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小沢一郎氏裁判 12回公判《後》「元赤坂タワーズで石川さんに渡した4億円は、どんな金」「個人の金です」

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 ◆小沢一郎氏裁判 第12回公判《前》/「4億円はどういうことで?」「両親からの相続・印税・議員報酬」 からの続き

 ・産経ニュース2012/01/10Tue.
 《指定弁護士は小沢被告のこれまでの経歴について尋ねた》
 指定弁護士「最終学歴は?」
 被告「日本大学大学院法学研究科です。中退しました」
 指定弁護士「何を学んでいましたか」
 被告「特別なテーマはありません。司法試験を目指して勉強していました。大学は経済学部でしたが」
 指定弁護士「何年在籍しましたか」
 被告「1年間です」
 指定弁護士「昭和44年12月に衆議院議員になった」
 被告「12月27日」
 《小沢被告は「これだけは覚えています」と力を込めた》
 指定弁護士「それまでに職歴は?」
 被告「ありません」
 指定弁護士「秘書などは」
 被告「ありません」
 《続いて、指定弁護士は小沢被告の政党遍歴や党の役職について確認した》
 指定弁護士「民主党代表の時期は」
 被告「いつかは…(分かりません)」
 指定弁護士「平成18年4月では」
 被告「よく分かりません」
 《小沢被告は笑みを浮かべながら「時間のことは分かりません」と応じる。指定弁護士は矛先を変え、民主党代表就任前の1日の行動パターンについて確認を始めた》
 指定弁護士「朝、自宅にいるとき午前6時に起きた後、自宅に秘書が集まる」
 被告「はい」
 指定弁護士「自宅にいる限りですか?」
 被告「顔を合わせます」
 指定弁護士「その後、秘書は出勤しますか」
 被告「出勤するか、続けて相談するか分かりませんが、(私の前からは)去っていきます」
 指定弁護士「その後、あなたは予定がないときは自宅に?」
 被告「毎日出ますよ」
 指定弁護士「どこに?」
 被告「国会のある永田町。議員会館や赤坂の事務所などそこらに出かけます」
 指定弁護士「議員会館の自分の事務所にはどんなときに行きますか」
 被告「お客さんと会うとき。議員会館で会って差し支えない人、地元の人との面会です」
 指定弁護士「(東京都港区の)チュリス赤坂の個人事務所は」
 被告「いろんな人と会います。国会の方がよい場合、チュリスの方がよい場合。人や日程によりますがお客さんと会います。全く違う所(で会うこと)もあります」
 指定弁護士「元赤坂タワーズの事務所にも行きますか? それはどういう場合ですか」
 被告「執筆活動のまねごとや政策的な資料の勉強。心臓病で入院して以来、昼休みを取ることを心がけていますので、休憩のときです」
 指定弁護士「朝、自宅で秘書と打ち合わせるということだが、それ以外では?」
 被告「議員会館が多いですね」
 指定弁護士「16年6月に、『翌年秋に代表選がある』と秘書に伝えたことはありますか」
 被告「ありません」
 指定弁護士「16年6月以外に同様の話を秘書にしたことはありますか」
 被告「代表選の日程が確定すれば、支持者固めのために仲間に秘書が連絡するが、確たるものがなければありません」
 指定弁護士「軽々には秘書には言わない」
 被告「はい」
 指定弁護士「政治資金規正法などの制定に関わっているが、趣旨は理解していますか」
 被告「直接は関与していないが、ただ、できるだけオープンにと主張していました」
 《小沢被告が起訴された要因となった政治資金規正法に踏み込む指定弁護士。これまで落ち着いて回答を続けた小沢被告が語気を強める機会が増え始める》
 指定弁護士「(政治資金規正)法の狙いは基本的に理解しているということでよいですか」
 被告「法も時々によって改正というか、変わりますので、いろんな趣旨が盛り込まれる。統一したものは他の法律でもないことが多いので、正確に把握しているわけではありません」
 指定弁護士「会社経営や顧問など収入がある仕事をしたことはありますか」
 被告「会社経営はありませんが、支持者の知り合いから顧問を頼まれたことはあります」
 指定弁護士「(午前中の公判で証言した)議員報酬や印税以外に収入は?」
 被告「顧問料や新聞、テレビの出演料。インタビュー料というんですか。これらがかなりありました」
 指定弁護士「チェリスの事務所には陸山会、誠山会、小沢一郎政経研究会、小沢一郎東京後援会、民主党岩手県第4区総支部の事務所がありますね」
 《いずれも小沢被告の関係政治団体だ》
 被告「正確には分かりませんが、そうだと思います」
 指定弁護士「今回の裁判で出てきた宮城一政会は政治団体ですか」
 被告「そうだと思います」
 指定弁護士「運営は秘書が?」
