私が裁判官なら小沢さん無罪…前田元検事
資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた小沢一郎民主党元代表(69)の第10回公判は、16日午後も東京地裁で大阪地検特捜部元検事・前田恒彦受刑者(44)(証拠改ざん事件で服役中)の証人尋問が続いた。
前田元検事は捜査中に、元事務担当者・石川知裕衆院議員(38)(1審有罪、控訴)の取り調べを担当した元東京地検特捜部の田代政弘検事(44)から、小沢被告の虚偽記入への関与を石川被告が認めたことを知らされたと証言した。
元会計責任者・大久保隆規被告(50)(同)を担当していた前田元検事は、弁護側の尋問に対し、田代検事と情報交換しながら取り調べに当たっていたと説明。その際、田代検事から、虚偽記入の報告を受けた小沢被告が「おう」と述べたと石川被告が供述していると聞いたとし、「もっといい話はないのか」と尋ねると、田代検事は「これでマックス(最大限)の供述だ」と答えたと述べた。前田元検事は、石川被告の供述状況からみて、小沢被告との共謀の立証は困難とも思っていたといい、「私が裁判官なら小沢さんの無罪判決を書きます」と述べた。
(2011年12月17日06時18分 読売新聞)
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前田元検事「検察、証拠隠しあった」小沢元代表公判で証言
日本経済新聞2011/12/16 23:19
資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の第10回公判は16日午後も東京地裁(大善文男裁判長)で続き、証人として出廷した前田恒彦元検事(44)=証拠隠滅罪で実刑確定、服役中=は、小沢元代表の強制起訴について「(検察の)証拠隠しがあったと思う。検察審査会は証拠を全て見て判断したわけではない」と述べた。
主要な証人の尋問はこの日で終了。大善裁判長は、元代表の判決を左右するとみられる石川知裕衆院議員(38)=規正法違反罪で一審有罪、控訴=ら元秘書3人の供述調書の証拠採否を決める期日を来年2月17日と指定した。
元代表側の尋問を受けた前田元検事は、陸山会事件の捜査について「私が思っているだけだが、証拠隠しがあった。想定と違う取り調べ内容は証拠化せず、供述メモをワープロで整理していた」と指摘した。
別の検事が取り調べを担当した石川議員の供述調書について、弁護人が抗議していた経緯にも触れ、この抗議文書が検察審に提出された不起訴記録に含まれていなかったと主張。「検察審が見ていれば(元代表との共謀関係を認めた)石川さんの調書の信用性が減殺されていた」と証言した。
大善裁判長はこの日、池田光智元秘書(34)=同=を取り調べた検事2人が、過去に別の事件で作成した供述調書の任意性を否定した大阪地裁の判決文など3点の証拠採用を決定した。
公判は今月20日に弁護側証人として会計の専門家が出廷。来年1月10、11日に元代表の被告人質問が行われる。
[小沢一郎氏裁判 第10回公判〈前〉]からの続き
弁護人「誰から応援の指示を受けたのですか」
証人「(大阪地検特捜部長の大坪(弘道)さんと副部長の佐賀(元明)さんです」
弁護人「どのように?」
証人「(実際に応援に入る前の)週末に部長の部屋に呼ばれましたところ、夕方に大坪さんと佐賀さんがビールを飲んでおりまして『まぁ、まず飲んでくれ』と言われました」
証人「そこで『すまんが行ってくれ』と…」
弁護人「前田さんは、どうして自分が呼ばれたのだと思いますか」
証人「東京地検からは大阪から4人ほしいと要請がありました。2人は私と後輩の検事(公判では実名も出す)の2人が名指しされ、あとは誰でもいいということでした。ただ、大阪も4人出すと回りませんから、週明けに2人で折り合いをつけたようです」
弁護人「もう1人は後輩の検事ですね」
証人「そうです」
弁護人「○○事件(法廷では実名)を担当していたのではないのですか」
証人「よくご存じですね」
弁護人「(立件に向け)内偵していましたね」
証人「内偵というか、着手のタイミングが合わないだけだった。私は知恵袋というか、(後輩の検事に)アドバイスをしていた。だから(この事件を)認識はしています」
弁護人「この事件は、どうなりましたか」
証人「もちろん東京に行っている間は、できませんが、東京から戻り、もう一回頑張ろうと練ったが、すぐに厚生労働省の公判が始まり、他の事件はできないとなった」
弁護人「今も立件されていませんね」
証人「その通りです」
弁護人「後輩の検事は陸山会事件の応援で何を担当していましたか」
