもモノが言える政治家がほしいんです。
小沢:僕は日中も日米も、政治家としても個人としても、友好促進のための草の根交流などを何十年も一生懸命やっています。彼らはそれを知っていますから、僕がズケズケ言ったって怒らない。
鳥越:モノを言わないことは国益を害しますね。
小沢:言うと責任が生じるから言わない。官僚はともかく、政治家は言わなくちゃいけないんです。
鳥越:民主党内で、小沢さんが後を託すような政治家は出てきていますか。
小沢:基礎的な勉強をさせなければダメですね。トップリーダーも、若ければ良いというものでもない。実務的な実践を段階的に積んでいかないと、イザという時の判断ができない。30代、40代で良い人たちはいると思いますよ。ただ、基礎的勉強をしなきゃね。すぐに偉くなることばかり考えていてはダメです。
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◆菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎:百術は一誠に如かず2010-12-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
菅原文太「日本人の底力」 ゲスト小沢一郎 2010年12月26日ラジオ(ニッポン放送22日収録)
菅原 今年最後の放送は、民主党元代表、小沢一郎さんにお越しいただいて、政治の話、日本のこれからの話、そんなことを聞こうと思います。あの、小沢さんは日ごろあまりご自分のことは言われませんね(笑)。
小沢 あはは。
菅原 座右の銘なんてものはありますか?
小沢 はい。僕は「百術は一誠に如かず」という言葉が好きで、どんなに策を凝らしても一番大事なのは誠を尽くすということで、今風に言えばパフォーマンスよりは誠を尽くすことの方が大事だと。そういう意味だろうと思うんですが・・・。
菅原 もう一度言ってください。百に技術の術ですか?
小沢 百ぺんの術策よりも、唯一つの誠より優れたものはないと。
菅原 一つの誠、はあ〜なるほどねえ。今日のしてきたネクタイをいうと、紺色と白で・・・。
小沢 あはは。
菅原 色はそういう色が好きなんですか?
小沢 色は背広でも何でも紺が多いですね、我が社は(笑)ただ最近は、紫がはやっているものですから「お前も同じようなものじゃなくこういうのもつけろ」つって、ネクタイを何本か頂きました。
菅原 そんな小沢さんの人柄がなんとなく伝わったかなというところで、あの、政治というか、なぜなんでしょうか、あの沖縄の問題。承知をされているんですけど、鳩山さんもついに断念してしまった。なんであのときにずーっと行かなかったかなと思うんだけども、政治家・・自民党も民主党も僕も含めて、アメリカにね、私のような素人、門外漢から見ても日米同盟なんて言葉だけはきれいなことを言ってるけども、どこかね、怯えてるんじゃないのと。そういう風に見えるんですよ。アメリカの何に怯えてるんですか。
小沢 そうですね・・・アメリカの経済力を含めた巨大な力でしょうね。怯えと同時にですね、アメリカの言うようにしてれば楽だと。そういう意識があるんじゃないでしょうかねえ。食うには困らないというとこでやってれば。ですから、そういう意味で、独立国家としての日本はどうあるべきかとか、そういう類の問題はできるだけ考えないようにして、言うとおりにしてると。そうしてればまあ、なんとか生きていけるんじゃないかと。という、二つの要素があるんじゃないですかね。
菅原 小沢さんと同じ党だけど、今の政権の人たちはね、ほとんどみな普天間・辺野古問題は県外、国外と言ってたじゃないですか。ところが今は全部ひっくり返ってしまった。政治家として情けないなと思っているんですけども、その一方で、それじゃあ中国と親密に仲良くかと思うと、中国に対しても肩肘張って。
小沢 基本的に事なかれ主義なんですね。中国に対しても経済力でつながっていて非常に強くなって大きくなっていますが、まあ、あまりゴチャゴチャしないようにと。尖閣の領土侵犯のときも経団連なんかが「早くこれケリつけてくれないと企業経営にひびく」とか、そういう観点だけなんですね。そういうことですから、アメリカからも中国からも実は全く相手にされてないですね。ロシアだって同じですわね。そういう意味で、国は国民と領土で成り立っているものですから、そういうきちんと国民の生命、それから日本国というそのものをきちんと自分で守っていく、そういう考え方、政治的な姿勢、スタンス、そういうものが全く・・・これ自民党時代からですけども、なかったと。今もないと。そういうところが、彼らに軽んじられる最大の原因だと思っています。
菅原 本来なら、戦いに敗れたのですから、しばらくは家来でいても仕方なかったにしても、65年たっても自立、独立されてないとしたら、こんなに情けないことはないんで。小沢さんは以前からアメリカとも対等に、中国とも対等に、正三角形でいかなきゃいかんと。特に中国を中心とした東アジア同盟というか、そうした形でこれからの日本はやっていかなきゃいかんと、小沢さん除いてそういうことを言う人が一人もいないんじゃ、これは困ったもんだなと思っているんですが。
小沢 そういう発言すると角が立つと議員はみな捉えるんですね。ほんとの事なかれですから、(外国から)まず軽蔑されますね。官僚、政治家、それぞれの職分を守ること。政治がきちんとビジョンを示し責任を取れば役人は理解してくれる。
菅原 そういう話を聞くと、結局政治家は官僚に取り込まれてしまっている。こっちから見えない。官僚のね、これはもういろんな人が言ってるんだけど、明治維新から続いている官僚制度ですよね。(太平洋戦争終戦で)改まるかと思ったら官僚のシステムだけは生き残ってる。官僚制度の問題さえ片付ければ、自ずと普天間の問題も、日米同盟の問題も、日中の問題、アジアの問題、いろんな問題が収まってくると思ってるから。小沢さんがもしこの先政治の中心に立ったとしたら、どのようにされようと思っていますか?
