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小沢一郎インタビュー/〈裁判〉被告人質問では、同じことを何度も何度も聞いてくるんです。

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小沢一郎・独占インタビュー第2弾 「官邸は能天気だ!」(上)
  消費増税の行方と解散時期
 週刊朝日2012年01月27日号配信
 最大の山場だった民主党の小沢一郎元代表(69)の被告人質問が終わり、陸山会裁判の実質的な審理は終了した。その直後、野田政権は発足からわずか4カ月で内閣改造を断行し、消費増税法案の年度内提出に向けて狙いを定めた。政局はにわかに動き出している。"剛腕"は何を考え、狙っているのか。被告人質問の夜、本誌の単独インタビューに答えた。
−−陸山会裁判の山場である小沢さん自身の被告人質問が、1月11日に終わりました。率直な感想を聞かせてください。
小沢:一連の捜査は最初からすべて、僕が「不正なカネ」を受け取ったということを大前提にして進められてきたので、僕自身も、この事件で逮捕・起訴された僕の元秘書3人も、この3年間、非常にしんどい思いをし、無念の思いできました。
 それでも昨年12月の公判で、元東京地検特捜部の田代政弘検事による捜査報告書の「捏造」疑惑などが飛び出し、あらぬ疑いがいろんな形で晴れてきたので、まあ、忍耐、苦労のしがいがあったと思います。国民みんなが徐々にわかってきてくれたということで自分を慰めて、自己満足するしかないかな、という気持ちですね。(笑い)
−−被告人質問では、裁判の焦点の一つとなっている「現金4億円」の原資について、(1)両親から相続した東京・湯島の自宅を14億〜15億円で売却し、現在の自宅を9億円前後で購入した残金(2)東京・上野の土地を相続し、売却した1億円前後(3)著書の印税8千万円などの収入計1億6千万〜7千万円−−などと具体的に説明しました。
小沢:すべて説明しましたよ。そもそも、検察が強制捜査をしても、不正は何もなかったんです。「不正なカネ」を取ったということを前提とした「見込み捜査」から始まっているから、何ともしようがないんですが、結果として、国民の皆さんもだんだんと真相がわかってきてくれているようだから、それで「よし」とする以外にないですね。
−−2日間の被告人質問で、話すべきことは話したという感触はありますか。
小沢:検察官役の指定弁護士もほかに聞くことがないからだろうけれど、同じことを何度も何度も聞いてくるんです。裁判官の質問にも答えましたが、政治資金収支報告書をいちいち細かく見ている国会議員なんていません。法律の趣旨に照らしてどうかと聞かれても、確かにそれがいいというわけじゃないけれど、現実問題として、収支報告書の中身を細かく把握する物理的・精神的余裕はない。
 それに、これも裁判で何度も言いましたが、収支報告書は、1年間の資金の出入りを書くという非常に単純な作業です。普通の能力を持っている人間ならば誰でもできることで、それを秘書に任せているわけです。議員がすべてを検証するのは不可能だし、議員自身が検証しなければならないのなら、秘書は必要ないということになります。
−−小沢さんの被告人質問のさなか、永田町で浮上したのが内閣改造論です。野田政権は1月13日、発足からわずか4カ月で改造人事に踏み切りました。参院で問責決議を受けた小沢グループの一川保夫・前防衛相と山岡賢次・前消費者担当相兼国家公安委員長も交代しました。
小沢:グループがどうこうというよりも、問題は、4カ月で大臣を次々と代えざるを得ない状態になっていることです。ちょっと尋常ではないですね......。
 それでも改造人事をするならば、国会運営の一環としてやらないと意味がないけれど、見ていると、ただ「代えたからいいでしょ」ということだけでしょう。
 通常国会が始まる直前のこの時期に人事を行うというのも異例のことで、基本的にはおかしい。新年度の予算編成は昨年末に終わっているわけですからね。新大臣は、自分で予算編成をしていないから、国会で質問されても答えられない。そうなれば、野田首相がすべて代わりに答えなくちゃいけないことになる。
