麻原彰晃死刑囚の「Xデー」 法務省のメンツで年内に来るか
NEWSポストセブン2011.11.28 16:00
11月22日、大手新聞各紙に「オウム裁判終結」の見出しが並んだ。その背景を大手紙司法担当記者が明かす。
「これだけ大きく報じたのは、裁判終結が麻原はじめオウム真理教の死刑囚たちの刑執行に大きく関わってくるからです。我々は麻原の死刑執行が年内いつ行なわれてもおかしくないと見ています。すでに予定原稿の準備は半ば終わっていますから」
麻原死刑囚の控訴が棄却され、死刑が確定したのは2006年のことだ。確定死刑囚の刑執行までの平均拘置期間は5年11か月。共犯者の裁判が終結したことで、いつ麻原死刑囚の「Xデー」が訪れても不思議ではない。
一方、麻原死刑囚の年内執行説が囁かれるのには、こんな事情もある。法務省関係者の話。
「昨年7月、千葉景子法相のサインによって、2人の死刑囚が執行されて以降、死刑は行なわれていません。1年通じて死刑が未執行ならば1992年以来で19年ぶりの事態になる。メンツを気にする法務官僚たちは焦っていることでしょう。
遠藤誠一被告の判決期日は今月に入る前に確定していたので、省内では約1か月前から麻原死刑囚の刑の執行へ向けた協議がされていました。当然、最終的な決断をする平岡秀夫法相にも、その声は届いています」
遠藤被告を加えると確定死刑囚は129人に達する。この数は過去最多である。ある法曹ジャーナリストは、「これは法務官僚の沽券に関わる問題」と語った。
「確定死刑囚が過去最多に達したのは、麻原に加えオウムの幹部信者12人がそこに加わったという要素もある。だから法務官僚は幹部信者らの刑の執行の流れを以前から作ろうとしていますが、そのためにはまず、麻原の執行がなされなければならないという考えです。
公判で検察側は、“主犯”麻原が事件を主導して、幹部信者たちが“従犯”として凶悪犯罪に手を染めたというストーリーを描いたからです。法務官僚は、“過去最多の確定死刑囚”“年間死刑執行ゼロ”を回避するためにも、麻原の手続きを迅速に進めたいのです」
オウム事件の被害者側からも、刑の執行がなされない限り、事件は終息しないとの声が多い。地下鉄サリン事件で夫を亡くし、16年半にわたりオウム裁判の傍聴を続けた高橋シズヱさんも、強い思いを述べる。
「法治国家で死刑という制度がある以上、それに値する犯罪を起こして刑罰を下されたなら執行されるべきです」
※週刊ポスト2011年12月9日号
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「オウム松本智津夫死刑囚は完全に拘禁反応 治療に専念させ、事件解明を」加賀乙彦氏 医師として自信2011-11-27 | 死刑/重刑/生命犯 問題
オウム公判終結:あの時…/6止 教祖自白なく真相闇に
◇精神科医として松本死刑囚に接見、加賀乙彦さん
真相が何も分からないまま、松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚には「死刑」という結果だけが出た。もっと時間をかけて彼から言質を引き出し、なぜ教養や技術のある精鋭たちが彼の手の内に入って、残酷な殺人事件に引き込まれたのか明らかにする必要があった。それが裁判所の使命なのだが、放棄してしまった。私はこの裁判が終結したとは思っていない。法律的には死刑が確定したが、松本死刑囚の裁判は中途半端に終わってしまい、裁判をしなかったのと同じだ。
06年、弁護団の依頼で松本死刑囚に東京拘置所で接見した。許された時間は30分だけ。短時間では何も分からないと思うかもしれないが、私には自信があった。医師として、過去に何人もの死刑囚を拘置所で見ているが、松本死刑囚は完全に拘禁反応に陥っていた。何の反応も示さず、一言も発しない。一目で(意識が混濁した)混迷状態だと分かった。裁判を続けることはできないので、停止して治療に専念させるべきだと主張したが、裁判所は「正常」と判断した。
拘禁反応は環境を変え時間をかけて治療すれば治る病気だ。かつて東京拘置所で彼と同じ症例を4例見たが、投薬などで治すことができた。治療すれば、首謀者である彼の発言を得られた可能性があっただけに残念だ。
結局、松本死刑囚から何一つ事件についてきちんとした証言が得られないまま裁判は終結した。このまま死刑が執行されれば、真相は永久に闇に葬られてしまう。オウム事件の裁判ほど悲惨な裁判はないと思う。世界的にもまれな大事件を明らかにできないままでは、全世界に司法の弱点を示すことになる。