 被告「地元と思います」
 指定弁護士「陸山会や誠山会とは性格が異なりますか」
 被告「地域地域で支援してくれていると思います」
 《検察官役の指定弁護士の口調は徐々に熱を帯び始める。速記者の交代に合わせて上着を脱ぎ、さらに質問を続けた》
 指定弁護士「法廷で出てきた改革国民会議はどのような政治団体でしょう」
 被告「あー。新生党か自由党か、その時期に作られた団体と思います。(私ではなく)最も親しい友人がやっていたのでよく分かりません」
 指定弁護士「あなたか秘書がやっていた?」
 被告「違います」
 指定弁護士「17年の代表は分かりますか」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「あなた自身、政治団体に関係は?」
 被告「していません」
 指定弁護士「資金のやり取りは」
 被告「ありません」
 指定弁護士「改革フォーラム21はどうでしょう」
 被告「それも時期は分からないが、それはいわゆる一般の政治団体ということと思う。一番の友人、同志でもあった人物がやっていた。設立された時期や、内容は詳しくは分からない」
 指定弁護士「21年当時の代表は」
 被告「21年というと…。選挙のときですか」
 指定弁護士「そうです」
 被告「前の参議院議員の平野(貞夫)さんが代表か会計責任者だったと思います」
 《ここで、検察官役の指定弁護士は平成17年当時の陸山会の規約を小沢被告に提示し、確認を求めた》
 指定弁護士「17年10月にりそな銀行に提出した規約で間違いないですね」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「当時、代表ですよね」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「ごらんになったことは」
 被告「目を通したかも分からないが…」
 指定弁護士「役職には会長や理事、会計責任者がある。17年10月の理事は?」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「石川(知裕・衆院議員)さん、○△(法廷では実名)さん、池田(光智・元私設秘書)さんとありますが」
 被告「(本人らは)知っていますが、分かりません」
 指定弁護士「○△さんは?」
 被告「父の代の秘書です」
 指定弁護士「規約の7条には、会計責任者は会長の指示に従い事務をするとあるが」
 被告「結果として携わっていない」
 指定弁護士「質問に対しては」
 被告「ですから、指示していないので」
 指定弁護士「代表者は監督する、とあるのは政治資金規正法の趣旨にありますか」
 被告「はい。立場があるのは分かっていました」
 指定弁護士「具体的にはどう監督しますか」
 被告「繰り返しになりますが、経理の担当は1年間、毎日の収入と支出を記録して、収支報告書の提出する。単純な作業なので担当に任せてよいと思います」
 指定弁護士「17年3月当時、担当の石川さんは作成に関与していないと証言している。大久保(隆規・元公設第1秘書)さんは小沢氏が関与しないことをよしとしていたと証言した」
 被告「石川か池田か。私は実質担当するものが法の趣旨に乗っ取ってやればいいと思っていた」
 「最後の責任は代表者か会計責任者にあると思うが、現実には極端な言い方をすれば、読み書き、計算ができれば可能なので、担当に任せていた」
 指定弁護士「実務をやっている人に関与しないことをよしとしていた、と大久保さんが証言している。一切関わらないこととは違う。了解していたのか」
 被告「同じことではないでしょうか。実務をやらないのであれば。言葉のあやですね」
 指定弁護士「大久保さんや実務の担当者に監督は?」
 被告「具体的にはしていない」
 指定弁護士「政治資金収支報告書の作成はそれでよいと思っていたか」
 被告「分からないが、担当者に任せて十分正確にできる内容。大事でないと言っているわけではないが、任せても十分できる」
 「私にはもっともっと大事な関心、力を集中してやらなければならない政治上のことがあるということであります」
 《指定弁護士は小沢被告の認識についてただしていく。小沢被告はいらだちを見せつつ、興奮した口調で応える》
《指定弁護士によって、収支報告書をめぐる認識をただされ、いらだちをあらわにしていた小沢被告は落ち着きを取り戻した様子だ。指定弁護士は小沢被告が抱える秘書について質問する》
 指定弁護士「平成17年当時、秘書は何人いましたか」
 被告「調べてみないと正確に答えられませんが、書生等々を合わせて十数名はいたと思います」
 指定弁護士「そのうち東京に勤務する人は何人くらいですか」
 被告「うーん。大部分は地元の後援会がやってくれていたので、地元は減らして東京にシフトするようになりました。どのくらいというと、うーん、7、8割は東京にいたと思います」
