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小沢一郎氏裁判 第10回公判〈前〉/前田恒彦元検事「上司から『特捜部と小沢の全面戦争だ』と言われた」

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“小沢氏 自分なら無罪判決”
 NHKニュース12月16日 18時18分
 民主党の小沢元代表の裁判で、元秘書の取り調べを担当し、村木厚子さんの事件の主任検事だった前田恒彦元検事が証人として呼ばれ、小沢元代表に対する捜査について、「捜査には問題があり、自分が裁判官なら小沢さんに無罪の判決を書く」と述べました。
 16日の裁判には、小沢一郎被告の資金管理団体の会計責任者だった大久保隆規元公設秘書を取り調べた、前田恒彦元検事が証人として呼ばれました。村木厚子さんの事件で証拠を改ざんした罪で服役中の前田元検事は、小沢元代表に対する捜査について、「特捜部の上司は、『特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢を挙げられないと特捜の負けだ』と話していた」と証言しました。そのうえで、「特捜部の幹部らは、事件の背景にはゼネコンの裏献金があると、夢のような妄想を抱いていたが、見立てが違うと思っていた。ゼネコン側が裏献金を強く否定しても想定には合わないので、証拠として調書に残さず、捜査には問題があった。自分が裁判官なら小沢さんに無罪の判決を書く」と述べました。16日で事件の直接の関係者の証人尋問は終わり、検察官役の指定弁護士は、小沢元代表の有罪は揺らいでいないとして、元代表への報告を認めた元秘書らの供述調書を採用するよう、裁判所に求めていくとしています。
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小沢一郎氏裁判 第10回公判〈前〉
 大阪地検特捜部の証拠改竄事件で実刑判決が確定した前田恒彦元検事(44)が出廷し、証人尋問
 産経ニュース2011.12.16

 指定弁護士「あなたは検察官として、陸山会の事件の捜査を担当しましたね」
 証人「はい」
 指定弁護士「陸山会事件で証人として出廷するのは初めてですね」
 証人「はい」
 指定弁護士「捜査にあたって、あなたが作成した調書は証拠請求を撤回されていますね」
 証人「はい」
 指定弁護士「なぜ(証拠請求を撤回し、出廷しなかったの)ですか」
 証人「大きく分けて3点ほどあります」
 指定弁護士「説明をお願いします」
 証人「まずは1点目ですが、私は任意性が問題になる取り調べはやっておりませんが、私自身の(証拠改竄)事件もあり、色メガネで見られ、信用してもらえないであろうこと」
 「また、公の場に出ることは、さらし者になることなので、それは嫌だと思い、(証拠改竄事件の取り調べを行う)最高検の検事にも『出ない』『私の調書は使わないでくれ』と伝えました」
 指定弁護士「2点目は?」
 証人「私が法廷に出れば、私の(証拠隠滅)事件についても聞かれ、陸山会事件での争点になってしまう可能性があった」
 「陸山会事件の捜査では検察のやり方に問題があったと私は思っているが、法廷では偽証ができないので、聞かれれば、そのまま思っていることをすべて答えることになる。そうすれば、どんな話が出てくるか予断を許さない状況になる。だから検察は私を出さないことにした。これが2点目です」
 指定弁護士「3点目は?」
 証人「私の調書がなくても大久保の有罪は明らか。だから撤回するとした」
 指定弁護士「今回、出廷することにした理由は?」
 証人「大きく分けて2点あります」
 指定弁護士「1点目は?」
 証人「私の取り調べ内容について、(法廷で)大久保さんがいろいろ言っていますが、報道をみる限り、かなりデタラメであること。私は受刑中で社会的にはすでに死人。『死人に口なし』ということで、いろいろ好き放題言われているようだが、あまりに違う。特に(違法な取り調べにあたる)『切り違え尋問』を行ったという話は絶対に間違っている」
 指定弁護士「2点目は?」
 証人「今回の事件は検察による起訴ではなく、検察審査会の起訴議決を受けた起訴だったことです。私は当時の検察捜査にも問題があったと思っています。検察が起訴した事件ではありませんので、今回は検察の有利、不利を問わず、すべてお答えするつもりです」