 そういう筋道のおかしさもあるけれども、そもそも、いま野田さんが国会運営の全体像をどう見ているのかよくわかりません。そんな中で、消費増税だけは「やる、やる」と言い張っているんですから。(苦笑)
◆国会直前の改造、正直わからない◆
−−今回の改造は政権浮揚につながりますか。
小沢:人事と絡ませるのはいい手段ではありませんが、それでもあえて人を代えるなら、通常は、それに関連していろいろと国会運営を巡る与野党間の話し合いがあってしかるべきです。だけれど、そんなことをやっているフシもない。
 本来の議会制民主主義では、どんなに与野党が対立しているときでも、国会対策委員会と議院運営委員会では、つながっているものです。いまの与野党間にそれがないとしたら、もう何を変えてもうまくいかないと思う。
−−今回の人事では、平野博文前国対委員長が、文部科学相になりました。
小沢:国会開会の直前に、まったく新しい人を国対委員長に起用するというのは、正直、ちょっと何を考えているのかわかりません。大臣を交代させ、ましてや国対委員長まで代えて、10日後に始まる国会をちゃんとやれと言っても、そう簡単にいくもんじゃない。そこまで考えが及ばないということなんでしょうかね。
−−野田首相が本当に消費増税法案を出すかどうかはともかく、少なくとも野党はこれから年度末に向けて予算関連法案を"人質"に衆院解散・総選挙への圧力を強めてきます。打開策はありますか。
小沢:野党は、赤字国債発行に必要な特例公債法案よりも、むしろ「交付国債」に反対するでしょう。将来の消費増税による返済を当て込んで、基礎年金の国庫負担財源2・6兆円をまかなうというものですが、あれは本来、赤字国債を出せばいい話です。それを、単に見かけ上の国債発行額を抑えるために、一般会計に計上しなくて済む交付国債にしようとしている。子供だましもいいところです。なぜこういうことをやるのかなあという気がします。
 困った状況ですね。文字どおり、メルトダウンの感じになってきた。(苦笑)
−−それが冗談に聞こえないところが、悲しいところです。小沢さんの裁判は4月に終わる予定ですが、そこまで政治状況が待ってくれますか。
小沢:メディアの最新の世論調査では、だいたい内閣支持率が30%、不支持率が50%と、20ポイントの差がついています。今後、支持率が20%程度になることもあり得る。そうなると大変ですよ。よく「支持率が1%になっても辞めない」というような話を聞きますが、実際はそうはいかないです。
 こんな状況にもかかわらず、野田首相は3月末までに消費増税法案を出すと言っています。でも、法案提出にさえ党内は反対するでしょう。私自身、反対します。
−−やはり小沢さんは、消費税をいま上げることには反対ですか。
小沢:以前から言っていますが、賛成できません。やはり、順番が決定的に違う。われわれの国民との約束は、まず霞が関への権力集中をなくして、地域主権を進めることです。それに伴って補助金制度、特殊法人・独立行政法人、特別会計などを抜本改革する。そうすることによって国、地方を通じて徹底的に無駄なお金をなくし、「国民の生活が第一。」の政策を実行する財源を作る。それでもなお財源が足りなければ、次の任期中に税制改正をやりましょう、というのが民主党の約束した改革の順番です。
−−小沢さんはずっと、特別会計を含む国家予算の全面組み替えで財源は出ると言っていますが、いまからでもできますか。
小沢:それはできます。総理がその気になればね。でも、いままでと同じ方法で各省庁の要求どおりに予算編成をしていたら、財源なんて出るわけがありません。われわれの主張は、明治以来続く官僚主体の中央集権の国家機構を革命的に変えよう、ということなんです。だから、それに抵抗があるのは当たり前ですけれども、「官僚の壁」は突破しなければならない。

小沢一郎・独占インタビュー第2弾 「官邸は能天気だ!」(下)
 消費増税の行方と解散時期
 週刊朝日2012年01月27日号配信
 ◆法案は通らない、そして解散に...◆
−−小沢さん自身は、今後の政局がどうなったらどう動くというシミュレーションはしているのですか。