なぜ松本死刑囚に多くの若者が引きつけられ、殺人行為までしてしまったのか。信者の手記など、文献をいくら読んでも私には分からない。教祖の自白がなければ、なぜ残酷なことをしたのか解明もされず、遺族も納得できないはずだ。
「大勢を殺した人間は早く死刑にすべきだ」という国民的な空気にのって、裁判所もひたすら大急ぎで死刑に走ったように感じる。だが、真相が闇の中では「同じような事件を起こさせない」という一番大切な未来への対策が不可能になってしまう。再びオウム真理教のような集団が生まれ、次のサリン事件が起こる可能性も否定できない。形式的には裁判は終わったが、彼らを死に追いやるだけで、肝心な松本死刑囚が発言しないでいる今、あの事件は解決したと思えない。【聞き手・長野宏美】=おわり
◇かが・おとひこ
精神科医として東京拘置所に勤務し、大勢の死刑囚の診察に携わる。上智大教授などを務め、79年から創作活動に専念。医師の経験を基にした作品も多く、死刑囚が刑を執行されるまでを描いた小説「宣告」や、死刑囚との往復書簡集「ある死刑囚との対話」など著書多数。06年に弁護団の依頼で松本智津夫死刑囚に接見し「正常な意識で裁判を遂行できない」と、公判停止と治療を訴えた。82歳。
毎日新聞 2011年11月27日 東京朝刊
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オウム裁判:13被告、死刑確定へ 執行可否、次の焦点
<追跡>
オウム真理教の一連の事件を巡る公判は21日、元幹部の遠藤誠一被告(51)に対する最高裁判決で終結し、教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(56)ら計13人の死刑判決が確定する。刑事訴訟法の規定に従い法務省は今後、死刑の執行を検討していくとみられるが、松本死刑囚側は精神障害があると主張する。果たして執行に至るのか。その可否が、時期とともに注目される。
06年に死刑が確定した松本死刑囚は現在、東京拘置所の単独室に身を置く。関係者の話を総合すると、最近はほとんど言葉を発せず時折小声でなにかをつぶやく程度。日中はほぼ正座かあぐら姿で身動きしない。拘置所職員が食事を手伝うこともあったが、今は自分で食べている。家族が拘禁反応の治療が不十分として起こした訴訟の確定記録などによると、01年3月から失禁し、トイレを使ったのは07年に1度あるだけだという。逮捕時の長髪は短く切られ、ひげも落とした。
風呂や運動を促せば反応がみられるが、家族らの面会には応じていない。関係当局の間では「いろんな見方はあるが、言葉の意味は理解できており、精神障害ではない」として、死刑執行を停止するケースには当たらないとの見解が一般的だ。
刑訴法は判決確定日から6カ月以内に法相が死刑執行を命じなければならないと定めるが、共犯の被告の裁判や本人の再審請求の期間は6カ月に算入しないとしている。全被告の判決が確定することで「共犯者」というハードルは越えた。ただ、松本死刑囚は2回目となる再審請求審(昨年9月請求、今年5月に東京地裁が棄却)が東京高裁で続いている。他の死刑囚も再審請求の動きが目立つ。
一方、政府は「6カ月規定」について「違反しても直ちに問題とはならない『訓示規定』にとどまる」との見解だ。00〜09年に執行された死刑囚の判決確定から執行までの平均期間は5年11カ月。
執行命令は時の法相の姿勢次第という現実もある。執行を命じなかった法相も少なくない。民主党政権下での執行は1回、2人にとどまる。平岡秀夫法相は今月11日の閣議後会見で「個々の事案は、死刑が厳しい重大な罰であることを踏まえ慎重に判断する」と述べるにとどめた。
毎日新聞 2011年11月22日 東京朝刊
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オウム中川被告側が訂正申し立て 上告棄却の死刑判決
地下鉄、松本両サリンや坂本堤弁護士一家殺害などオウム真理教の計11事件で殺人罪などに問われた元教団幹部中川智正被告(49)の弁護人は28日、死刑の一、二審判決を支持して上告を棄却した18日の最高裁判決に対する訂正を申し立てた。
訂正申し立ては、最高裁判決に誤りがあるとして行う最後の不服申し立て手段だが、量刑が覆ったケースはない。申し立てが棄却されれば中川被告の死刑が確定する。
一連の事件では松本智津夫死刑囚(56)=教祖名麻原彰晃=ら11人の死刑が既に確定したほか、21日にも元幹部遠藤誠一被告(51)の上告が棄却され、死刑確定の見通しとなっている。
2011/11/28 19:33【共同通信】
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