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“武器輸出国”“死の商人”になった/日本の技術を組み込んだ武器流出の懸念/「平和国家」の理念、骨抜きに

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武器輸出緩和 憲法の理念が骨抜きに
信濃毎日新聞 12月28日(水)
 憲法が掲げる「平和国家」の理念が骨抜きにされかねない状況になった、と認識するべきだろう。
  政府は、これまで国是としてきた「武器輸出三原則」を見直し、事実上の禁輸政策を大幅に緩和する新しい基準を了承した。これほどの政策転換は、三原則が確立して以来初めてのことである。
  “武器輸出国”になったことを国際社会に表明したことで、日本がテロや紛争に巻き込まれる危険性がより高まった。
  日本の行方にかかわる問題なのに、国民的な議論をすることもなく、前のめりで決定した野田佳彦内閣をはじめとする民主党政権の姿勢は問題だ。原則の見直しは容認できない。
  三原則は▽共産圏諸国▽国連で決議された武器禁輸国▽紛争の当事国―への武器輸出を禁じた政策である。1967年、当時の佐藤栄作首相が国会で表明し、その後全面禁輸となった。
  この政策は国会決議や法制化には至らなかった。このため、米国への武器技術供与やミサイルの日米共同開発など、見直しが迫られる状況になるたびに官房長官談話を発表する形で、個別に例外扱いしてきた経緯がある。
  今回の見直しは、格上げされた禁輸政策が葬られたことを意味する。まず、平和貢献や国際協力における防衛装備品の「海外への移転を可能にする」と明記した。国際共同開発・生産については安全保障面で協力関係があり、日本の安全保障に資する場合にその国と実施する、と決めた。
  どちらも日本の同意がない目的外使用や第三国への移転を禁じ、厳格な管理が行われることを前提としている。
  けれど、具体的な管理の仕方まで踏み込んでいない。約束が守られる保証はない。武器輸出の条件として平和貢献や国際協力を掲げているが、いかようにも解釈できる内容であり、心もとない。
  なし崩しで武器輸出が拡大したり、第三国へ渡ったりする可能性が否定しきれない。その武器が使用されることで日本が敵とみなされる恐れもある。
  武器輸出を国民が監視できる仕組みが必要だ。野田政権は責任を持って提示するべきだ。
  日本を取り巻く安保環境が大きく変わるというのに、民主党政権は米国の圧力に押される格好で、突っ込んだ議論もせずに見直しを決めている。憲法との整合性が問われる問題を軽々に扱う政治姿勢は理解に苦しむ。
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[武器輸出三原則] 緩和には流出の懸念も
南日本新聞社(12/29付)社説
 政府は、日本の防衛政策の基本である武器輸出三原則に基づく事実上の禁輸政策を大幅緩和し、国際共同開発・生産への参加と平和構築・人道目的での装備品供与を解禁する新基準を決定した。
  米国などわが国と安全保障面で協力関係のある国を対象に、防衛装備品などの国際共同開発・生産を進めていくことで最新の防衛技術を獲得して防衛産業の生産技術基盤を維持・高度化するとともに、コスト削減を図ることが主眼である。
  藤村修官房長官は、憲法の掲げる平和国家の理念や三原則は堅持するなどとした談話を発表した。だが、日本の防衛政策を大きく転換しようというのに十分な議論が尽くされたとは言い難く、日本の技術を組み込んだ武器が紛争国に流出する懸念も残る。運用に当たっては慎重な管理が求められる。
  日本の武器輸出三原則は1967年、佐藤栄作首相が国会で(1)共産圏諸国(2)国連決議による武器禁輸国(3)紛争当事国−への武器輸出を認めないと発言したのが基本だ。その後76年には三木内閣が政府統一見解で、その他の国にも輸出を慎むことを決め、全面禁輸政策となった。
  だが、戦闘機などのハイテク装備では、米国が主導する形で80年代から共同出資や分業でコスト削減を図る国際共同開発が本格化していた。
  代表的な例としては米国、英国、オランダ、イタリアなど9カ国が参加する最新鋭ステルス戦闘機F35が挙げられる。政府は先にF35を航空自衛隊のF4戦闘機の後継機として選定したが、開発に参加しなかったため1機当たりの平均価格が6500万ドル(約50億円)と、他機種に比べ高額なのがネックだった。
  軍拡を続ける中国が既に第5世代ステルス戦闘機を完成させており、ロシアも開発を加速させる中で、日本の制空権を守るために最高性能の戦闘機が求められていた。今後は無人戦闘機の開発も行われる見通しで、日本が共同開発に参加すればより安価な調達が可能になる。
  政府は、共同開発の相手国に米国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国などを想定しており、厳格な管理で第三国などへの流出を防げるとしている。ただ、日本が共同開発に参加した武器を、米国などが戦争で使用する可能性は否定できない。共同開発に際しては、日本の事前同意なく目的外使用ができないようなルール作りも進めておくべきだ。