証人「捜査では身柄班とそれ以外の在宅班に分かれており、在宅班ではさらにゼネコン班など細分化している。下請け班のどこかに入っていたと思う。捜査体制表をクリアファイルに入れて保存しているが、それを見れば分かる」
弁護人「東京地検特捜部は大阪地検特捜部の捜査を中断させても応援を取るような上位にあるのですか」
証人「本当にふざけるなという感じですよね。大阪は厚労省事件があっても東京から応援を借りることはないのに…」
弁護人「東京地検の上級庁も(大阪地検から応援をもらうことを)把握していましたか」
《前田元検事は、午前中の公判で、他の検事が作成した調書を見ていたと証言した。また、「作戦会議」のような他の検事との打ち合わせもあったと明かした》
弁護人「確認ですが、他の検事の調書も見ていたのですね」
証人「はい」
弁護人「作戦会議もしていたのですね」
証人「作戦会議といえば大げさですが、休憩のときには、みんなで昼ご飯を食べるのですが、今は、石川(議員の調べ)はどうなってるのかなと聞くことはあった」
弁護士「1日のうちどれくらいの時間ですか」
証人「延べ時間のことですか。昼ご飯のときは15分なり20分なり…」
弁護人「(石川議員を取り調べた)○○検事(公判では実名)は、どう話していましたか」
証人「いろいろな話をしましたが…。小沢さんのプラスとマイナスもありますが、両方話していいですか?」
弁護人「お願いします」
証人「石川さんが小沢さんに(虚偽記載を)報告した際、『おう』と言ったとする調書がありましたが、『生の話を記載したのか』と(○○検事に)尋ねたところ、『言っていることを記した』と話していましたね。ただ、『おう』と言っただけでは…と、『石川氏はもっと中身のある話をしていないのか』とも尋ねましたが、『(それで)いっぱい、いっぱい。MAX(マックス)だ』と。小沢さんの起訴は難しいなと感じた」
《午前の公判で、上層部はゼネコンから5千万円の裏献金を受け取っていたと見立てていたと証言した》
証人「○○検事も『石川さんが5千万円(の裏献金を)受け取っていた事実はないんじゃないか』と言っていた。副部長の□□検事(法廷では実名)も『おそらくない』という認識で、私のところも大久保さんが500万円を受け取ったのがMAXと言っている。(検事らの)士気は下がっていた。まぁ、とりあえず会議ではなく、こんな感じで他の検事と打ち合わせのようなものをしていました」
弁護人「前田さんは○○検事に何と話しましたか」
証人「政治資金収支報告書は、(陸山会の実際の会計担当者の)石川さんで、私(が担当していた大久保元秘書は)のマターは4億円の原資が何かということ。○○検事は難しいといっていたので、頑張れと(励ましていた)」
《○○検事は前日の第9回公判に証人出廷して証言をしている》
弁護人「○○検事は調べの検事同士は、一切取り調べの状況を話していないと証言しているが」
証人「…」
弁護人「他の検事が作成した調書も見ていないと言っていたが、嘘ですか」
証人「私の場合は、少なくとも小沢先生の調書や石川さんの調書など、当然受け取っていた。他の検事も同様だと思う」
《前田元検事が平成22年1月に、東京地検特捜部により行われた小沢被告の1回目の任意の事情聴取を事前に知らなかったとした証言》
弁護人「事前に知らなかったのですか?」
証人「保秘でした」
弁護人「どうして保秘にする必要があるのですか」
証人「40人の検事に事務官がつき、100人の捜査体制。そこにマスコミがやってくる。(東京に応援に来て)ウイークリーマンションを借りていたが、(調べから)戻ってくると、記者が待っている。『大久保さんの調べどうでしたか』と。私は口が堅いので完全無視を通したが、地方から来た事務官などもいる。小沢さんの聴取時期という重要な情報が漏れることもある」
弁護人「マスコミに漏れると何か支障があるのですか」
証人「マスコミは面白おかしく書くし、事情聴取の時期が漏れれば、口裏合わせをされることもある。いろんなことを考え、保秘にする」
《大久保元秘書は、前田元検事から小沢被告の1回目の任意聴取の前に、大久保元秘書の調書を作成する必要があると迫られたと主張している》
弁護人「事前に小沢さんの聴取日を知らなかったとなると、大久保さんに調書作成を迫る必要もないということになりますが…。間違いないですか」
証人「間違いないですよ」
《この証言を引き出した時点で、弁護人は小沢被告の任意聴取前の新聞各紙を示す。そこには、事前に聴取日を知らせる内容が記載されている》
弁護人「これらの朝刊などは、聴取が近いことを記していますよね」
