選挙モードに入るのか?
2011年11月28日00:46 田中良紹の「国会探検」
第三次補正予算は成立したが、震災からの復興体制が万全になったとは言えないうちに、解散・総選挙の話が与野党双方から出始めた。
きっかけは11月3日、G20の首脳会議に出席した野田総理が「2010年代半ばまでに消費税を段階的に10%に引き上げる」方針を示し、「消費税法案を2011年度内に提出する」事を国際公約したからである。同行記者団には「法案の実施前に国民の信を問いたい」と述べた。
21日には五十嵐文彦財務副大臣が「2013年10月以降に消費税率を1回目として2〜3%引き上げ、残りの2〜3%は15年4月か10月になる」と野田総理の発言を補足した。実施予定の2013年10月以降というのは現在の衆議院議員の任期を越えており、その前に必ず総選挙は行なわれる。しかし法案を決める前に国民の声は聞かないと言う。
民主党は2009年の総選挙で「消費税を4年間は上げない」事を国民に公約して政権交代を果たした。従って引き上げの実施時期は公約を守った事になるが、決めるのはそれより1年以上も前なのである。しかも決める前に信を問わず、決めた後で信を問うというのは、いかにも霞が関の官僚が考えそうなやり方である。
官僚から見れば野田総理は消費税引き上げを決めてくれれば良い訳で、それで野田政権が潰れてもその後の政権が増税路線を引き継ぐと見ている。おそらく野田総理は「市場の信用を失わないために日本は財政再建の強い姿勢を国際社会に見せる必要がある」と言われ、G20で消費税引き上げを国際公約にした。
しかし国際公約にすると総理は逃げる事が出来なくなる。国際公約を守らなければ政治責任を問われて退陣に追い込まれる。07年の参議院選挙に敗れた安倍総理は、国際公約していたインド洋での海上給油が「ねじれ」によって不可能になった事に気づいたところで退陣を表明した。
そうした意味で野田政権は官僚にとって消費税引き上げのための「使い捨て」政権であり、国際公約した事で「二階に上らされた」と見る事ができる。ハシゴを外される可能性がないわけではない。
野田総理の国際公約を見て政局が動き出した。自民党の谷垣総裁は「増税をやるなら決める前に総選挙で国民の信を問うべきだ」と言い、石原幹事長は「自民、公明、民主の3党が消費税法案の成立と引き換えに話し合いで解散する」可能性に言及した。自民党は民主党が消費税増税に踏み込んでくれれば政権奪還の勝機と見て、早期解散を求めている。
一方、民主党では小沢元代表が野田総理の政権運営を厳しく批判し始めた。消費税増税を決めて早期解散に追い込まれれば民主党は大惨敗する可能性に言及した。
そして政界には再編に向けた動きも加速してきた。石原幹事長は「民主党と自民党の二大政党がいずれも増税を巡って分裂する」と言い、国民新党の亀井代表は政界再編を見据えた新党構想を発表した。
亀井代表が新党構想を打ち上げた背景には、国民新党にとって最重要課題である郵政改革法案の成立が見通せない苛立ちがあり、こちらも連立離脱をちらつかせて野田政権を揺さぶっている。震災からの復興を万全にするには、郵政改革法案を成立させ、郵政株の売却によって増税を圧縮する方法がある。公明党は賛成しているが、自民党の小泉改革支持派が反対している。
野田総理が消費税増税を言い出して自民党を選挙モードに追い込み、対立を先鋭化させてしまえば、郵政改革法案を成立させ、郵政株の売却で復興増税を圧縮する事も出来なくなる。亀井氏にすれば政策の優先順位が逆だと言いたいところだろう。
亀井氏の新党構想は「一人芝居」と政界から冷ややかに見られたが、連携する相手の中には既成政党と一線を画す地域政党が含まれていた。その地域政党の代表格である「大阪維新の会」は27日の大阪府知事、大阪市長のダブル選挙で圧勝した。愛知県と名古屋市でも見られたが、こうした地域では既成政党はもはや守旧政党である。
2年前の総選挙での民主党に対する熱い期待は幻想であった事が分かり、とはいえスキャンダル攻撃しか出来ない自民党には一層の幻滅を感じ、国民は地方首長の唱える「改革」にしか光明を見出せなくなっている。これら地方の「第三極」は必ずや国政を目指して選挙に候補者を擁立してくる。「第三極」は今や再編の柱の一つである。
この夏に野田政権が誕生したとき、その課題は震災復興と原発事故対応の一点に尽きると私は思っていた。それを万全にした上で定数是正と選挙制度改革の難題に取り組み、さらには世界経済危機に対する経済の舵取りが問われていた。それで任期1年を燃焼しつくす。選挙モードに火をつける段階ではないと思っていた。
ところが国際公約をした以上、野田総理は消費税引き上げに突き進むしかない。「使い捨て」になるかもしれない路線である。野田総理は次期通常国会で2013年実施の増税を決めようとしているが、現在の世界経済を見れば、2013年の日本経済がどうなるか予測などつかない。
ヨーロッパの経済危機は中国経済に影響を及ぼし、それが日本経済にも波及してくる。一方で震災復興と原発事故を乗り越える事は急務である。その行方が分からずとも増税を決め、選挙モードに入る事は、この国の行方を神のみぞ知る世界に委ねる事になる。