 指定弁護士「陸山会事件の特捜部の捜査に問題があるといいますが、簡単に説明を」
 証人「簡単にというか…、いろいろあるが、筋が違うんじゃないかと思う」
 指定弁護士「それは捜査の方法か、(事件の)見立てについてか」
 証人「一番は見立てですが、私以外の検事の取り調べがどういうものだったのかについても聞いて知っていますので、それにも問題があったと思っています」
 指定弁護士「あなた自身の聴取に問題があったとは?」
 証人「思っていません」
 《陸山会事件の捜査当時、前田元検事は大阪地検特捜部に所属。前田元検事は、大久保元秘書らが逮捕された5日後にあたる1月20日に東京地検に応援に駆けつけ、翌21日から聴取にあたった経緯について語り始める》
 指定弁護士「捜査がどこまで進んでいるか。何を担当するかは事前に聞かされていなかった?」
 証人「そうです」
 指定弁護士「いつ知りましたか」
 証人「1月20日の段階で、捜査規模が拡大するというので、全国のいろんな検事が20人近く、東京地検10階の事務課に集合した。それから特捜部長、副部長にごあいさつするという流れだった」
 「副部長の□□検事(法廷では実名)の部屋に全員であいさつに行った際、『前田くんだけは残ってくれないか』といわれた。そこで副部長と2人でソファで差し向かいに座わり、その場で『大久保の取り調べをやってもらうから』といわれた」
 「事件について詳しくは知らず、『大久保ってだれですか』という気持ちでしたが、『分かりました』と答えた。その際、□□さんからの指示は『よく話を聞いてやってくれ』というようなことだけだった」
 指定弁護士「応援前に情報が伝えられないのは一般的なのですか」
 証人「この事件はマスコミが非常に注目していた。私は大阪では(聴取で供述を引き出す)『割り屋』といわれていましたので、マスコミから尾行もされていた。私の担当が事前に漏れると、いろいろ次の展開を憶測される恐れがある。このときは情報がコントロールされていたということだと思います」
 指定弁護士「捜査に関する資料はいつ入手しましたか」
 証人「まず、主任検事である■■さん(法廷では実名)の部屋で、その他大勢の20人の検事とは別に、業者からの金のやり取りに関する説明資料というかペーパーを渡された」
 「その際、■■キャップからは『この件は特捜部と小沢の全面戦争だ。小沢をあげられなければ特捜の負けだ。恥ずかしい話だが、東京には割り屋がいない。だから大阪に頼ることになった』といわれた」
 指定弁護士「証拠資料については?」
 証人「資料を置いてある部屋があり、段ボール1箱ぐらいの事件記録のコピーが置いてあった」
 指定弁護士「資料としては少なくないですか。それですべてですか?」
 証人「すべての資料もなにも、恥ずかしながらその資料はほとんど見ていない。同期の検事や東京・大阪の人事交流で知った検事の部屋を回って、捜査の雰囲気など生の情報収集を行った」
 指定弁護士「翌日から聴取だから、生の情報収集が必要だったと」
 証人「そうです」
 指定弁護士「大久保さんを取り調べを始める際、何か分かりましたか」
 証人「3点が分かりました」
 指定弁護士「3点とは何ですか」
 証人「まず1点目は、先行して公判が進んでいた西松事件では、(政治資金)収支報告書の虚偽記載については争っていないということです」
 証人「2点目は、当時問題となっていた(小沢被告の)4億円はどこから来たのか。私は(取り調べを始める際に)いろいろと(他の検事らに)ご用聞きをして調べました。すると、(検察内部では)5千万円は水谷建設、1億円は○○建設などとする筋を描いていました」
 証人「ただ、どうも現場を追いかけている業者を調べる担当検事らは、うまく裏献金の話を聞き出せていないと感じました」
 指定弁護士「大久保さんについては、(事前に)何か聞いていましたか」
 証人「私の前に担当していた検事から、裏献金の事実を認めていると聞いていました。ただ、水谷建設から5千万円ではなく500万円とか、2千万円ではなく200万円とか、一ケタ少ない額だと聞いていました」
 指定弁護士「(先ほど話していた)3点目は何ですか」
 証人「本件(収支報告書虚偽記載については)はどうなのか。逮捕時の弁解や裁判官の拘留尋問の際、今は全面否認していますが、認否を留保していたということです。『よく思いだしてみます』などといった感じで…。そういう段階で(前任の検事から)バトンを受け継ぎました」