小沢 明治以来の官僚機構。戦後、ぼくは、戦前以上に官僚統治が行き渡っていると思ってるんですね。それと同時に日本の官僚というのはアメリカと密接に結びついています。外務省だけじゃなく。そういう面もあるんですよ。
ただ、僕は官僚を否定してるんじゃなくて、日本の官僚は国家レベルのことをやりなさいと。国会議員も国家レベルのことをやりなさいと。それぞれの職分を守りなさいと、それだけのことを言っているんですが。
官僚の人もね、大部分の人は既得権を奪われるんじゃないかという恐怖感でいますけれども、優秀な人ほどこのままではいけないんじゃないかと思っています。腹の中では。だから僕はその人たちがきちんと表に立ってやれるようにするためには、政治家が「こういう国づくりをしたい」と、だから「この方針に従って、具体的な行政をあんたらやってください」と、「その結果はオレが責任とる」と、言えば彼らはやりますよ。
その、「何かお前たち考えろ」と、役人の考える範囲というのは今までの基本方針を大変更するということはできませんから。既存の積み上げということになります。それでその中で何か知恵を絞って持ってって、うまくいかなければ「お前らけしからん」「役人けしからん」と、役人のせいにされちゃう。これじゃあたまったもんじゃないというのが彼らですね。これは全部のことに共通することで、政治家自身がやはり自分のビジョンと主張を内政でも外交でもきちんと申すと、そういうふうにすればですね、僕は必然的に役人はついてくると思っています。
菅原 小沢さんからそういう風な話を聞くと簡単なのになあ・・・と。素人から見るとねえ、できないのかなあと・・・。
小沢 官僚の既得権を奪うだけではダメなんで。必要なことは、僕は、もっと権限を強化しなきゃいけないところもあると思うんです。例えば危機管理とかテロだ金融危機だ天然災害だといろんなことあるでしょう。そんなときにもっと政府は強力な権限持たないとダメですよ。阪神大震災みたいに、総理大臣が来るまで三日間かかって何かかんかしつつ、その間に人が死んでしまうなんて。その意味では素早くパッと対応できるような、国の権限を強化しなきゃいけない面も、あります。それはもう事柄に応じてありますけども、そういう役割をきちんと付与すれば、私は役人は大丈夫、理解してくれると思います。
菅原 これから小沢さんがね、政治生命をかけて、特に、来年、裁判も待ち受けていますね。政治とカネという問題は、政治にカネは必要である。
小沢 以前からずーっと僕が主張してるのは、政治資金の問題、私個人のこと云々ということをこの場で申し上げるつもりはございませんが、政治資金の問題を筆頭にして、行政であれ、一般の会社であれ、日本は非常に閉鎖的、クローズドな社会ですよね。菅さんはオープンオープンとおっしゃってるからもっとほんとはオープンにしなきゃいけないんですが。
僕は、政治資金も、誰から貰ったか、極端に言えばですよ、誰だって浄財くれるっていえば貰ったっていいと思う。それで、何に使ったか、収入と支出を全部、1円からオープンにすると。それで国民みなさんが「あんなやつから貰うなんてけしからんじゃないか」とか「こういうところでこれを使うのはけしからん」と、そういうふうに思えばそれは選挙の際にきちんと判断すればいいんで。
今は、オープンオープン言いながら・・・私自身は全部オープンにしてますけども、オープンにしなくていい部分が残ってますし、それから行政でも、機密事項的なことはほとんどクローズドですよね。大臣だって知らされていないし。会社だってそうです。ほんとの機密事項は株主であれ従業員であれ誰も知らない。僕は、アメリカみたいになんでもかんでもオープンにするというのは弊害も出てくると思います。少なくとも、ヨーロッパ並みのオープンな社会にしていかないといけないと思っています。
菅原 あの、国会議員は(政治献金ではなく)国民の税金で賄ってますよね、給料から政治活動費も。
小沢 日本はそのパーセンテージが高いですね。
菅原 そうですよね。それであるんなら、政治資金も、政治に本当に使うためのものをね、アメリカ式に、広く集めたらどうなんだろうと。こないだ、岡田さんが経団連から献金を、あれだけダメだって言ってたのに(笑)、もらうことにね、そのために法人税5%下げるなんて(笑)それがひとつのアレなのかなと思わざるを得ないようなね、かえって国民から見てもおかしいなということが、清潔に、クリーンにと言いながらあらたまってこない・・・。