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武器輸出三原則:大幅緩和 事実上の大転換 国民的議論ないまま
 政府は27日、武器輸出三原則の大幅緩和を発表。国際協力目的での防衛装備品の他国への供与▽友好国との武器などの共同開発−−を幅広く解禁した。個別案件ごとに「例外」を設けていた従来の緩和方法を超え、事実上の三原則の転換に踏み切った。政府は、先端防衛技術の欧米との共有や、開発・生産コスト削減などのメリットを強調する。だが、公開の場での十分な議論のないまま、平和国家・日本の理念である三原則を一気に緩和したことへの批判の声も上がっている。
 三原則による武器禁輸政策のため、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)に選んだF35など、新型兵器の共同開発に、日本はこれまで参加できずにいた。単独で開発してもコスト面で太刀打ちできず、機密情報保持のため、部品生産から外されるリスクもある。防衛省幹部は「いずれやらねばならなかった」と緩和を評価。今後、米国のほか豪州、北大西洋条約機構(NATO)加盟国との共同開発の道が開けるとみる。
 国内の防衛メーカーからも「生産・技術基盤の維持・高度化につながる」(三菱重工業)など、歓迎のコメントが相次いだ。
 また、国連平和維持活動(PKO)などの任務を終えた自衛隊が、従来、武器とみなされ他国に提供できずにいた、建設重機や防弾チョッキなどの装備品を支援国に渡せるようになる。自衛隊幹部は「日本の国際貢献度が増す」と話す。
 野田政権は、年明けに予定していた公式訪米前の緩和表明を目指し、政府内での議論を加速。訪米は延期となったものの、内閣支持率の低迷を受け「野党が攻勢を強める前に」と、決着を年内に前倒しした。しかし、防衛、外務、経済産業3省の副大臣級による11〜12月の非公開協議はわずか3回。公開の場での検討は皆無で、防衛省からは「国民的議論なしで大丈夫か」(幹部)との懸念が漏れる。
 共同開発推進を主張してきた自民党は、緩和を容認する構えだ。しかし、共産、社民のほか公明党も「共同開発の武器が紛争国に輸出されれば、日本は『死の商人』にみられる」(斉藤鉄夫幹事長代行)と強く反発。紛争国への流出防止策を「一概に言えない」(内閣官房)と具体的な説明を避けるなど、議論の生煮えぶりも目立つ。見切り発車で緩和を決断した野田政権への批判は避けられそうにない。【朝日弘行、寺田剛、鈴木泰広】
毎日新聞 2011年12月28日 東京朝刊
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日本が武器輸出三原則を緩和も、「日中が戦争することはない」
サーチナ 2011/12/29(木) 16:00
  日本政府が27日、武器輸出三原則の大幅な緩和を認めたことについて、中国の環球時報は、日本の軍事復興の明らかな兆候であり、日本が平和国家理念を離脱するのではないかと中国世論は心配していると報じた。しかし、日本JCC新日本研究所の庚欣副所長は、「日中関係の発展における小さなエピソードの1つにすぎない」と述べた。以下は同記事より。
■日中関係
  ここ数年、日中関係にはいざこざが絶えなかったが、いがみ合いながらも大事には至らなかったのには2つの理由がある。1つは、両国とも平和・反戦を日中関係の政治的基礎としていることで、「日中は再び戦争することはない」という思いは深く人びとの心に染み込んでいる。米中間は台湾問題ゆえに、日米間は安保ゆえに武力に訴えるということがあるかもしれないが、日中間にはその心配がない。
  今回の野田首相の訪中は、暗たんとしていた日中関係に一筋の光を与えた。金正日総書記の死を引き金とした北朝鮮問題は、日中間の共通の関心事であり、両国の共通認識を強化した。朝鮮半島に対する認識と利益という面では、日本は米国よりも中国寄りなのだ。
  2つ目の理由は、経済協力を通して相互依存を深めていることだ。日本にとって中国は今でも輸出入ともに第1位の国であり、日本の対中貿易額は毎年2300億ドルに上る。これは米国と比べて2倍以上の数字だ。平和が日中間の政治的基礎と言うなら、これらの経済データは日中関係の経済的基礎と言える。野田首相の訪中で国債の相互購入を決めたことは、外貨準備資産を分散し、人民元の国際化を促進するものであり、両国の利益にかなった建設的な措置だ。
  もちろん、日中関係は複雑で、民間の温度もまだまだ低いが、それでも熱い敵意よりはましであろう。日中関係には現在、大きな障害はないものの、時おり報道されるマイナス面のニュースが日中関係に与える影響は大きいため、2012年は日中国交正常化40周年であり、この機会を大いに生かすべきだ。(編集担当:及川源十郎)


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