 指定弁護士「取り調べでは、何が重要だと感じていましたか」
 証人「(裏献金を)企業の方からつついても、水谷建設以外は話が出てこないので、受け取った側から話を引き出すことが重要だと思っていました」
 指定弁護士「収支報告書の記載に重点は置いていなかったのですか」
 証人「収支報告書の件は『目をつぶっていても有罪になるから』と、さほど幹部も力点を置いていませんでした。やはり企業献金に主眼が置かれていました」
 指定弁護士「(最初に取り調べを始めた際の)大久保さんは、どんな感じでしたか」
 証人「いつもですが、部屋に入ってきてイスに座るのですが、大久保さんは礼儀正しいと感じました。それと、初日はちょっと興奮しているなと感じました」
 指定弁護士「どのように興奮をしていましたか」
 証人「(担当の)検事が代わって、もしかしたら受け取ってもいない裏献金を無理やり受け取ったとされるのではないかという検察不信を抱いているようでしたし、実際に率直に(思いの丈を)ぶつけてきました」
 指定弁護士「大久保さんが気にしていたのは企業献金だったのですね」
 証人「500万円なり200万円なりを、受け取っているのは話していましたが、少なくともゼロが一つ少ない。趣旨もこれは小沢一郎がもらったものではなく、自分(大久保元秘書個人)がもらったものだと。陸山会や小沢さんではないので、小沢さんにも報告していないといっていました」
 指定弁護士「大久保さんの調べは、どう始めたのですか」
 証人「先ほども話しましたが、最初は興奮されていたので、不満があるなら、しゃべってもらおうと思いました。『前田検事はどう対応するのか』と思っていると感じましたので、開口一番に『私は、こんなところ、来とーなかった』といいました。天地人のドラマで、例の子供店長がいっていたセリフです」
 証人「(大久保元秘書は)この検事、今までと違うぞという感じでした。その後、私の経歴、どういうことをしてきたかを話して、徐々に誤解を解いていきました」「大久保さんが企業献金にアレルギーを持っていたので、ところで、逮捕時の弁解や拘留尋問の際にどう話していたのかも尋ねました」「認否を留保するということは、何か心あたりがあるんだなぁと感じました。(大久保さんは)『石川さんから何かいわれましたが、それを今思いだしているところです』との説明でした。(前任の検事が)ずっと調べて時間がたっているのに、思いだせていないのは、おかしいと感じ、言えない事情があるのかなと察しました」
 指定弁護士「(話を引き出すのに)何か水を向けましたか」
 証人「取り調べをする前には、連日朝、大久保さんは弁護士と面会していましたので、『弁護士さんとよく相談してください』と伝えました。思い出せないのは嘘でしょうといえば、大久保さんのプライドを傷つけてしまいますので…」
 指定弁護士「弁護士との面会を終えた2日目の取り調べの際、大久保さんに変化はありましたか」
 証人「今回の拘留事実(収支報告書の虚偽記載)を認めると話し始めました」
 証人「大久保さんが一生懸命言っていたのは、『自分の罪を軽くしようとして曖昧な発言を繰り返していた訳ではない、ご理解くださーい』ということだった。それで(22日に)『今の話を調書にしてもいいかな』と聞きました」
 指定弁護士「大久保さんはそれに対して」
 証人「待ってください、弁護士に相談させてくれ、と言いました」
 指定弁護士「その直前にも弁護士に接見していましたが、もう一度させてくれ、と?」
 証人「なぜ大久保さんが調書にこだわるかというと、西松(建設)の(違法献金)事件で(逮捕された際の調書は)裏献金の受領を認めたと読める調書で、『西松建設側からの献金』、と『側』という言葉を差し込んでいたんですね。本人は自白のつもりがなかったのに、その調書が後に足を引っ張っていると。それで検察の調書作成には慎重の上に慎重を期していました。私としても、むしろよく弁護士と相談してもらった方が、任意性の担保になると思い、(22日には)調書を取りませんでした」
 《大久保秘書は第5,6回公判で証人として出廷した際、前田元検事に「自白を強要された」「弁護士との接見は30分で、十分に打ち合わせができなかった」と強調している。指定弁護士はこのことについても質問する》