証人「はい。そのようですね」
弁護人「トップシークレットではありませんよね」
証人「私自身は本当に知らなかったんですよ。調べ終えれば、ウイークリーマンションに帰る毎日で、新聞は読んでいませんでした」
《その後の2回目の小沢被告の任意聴取は、時期は不明ながらも事前に知っていたと証言》
弁護人「(大久保元秘書の聴取について)東京拘置所の取調室で、ファクスやメールで(上層部と)連絡を取っていたんですね」
証人「(主任検事の)■■キャップ(法廷では実名)からあーしろこーしろ、と言われた、というのは、さして記憶はないんですよね。私の当時の役回りはある種、(供述を引き出す)職人としての能力を買われていたが、(勾留)初日から(大久保元秘書を)担当していたわけでもなく、とてもできない状況だったんですけどね。一方で石川(知裕衆院議員(38)=同=)さんを担当していた○○検事(法廷では実名)は相当プレッシャーを受けていたみたいで。私は調書の内容もタイミングも任されていましたけど、○○さんはキャップに調書の原案を上げて、『朱入れ』(手直し)をされていた。私はキャップにいろいろ言われた記憶はなくて、任されていたんです」
弁護人「午前中の尋問で、他の検事の取り調べにはいろいろ問題があった、と言ってましたよね。どんな問題があったんですか」
証人「私がそう思う、ということで事実かどうかは別ですけどね。あいつ。あいつじゃねーや、(石川議員の取り調べを担当した副部長の)□□さん(法廷では実名)から聞いたのは石川さんが調べの途中で土下座した、と言っていたんですよね。(□□検事は、石川議員が水谷建設から)5千万円受け取ったやろ、と言ったら、石川さんが否定して、『この通り、受け取っていない証明として土下座もできる』ということで土下座した、と言っていたが」
「私の素朴な感覚では、否認していた被疑者が次の日の朝に土下座して『嘘ついてました』というのはあり得るけど、普通はないでしょう。国会議員ですよ、当時。いかがなものかと」
証人「それから、細かく正確ではないが、当時、確か石川さんが陸山会と関係なく、ウナギの養殖業者から賄賂をもらったという話があって。実は贈収賄にはあたらないんですけどね。それを贈収賄として調書を取って、『(収支報告書の)虚偽記載を認めなければ考えがあるぞ』と(□□検事が迫った)。それでも石川さんは頑張った。□□検事も『あいつ(5千万円を)受け取ってないんじゃないか』と話していた」
《大久保元秘書は証人尋問で「担当検事が代わり、小沢さんを陥れようと無理な調べが始まるのではないか、と話した」「(前田元検事から)『あなたは(陸山会事件を)どうしたい』と聞かれた」などと証言。このことについて弁護側が事実関係を問いただすが、前田元検事はこのやり取りを否定した》
証人「1回目(の指定弁護士との打ち合わせでは)はざっくばらんに、捜査の問題点を含めて申し上げた。『私は小沢さんが無罪だと思う』『指定弁護士も職務上大変ですね』と。捜査にいろいろ問題があったことも言いましたし、証拠隠しのことも…言ったかな? 言わなかったかな?」
弁護人「証拠隠しって何ですか」
証人「要は、私が裁判官なら、『無罪』と判決を書く。証拠がすべて出されたとしても…」
弁護人「いや、『隠された証拠』ってなんなんですか」
証人「私が思っているだけですけどね。判決では検察審査会の起訴議決が妥当だったかどうかも審理されるわけですよね。そこで検察が不起訴と判断した資料として検審に提出されるもので、証拠になっていないものがあるわけですよ。例えば、(自分が取り調べを担当した)大久保さんの調書には全くクレームがないけど、石川さんの調書にはあるんです。弁護士からのクレーム申入書が。でも(指定弁護士との)打ち合わせのときに、指定弁護士は知らなかった。検審に提出された不起訴記録に入っていないから」「私はクレームが来ていないから胸を張って任意性がある、と言えるんですけど。石川さんの調書に問題があったんじゃないですかね。(石川議員の取り調べに対する)クレームはバンバンあったくらいの印象がある。指定弁護士も調査したら1、2通見つかったと言っていたが、私の印象ではもっとあると思いました。それが証拠に含まれていれば、審査会が見て、調書の信用性は減殺されるわけですよね」「それに、この事件では捜査態勢が、途中でものすごく拡充されたんですよ。(元秘書ら逮捕者の取り調べを行う『身柄班』に対して)『業者班』。ゼネコンや下請けの捜査員を増やした。でも、(作成された)調書が、まー、ないでしょ? 大久保さん、小沢さんに裏金を渡しているという検察の想定と違う取り調べ内容は、証拠化しないんです。どうするかといえば、メモにしている。手書きのその場のメモということでなく、ワープロで供述要旨を整理していた」「水谷(建設)で言えば、4億円の原資として5千万円は水谷かもね、となっても、残りの3億5千万円については分からない。何十人の検察官が調べて、出てこない。検審にそれが示されれば、水谷建設の裏献金の信用性も、減殺されていたはず。想定に合わなければ証拠にならないというのがこれまでの検察で、私も感覚がずれていて、厚労省の(証拠改竄)事件を起こすことにもなった」