 指定弁護士「東京勤務の人は全員が秘書なのですか」
 被告「言葉の定義にもよります。まだ学生の身分の者もおりますし、議員会館の通行証を持っていたのは5、6割でしょうか」
 指定弁護士「十数名の中には外国人秘書も含んでいますか」
 被告「はい」
 指定弁護士「秘書には公設と私設がありますが、平成17年10月当時、公設秘書は何人いましたか」
 被告「法律で定められた数しかいません」
 指定弁護士「東京には何人いましたか?」
 被告「うーん。ひとりひとり名前を挙げてアレすれば分からないこともないですが、即座には思い浮かびません」
 指定弁護士「大久保(●(=隆の生の上に一)規元公設第1秘書)さん以外にもいた?」
 被告「大久保以外にもいたと思います」
 指定弁護士「そうですか、ふーん。公設と私設で上下の別はありましたか」
 被告「私は区別したことはありません。(秘書側は)公設になりたいというのはあったと思いますが」
 指定弁護士「公設秘書が私設秘書に対して命令することは?」
 被告「秘書は皆、イコールであります。皆、仲間として仲良く頑張るというのが、私どもの事務所の方針です」
 指定弁護士「税務の視点から見ると、政治家個人と政治団体の会計は別にしないといけませんね」
 被告「はい」
 指定弁護士「秘書にも徹底していましたか」
 被告「そのつもりです」
 指定弁護士「どう指導していましたか」
 被告「訓示を垂れるとか、説教するとかはありません。自分自身で範を示せば、周りの人もしっかりやってくれるという意識が先行していました」
 《ここで指定弁護士側は質問を陸山会の土地購入へと移す。法廷の大型モニターに、陸山会が購入した不動産をリストアップした一覧表が映し出される。10件余りのマンション名などが記載されているようだ》
 指定弁護士「ここに載っていないもの。あるいは陸山会のものではないというものはありますか」
 被告「ふーん。ちょっと待ってください」
 《小沢被告は、顔を手元の小型モニターに近づけ、しばらくの間、じっと見入っている》
 被告「これは陸山会のものと思います」
 指定弁護士「池田(光智元私設秘書)さんがつけていたノートに『伊豆 土地がある』という記載がありますが、収支報告書には載っていません。心当たりはありますか?」
 被告「間違いだと思います。伊豆は陸山会と関係ないですから」
 指定弁護士「(土地の)購入に当たっては、あなたが了解されていたわけですね」
 被告「そうですね」
 指定弁護士「あなた自身が下見をしたものは?」
 被告「ありません」
 《今度は、大型モニターに小沢被告の署名が入った土地購入についての確認書が映し出される》
 指定弁護士「土地購入では、あなた個人と陸山会を峻別しなければならず、確認の書類を作ったと?」
 被告「はい」
 指定弁護士「(世田谷の)土地を購入するに当たって作成したこの確認書と同じようなものを、他にも作っていましたか」
 被告「はい。契約書は政治団体で作るようにと。念のため、確認書を作って疑念を抱かれないようにしておけといっておきました」
 指定弁護士「初めてそういう指示をしたのはいつですか」
 被告「それは分かりません。最初のころからそうしていました」
 指定弁護士「(過去に)個人の資産を一時的にも用立てたことはありましたか」
 被告「ありません」
 指定弁護士「(一覧表に記載された中の)4物件(の購入資金)は預金担保でなく、不動産担保で借り入れている。記憶にありますか」
 被告「ありません。記憶にありません」
 指定弁護士「預金担保にした方が金利が安いはずなんですが」
 被告「それは私に聞かれても分かりません」
 指定弁護士「さくら銀行から借りたことがありますね」
 被告「さくら…、はっはっはっ」
 《何がおかしいのか、小沢被告は低い声で笑い声を上げる》
 指定弁護士「記憶にない?」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「さくら銀行では陸山会では借りられず、小沢一郎の個人名義でないと借り入れられなかった経緯があったということですが」
 被告「私が債務者になって借りた記憶があります」
 指定弁護士「奥様が連帯保証人になっていますが」
 被告「そうですか。政治家は金融機関から信用ありませんから、そういうことになったのだと思います」
 指定弁護士「(世田谷に購入した土地の)秘書寮は奥様の名義で建てられたと思いますが…」
 被告「家内の名義です!」
 《単なる名義貸しだったのではないかというニュアンスを含んだ指定弁護士の質問の仕方に不快感を示す小沢被告。指定弁護士が疑っているわけでないという意味を込め、「(質問は)真実性を否定するものでない」と告げると、小沢被告は「ふはははははっ」と高笑いした》
 指定弁護士「建物を建てたのは、秘書側から要望があったのですか」