小沢:考えていますよ。やはり外部要因としては、世論調査の影響が大きい。なぜかというと、いまの民主党議員はマスコミの世論調査結果に敏感に反応して、すぐに右往左往するでしょ。その時々の国民の雰囲気が党内に伝わり、「これでは、とてもダメだ」という話になってしまう。
−−前回のインタビューで小沢さんは「年内に衆院解散がある」と断言しましたが、こんな状況で野田首相は解散できますか。
小沢:年内に解散・総選挙はあると思います。だけれど、野田さんができるかどうかはわからない。
 野田首相は「解散する」と脅しているけれど、野党が「解散しろ」と言っているんだから、脅しになっていない。あれは本当に不思議です。「解散するぞ」と言っても、誰も驚きません。野党としてはむしろ、解散してくれるならば、なおさら法案を通さないほうがいい、ということになるんです。
−−解散・総選挙があるとすれば、野田首相が代わったときということですか。
小沢:このまま野田首相が辞めざるを得ない状況になるかもしれませんが、そこで首相が代わっても、結局、選挙管理内閣ですね。「夏までに選挙します」とか約束して交代する以外ないんじゃないでしょうか。
−−その場合、選挙の争点は何になりますか。
小沢:恐らく消費増税法案は通らない。それで野田首相が代われば、民主党全体が消費増税反対ということになる(笑い)。やはり、これはわからないですね。政界再編の動きになるかもしれないし......。
 いま解散して選挙になっても、民主党も自民党も過半数を取れません。票はほかに行ってしまう。
 世論調査では、みんなの党の支持率が上がっていますし、橋下徹大阪市長の「大阪維新の会」が出てくれば、関西は維新の会に取られてしまう。地方では何だかんだ言っても自民党が強いし、浮動票がこなければ、民主党は勝てません。
 民主党はとにかく、マニフェストの原点に戻らなければ、何を言っても、何をやっても、国民に信用されません。民主党に限らず、既成政党のすべてが信用されなくなっている。だから、まだ世間で中身がよく知られていない、みんなの党や維新の会に浮動票が行ってしまうんです。
−−どうするんですか。
小沢:僕は、みんながのほほんとしているのが不思議でならない。ヒステリックなくらい本気にならないといけないはずなんですが......。
 このままでは、国民は政党不信、民主主義不信になってしまう。それがいちばん怖い。どこも過半数を取れないとなると、もう何も決められません。政権すら決まらない。悲劇ですよ。
 現時点では、僕は民主党でやり直したいと思っています。ただ、いまのような体質、態勢で本当にやり直しがきくか、ということです。すべては、そこのところですね......。
−−小沢さんは1月3日に、地元・岩手の被災地に入りました。昨年3月に県庁を訪れましたが、被災地入りは震災後初めてでした。どのような印象でしたか。
 予想どおりひどいものです。僕がかつて街頭演説したり戸別訪問したりした場所が、みんななくなっちゃっているんだもの。
 今回は、岩手県の達増拓也知事が「正月は被災地の激励かたがた一緒に回ろう」というので行きました。僕が帰るなんて誰も予想していなかったから、みんなびっくりしていましたよ。地元は「帰ってくるわけねえ」と思っていますからね(笑い)。みんな僕の立場も、裁判を抱えていることもわかっていますから、お互い激励し合いました。「オレもがんばっから、みんなもがんばれい!」ってね。
 震災直後から達増知事と打ち合わせながら手を打ってきましたが、現地の見舞いなどは若い人たちに任せて、僕は当面の応急手当てと制度を整えることに専念してきました。
 今回、被災地を回って改めて強く感じたのは、やはり基本の制度を改革しないと、この国はダメだということです。一つは危機管理制度の確立。もう一つは中央集権から地域主権への転換です。財源と権限を地方に移すことです。そして、福島原発事故への対応ですね。やはり小手先ではダメです。根本から変えないとどうしようもない。
 確かに、被災地には復興関連で多額のカネが入ってきていますが、基本的ビジョンが何もないままです。復興景気で恩恵を受けている人もいますが、被災地全体の、国民全体の暮らしをどうするか、という視点がありません。