弁護人「話を戻しますが、検察事務官に(取り調べの際に)席を外させるのは秘密保持のためということを言っていますが、回数は多かったのですか」
証人「東京拘置所の仕組みを説明しますと…」
弁護人「それはいいんです。前田さんの判断で事務官の席を外させることはありましたか」
証人「部屋から出てくれとは言ったことがない。大久保さんが『他の人に話をしにくいな』という話題のときには、事務官が雰囲気を察して(自ら)席を外した。特捜部の事務官はアホではないので」
弁護人「(大久保元秘書の)調書にある『検事調書は証拠価値が高い』というのは大久保さんから出た言葉ですか」
証人「それは私が書いたんですよ」
弁護人「どういうときに言ったんですか」
証人「大久保さんがそのような趣旨で話したので私が書きました」
弁護人「証拠価値という言葉は専門的な言葉ですが、大久保さんはどういう話をしていたのですか」
証人「『自白というのは意味がある。サインすることは被疑者として重要。検事の調書は気をつけないといけない』という話だった」
弁護人「それは大久保さんが言ったのですか」
証人「そういう趣旨で言っていた」
弁護人「先ほどから出ている『潮目を変えたい』という言葉ですが、特徴的だから調書に使ったということですね」
証人「はい。面白い言葉だったので」
弁護人「このときの供述調書は、大久保さんが(その後に)供述をひっくり返す可能性があるということで作成したのですね」
証人「はい。将来的にあると思っていました」
弁護人「なぜこのような言葉を取り入れたのですか」
証人「あの、私は検事15年で、特捜は8、9年やってますし、バカではないですから。話を取り入れて信頼性を高めるという意味で取り入れたんです」
弁護人「潮目という言葉ですが、普通は『潮目を変えたい』とは使わず、潮目とは自然に変わっていくものではないですか」
証人「それは重箱の隅です。答えても前に進みません。別の質問をされた方がいいですよ」
弁護人「あなたは潮目という言葉を『パクった』とおっしゃいましたね」
証人「はい」
弁護人「あなたは逮捕勾留され、取り調べを受けたのは今回(証拠改竄事件)が初めてですね」
証人「はい」
弁護人「(大阪地検元特捜部長の)大坪(弘道)さんと(元副部長の)佐賀(元明)さんを尊敬していましたよね」
証人「…」「まあそうですね」
弁護人「2人の関与を認めるのは重大な決意でしたね」
証人「上司を刺すということなので、そうですね」
弁護人「その重大な決意をしたときにどうして大久保さんを思い出し、潮目という言葉を使ったのですか」
証人「大久保さんを取り調べて調書をとった(平成22年)1月30日は、私が佐賀さんに報告した日。1、2月のことは頭に残っている」
弁護人「あなたは取り調べで『話を作るならばもっとひどいことを書く』と発言したことがありますが、自分で話を作ったことはありますか」
証人「ないです」
弁護人「ない? 被疑者から聞いてない話で調書を作ったことは1度もないのですか」
証人「作文ということだと思いますが、聞いた内容を書くのはすべて作文になりますが」
弁護人「真実と虚構がありますが、虚構の調書は書いたことはないのですか」
証人「はい」
弁護人「(郵便不正事件の)村木(厚子)さんの事件では証拠を改竄しましたよね」
証人「その通り」
弁護人「証拠として『いやらしい』からということでしたよね」
証人「その通り」
弁護人「証拠の改竄は、証拠隠滅罪にあたることはご存じですよね」
証人「その通り」
弁護人「他の証拠と整合するように変えましたね」
証人「その通り」
弁護人「村木さんの事件以外で証拠改竄をしたことはありませんか」
証人「ありません」
弁護人「今まで一度もないのに、村木さんの事件の1回だけ。たまたま朝日新聞に見つかったのですか」
証人「誰が出したかは分からないが、これは改竄を知っている(検事の)誰かが外に漏らした。たまたまではない」
弁護人「では1回限りのことが発覚したということですか」
証人「悪いことはやっぱりできませんね」
弁護人「大久保(隆規元秘書)さんに、『予備知識がないから話を作れない』と言いましたか」