小沢 大きな変革をしようとすれば、今までの旧体制で既得権を持っていた人からすれば脅威ですから、「あの野郎さえいなければ」ということになりがちなのは、歴史上でも仕方のないことなんですけども。
ただ、僕は、質問していないのは、国民の皆さんは、いま、テレビ新聞だけじゃなくて、ネットやいろんなもの、媒体が普及してきましたよね。ですからものすごく意識が変わってきている。このラジオだって、いっときテレビやなにかで押されたみたいであれしてますけども、ラジオ聴いてる人っていうのは意外に多いんですよね。いろんな意味で情報を知ることが出来るようになったので、僕は国民の皆さんは、かなり意識が違ってきてると思っています。
ですから、さらにもう一歩進んで、今お話したように、自分も、百円でも千円でも、献金して政治活動を助けてやろうというようなことまで行けば、いろんな問題は少なくなりますよね。僕の場合はね、ワーワーワーワーメディアに騒がれるたびに個人献金が数百人規模で増えてるんですよ(笑)。
菅原 ほお。
小沢 もちろん、アメリカみたいに何万何十万という人じゃないですから、トータルの金額はそんな大きいわけじゃないですけども、それでも、去年も、今年も、300人、400人ずつ個人献金者が増えてます。
小沢 だから僕はメディアの非難が集中してますけども、お金のことであれ何であれ、不正行為がね、あったならば、それは政治家であれ一般人であれきちんと罰せられなきゃいけないと。それはその通りだと思うんですが、ただなんとなくね、そのときそのときで、一人を悪者にして、肝心な世の中の仕組みや政策やそういうものが全然改革されないで終わっちゃってるんですね。その場その場で。そこが僕は非常に問題だと思っていますね。で、何か起こるたびに、規制が強化されるんですよ。規制強化というのは官僚の権限を大きくするだけなんですよ。これがほんとに繰り返しなんですよ、日本の。
菅原 我々のようなね、政治に縁のないところで生きてるでしょう、それでも規制はひしひしと迫ってきています。だからね、戦後のどの時代よりもいま窮屈でね、「これもダメ、あれもダメ」、ね。そして税金の増税を堂々と言いかけて止めてしまったもんだから、なんかね、ズルくね小さく、ここから取ってあっちから取ってね(笑)気がつかないところで取り上げてるんですよ。そういうのをね、改めてもらいたい。
菅原 あの、金の問題が長くなりすぎたんで、ここで、これからの日本の国の姿、そして政治をどういうふうに、特に、来年、政治的な動乱が起きるんじゃないかと思っているんですが。そういう中で小沢さんは何を考え、何を目的として、この先、やっていかれるか。その話を聞かせていただいて終わりにしようと思います。
小沢 はい。私が言っているのは、自立した日本人と、自立した日本人の集合体である自立した日本国。それが私の、抽象的な言葉でいうと目標で、要するに、自分自身で考え、自分自身で判断し、自分自身で責任を取ると。ということでないと、個人も国も成り立たないし、誰にも相手にされないということだと思っているんです。
アメリカは日本の最大の同盟国ですけども、同盟国であるに相応しい日本は、じゃあ日本の役割はなんなんだと。そして、アメリカは、なんなんだと。現状はそれでいいのかと。そういうことを日本人がしっかり持って、それでアメリカにも言わなきゃいけない。
中国も、僕これ既に言ってんですけども、尖閣列島は、数千年の中国王朝の支配に入ったことは、歴史的にないんですよ。間違いない、日本の正真正銘の領土なんですね。そういうことについて、しっかりした・・・僕はもう中国の人にも言ってますけどね、あれは歴史上見ても争うことは何もないと。その問題であれ何の問題であれ、しっかりと自分のあれを相手に伝えられるような日本人に、そして日本の国にしたいなあと、そう思っております。
菅原 さて、そうは言っても、何年になりますか(笑)、言い続けてもね、みんな腰倒れといいますか、小沢さんも今年は68歳、まあまあ、私なんか10個も上ですけどもね、今のままでは、私のような門外漢でも不安でね、どうなんだろうこの国は。
もう孫もいるもんだから、特に孫なんか見てると、いま中学、これから高校に行こうなんてものだから、これからの日本はどうなるんだろうと。細かく言えば教育はどうなるんだろうね食料はどうなるんだろう、いろんなことがやっぱり・・そしてそれは殆どが今までの政治の官僚組織のね、具体的に暖かい手を差し伸べてやってくれてないんですよ。