 証人「弁護士と打ち合わせできていない、という印象を受けたことはありません。30分は確かに短く感じられるかもしれないが、お恥ずかしい話、私も被告、受刑者の立場になりまして経験がある。昨日どんな話をしたか、調書がとられたか、30分あれば十分です。詰めた相談をしたければ手紙を出せばいいし、制限もありません」「私の経験でいうと、弁護士と接見して態度が硬くなる人はいます。弁護士は職務ですから調書に応じるな、と言いますし。しかし、大久保さんに関してはそういうことはありませんでした」
 指定弁護士「大久保さんに無理に圧力をかけ、調書化した、ということは全くなかった?」
 証人「そうですね。陸山会の収支報告書の事件については、私の(大久保元秘書についての)調書がなければどうしようもない、という状況ではなかった。そちらではなく水谷(建設)の裏献金問題が大事だった。(陸山会事件については自分が担当した段階で)ほとんど『半割れ(半分程度自白している状況)』で翌日(22日)に割れ、『弁護士に相談したい』『どうぞ』。それで、翌日(23日)に応じました。そういう流れです」
 指定弁護士「いわば、あっさりと調書を作成したと?」
 証人「企業献金の話とは比較にならないほど(態度が)柔らか。献金問題については固かったですが」
 《調書が作成された23日、夜間の取り調べはいったん中断された。前田元検事はその間に、小沢被告が任意聴取後に開いた記者会見の様子を確認していたという。大久保元秘書は今回の第6回公判で「中断後、前田検事は『(小沢さんが)我々を欺こうとしている』などと憤った様子だった」などと述べ、前田元検事が威迫を強めたと証言している》
 指定弁護士「なぜ取り調べを中断したんですか」
 証人「私の記憶では、中断までにこの日の聴取を取り終えていました。それで、東京地検の■■キャップ(法廷では実名)に報告を上げようと、拘置所から電話をしました。ところがつながらない。報告する相手がいない。そんな中で、記憶では○○検事(同)からだったと思うが、情報が入ってきた。どうも、今日小沢の調べを■■がやっているらしい、それで連絡がつかない、と」
 「私はびっくり仰天でした。小沢の調べをやることは、捜査班の我々も教えてもらっていない。マスコミにかぎつけられるかもしれないので、トップシークレットで、秘密保持されていました」
 指定弁護士「大久保さんは『小沢さんの聴取までに自白しないと大変なことになる』と言われた、と話している。全くの嘘ですか」
 証人「完全にすりかえです。なぜ自白したか、調書にサインしたのか、私はその経緯もすべて録取しています」
 指定弁護士「初めて小沢さんの(任意)聴取(の事実)を聞いて、テレビの会見を見たんですね」
 証人「事実です。この日はもう調書をとっているから、これ以上調べなくてもいいや、と思って。(水谷建設の)献金問題については(大久保元秘書は)『コンクリートの塊』で、呼ばれて間もない私に『割ってくれ』(自白をとれ)と言われて割れる状況でもなかったので」
 指定弁護士「大久保さんは法廷で、中断後に前田さんが怒っていた、『どうなるか分からない』と話して供述を迫った、と証言しています」
 証人「でたらめですね。供述を迫ったといって(大久保元秘書が)何を話したんですか。(裏献金についての)調書もとってないじゃないですか」
 《前田検事は翌24日に、■■主任検事が担当した小沢被告に対する聴取内容のコピーが回って来たと説明。印象について語る》
 証人「分かりやすくいうと、(小沢被告は)ヘタクソな弁解しているな、と。現場が見てどう思うかというと、小沢の取り調べを(■■主任検事が)直接やったのに、小沢を割れていない。否認で帰られている。主任だって割れないじゃん、と士気が下がる。主任だって割れないのに、捜査班が献金問題を割れるのか、と」
 《陸山会事件についての自白調書を取った前田元検事は、24日以降は献金問題についての供述を引き出すのが困難と考え、いったん世間話をする手法に切り替えた。小沢被告の人となりについて語る大久保元秘書の様子が印象に残っているという》
 証人「私の印象では、大久保さんは小沢さんに心酔していました。握りこぶしで親指を上げる『サムアップ』のしぐさで、『親分』という言い方をしていました。小沢さんの過去の実績、『日米何とか交渉で、机を叩いて相手を一喝した』とか、縷々(るる)と話したり。あんた見たんですか、という感じでしたが」