◆世界経済の危機、僕なら対策ある
−−本来は国がしっかりやるべき話ですよね。
小沢:そりゃそうですよ。だからまず、この国の旧体制を打破しなくてはならない。まるで橋下市長みたいな主張になっちゃいますが(笑い)。実は彼とは、旧体制をぶっ壊さなきゃ新しい国民のためのシステムはできない、という考えでは共通しています。これは僕が20年近く前に『日本改造計画』を出したころから掲げている主張で、僕が言い出しっぺだと思っているんですけれどね。
 本当は、大震災後の今が官僚の旧体制をぶっ壊すのにいい機会なんです。旧態依然の官僚機構をつぶして、官僚の能力をちゃんと発揮させる仕組みを作らないといけない。政治家がきちっとした理念を示し、具体策を示せば、官僚は絶対についてくる。僕は確信を持っています。だからこそ、政治家が官僚を納得させるだけの見識と能力をもっていなきゃいけないんです。
 日本はもうおかしくなってしまっている。それなのに、官邸が能天気なのが不思議です。自民党政権時代の末期も首相が1年ごとに代わりましたが、それでも当時の首相たちは日本のことを一生懸命考えていたと思います。だけれども、民主党はなんか能天気なんですね。権力を楽しむのはいいけれど、実態は官僚任せになってしまっているのが問題です。
−−ユーロ危機を持ち出すまでもなく、世界経済は深刻な状況です。今のような政治の混沌は、この国の致命傷になりかねません。
小沢: 本当にそう思います。致命傷だと思いますよ。だから、そのときに日本人が、民意がどう動くかですね。
 ユーロ危機は、どうしようもないところまできています。米国だってどうなるかわからない。この3〜4月あたりは、大変なことになっているんじゃないか。そんな気がします。世界経済が混乱し、中国経済が減速して落ち込んでいったら、日本経済も大きなダメージを受ける。そんななかで政治が機能しないのでは、どうにもなりません。
−−対策はないんですか。
小沢:僕はいま、何かできる立場じゃないですから。
−−立場だったとすれば?
小沢:その立場になれば別ですよ。それは、いくらでも方法があります。日本には能力もお金もあるんですからね。思い切ってやれば、やりようはいくらでもありますよ。  (構成 本誌・鈴木毅)
※本文は内閣改造後に一部追加しました。
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〈来栖の独白〉2012/01/28 Sat.
>同じことを何度も何度も聞いてくるんです。
 ほんとうに、そう。その度に小沢氏が「わかりません」「忘れました」と答える。それをメディアが悪印象として報道する。
 ところで余談に当たるかもしれないが、被告人質問の公判で非常に非常に不快だった質問がある。
> 指定弁護士「最終学歴は?」
  被告「日本大学大学院法学研究科です。中退しました」
  指定弁護士「何を学んでいましたか」
  被告「特別なテーマはありません。司法試験を目指して勉強していました。大学は経済学部でしたが」
  指定弁護士「何年在籍しましたか」
  被告「1年間です」
  指定弁護士「昭和44年12月に衆議院議員になった」
  被告「12月27日」
 一国の総理になるに最も近いところにいた人に、「最終学歴は?」とは、何事だ? 「何を学んでいましたか」とは、何事だ。それに対して小沢氏がいとも素直に「司法試験を目指して勉強していました」と答える。小沢氏を愚弄するのもいい加減にせい。小沢氏の人の善さと質問者の姑息が際立つ。こんなにも人が好くて無防備な人間を「権力」はメディアという卑しい走狗を駆使させて、陥穽に嵌める。
 4月には有罪がでるだろう。ダメだ、この国は。
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検察はメディアに「金丸悪玉」イメージを流させ/小沢一郎氏は「裁判で検察と徹底抗戦すべし」と進言した2012-01-13 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
 田中良紹の「国会探検」