・田中良紹(たなか・よしつぐ)
1945年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同年(株)東京放送(TBS)入社。ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。
1990年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。
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大阪ダブル選挙「維新の会」が制す 市長選は橋下氏が大差の勝利
J−CASTニュース2011/11/27 21:35
40年ぶりとなった大阪府知事・大阪市長の「ダブル選挙」は、いずれも地域政党「大阪維新の会」の勝利が確実となった。
前大阪府知事の橋下徹氏(42)と、現職で再選を目指した平松邦夫氏(63)の一騎打ちは橋下氏が得票数で大きく差を広げたと見られる。
*橋下新市長「広域行政は府知事が決定権」
大阪府知事・大阪市長選は2011年11月27日に投票が行われた。投票が締め切られた20時、NHKなど主要メディアが事前情報や開票所での出口調査をもとに「当確情報」を発表。7人の新人候補で争われた府知事選は、「大阪維新の会」公認で前府議の松井一郎氏(47)が、前大阪府池田市長で民主党府連や自民党府連が支援した倉田薫氏(63)らを破って初当選を果たすことが確実となった。
市長選では、「大阪都構想」を掲げて府と市の再編を主張する橋下氏と、「大阪都構想」を「市民にとってメリットは全くない」と批判し、真っ向から対決姿勢を強めていた平松氏との間で、激しい選挙戦が繰り広げられた。投票日前日の26日にも、橋下陣営には石原慎太郎東京都知事が、一方の平松氏には民主党国会対策委員長の平野博文衆院議員らが応援にかけつけ、それぞれ支持を訴えた。しかしふたを開けると、早々に橋下氏の当選確実が報じられた。
松井氏、橋下氏はそろって20時40分ごろに報道陣の前に姿を現し、「勝利宣言」。最初に挨拶に立った松井氏は投票率が高かったことに触れて、「まず、政治に関心をもっていただいたことに感謝を申し上げたい」とひと言。「二元行政と呼ばれた今までの行政を根元から変えていく、そのスタートラインに立てたことをうれしく思っている」と話し、今後の橋下氏との連携を強調した。
一方の橋下氏は、「大阪府庁、大阪市役所、教育委員会は今回の選挙の結果を重く受け止めてほしい」と促した。さらに、広域行政は府知事が決定権を持つことが必要だと指摘。「大阪市長は大阪市民の票しか得ておらず、大阪全体のことに市長が口を出すのはおかしい」と話したうえで、これまでの大阪府と大阪市の「争い」に終止符を打ちたいと述べた。
*「民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」
その後開かれた共同記者会見で、橋下氏は「大阪都構想をやりたい、という強い思いが多少なりとも有権者に伝わったのではないか」と勝因を分析する一方、「まだ不十分、さらに説明しなければならない」と語った。続けて、「市職員の給与体系の見直し、また一部職員は政治を軽く見ているので、そのような職員の意識を変えていく。さらに区長の位置づけなど組織全体も見直していく」と今後のビジョンを明らかにした。市役所職員に向けては「民意に基づいてしっかりやろう、という気持ちになってくれるかどうか。民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」と厳しい口調だった。
一方、市長選に敗れた平松氏は会見で、「早々と残念な結果が出てしまったことで、私の力不足を痛切に感じている」と固い表情のまま支持者に対して謝罪。「4年間大阪市長として、市民の皆さんにいかに行政が寄り添えるかと2期目に挑戦したが、果たすことが出来なかった」と無念の様子を見せた。橋下氏については「強い相手だった」とだけ話した。
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◆消費増税「乱暴に過ぎる」=小沢一郎氏 鹿児島県霧島市で開かれた民主党衆院議員の会合で2011-11-27 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆亀井静香、政治生命をかけた最後の大勝負/小沢Gの中には、みんなの党との連携を模索する動きもある2011-11-26 | 政治/検察/メディア/小沢一郎
◆橋下徹 それでも「圧勝」の異常選挙/ とっくに終わっている「古い力」に頼んだ平松陣営の愚2011-11-15 | 政治
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消費税引き上げのための「使い捨て」野田政権 選挙モードに入るのか?/小沢一郎氏/亀井静香氏/地域政党
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