政治家としての小沢さんは実績があり度胸があるんだからね、ひとつ・・・まあ、そういう人が何人かいるじゃないですか、亀井静香とかね(笑)。
小沢 仰るようにですね、今の日本は老いも若きもですね将来の不安、将来の見通しが全然たたない、これは経済であれなんであれね、そこに僕は日本の社会の不安定なそして不安な要素があるんだと思うんです。ですからやっぱりあらゆる意味で、少なくともリーダーが「こういう日本を作りたい」と「このために皆で頑張ろうや」というやっぱり自信を持ってですね、言えるようにしなきゃいけないと思いますですね。
菅原 お互いにあの東北のね、岩手と宮城の県境で、歩いても行けるところで(笑)。生まれてるんだけども、明治維新をもう一度振り返ると、「白河以北一山百文(『白河の関所より北の土地は、一山で百文にしかならない荒れ地ばかり』という侮蔑表現)と言われてね、ずぅっと蔑視されて、そういうやっぱり薩長土肥、西側の、私なんか薩長土肥と、向こうは敵だって言うんだけども、西郷さんも好きだし、大久保利通も。ねえ、でもそういった維新のときの精神がだんだんだんだん山縣有朋あたりになってくるとやっぱり別のものに変わってしまって・・・。
小沢 官僚機構がどんどん強くなってきてしまいましたからねえ。だから官僚のシェアの中でみんな結局は悲惨な戦前の歴史になってしまうんですよねえ。明治のリーダーが偉かったのは「白河以北一山百文」という言葉がありますけども、明治のリーダーが偉かったのは、敵であった徳川幕府の中からも優秀な人材はどんどん登用していますね。これはね、僕はえらかったと思いますね。
菅原 五稜郭榎本ね。
小沢 ええ。誰であっても。それでね、うちの大先輩の原敬であっても・・あれ東北の方ですからね、それが立憲政友会幹事長になって総理大臣にまでなったわけですから。いろんな人を、白河以北の人材であっても優秀なら採用したんですね。それだけの、やはりトップリーダーに人を見分ける目があったんでしょうね。
菅原 必ずしも薩長全部が悪いわけではなくて。だけどやっぱり東北は悲惨だった。賊軍と言われたりしてね、長いこと雌伏してた。その雌伏から、ひとつ、小沢さんが・・・。
小沢 あははは。
菅原 立ち上がりました。
小沢 あはは、はい、そうですね。
菅原 今日は本当にありがとうございました。(強調=太字は、来栖)
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◆民主党大会 小沢氏演説=この理念に沿った政治をこの国が渇望しないはずがない2010-09-15
(前段略) しかし、私は官僚無用論を言っているわけではありません。日本の官僚機構は世界に冠たる人材の集まっているところであると考えております。問題は政治家がその官僚をスタッフとして使いこなし、政治家が自分の責任で政策の決定と執行の責任を負えるかどうかということであります。 (後段略)
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◆ケビン・メア著『決断できない日本』 普天間から福島まで、代償の大きい日本の優柔不断2011-08-20 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
◆WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)2011/5/27 小沢一郎元民主党代表インタビュー「天命に遊ぶ」2011-06-03 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆小沢一郎が語った「原発/衆愚の中からは衆愚しか/マスコミは日本人の悪いところの典型」 〈悪党?〉2011-09-19 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
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『小沢一郎 語り尽くす』TPP/消費税/裁判/マスコミ/原発/普天間/尖閣/官僚/後を託すような政治家
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