政治家の金銭感覚

 強制起訴された小沢一郎氏の裁判でヤマ場とされた被告人質問が終った。法廷でのやり取りを報道で知る限り、検察官役の指定弁護士は何を聞き出したいのかが分からないほど同じ質問を繰り返し、検察が作り上げたストーリーを証明する事は出来なかった。
 検察が起訴できないと判断したものを、新たな事実もないのに強制起訴したのだから当たり前と言えば当たり前である。もし検察が起訴していれば検察は捜査能力のなさを裁判で露呈する結果になったと私は思う。従って検察審査会の強制起訴は、検察にとって自らが打撃を受ける事なく小沢一郎氏を被告にし、政治的打撃を与える方法であった。
 ところがこの裁判で証人となった取調べ検事は、証拠を改竄していた事を認めたため、強制起訴そのものの正当性が問われる事になった。語るに落ちるとはこの事である。いずれにせよこの事件を画策した側は「見込み」が外れた事によって収拾の仕方を考えざるを得なくなった。もはや有罪か無罪かではない。小沢氏の道義的?責任を追及するしかなくなった。
 そう思って見ていると、権力の操り人形が思った通りの報道を始めた。小沢氏が法廷で「記憶にない」を繰り返した事を強調し、犯罪者がシラを切り通したという印象を国民に与える一方、有識者に「市民とかけ離れた異様な金銭感覚」などと言わせて小沢氏の「金権ぶり」を批判した。
 しかし「記憶にない」ものは「記憶にない」と言うしかない。繰り返したのは検察官役の指定弁護士が同じ質問を何度も繰り返したからである。そして私は政治家の金銭感覚を問題にする「市民感覚」とやらに辟易とした。政治家に対して「庶民と同じ金銭感覚を持て」と要求する国民が世界中にいるだろうか。オバマやプーチンや胡錦濤は国民から庶民的金銭感覚を期待されているのか?
 政治家の仕事は、国民が納めた税金を無駄にしないよう官僚を監督指導し、国民生活を上向かせる政策を考え、謀略渦巻く国際社会から国民を守る備えをする事である。そのため政治家は独自の情報網を構築し、絶えず情報を収集分析して対応策を講じなければならない。一人では出来ない。そのためには人と金が要る。金のない政治家は官僚の情報に頼るしかなく情報で官僚にコントロールされる。官僚主導の政治が続く原因の一つは、「政治とカネ」の批判を恐れて集金を自粛する政治家がいる事である。
 今月から始まったアメリカ大統領選挙は集金能力の戦いである。多くの金を集めた者が大統領の座を射止める。オバマはヒラリーより金を集めたから大統領になれた。そう言うと「清貧」好きな日本のメディアは「オバマの金は個人献金だ」と大嘘を言う。オバマが集めたのは圧倒的に企業献金で、中でも金融機関からの献金で大統領になれた。オバマは150億円を越す巨額の資金を選挙に投入したが、目的は自分を多くの国民に知ってもらうためである。そうやって国民の心を一つにして未来に向かう。これがアメリカ大統領選挙でありアメリカ民主主義である。政治が市民の金銭感覚とかけ離れて一体何が悪いのか。
 スケールは小さいが日本の政治家も20名程度の従業員を抱える企業経営者と同程度の金を動かす必要はある。グループを束ねる実力者ともなれば10億や20億の金を持っていてもおかしくない。それが国民の代表として行政権力や外国の勢力と戦う力になる。その力を削ごうとするのは国民が自分で自分の首を絞める行為だと私は思う。
 日本の選挙制度はアメリカと同じで個人を売り込む選挙だから金がかかる。それを悪いと言うから官僚主義が民主主義に優先する。それでも金のかからない選挙が良ければイギリス型の選挙制度を導入すれば良い。本物のマニフェスト選挙をやれば個人を売り込む必要はなく、ポスターも選挙事務所も街宣車も不要になる。「候補者は豚でも良い」と言われる選挙が実現する。いずれそちらに移行するにせよ今の日本はアメリカ型の選挙なのだから金がかかるのをおかしいと言う方がおかしい。
 ところで陸山会事件を見ていると1992年の東京佐川急便事件を思い出す。金丸自民党副総裁が東京佐川急便から5億円の裏献金を貰ったとして検察が捜査に乗り出した。捜査の結果、献金は「金丸個人」ではなく「政治団体」へのもので参議院選挙用の陣中見舞いである事が分かった。しかも既に時効になっていた。要するに検察が描いたストーリーは間違っていた。