 被告「そばに秘書がいてくれるのはいいことだと思いましたし、他の職場と比べ、(政治家の秘書は)仕事はきつく、給与は安い。給与を上げればいいじゃないかということになるが、人件費がかさむので、その分、住まいがあればいいと思ったことは事実です」
 指定弁護士「秘書が自分の寮を建ててほしいと借金まで依頼するとしたら不自然です。(寮の建設と土地購入は)あなたから持ち出した話ではないのですか」
 被告「今、言った通りです。私が主導したということではありません」
 《ここで裁判長が休廷を告げた。退廷を促された小沢被告は、ひと際大きな声で「はい」と返事をして、ペットボトル入りの飲み物を持って、弁護団の待つ座席に戻った》
 《証言台に座った小沢被告に対し、指定弁護士側は陸山会の所有するマンションなどの不動産について、改めて追及していく》
 指定弁護士「(陸山会が所有する)元赤坂タワーズ902号室、これはあなたが個人的に使用していたのか」
 被告「そうですね。政策勉強など、個人的な仕事で使っていた」
 指定弁護士「秘書が使用することは」
 被告「ありません。部屋の鍵やなんかは秘書が持っていたが」
 指定弁護士「この部屋には金庫がありましたね。この金庫の鍵は」
 被告「私が持っていた」 指定弁護士「(同じく陸山会所有だった)プライム赤坂204号室、これはシンクタンクが使用と」
 被告「そうです」
 指定弁護士「(秘書の)池田(光智)さんのノートに、『□○さん(法廷では実名)に7万円で賃貸』と記載があるが」
 被告「分かりません。何かコンサルタント会社と聞いているが」
 指定弁護士「□○さんについては?」
 「もちろん知っている。党の職員で、ずっと以前から、新生党のころから私どもの仕事を手伝ってくれた人。合併して民主党の職員になった」
 指定弁護士「(シンクタンクが使用と)午前中に言っていたことと矛盾しないか」
 被告「矛盾しないと思う。池田の認識がどうだったか知らないが」
 指定弁護士「賃料をとって貸していた?」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「グラン・アクス麹町、ラ・セーナ南青山などのマンションを処分しているが」
 被告「処分したのはもっとあると思うが…。外国人のスタッフが入っておったところは全部処分したと思う。日中・日米草の根交流の事務所にしていたが、いつだったか忘れたが、ジョン万次郎財団(正式名称は「ジョン万次郎ホイットフィールド記念 国際草の根交流センター」)に寄付した」
 指定弁護士「処分したのは外国人秘書がいなくなったからか」
 被告「いなくなったということもあり、私の事情もあり、替わりを雇わなかったので。不動産の所有を禁止するという政治資金規正法が自民党政権で無理やり通ったので、処分した方がよかろうと」
指定弁護士「今は外国人秘書はいない」
 被告「はい」
 指定弁護士「陸山会の財産は秘書が管理しているんですよね。(陸山会が所有する)チュリス赤坂の事務所で」
 被告「はい、と思います」
 指定弁護士「チュリスに個人の金は置いていない」
 被告「ありません」
 指定弁護士「元赤坂タワーズで石川さんに渡したという4億円は、どんな金」
 被告「個人の金です」
 指定弁護士「政治資金はあったか」
 被告「ないです」
 指定弁護士「元赤坂タワーズに政治資金は入れない」
 被告「はい」
 指定弁護士「りそな銀行に開設した口座は陸山会の金を入れるためのものか」
 被告「と思います」
 指定弁護士「ここに個人の金を入れることは」
 被告「ない。というか、そういう指示を直接することはないと思う」
 指定弁護士「個人資金を政治資金と峻別するのが方針と。(双方を)ぐじゃぐじゃにすることはない?」
 被告「はい、ありません」
 指定弁護士「平成17年5月2日、りそな銀行の陸山会口座から4億円引き出されている。これは土地購入とは別のものということか」
 被告「陸山会の口座かどうか正確には分かっていないが、(引き出されたという)事実は分かっている」
 指定弁護士「石川さんはあなたの指示で改革国民会議のビルに行ったと言っている。あなたの指示か」
 被告「はい」
 指定弁護士「石川さんへの指示は、改革国民会議から金を持っていき、後で元に戻せという指示か」
 被告「ちょっと説明を。さっきは名前出すのをはばかられたが、私の最大の友人であり同志である八尋(護)さんという人がおりました。改革国民会議、改革フォーラムの責任者だったが、病で倒れた。彼から、改革国民会議の金を一度預かってくれないかという話があった」
 被告「言いつけたのは石川だろうと思う。金を取りにいって預かっておいて、と。陸山会に入れろ、預金に入れろという指示はしていないが、しばらくしたら(改革国民会議の事務所がある)紀尾井町に戻すように言った」
 指定弁護士「どうしてあなた自身が預かって元赤坂タワーズで保管しなかったのか」