証人「予備知識? 私が? 大久保さんに『話を作る』って言ってないですよ」
弁護人「言ってないんですか?」
証人「言ってないです。西松建設事件ってどんな事件かというのは聞きました。作るというのは、作文という意味ですか」
弁護人「そういうことですかね」
証人「言っていないです!」
弁護人「平成20年1月29日、(大阪地検特捜部の同僚の)国井弘樹検事から、他の検事に改竄を話したと電話がありましたね」
証人「はい」
弁護人「2月1日か2日には、国井検事とデータの一部を書き換えてしまった可能性があるという筋書きについて話をしましたか」
証人「2日ですかね。筋書きの話は事実です」
弁護人「この筋書きは東京拘置所で(大久保元秘書の取り調べと)平行して作りましたか」
証人「いや、そうではないです。調べの合間というか、取り調べの部屋には誰もいない状態で作りました。当時上司だった佐賀(元明・元大阪地検特捜部副部長)さんに『嘘の筋書きを作っておけよ』といわれて作りました」
弁護人「嘘の筋書きを文章化したのは2月8日ですね」
証人「そうですね」
《ここで、弁護側はこの嘘の筋書きを書き並べた上申書を証拠として示そうとするが、指定弁護士側はこれに反発。「本件とどう関わりがあるか、供述を取ってから示すべきだ」と主張。一方、弁護側は「信用性を争うために必要」と再反論するが、大善文男裁判長は、上申書を示さずに本件との関わりをただすように弁護側に指示》
弁護人「大阪に帰って上申書を書いたんですか」
証人「そうですね。でも、やっぱり(上申書を)示した方がいいと思うんですよ。もっと他に聞くことがあると思いますから。何があったのか、全て話そうと思ってここに来ていますから」
裁判長「上申書がどういうものか覚えていらっしゃいますか」
証人「(データの書き換えが)実際は故意犯だったのを、過失犯だったかのように嘘の筋書きを書いたものです」
裁判長「内容は記憶にあるのですね。では、弁護側はそのまま質問を続けてください」
弁護人「ご希望に添って簡潔に質問します。上申書には『フロッピーのデータを過誤により改変した可能性があります』と書いてありますよね」
証人「ほぼ全部作り話です。真っ赤な嘘ですね、本当に」
弁護人「『コピーデータの上書き保存の際、遊び感覚で適当な数字を入れた』というのも作り話ですか」
証人「そうですね」
指定弁護士「これ以上詳細に踏み込む必要はないと考えます」
弁護人「本件の取り調べと近接した時期に、検察官として改竄を隠蔽する話をしているんです。関連性はあることは明らかです」
裁判長「すでに出ている話だと思いますし、この辺でいいのでは…」
弁護人「では、もう一つだけお願いします」
裁判長「では、お願いします」
弁護人「上申書の中で、『音楽を聴きながら作業していたので、データを上書きしたときに小さい回転音がするのですが、ヘッドホンをしていたので回転音に気づかなかった』とありますが、こういうディテールも嘘ですか」
証人「音楽を聴いて作業することはありますが、前提が嘘だから、細かいことも嘘です」
弁護人「(当時の大阪地検の)小林(敬)検事正にも上申書に沿って報告しましたか」
証人「はい。小林検事正の聞き取りのあと、『報告書にしてくれ』といわれ、上申書を報告書として書き換えました」
弁護人「最初から検事志望だったんですか」
証人「司法修習生時代ですか。はい」
弁護人「検事になって14年間勤めたんですね」
証人「そうですね」
弁護人「そのうち特捜部は9年ですか」
証人「はい、約9年です」
弁護人「あなたは『私の行為で検察の信頼が失墜してしまった負い目を感じている。ですが、特捜部も検察も愛しています』と話されていたようですが」
証人「はい」
弁護人「今でもそうですか」
証人「今でも愛しているからこそ、今、改革が進んでいますが、2点を改革すべきだと思います。一つは、手持ちの資料は全て開示する。検察に不利な証拠があったことが後に判明することは、今の“流行”みたいなものです。私の件をきっかけに大きく検察組織を変えるなら、検察だけの判断で『この証拠は出さない』というのはやめるべきです」
「もう一つは、強制だろうが、任意だろうが、捜査の様子は可視化すべきです。今回の件でも、大久保さんにはかなりデタラメを言われた。検事が改竄したか、しないかなんてのは不毛なやりとりなんです。だから、可視化を進めるべきです。供述調書も作らずに、録音録画する。そこまで検察が改革に踏み込めるかどうかです。検察、特捜は今でも愛しています」