 ところが検察はメディアを使って「金丸悪玉」イメージを流した後で振り上げた拳を下ろせなかった。しかし金丸氏を起訴して裁判になれば大恥をかくのは検察である。検察は窮地に立たされた。そこで検察は取引を要求した。略式起訴の罰金刑を条件に、検察のストーリー通りに献金の宛先を「金丸個人」にし、献金の時期も時効にならないよう変更しろと迫った。「拒否すれば派閥の政治家事務所を次々家宅捜索する」と言って脅した。その時、小沢一郎氏は「裁判で検察と徹底抗戦すべし」と進言した。法務大臣を務めた梶山静六氏は検察との手打ちを薦めた。この対立が自民党分裂のきっかけとなる。
 金丸氏が取引に応じた事で検察は救われた。そして金丸氏は略式起訴の罰金刑になった。しかし何も知らない国民はメディアの「金丸悪玉説」を信じ、余りにも軽い処罰に怒った。怒りは金丸氏よりも検察に向かい、建物にペンキが投げつけられ、検察の威信は地に堕ちた。検察は存亡の危機に立たされ、どうしても金丸氏を逮捕せざるを得なくなった。
 総力を挙げた捜査の結果、翌年に検察は脱税で金丸氏を逮捕した。この脱税容疑にも謎はあるが金丸氏が死亡したため解明されずに終った。世間は検察が「政界のドン」を追い詰め、摘発したように思っているが、当時の検察首脳は「もし小沢一郎氏の主張を取り入れて金丸氏が検察と争う事になっていたら検察は打撃を受けた」と語った。産経新聞のベテラン司法記者宮本雅史氏の著書「歪んだ正義」(情報センター出版局)にはそう書かれてある。
 小沢一郎氏は金丸氏に進言したように自らも裁判で検察と徹底抗戦する道を選んだ。検察は土地取引を巡って小沢氏が用立てた4億円の原資に水谷建設から受け取った違法な裏金が含まれているというストーリーを描き、それを隠すために小沢氏が秘書と共謀して政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとしている。それを証明する証拠はこれまでのところ石川知裕元秘書の供述調書しかないが、本人は検事に誘導された供述だとしている。
 その供述調書が証拠採用されるかどうかは2月に決まる。その決定は裁判所が行政権力の側か国民主権の側かのリトマス試験紙になる。そして小沢氏に対する道義的?責任追及も民主主義の側か官主主義の側かを教えてくれるリトマス試験紙になる。
投稿者:田中良紹 日時:2012年1月12日 23:53
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小沢一郎元代表の「暗黒人民裁判」は、実は「市民感覚=貧民感覚裁判」だった2012年01月12日
 板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
 小沢一郎元代表の「暗黒人民裁判」は、1月10日、11日の被告人質問というクライマックスを終えた。
 この裁判の最大の特徴は、大多数の下層民(貧乏人)が、富裕層(金持ち)を裁判にかけて糾弾する構図にあった。
 それは、フランス革命の最中、ダントン、ロベスピエールなどの革命家が王族や富裕層を人民裁判にかけて糾弾し、どんどん有罪判決を下して断頭台に送った姿を彷彿とさせる。
 小沢一郎元代表にとって、「4億円」は、「たかだか4億円」にすぎない。自民党幹事長時代、東京都心の大企業をグルッと回って、20億円〜30億円を平気でかき集めてきていた。
 当時、政治資金規正法には、いまのように厳しい規制条項はなく、政治資金収支報告書も、限りなく大ざっぱに記載するよう選挙管理委員会が指導していたくらいである。
 この意味で、小沢一郎元代表自身が政治資金規正法の改正に関与しているうちに、「大ざっぱ」なことではできなくなったのは事実だ。
 政治資金規正法が厳しくなったのは、1993年5月23日、自民党羽田派44人が離党し、新生党(羽田孜、小沢一郎代表幹事)を結成して以降のことである。