 被告「分からない。八尋さんの指示だったし、彼の指示通りにした。石川は手元に金を置くよりも銀行にと思ったんだろうと。これを陸山会の口座に入れて、また返せといった具体的な指示はしていない」
 指定弁護士「八尋さんの要請は、陸山会で預かってという内容?」
 被告「それはない。八尋さんの金なので」
 指定弁護士「他と混同させないというあなたの方針からすれば陸山会で預かるのはおかしいのでは」
 被告「そういう意味ではない。結果として短期間で返している。混同には当たらない」
 指定弁護士「あなた個人の現金がたくさんある元赤坂タワーズで預かればよかったのでは」
 被告「それは八尋さんの意思で。一度銀行で保管して、という意思だったと思う」
 指定弁護士「あなたも、りそな銀行に口座を持っていますね? 八尋さんの要請ならば、なぜあなた個人の口座を利用しなかったのか」
 被告「何も不都合なことはないが、たまたま石川に頼んだところ、たまたま陸山会の口座に入れていたということだと思う」
 指定弁護士「峻別するという方針の例外ということか」
 被告「適切だったかどうかはご判断に任せるが、きちんと払い戻して陸山会と混同していない。指摘は当たらないと思う」
 《自分の金と政治資金はきっちり峻別していた、と繰り返し主張する小沢被告。指定弁護士側は質問の矛先を変える》
 指定弁護士「平成21年7月21日と8月17日、92人の個人に約5億円の寄付をしたとの記載が政治資金収支報告書にあるが、民主党の立候補者に対して寄付したということか。4億4900万円、この原資の大半は(旧新生党の資金がプールされている)改革フォーラム21から?」
 被告「3億いくらぐらいだったと思うが。かなりの部分はその通りです」
 指定弁護士「実際には3億7千万円ですか。この金を陸山会の銀行口座へ移動したことは」
 被告「確認していないので分からない」
 指定弁護士「改革フォーラム21から、3億7千万円の現金がわたるまでの経過を」
 被告「改革フォーラム21の責任者である平野(貞夫前参院議員)さんと話したところ快く引き受けてもらい、(小沢被告が代表の政党支部の)民主党岩手県第4区総支部を通じて寄付する形をとったが、手続きが遅れて自分の手持ちの金を出して後から返還を受けた、という経過でございます」
 指定弁護士「あなたの現金と陸山会の現金を引き出してあわせて出した?」
 被告「はい。秘書が手渡した」
 指定弁護士「あなたが立て替えた3億7千万円は、陸山会に入ったというより直接候補者にいったということか」
 被告「いや…そういう論理になりますかね? 時間にズレが出たので、手持ちの現金と陸山会の現金を合わせて寄付した。すぐに返還されたので、私個人うんぬんではないと思う。陸山会として寄付したんだから、陸山会のお金としてやったんじゃないですかね?」
 指定弁護士「収支報告書には、総支部から陸山会に金が入ったとある。池田さんと相談したか」
 被告「特別相談したというのはないが、池田も承知していたと思う」
 指定弁護士「池田さんはこの法廷で『(小沢被告から)そういう形で何か(寄付を)できるか、と聞かれたので、上限もあるので、借り入れとかそういう形ならできる』と説明したと言っているが」
 被告「政治団体は受け入れ限度額があるから、実行にするにあたり相談はしたと思う」
 指定弁護士「相談は実行後ではないか?」
 被告「いえ、平野さんと話してその後にした」
 指定弁護士「いつ池田さんと話したか」
 被告「(ムッとしたように)分かりません」
 指定弁護士「平成21年10月中旬ごろでは?」
 被告「え? 10月? 選挙後?そんなことはないと思います。選挙前だったと思います」
 指定弁護士「やってから相談したのではないか?」
 被告「理屈の上で改革フォーラム21から陸山会が金を受け入れるには限度額があるので、総支部を経由してやらなくていけない」
 《政治資金規正法では、政治団体間の寄付の上限を年間5千万円までと規定している。改革フォーラム21から陸山会に3億7千万円を直接移動させることはできないため、除外規定のある政党支部を介したことを認める発言だ》《こうした資金を迂回をさせる手法は同法に違反するとして、大阪の市民団体が昨年2月、小沢被告らを東京地検に刑事告発している。小沢被告が脱法性を認識していたことを裏付ける発言として注目されそうだ》 指定弁護士「総支部のお金が動いたことは?」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「現金は、平野さんとあなたが資金調達して経理処理したのではないか」
 被告「そうではないと思います!」
 《政治団体を通じた「不可解な会計処理」を執拗に追及する指定弁護士側。小沢被告は淡々と答えているが、時折いらだったような様子も見せた》
 《指定弁護士は引き続き、捜査段階の任意の事情聴取で、平成21年に政治団体「改革フォーラム21」から党支部を経由して受けた3億7千万円の寄付について小沢被告が捜査段階で「全く関与していない」と供述していた点について追及していく》
 指定弁護士「事情聴取で全く関与せず、全く覚えていないと話していませんか」
 被告「多分後で訂正しています。勘違いしたせいです」
 指定弁護士「(平成22年1月の聴取で、寄付の)処理について『今年3月提出の収支報告書に記載されることになります』と供述していませんか」
 被告「うん、陸山会に入る金だから、当たり前のこととして申し上げました」
 指定弁護士「(政治資金)収支報告書の記載を、どう確認するんですか」
 《指定弁護士側は、各年度の収支報告書一切を確認していない、という小沢被告のこの日の供述の矛盾を突こうとする》
 被告「確認なんかしていません。当然そうなる、と思っただけです」
 指定弁護士「陸山会で、収支報告書の作成前に金の流れが分かるんですか」
 被告「(民主党岩手県)第4(区総)支部も陸山会も私が代表で、私は当然分かっていました。当たり前です」
 指定弁護士「でも、最初の取調べでは『全く知らない』と。22年1月の取調べですよね」
 被告「年月はわかりませんが」
 指定弁護士「一昨年の1月ですよ」
 被告「そう言われれば。年月のことはよくわからないんですよ(笑い)」
 指定弁護士「寄付は21年7月のことですが、わずか半年前のことで、何と何を勘違いしたんですか」
 被告「分かりません。思い出せませんが、改革フォーラム21の寄付であると気づかなかった、ということだと思います」
 《指定弁護士はさらに寄付金の認識について質問を繰り返すが、小沢被告は「え?」「はあ?」と理解できない様子。弁護側からも「誤導がある」と再三の抗議があり、指定弁護士は「もう、いいです」と質問を変える》
 指定弁護士「個人資産について尋ねていきます。資産公開法に基づく資産等報告書ですが、(小沢被告が)見たことがないというので、一度目を通して見てください」
 《モニターに各年の資産報告書など数枚を表示させる。小沢被告は真剣な表情で確認している》
 指定弁護士「資産報告書と補充報告書の違いは、補充報告書が資産の変動があったときに提出するという理解でいいでしょうか」
 被告「そういう言葉で言われると分かりませんが。資産を国会に報告するものだと思っています」
 指定弁護士「違いを説明してください」
 被告「言葉尻では、(補充報告書が)資産が増えたときかなあ。分かりません」
 指定弁護士「報告書の提出に刑罰規定はないが、虚偽の記載があれば政治家として強いリスクを負うと理解していいですか」
 被告「それは内容によるんじゃないですか」
 指定弁護士「著しい虚偽記載があれば、問題になるということでいいですか」
 被告「非難されるような虚偽であれば、それはそうです」
 《小沢被告が土地購入の原資として提供した4億円は、それまでの資産報告書に記載されていない「タンス預金」だったことから、「不透明だ」とする批判も出ている》
 被告「報告書を書くのには関与していませんが、ただ資産が増えたときは(秘書に)報告(書を提出)させただろうと思います」
 指定弁護士「(資産変動の秘書に対する)情報提供はあなたが?」
 被告「そうですね、私の関係のことなら」
 《指定弁護士は、土地購入の原資となった銀行融資の担保として設定された小沢被告名義の「定期預金」が報告書の記載にない点を追及する。現金で保有するタンス預金は資産等報告書への記載義務はないが、定期預金であれば記載しなければならない》
 指定弁護士「弁護側は、銀行借り入れの担保の定期預金4億円について、預金者があなたであると主張していますね」
 被告「最初から申し上げているように、手続き的なことは一切関与していないので分かりません」
 指定弁護士「資産が増えたら秘書に話をする、と先ほど話していましたよね?」
 被告「…え?」
 《弁護側が「小沢氏が秘書に伝えているのは自分が把握している資産の変動で、定期預金については把握していない」と異議を唱える。協議の最中、小沢被告が口をはさむ》
 被告「報告書の作成については、全部知らないと言っています。『被告人』には理解できません!」
 《自らを「被告人」と呼ぶ小沢被告の“ジョーク”で資産に関する議論は打ち切りに…。指定弁護士はお茶を口に含んでから、土地購入の経過について再び尋ねていく》
 指定弁護士「平成13年にかけて、寮の確保は差し迫っていた?」
 被告「人数の増加は覚えていないが、(東京都世田谷区)深沢8丁目を購入せんとする時期は一番、秘書、書生、秘書の家族が多くなってきた時期だった」
 指定弁護士「寮(の建設)が必要という要請はいつから」
 被告「何が何でも、ということではない。何度も申し上げるが、昼夜、土日もない、安月給で働かせて『すまんな』という思いがあった。近所にいるのは便利なのでそうしたいな、と」
 指定弁護士「(寮の確保が)具体化した最初は?」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「購入は16年10月ごろですが、あなたの関わりがいつ始まったか記憶は?」
 被告「ありません」
 指定弁護士「寮の確保のため、借りる、給料に上乗せする、ということを検討したことは」
 被告「それも、賃貸で借りるというのを後援会(陸山会)でやると、政治団体から資金が出る。ローンを組めるなら(家賃を払わず)資産を確保するのがいいかと思ったのは事実。これは一般でも同じ感覚を持っているのが普通。近所に住まん、ということを踏まえてそう思っていた」
 指定弁護士「具体的に深沢8丁目の土地に寮を確保するときに借りる、ということを検討したことは」
 《ここで、指定弁護士が多用する「検討」という言葉について、弁護側から「待った」がかかった。弁護側は「思い浮かべた」や「議論した」などさまざまな意味があると指摘。指定弁護士は苦笑いを浮かべながら改めて質問した》
 指定弁護士「借りることを選択肢に協議したことはありますか」
 被告「大久保(隆規・元公設第1秘書)と?」
 指定弁護士「はい」
 被告「それはなかった」
 指定弁護士「あなたが選択肢として考えたことは」
 被告「買うことができれば買った方が、という感覚はあった」
 指定弁護士「大久保さんでも他の人でも、(寮を建てる土地を)探すよう指示したことは」
 被告「していないと思います。その当時、秘書の人数が増えたので、必要性を感じておりました」
 指定弁護士「指示していないが、大久保さんから持ち込まれた、と」
 被告「1つ1つ区切って質問されると、アレですが。彼らも私も共通の認識があった」
 指定弁護士「探すよう言ったか、大久保さんが持ってきたか」
 被告「個別の指示はしていません!」
 指定弁護士「深沢8丁目の土地は大久保さんが見つけた?」
 被告「と思います」
 指定弁護士「(話を)持ってきたのは大久保さん?」
 被告「石川(知裕・衆院議員)もいたか定かではないが…」
 指定弁護士「4区画で3億5千万円という金額が秘書から出てきたが、予算は(あらかじめ)伝えていましたか?」
 被告「伝えておりません」
 指定弁護士「物件はごらんになられましたか」
 被告「話を聞いてから、散歩の途中で見たと思います」
 指定弁護士「印象は?」
 被告「いい土地だと思う、と。よかろうというのはありました」
 指定弁護士「見に行った後、『よい』と大久保さんに言いましたか」
 被告「そういうことではない。大久保から話が来てから見た、ということ」
 指定弁護士「見て、『よい』と言う前に話は進んでいたということですか」
 被告「じゃないかと」
 指定弁護士「土地の選定と購入資金の話をしたのは別の場面でしょうか」
 被告「あー。会話は別々ですよ」
 指定弁護士「(購入に向けて交渉を)進めてみようとしたら資金が足りないので、石川さんや大久保さんからお金の相談があったということですか」
 被告「そうだと思います」
 指定弁護士「(資金面で)どのような相談がありましたか」
 被告「これも言葉尻ですが、現実に後援会の金を調べたと思いますが、(関係政治団体の資金を)かき集めれば購入できるが、使うと政治団体、政治活動の運営に支障を来すということだった」
 指定弁護士「その後、ローンで(資金を)借りたいとか、(資金が足りないので)やめようとかにはなりませんでしたか」
 被告「具体的には記憶にないが、そういう話があったので、じゃ、たまたま手持ちがあったので活用したらよかろう、と」
 指定弁護士「石川さんの証言では、あなたに『資金を貸してくれますか』といったとありますが、(当時の)記憶はありますか」
 被告「記憶はありませんが、会話があったともなかったとも分かりません」
 指定弁護士「石川さんは『貸してくれますか』という質問をしましたかという問いに『ある』と証言しています」
 被告「あったともなかったとも記憶はありません」
 指定弁護士「いずれにしても4億円を用立てる、と」
 被告「そうだと思います」
 指定弁護士「そのとき、いつごろまでに用立てる、というのは」
 被告「いいえ、そんなことは言っていません。必要なときに出すということです」
 指定弁護士「いつでも出せる、ということは」
 被告「言っていないと思います」
 指定弁護士「(資金調達の目処がなければ)手付けや決済時の残額の支払いなどがあり、契約の流れをつかみにくいと思うのですが」
 被告「そんなことはありません。手持ちを用立てる、と言ったので、(石川議員は)そう理解したと思います」
 指定弁護士「手持ちを用立てるとは言いましたか」
 被告「と思います」
 指定弁護士「石川さんの証言では(平成16年)10月12日ごろにお金が渡っている」
 被告「年月日は分かりません」