「今は被疑者から自白を取った検事が悪いかのように思われている。確かに自白を取ることは被疑者にとってつらいことだけど、真実を引き出そうというのが検察。それが突然、公判で『言ってない』とか供述が覆っておかしくなって、(裁判で証人として)呼ばれる。それは心外です。それを避けるために可視化すべきです」
弁護人「大久保さんのときは可視化しましたか」
証人「可視化されていません」
弁護人「終わります」
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指定弁護士「まず1点。事前に、(小沢被告を近く聴取するという)報道があったにもかかわらず、知らなかったのですね」
証人「そうです」
指定弁護士「小沢被告側の弁護人と日程調整もするのですね」
証人「先ほど、私は検察幹部がマスコミに漏らしたような話もしましたが、弁護士が記者に漏らすことも考えられます。ただ、いずれにしましても、私は知らず、驚いたということです」
指定弁護士「検察はトップシークレットで下の者には伝わっていなかったのですね」
証人「そうですね」
指定弁護士「書面では、大久保さんに対し『(事件の)予備知識もないので(供述調書に)嘘を書けないし、正直に話してほしい』との内容になっているがこちらも違うのか」
証人「『話を作ることはないので』と、このようなニュアンスは指定弁護士の先生に説明したような気がしますが、手持ちがないので嘘を作るというようなやり取りを大久保さんとした記憶はありません」
指定弁護士「大久保さんに対し、『あなたはどうしたい?』と質問したとも書面にありますが…」
証人「私の記憶では、少なくとも指定弁護士の先生に、そう言ったという記憶はありません」
指定弁護士「調書にはあなた(前田元検事)の発言が、(真実を語る)背中を押したとする内容もありますが…」
証人「(そういうやり取りが調書に)あったか、すら覚えていない。あったのではないかと言われれば、書いているので、あるのでしょうが…。私は、ものすごく些末なことだと思いますが」
《前田元検事は、公判で他の検事が作成した調書などの資料も見ていたと証言。さらに、陸山会の実際の会計事務を担当していた元秘書の石川知裕衆院議員(38)の聴取を行った○○検事(法廷では実名)に捜査状況を尋ねていたことを明かした。指定弁護士側はこの点も確認する》
指定弁護士「○○検事が実際に資料を取り寄せていたことは確認しましたか」
証人「確認はしていません」
指定弁護士「調べ官の横のつながりは定期的にありましたか。例えば、ミーティングとか」
証人「ミーティングとかはありません。ただ、みな東京拘置所に出勤し、夜遅くまで缶詰なので、一緒に過ごす時間が多くなるわけですよね。私は△△検事(法廷では実名)とは面識がありましたが、○○検事と副部長の□□検事(同)とは面識がなかった。最初はぎこちないが、一緒に昼ご飯を食べるにつれ、いろいろと聞くようになる。与太話で『今どんな感じ。認めているの?』とかを自然と聞く。トイレで小用をたしているときとか、『割れた?』とかも聞く。割れないと思っているものの、割ってほしいというのが事実ですし」
裁判官「前任の検事からの本件、政治資金収支報告書虚偽記載について、具体的にどのように引き継ぎを受けたのですか」
証人「本件そのものの認否については、文言はどうあれ、留保しているという趣旨だった」
裁判官「あなたが尋ねた際、(大久保元秘書は虚偽記載について)『思いだしているところだ』と説明したのですよね」
証人「はい」
裁判官「その後、認めた際には、どのようだったのですか」
《問題の土地を購入する際、小沢被告は4億円の資金は用意していたが、その後、りそな銀行からも、定期預金を担保に、同額の4億円の融資を受けている。土地の登記は、代金を支払った翌年の1月にずらされている》 証人「結局、自分が考えたことではなく、『石川(議員)がこういうスキームを作った』と。石川(議員)いわく『これが小沢先生のためになる』と説明を受けたと話していました」
《裁判官は続けて、佐久間達哉・東京地検特捜部長が東京拘置所を訪れ、事件についての見立てを説明した状況について尋ねていく》
証人「(見立ては)妄想かもしませんが。小沢、小沢先生には申し訳ないが、検察はみな小沢と呼び捨てにしていますが、(特捜部長は)『小沢は当然分かっている』と。ダム工事の謝礼を秘書個人に渡すわけがない、そういう金だから(収支報告書の虚偽記載で)隠す、という見立て。だから(土地購入の原資が)業者からの4億円でなければ、見立ては崩れると」
裁判官「(石川議員の取り調べを担当した)○○検事(法廷では実名)も聴いていたんですね」
証人「会議室で。そうです」