 小沢一郎元代表は、「お金」に恵まれた人である。言い換えれば、「お金」がどんどん集まる運勢を持っている。親の資産はもとより、和子夫人の実家である「福田組」関係から集まる資金、大中小企業はもとより個人、あるいは多種団体からも勝手に資金が集まってくる。このほかにも、創価学会の池田大作名誉会長とは、英国など海外で資金運用をともにしていた時期もある。
ある時、不動産協会の役員が、私にこう明かしていた。
「役員2人で、小沢一郎さんの部屋に政治資金をもって行ったことがある。すると、秘書や事務所の人たちを全員部屋の外に出した。3000万円を入れた紙袋を手渡すと、中味を見ることなく、ただ一言『オッ』と言った。何かお言葉があると思ったが、それだけだったので、拍子抜けしたことがある」
 そのとき私は、
「それは、現金をを受け取ったとか、お礼を言うとか何か会話を交わすと、あとで問題になったとき、お互いに都合悪くなる。不動産協会には、業界団体としての要望をきちんと実現することでお返ししていることだろう」
と解説をしたところ、納得していた。
 この種の「お金」が湯水の如く集まってくるので、小沢一郎元代表本人には、「4億円程度のお金」は、決して大金ではなく、政治闘争、選挙活動の「軍資金」でしかない。私服をこやしてはおらず、ましてや、本人にしてみれば「4億円」の出入り内訳の詳細は、わからなくなっているはずである。つまり、いつ、だれからもらったお金であるかの区別はつかなくなっている。
 本人にも説明できない「お金」であるから、部外の人にわかろうはずもない。
 検事はもとより、今回の「暗黒人民裁判」で検察官役の指定弁護士も、「4億円」の中味について、具体的に不正を証明することも、出入りを証明することもできるわけがない。本人に聞いても、よくわからなくなっているので、説明が二転、三転するのは当然である。
 ということは、この裁判は、限りなく疑いは濃厚でありながら、「疑わしきは、被告人の利益に」という大原則を適用せざるを得ない類のものである。
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小沢一郎氏裁判/検察の「小沢許すまじ」の執念に始まり、マスコミを引き連れ、起訴にまで持ち込んだ2012-01-12
 小沢一郎元代表への被告人質問でヤマを越した「陸山会事件」の持つ意味と露呈した刑事司法改革の難しさ
 現代ビジネス「ニュースの深層」2012年01月12日(木)伊藤 博敏
 読まされる方も報道する方も、いささか食傷気味だった「陸山会事件」が、10日、11日の両日、行われた小沢一郎元民主党代表への被告人質問でヤマを越した。
 事件発生から3年が経過、最初は小沢事務所の巨大裏ガネ疑惑を追及していたが、途中で諦め、最後は秘書宅取得資金の4億円が政治資金規正法違反にあたるか否かを問う事件となった。
 小沢一郎という日本を左右する大物政治家の「政治とカネ」に関する事件だけに、意味がないとは言わないが、検察の「小沢許すまじ」といった執念から始まり、マスコミを引き連れ、ようやく起訴にまで持ち込んだという背景を考えれば、「小沢叩き」に与する気が失せる。
 むしろ国民は、検察が主導してきた刑事司法が、特捜検察の制度疲労によって改革の時を迎えているだけに、「陸山会事件」は、その岐路を象徴する事件だと理解すべきではないだろうか。
 実際、「小沢逮捕」にかける検察の執念は異様だった。その"見立て"が間違っていたことは、12月16日、第10回公判で法廷に立った前田恒彦元大阪地検特捜部検事(証拠隠滅罪で実刑確定)が、「私が裁判官なら無罪判決を書く」と述べたことでも明らかだ。
 検察に切られ、地位と身分を失った前田元検事に怖いものはない。前田元検事は、「初日に主任検事から『特捜部と小沢の全面戦争。小沢をあげられなかったら特捜部の負けだ』と言われた」といい、当時、「4億円は複数の企業からもらったという"妄想"を抱く幹部がいた」と、辛辣に批判した。
 つまり、「小沢逮捕ありき」で捜査は進み、裏ガネがあると"妄想"した検察幹部によって、事件が組み立てられていった。「小沢公判」に先立つ「秘書公判」で、検察が水谷建設からの1億円の裏ガネを立証したかったのは、事件に関係はなくとも、「小沢事務所はクロ」と印象付けたかったからだ。
 特捜検察が手がける事件の多くが「強引なシナリオ捜査」で仕掛けられると指摘されてきたが、検察の"身内"がそれを暴露したことになる。
 小沢元代表は、検察には起訴されなかったが、検察審査会に強制起訴された。それは、強引に取られた調書によって審査員に「おかしなカネ集めをする事務所」という意識が刷り込まれていたからだと主張した。
 10月の初公判の「意見陳述」で、「本件が特に許せないのは、国民の負託を受けていない検察が、議会制民主主義を踏みにじり、国民主権を冒涜したことだ。(中略)恣意的な権力行使が許されるなら、民主主義国家とはいえない」と、小沢元代表は検察をののしった。当否はともかく"怒り"は理解できる。
 しかし、だからこそ「検察改革」なのである。取り調べの全面可視化も含め、検察は変わろうとしている。前田元検事が犯した大阪地検特捜部事件と合わせ、東京地検特捜部の「陸山会事件」は、明らかな行き過ぎであり捜査の失敗。その修正は始まっている。
 まず検察は、特捜部が手がける独自捜査を少なくし、「ノルマに縛られない捜査」を目指すことになった。むしろ国税当局、公正取引委員会、証券取引等監視委員会など外部と連動、時には警視庁と組む。
 同時に、有罪率100%を目指し、強引な自白調書を散るような取り調べはしない。調書至上主義からの脱却。また、全面可視化を目指すことも決めており、白黒は法廷でつければいいと考えるようになった。
 その分、有罪率は低下するが、起訴すればほとんど有罪。有罪率99・9%という数字が間違っていたのであって、裁判所は、検察側最終弁論で判決文を書くような"手抜き"が許されなくなる。
 検察が無理をしないということは、裁判所に被告が否認している案件が数多く持ち込まれるということだ。裁判官は、有罪を前提に量刑だけ決めればいいというこれまでの刑事司法から一転、自分の頭で公判資料を読み込み、尋問をし、自ら判断を下さねばならなくなった。
 「陸山会事件」の秘書公判で、東京地裁の登石郁朗裁判長は、特捜部の強引で恣意的な捜査を批判、供述調書の主要部分を認めず、「検察に対立するのか」と、訴訟指揮の評判は悪かった。しかし、「反検察」だったわけではない、裁判所もまた変わろうとしていた。
 それは、検察と"癒着"することで成り立つヤメ検弁護士の世界にも変化をもたらす。ヤメ検と言えば、罪を認めさせる代わりに、保釈を早くし、執行猶予判決を取ることが主な"役割"だった。だが、それは正しい刑事司法の姿ではない。
 争うべきは争う---。そう発想する人権派弁護士への依頼が増え、小沢元代表に就いたのが、冤罪の村木厚子事件で無罪を勝ち取った弘中惇一郎弁護士であるところに、それは表れている。
 司法マスコミもそうである。裁判所にタダ同然で記者クラブを置き、検察と一体となって報じていればいい記事、社内で評価の高い記事が書けていたのだから、検察と一心同体だった。だが、村木事件と小沢事件を経て、ネットジャーナリズムが雑誌ジャーナリズムと連帯、「検察べったりの司法マスコミ」を批判するようになった。
 検察自身が、制度疲労を認め、変革しようとしているのだから、司法マスコミも自立しなくてはならない。かつては考えられないことだが、検察批判、裁判批判が堂々と論じられるようになった。
 そういう意味で、「陸山会事件」は、法曹3者に司法マスコミも加えた刑事司法の関係者が、自立を始めるきっかけとなった事件であり、公判だと位置づけられよう。
 むろん素人を裁判に巻き込む裁判員裁判と合わせ、定着は容易ではない。自立を目指していた秘書公判の登石裁判長は、結局、検察の主張通りの判決を下したし、司法マスコミは横一線で形式犯に過ぎない「陸山会事件」を、微に入り細に入り報じ、「なぜ、いつまでも裁判が続いているのか」という、国民の声には答えていない。
 それだけ刑事司法改革は難しく、検察がすべてのシナリオを描く司法を郷愁する向きもある。だが、回り始めた歯車は元に戻せない。国民も含め、それそれが自分の頭で刑事事件を考えるしかなく、そうすることが、冤罪を生む強引な捜査からの決別になると信じたい。
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