 指定弁護士「それ(石川議員の証言)を否定する記憶はありませんね?」
 被告「はい」
 指定弁護士「いつ契約をしたかについては聞いていませんか」
 被告「はい」
 指定弁護士「10月12日、石川さんに会って現金を渡す際に(土地の売買)契約は済んでいます」
 被告「そんな話、個別の具体的な話はなかった」
 指定弁護士「担当者の石川さんから(契約)予定日などの報告はあったと思うが」
 被告「そうは思いません。そのときに渡すということで話は完結している」
 指定弁護士「普通、契約担当者であれば、進行中の案件について隠す理由はないですよね」
 被告「理由はないです」
 指定弁護士「10月5日、(現金を渡す)1週間前に契約は済んでいる。(10月)12日に現金を受け取った際に黙っているのは…」
 《ここで再び弁護側が立ち上がり、質問が重複していると主張。「同じ質問を3回もしている」と声を荒らげるが、指定弁護士は「大事な部分」と取り合わない。大善文男裁判長は指定弁護士の意向を汲み、弁護側の主張を却下した》
 指定弁護士「事務担当者の報告はあってしかるべきだ」
 被告「隠す必要はありません。とはいえ報告の必要もない。最初から言っているが、政治家と秘書は人間の信頼関係がないと成り立たない。いちいち聞いたり、報告を受けたりする物理的、精神的なヒマはない。私は関心を持って全力を尽くさないといけない仕事がある」
 《小沢被告は政治家の“美学”を披露。秘書の心意気についても「秘書は私の姿勢を知っているので、そのようなことを報告する必要はないと思っていたのでは」と解説した》
 指定弁護士「お金を渡すときには、土地を買うと?」
 被告「感じていました」
 指定弁護士「代金を支払うとか、定期(預金)を組んで、それを担保にお金を借りることについての認識は?」
 被告「どのように進めるかは彼の裁量だ」
 指定弁護士「借りようが、どうするかは石川さんが決めること、と」
 被告「預けた以上は石川の裁量だ」
 指定弁護士「定期(預金)でお金を借りるとの説明はありませんでしたか」
 被告「はい」
 指定弁護士「そのまま支払われると思いそうですが、あなたは?」
 被告「(現金を預けた)そのときにおいては、どうするかは石川の判断次第。詮索することでもない」
 指定弁護士「(現金が)しばらく保管されるとは思いませんでしたか」
 被告「分かりません」
 指定弁護士「口座で保管したり、現金で保管したりという考えは?」
 被告「関心もありません、考えもありません」
 指定弁護士「政治団体で保管することは?」
 被告「全く分かりません」
 指定弁護士「個人口座の入金は?」
 被告「一切考えません」
 指定弁護士「どの口座に入金されるか、念頭に浮かべましたか?」
 被告「考えておりません」
 《「分からない」「考えない」「関心もない」と否定を繰り返す小沢被告。指定弁護士はいらだちを募らせたのだろうか。石川議員を呼び捨てにして、こう尋ねた》
 指定弁護士「あなた自身が入金して、石川が引き出すという方法を考えなかったのですか」
 被告「現金で持っていましたので」
 指定弁護士「(4億円の現金を)銀行員に取りに来てもらうことは」
 被告「考えません」
 指定弁護士「物騒ではないですか?」
 被告「物騒とは思いません」
 指定弁護士「石川さんが多数回に分けて入金したことは今はご存じですか」
 被告「確か証言か何かであったかと」
 指定弁護士「『多額の現金所持は銀行に突っ込まれる』という(石川議員の)証言は?」
 被告「覚えているように思います」
 指定弁護士「秘書が『あなたが多額の資産を持つこと(が発覚するのを)を避けたい』と思っていたとの認識がありますか?」
 被告「あのー、現金を持つことはとやかく言われることではないと秘書も考えていると思います」
 指定弁護士「お金をたくさん持つということについて、あなたの認識は?」
 被告「自分の懐具合を積極的にしゃべって歩く意思もないですけど、ちゃんと了とした土地の購入で何らとやかく非難されることではないので、どっちみち公になる可能性が強いのだから、特段それを意図的に避けようとするわけではありませんでした」
 《指定弁護士は石川議員が4億円を複数回に分散させて銀行口座に入金した動機を考えるよう促した》
 指定弁護士「では、なぜ石川さんがそういう行動を取ったのだと、そういう思いになったのだと思いますか」
 被告「秘書として、議員にマイナスにならないように、との心構えを役目と考えたからだと思います」
 《指定弁護士側はこの日の質問をここで切り上げた》
 《証言台から素早い足取りで弁護側の席に戻った小沢被告は指定弁護士側をじっと見つめていたが、大善裁判長が次回公判の予定を説明すると大きくうなずいた》


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