裁判官「今日は陸山会事件についての捜査の問題点を話されていましたが、何か言い残したことはありますか」
証人「はははっ。抽象的な質問ですね。えーと…」
裁判官「あ、なければ結構です」
裁判官「弁護側が示したように、(前々日と前日の)21日と22日にも新聞報道がありました。見ていないんですね」
証人「はい。新聞自体一切見ていないし、普段から買っていません」
裁判官「インターネットのニュースでも見ていませんか」
証人「当時一番関心があったのは(自身が捜査に関与していた)厚労省(の郵便不正事件)でしたが。それも見た記憶がありません」
裁判官「事務室とか、他の検事が話題にしていませんでしたか」
証人「当日までありませんでした」
《大久保元秘書は証人尋問で、弁護士を信用しないよう繰り返し言われ、「マインドコントロール」を受けた、と話していた》
裁判官「弁護士を信頼し続けると不利になると、大久保さんが印象を受ける言い方をしたことはありませんでしたか」
証人「信頼してはいけないとは言っていません。ただ、小沢さんの記者会見で同席していた弁護士が、大久保さんの弁護士と一緒であることを知って、『利益相反』だということは言いました。私だけでなく、他の検事も言っていた。『なぜあなたの弁護士が小沢さんの弁護士をしているんだ』と大久保さんに言ったことはあります。それに…」
裁判官「他にはありませんね」
証人「ありません」
裁判長「他の人がここまで話しているというのは、頭に置いて調べているわけですね」
証人「『当て調べ』(他の被疑者の供述を聞かせる取り調べ手法)ということなら、それはやっていません。信用性の問題があり、(他の秘書らの)嘘の可能性もある。当てるのは怖い。大久保さんが言っていることも、合っているか分からないですから」
裁判長「頭に入っていれば、心理として供述をぶつけることはありませんか」
証人「心理としてはあるが、やってはいけないときもある。実際にやるかは別です」
裁判長「小沢被告の会見をテレビで見てから、大久保さんに感想をぶつけたことはありますか」
証人「会見に大久保さんの弁護士が同席していた。それを言ったのは間違いありません。中身で明確にこう言った、という記憶はありませんが、何か(感想を)言っても不思議ではない状況とは思います」
裁判長「小沢さんや共犯の処分の見通しについて、大久保さんに話したことはありますか」
証人「ないですけれども。大久保さんは私を見て、検察は小沢さんを起訴しないと推測したかもしれない。私がこれまでの検事に比べて『やる気ないな』という感じだったので。私が逆の立場ならそう思う。キリキリやらないので、小沢さんを起訴しないと考えられてもおかしくないです」
《大善裁判長は新たな公判期日として来年2月17日に審理を追加。指定弁護士が請求した石川議員、大久保元秘書、池田元秘書の供述調書の採否の判断を行う。次回公判は20日午後1時10分から。指定弁護士側、弁護側の双方が申請した会計学の専門家が証人として出廷》
◆「特捜部は恐ろしいところだ」ストーリー通りの供述を取らなければ、という強いプレッシャー〈陸山会事件〉2011-07-11 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
NCNニコニコニュース 2011年7月11日(月)16時39分配信
小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金規正法違反罪で起訴された小沢氏の元私設秘書、石川知裕衆院議員は2011年7月10日、ニコニコ生放送の特別番組に出演し、東京地検による取り調べの際、担当検事が「特捜部は恐ろしいところだ」と発言したときの様子を語った。また、元検事の市川寛氏は、自らの体験を基に同発言が出た理由を推測した。
陸山会事件とは、小沢氏の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐり、政治資金収支報告書に虚偽記入や不記載があったとして、石川議員を含む小沢氏の元秘書3人が政治資金規正法の罪に問われている事件。今年の2月に行われた初公判では3人とも無罪を主張。裁判の行方が注目される中、東京地裁は6月30日、検察側が証拠請求した石川議員ら元秘書3人の供述調書の一部について「威圧的な取り調べや利益誘導があった」などと任意性を否定し、証拠として採用しないことを決めた。裁判所の判断の根拠となったのは、担当検事が発したとされる「特捜部は恐ろしいところだ」という言葉だ。