 「それから菅(直人前首相)批判がすごかったですね。とんでもないやつだ、と、延々と。相当な(小沢被告の)シンパだな、と思いました」
 指定弁護士「大久保さんからは、調書を書き直してくれと要望がありましたか」
 証人「ありませんでした」
 指定弁護士「自白の経緯を記した(平成22年)1月26日付の調書は何の問題もなく署名しましたか」
 証人「そうです」
 指定弁護士「弁護士の接見を受けて、もう1度内容を確認しましょうという話はありましたか」
 証人「なかったです。ただ、調書はよく見せてくれといわれ、大久保さんはものすごく丹念に確認していました」
 指定弁護士「大久保さんの調書のなかで『潮目を変える』とありましたが、この言葉はどちらが使いましたか」
 証人「大久保さんが『潮目を変えたい』と言った。潮目という言葉は特徴的だったので調書に入れた。なぜ入れたかというと、それまでの調べて、大久保さんが岩手県の出身で、議員もやっていたと。小学校の授業でもやりますが、三陸海岸の横の方で、暖流と寒流がぶつかるところ(潮目)がある。大久保さんは他にも面白い言い方をしていました。自分のことを『江戸家老』で、地元秘書を『城代家老』。政治献金を『ご浄財』と言っていました」
 指定弁護士「いずれも面白い表現だから調書に取り入れた?」
 証人「そうです。余談ですが、私も逮捕勾留されて、6日目くらいから話し始めましたが『潮目を変えたい』という表現をパクって使いました」
 指定弁護士「あなたが陸山会事件の取り調べでその言葉を知って、自分の供述でも使用したのですね」
 証人「言い方が面白いので使いました。大久保さんの生言葉です」
 《次に指定弁護士側は平成22年1月30日に、前田元検事が大久保元秘書を取り調べた際のことについて質問する。弁護側が冒頭陳述で、前田元検事が「石川が(容疑を)認めている」という「真実に反する」内容を告げたとする部分だ。こうした調べは「切り違え尋問」と呼ばれ、違法捜査にあたる》
 指定弁護士「大久保さんは1月30日の取り調べの際に、『石川さんが(容疑を)認めているといわれた』と証言していますが、あなたは言いましたか」
 証人「分かりやすくいうと聞き違いです。そういうことはありません。1月30日以前に自白調書は存在している。これまで私が法廷に出てこないので、大久保さんに(その発言は)『違う』といえる人がいなかった。まあ、言う機会が設けられなかった」
 指定弁護士「あなたの取り調べ2日目で自白して、3日目に調書を作成していますね。切り違え尋問をする意味はありませんね」
 証人「そうですね。普通そんな尋問をしたら弁護士さんに接見して聞きますよね。『石川はこう言っているのですか』とか。当時、もし(切り違え尋問を)やっていたら、弁護士さんからクレームがあるはずです。でもそんなことはなかった」
 指定弁護士「切り違え尋問をする必要性もないし、そんな危険な行為をする意味がないということですか」
 証人「たった1日だけの調べではないので。今日無理しても翌日の調べがある。弁護士さんに伝わって『調書には絶対サインするな』とか言われるかもしれない。そんなこと(切り違え尋問)をするリスクがある事件ではない。それに私は大久保さんの話を聴いて調書にするだけ。事件を組み立てるのは主任(検事)の責任で、私の仕事ではない」
 指定弁護士「では切り違え尋問をする必要はない?」
 証人「する必要はない」
 指定弁護士「取り調べの検事同士で『こんなことをぶつけよう』とか、『なんて言っていた』という作戦会議はあるのですか」
 証人「作戦会議というと格好いいですが、『石川さんはなんて言っているの』とか話をすることはある。(当時取り調べをしていた検事の)期を具体的にいうと、池田さんを取り調べていた△△検事(法廷では実名)は2期上。□□検事(同)は10期上で副部長。(石川議員の聴取を担当した)○○検事(同)は私より期が下なので、結構ぶっちゃけた話はしていました。まあ一番話をしたのは○○ですね」
 指定弁護士「『潮目』という言葉は1月26日の調書にのっているが、大久保さんはその日に言ったのか」
 証人「26日の調書は何日間の調べをさかのぼっている。実際に発してから何日か経っている思う」
 《続いて指定弁護士側は東京拘置所での取り調べの様子について質問を行う。前田元検事は同拘置所では常駐の検察事務官がいないため、1人の事務官が複数の業務を行うことを説明。容疑者の取り調べの際に、検察事務官が取調室の席を外すのは日常茶飯事であることなどを説明した》
 指定弁護士「大久保さんんは(東京拘置所で)調書の中身をどのように閲読していましたか」
 証人「口で言うのは難しいが、1枚1枚カルタのように並べて読んでいた」
 指定弁護士「大久保さんは調書のチェックを念入りにしていたのですか」
 証人「そうですね。西松建設事件の時は軽率にサインしたのではないかと思いましたね。だから、過去の経験があったのでじっくり見るのは当然だと思いました」
 指定弁護士「調書の中に『規定事項』という言葉がありますが、大久保さんは『前田さんが作った言葉』といっていますが」
 証人「規定事項という言葉は、大久保さんが生で使った言葉です。(大久保元秘書の)前任の秘書の人がいて、『その人のころからの規定事項だったんですよ』という言い方でした。そういうことで自分の関与を薄めるというか、『規定事項ということで自分ではどうしようもなかった』という内容でした。彼のいっている言葉で入れています」
 指定弁護士「詳細を見て大久保さんから何らかの申し入れはありましたか」
 証人「あったはずです。よく読んでいましたから」
 指定弁護士「大久保さんの申し入れを盛り込んで調書を作ったのですか」
 証人「そうですね」
 指定弁護人「今となって『検事が作った』などと言われるのは心外ですか」
 証人「心外ですけども、(被告が)しゃべったことが調書になるわけだけど、(罪を逃れるためには)検事が悪いとか、あるいは検察が悪いとか言わないといけないわけですよね。大久保さんがいろんなことを言っていますが、腹を立てているということはないです」
 《大久保元秘書は法廷で前田元検事の調書作成時の様子は「作家のようだった」などと証言している》
 指定弁護士「話を全然聞かずに、調書を作ったのですか」
 証人「違います。聞きながら(パソコンに)入力していきました。私の入力よりも先に(大久保元秘書が)話を続けようとするので、『ちょっと待って』と言ったことはありました。この『ちょっと待って』と言ったときにパソコンを打っているところを、作文をしたと言いたいのでしょうけど、そんなことはありません」
 「大阪地検特捜部に当時いたわけだけども、『なんで自分が東京の事件に…』という思いはありました。だが仕事である以上、淡々と本人(大久保元秘書)の話を聞かなきゃね、と。もし全くのでたらめだったら、もっと本人にとって、もっとひどい内容になりますよね」
 指定弁護士「調書作成の時に『私は作家。司馬遼太郎のようだ。調書作成は作家の時間だ』などと言ったのですか」
 証人「私も新聞報道で見てにやりとしました。確かに司馬遼太郎は尊敬していて、話をしたことはある。私は調書に雑談を盛り込んだりする。たとえば、本件では陸山会の名前の由来を聞いて、それを盛り込んでいる。大久保さんとも『雑談の話を入れるんですね』という話をしたことはありました」「司馬遼太郎の小説の何がおもしろいかというと、途中にうんちくが入る。そういうことがあったので、別の事件の被疑者から『(前田元検事が作成した調書は)横の話を入れているのがおもしろい』という評価されたこともありました。そういう話が出たので司馬遼太郎の話をした。『私が司馬遼太郎だ』と言ったというのは、大久保さんがすり替えているけど、実際にそうではないです。何度も言いますが作文であれば、本人にとって不利になるようにします」
 《郵便不正事件の押収資料改竄事件》
 指定弁護士「あなたは、ある事件の証拠に手を加え、検察を解雇され、服役中ですか」
 証人「はい」
 指定弁護士「なぜ改竄したのですか」
 証人「話すと5、6時間かかりますが、端的に言うと、検察の体面を保つことと、自身の保身のためです」
 指定弁護士「主任検事として大きなプレッシャーを感じていたのですか」
 証人「はい」
 指定弁護士「本件でもそうですか」
 証人「それは全然違います」「厚生労働省の事件では、大阪高検検事長が積極的で、単独犯ではあり得ないという雰囲気があった。一方で、本件では(ゼネコンからの)裏献金で小沢先生を立件しようと積極的なのは、東京地検特捜部特捜部長や■■主任検事(法廷では実名)など一部で、現場は厭戦ムードでした。東京高検検事長も立件に消極的と聞いていましたし、厚労省の事件とは比較になりませんでした」「大久保さんを取り調べましたが、『とても無理ですよね』と感じました。小沢先生を土曜日に取り調べて、当時の特捜部長だった佐久間(達哉)さんらが東京拘置所に陣中見舞いに来ました。そのとき、私と○○検事(法廷では実名)、△△検事(同)が向かい合って座っていました。佐久間さんは『雰囲気を教えてくれ』ということを言われました」「(前田元検事の上司だった)大阪地検の特捜部長であれば、怒鳴られて言えないけど、佐久間さんはそんなことはなかった。『大久保はどう?』と聞かれたので、『頑張ってみますけど難しいです』と暗に立件は無理と伝えました。他の検事も同じようなことを言っていたと思います。一部積極的な人もいたが、小沢先生まで行くことはないと思いました」
 証人「話すと5、6時間かかりますが、端的に言うと、検察の体面を保つことと、自身の保身のためです」
 指定弁護士「主任検事として大きなプレッシャーを感じていたのですか」
 証人「はい」
 指定弁護士「本件でもそうですか」
 証人「それは全然違います」
 「厚生労働省の事件では、大阪高検検事長が積極的で、単独犯ではあり得ないという雰囲気があった。一方で、本件では(ゼネコンからの)裏献金で小沢先生を立件しようと積極的なのは、東京地検特捜部特捜部長や■■主任検事(法廷では実名)など一部で、現場は厭戦(えんせん)ムードでした。東京高検検事長も立件に消極的と聞いていましたし、厚労省の事件とは比較になりませんでした」
 「大久保さんを取り調べましたが、『とても無理ですよね』と感じました。小沢先生を土曜日に取り調べて、当時の特捜部長だった佐久間(達哉)さんらが東京拘置所に陣中見舞いに来ました。そのとき、私と○○検事(法廷では実名)、△△検事(同)が向かい合って座っていました。佐久間さんは『雰囲気を教えてくれ』ということを言われました」
 「(前田元検事の上司だった)大阪地検の特捜部長であれば、怒鳴られて言えないけど、佐久間さんはそんなことはなかった。『大久保はどう?』と聞かれたので、『頑張ってみますけど難しいです』と暗に立件は無理と伝えました。他の検事も同じようなことを言っていたと思います。一部積極的な人もいたが、小沢先生まで行くことはないと思いました」
 ⇒ [小沢一郎氏裁判 第10回公判〈後〉] 
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関連;小沢一郎氏裁判 第6回公判/大久保隆規証人「ずっと前田検事と過ごしており、マインドコントロールの中に」2011-12-01 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 〈後段 抜粋〉
 弁護人「取り調べのときは検察事務官を同席してましたか」
 証人「だいたい2人でした」
 弁護人「事務官はいつ戻るのですか」
 証人「調べが終わるとき、署名、捺印するときに呼ばれていました」
 証人「それまでは検察官が話して、それを事務官が打つやり方でした。前田検事さんになってからは、自身のノートパソコンを持ち込み、自分で打ち込んでいきました」
 弁護人「打ち込み画面は見えましたか」
 証人「全く見えません」
 弁護人「印象に残っていることはありますか」
 証人「体も大きめの方で、ノートパソコンは比較的小さくて、窮屈そうな指先で打ち込んでいました。身ぶりをつけながら『ここで大久保さん登場!』とか言っていた。何かやっているな、と思いました」
 弁護人「前田検事が自分を『作家みたい』とも話していたんですか」
 証人「『まるで作家みたい』あるいは『作家の時間』と。うまく書けたときは、雑談で著作の話をしていたこともあって、『司馬遼太郎みたいなもんだ』と言っていました」
 弁護人「その間、どう思っていましたか」
 証人「調書がどうできあがるのかな、と。手持ちぶさたなので、深沢(寮)のレイアウトを書いてください、などといわれたり。前田検事は作成に没頭していて、こちらから話しかけたりできないようにするためだったのかな」
 弁護人「23日、『私の報告・了承があったから収支報告書が作成された』という内容の調書に署名していますね」
 証人「小沢先生への聴取が23日にありました。『その前に意思表示しないと家宅捜索、小沢先生自身への逮捕に広がっていく、あなたの決断一つだ』という話が(前田検事から)ありました」
 弁護人「署名に応じたのは何時ころですか」
 証人「朝に弁護士の接見があり、私は応じる、と弁護士に一方的に伝えた。先生の聴取は夕方、夜だったようなので、時間的に判断して午前中に応じました」
 証人「前田検事は『(小沢さんが)われわれを欺こうとしている』『小沢さんはどうなるかわからんよ』と。せめて自分が聴取に応じていくことで事件の広がりを食い止めなければ、という気持ちを強めました」
 弁護人「小沢さんは事件と関係ないから大丈夫、とは思わなかったんですか」
 証人「何が事件なのか。西松建設事件でもうちだけ、私だけやられた。何かの陰謀なのか、立件された。検察に何をされるかわからない、どんなことをされてもおかしくない、という思いを強めました」
 弁護人「23日、弁護士の接見はどのくらいの時間でしたか」
 証人「20分とか30分とか、短い時間でした」
 弁護人「やり取りは」
 証人「先生方はよく考えて本当のことを言い続けなければ、とその時に限らず励ましてくれました。しかし、そうは言っても中(取り調べ)の状況は外の先生には分からないし、細かく説明もできない。検事とのやり取りが圧倒的に多く、私はすでに“マインドコントロール”されているところもありました。弁護士の先生方の話だけ聞いて立ち向かっていけるのか。(弁護士を)信用しないというか、そうなっていました」
 弁護人「当時の精神状態はどうでしたか」
 証人「1度目の逮捕でも約3カ月勾留(こうりゅう)生活を送りました。頑張ることで3回、4回と逮捕されるのも嫌だった。(検察が)やりたい放題やるんだから、やらせてやれ、という気持ち。弁護士がなんと言おうと調書に応じることが小沢先生を守り、日本政治を守ることになる、という気負った感情がありました」
 弁護人「弁護士には落ち着いて話ができましたか」
 証人「精神的なストレスもあり、『(石川・池田両元秘書への事情聴取について)中ではもっと話が進んでいる』と思わず興奮気味に話しました」
 弁護人「調書に署名・押印することについては伝えましたか」
 証人「これ以上、3人以上逮捕者を広げないため、会計責任者として認めるようにしたい、と言いました」
 弁護人「弁護士からは、石川さん、池田さんの聴取の状況についても伝えられていたんですよね」
 証人「石川氏、池田氏がこう言っているという先生方の話は、どうも遅れているな、と感じました。ほとんど状況を知らないんじゃないか。石川氏、池田氏は、実際には弁護士に聴取状況の本当のことを話していないんじゃないか、と。全く当てにならないと思うようになりました」
 弁護人「なぜ石川さん、池田さんを信じられなくなったんですか」
 証人「私も受けていた圧力を想像しました。何しろ2週間、ずっと検事と過ごしている。マインドコントロールの中に入るというか、検事の話を信用するようになりました」
 弁護人「『潮目を変える』という言葉を使いましたか」
 証人「確かに私は港町出身ですが、船乗りではありません。前田検事が私の身上経歴について読み込むうちに思いついたのではないでしょうか」
 弁護人「(事実が)ないにもかかわらず作られたんですか」
 証人「前田検事さんがご自身で調書を作って、だいたいできたところで印刷をして、『これでどうだ』と聞いてきた」
 証人「『(石川、池田両元秘書が取り調べで)本当にこんなこと言ってるんですか』と聞いても、『大久保さん、本当にこう言ってるんだから』といわれた」
 証人「石川氏や池田氏が厳しい取り調べをされたらいやだなと思って、石川氏がそういっているならいいかと(調書に署名した)」
 弁護人「疑いを持たなかったのですか」
 証人「きっとそうなっているんだろうと、前田さんからのお話を受け入れました」
 弁護人「どう思いましたか」
 証人「さすが大物検事だと思いました。実力があるからこういうことも通るんだなと思いました」
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小沢一郎氏 初公判 全発言/ 『誰が小沢一郎を殺すのか?』2011-10-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

   


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