石川議員は取り調べ中に東京地検特捜部の田代政弘検事から「特捜部は恐ろしいところだ。何でもできるところだぞ。捜査の拡大がどんどん進んでいく」と言われたと主張。これに対し、田代検事は否定したが、東京地裁は石川議員の主張を認め、「威迫ともいうべき心理的圧迫があった」として供述調書の証拠採用を却下した。決め手となったのは石川議員が保釈後の再聴取のときに録音していた取り調べのやり取りの様子。そこでは、田代検事が同発言を認める様子が記録されていた。
田代検事がこのような発言をした理由について、個人的に田代検事を知っているという元検事で弁護士の市川寛氏は
「彼(田代検事)自身は追い込まれて、石川さんから所定の供述を取らなければいけないというプレッシャーがあったので、そういう言葉を使わなければいけなかったのではなかったのか」
と、検察官当時に自分が置かれていた立場に重ね合わせて語り、上層部が描いたストーリーに沿った供述を取らなければいけないという強いプレッシャーが検察内部にあることを指摘した。市川氏は冤罪事件として知られる佐賀市農協事件に主任検事として関わった際、事情聴取した元組合長に対して「ぶち殺すぞ!この野郎!」と暴言を吐いたことが原因となり検事を辞職している。
市川氏の発言に対し、石川議員も
「罵倒して脅すように『恐ろしいところだ。何でもできる』と言ったわけではなかった。田代さんが私に言ったのは『(検察は)こういう恐ろしいところだから、どうなるかわからない。(特捜部を)止められるかわからない』というセリフ。恐らくそういう組織の中で、結果を出さなければいけない。一人一人が追い詰められていくのはそういうところなんじゃないか」
と述べた。(三好尚紀)
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◆小沢氏強制起訴/「4億円が汚い金というのは検察が勝手に言ってるだけ。証拠がない」と担当検事2011-02-02 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
これを「誘導」「圧力」と言わずに何と言うのか。政治資金規正法違反罪で逮捕、起訴された石川知裕衆院議員(37)が「録音」した再聴取の全容が31日明らかになった。共同通信が報じたのだが、なぜか大新聞テレビは“黙殺”したままだ。
繰り返し言うが、昨年5月に行われたこの再聴取は、石川議員を起訴し、その「保釈後」に行われた。起訴後の被告に対して検察が証言を強要したり、誘導したりすることは絶対にあってはならない。法治国家として当然だ。ところが、石川議員の再聴取では随所に検事の“問題尋問”が行われているのだ。東京地検特捜部の検事が話した内容はざっとこんな感じだった。
「従前の供述を維持するのが一番無難だって。今までの話を維持している限り、(小沢は)起訴にはならないんだろうと思うんだよ」
「ここ(再聴取)で全部否定することは火に油を注ぐことになるよね。ここで維持することが彼ら(審査員)の気持ちをどう動かすかだよね」
石川議員に執拗に供述維持を迫る検事。これほど“強要”する姿勢は異常だ。筋書きありきで突っ走った検察捜査の正当性を保ちたいという考えがミエミエだ。続いて、検事は最初の供述の一言一句を確認する手段に出た。
「小沢先生が政治活動の中で何らかの形で蓄えた簿外の資金であり、表に出せない資金であると思った」などと調書を読み上げたのだ。しかし、これには石川議員が大反論した。
「4億円を隠したいがためっていうのがね、どうしても引っ掛かるんですよ。4億円がいかがわしいお金だなんて、実際どうつくられたかなんて私には分かりません」
「汚いお金だから4億円を何が何でも露見したくないっていうのは今でも違うと言いたい」
こう石川議員が懸命に食い下がると、検事はこう言い切ってみせた。
「汚いお金だっていうのは、検察が勝手に言ってるだけで、別に水掛け論になるから相手にしなくていいんだよ。証拠ないんだから」
自ら所属する検察に対して「勝手に言っているだけ」「証拠ないんだから」とは、あまりにデタラメ過ぎる。こんないい加減な聴取で国会議員を逮捕、起訴するなんて本当にフザケた話ではないか。こうまでもヒドイ人権侵害の話を報じないメディアの罪も重い。今の大手メディアは小沢一郎を抹殺するためだけに存在するのか。
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◆田代政弘検事 ウソの捜査報告書作成=検察審査会「起訴相当」議決に影響/小沢一郎氏裁判 第9回公判2011-12-16 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア