読売会長、TBSドラマにブチ切れ!オレは“たかり記者”じゃない
ZAKZAK 2012.02.07
読売新聞グループ本社の渡辺恒雄会長(85)が週刊誌に怒りの手記を寄せた。沖縄返還密約をめぐり元新聞記者が逮捕された実際の事件を下敷きにしたTBS系ドラマ「運命の人」(日曜午後9時)で、渡辺氏を連想させる登場人物の描写に憤慨、矛先は主人公のモデルとされる元毎日新聞記者、西山太吉氏(80)にも向かう。そこで西山氏の言い分を聞くと、意外な反応が返ってきた。
《この疑似フィクションドラマで、極めて名誉を傷つけられた》と渡辺氏が怒りのペンをふるったのは7日発売の「サンデー毎日」。「私はTBS『運命の人』に怒っている!」と題し、4ページにわたって猛抗議を展開している。
原作は1971年の沖縄返還協定の裏に存在した日米間の密約に絡むスキャンダルを舞台にした作家、山崎豊子氏(87)のベストセラー小説。ドラマでは主人公の毎朝新聞記者を本木雅弘(46)、密約の極秘電文を本木に渡す外務省事務官を真木よう子(29)が演じ、第4話まで放映されている。
「毎朝新聞」は毎日新聞を連想させるほか、登場人物も、首相の「佐橋慶作」は佐藤栄作氏、与党幹事長の「田淵角造」は田中角栄氏−など実在の人物と重なる点も多く、当時の政界模様もリアリティーたっぷりに描写されている。
渡辺氏らしき人物も、主人公のライバルで読日新聞政治部記者の山部一雄として登場、人気俳優の大森南朋(39)が演じているが、どこが気に障ったのか。
ドラマで山部は、政治家と仲良くなって情報を取る手法の記者として描かれている。料亭で田淵角造と会食し、頭を下げる場面があるが、渡辺氏は《私は、料亭はもとより私邸であっても、田中角さんに一度もサシで御馳走になったことはない》と全否定する。
渡辺氏が《さらに許し難い》と怒りをにじませるのは、山部記者が、自民党の旧大平派を連想させる「小平派」のゴルフコンペに参加する場面。
ここで山部記者は、議員から大金を受け取ったことをにおわせる発言をするが、渡辺氏は《そもそも、私は大野伴睦派担当で(中略)大平派のゴルフコンペなどに招かれるはずもなく》と全くの作り話であると主張、《下等なたかり記者として描かれている》《モデルと実在の人物とが、直ちに多くの視聴者に判別されるような描き方は、全くマスコミ暴力の一種》と不満をあらわにした。
怒りは本木演じる主人公、弓成亮太記者のモデルである西山氏にも向かった。渡辺氏は西山氏との親交を明らかにしつつ、《小生が悪玉にされていることを知りながら、一回もワビの電話すらない》と憤懣(ふんまん)やるかたない様子。渡辺氏はドラマで田淵から山部がカネをもらったと想像させるシーンを見て、《完全に西山君に対する感情がぶち切れた》とまで言い切った。
渡辺氏の怒りに戸惑いを隠せないのが当の西山氏だ。夕刊フジの直撃に西山氏はこう語った。
「僕に言われたってねぇ…。そもそも山崎豊子さんの本であって共同制作したわけでもない。非難する的が違っているんじゃないかな。抗議されるなら、山崎さんにしたらいい」と苦笑い。ただ、渡辺氏の怒りに同調するように、原作へのこんな不満も口にした。「まったく事実と反する所が山と出てくる。怒り心頭に発するのも当たり前ですよ。ナベさんが怒る以上に私が怒っているんだから」
TBS広報部は「(渡辺氏から)何も言ってきていないので、特にコメントすることはない」と話しているが、話題作りになったことは間違いないだろう。
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〈来栖の独白2012/02/07 TUE.〉
渡辺氏の怒りはもっともだ。本木雅弘さん主演なので私は3回観たが、山崎作品については、昔から眉唾ものだと思ってきた。
講談社が“山崎豊子『運命の人』を超えるノンフィクションです”と銘打った、諸永裕司著『ふたつの嘘 沖縄密約』には、3頁にわたって西山氏と渡辺氏との親交が綴られている。安心して読める。
p118〜
ふたりは、外務省担当記者が詰める「霞クラブ」で一緒だった。
64年、首相だった池田勇人が病に倒れて後継を選ぶことになり、副総裁の川島と自民党幹事長の三木武夫が調整役をまかされた。
後継候補はふたり。河野一郎か、佐藤栄作か。
どちらになると思うか、という渡邉の問いかけに、西山は即答した。「佐藤にきまってるやろ」
池田が総理大臣の座を福田赳夫と争った際、最終的に佐藤が池田を推したことが決め手になった、と聞いていた。その時の恩が返ってくる、との確信があった。
自信たっぷりの西山の口ぶりを受けて、渡邉が言う。
「じゃあ、賭けをしよう。2万円でどうだ」
勝ったのは、西山だった。
翌65年、日本と韓国の間で日韓基本条約が結ばれた。
この交渉をめぐる報道でも、ふたりは鎬を削った。自民党の実力者、大野伴睦に目をかけられ、政治家とともに交渉の裏面に潜り込むようにして決定的な情報に触れることができる渡邉を出し抜くのは容易ではなかった。
ある日、西山は築地市場の場外で飲んでいるとき、関係者からある情報を聞き込んだ。交渉の最終段階までもめていた、日本の賠償金額についての具体的な数字だった。酒席をはずし、金額の裏づけを取るために外務省幹部に確かめた。
「三、二で決まりでしょ?」
否定はされなかった。西山はあわてて会社に戻り、最終版の1面トップに記事を突っ込んだ。
〈無償3億?、有償2億? 日本が経済協力〉
同じ日の読売新聞朝刊はやはり、日本の経済協力についての方針を盛り込んだ「金・大平極秘メモ」について報じていた。韓国の中枢情報部長、キムジョンピルと日本の外相だった大平とが同名のメモを作成し、政治決着させるという一級のスクープだった。
西山はメモの存在にまで触れることはできなかったが、内容については正確に報じた。他社に抜かれずにすんだ。新聞業界でいうところの「同着」だった。
以来、西山は渡邉から一目置かれるようになる。同じ記者クラブに加盟しているライバルというのに、毎週土曜日になると声がかかった。
「おう、ちょっと行こうや」
当時、社屋のあった有楽町駅近くのビアホールで情報や意見をかわした。記者としての力量を認められたのだった。
p120〜
事件が起きたあとも、渡邉は陰ひなたに支えてくれた。
1審では、読売新聞解説部長として弁護側の証人として法廷に立っている。判決後には、「週刊読売」に3ページにわたる記事を寄せた。一部を引用しよう。
〈私は毎日新聞西山太吉記者とは政局取材でも現場を共にしたことがあるし、外交交渉や国際会議でも取材上、競争的立場から、特ダネを争ったことがある。
が、弁護側証人として法廷に立ったのは、そんな関係があったからではなく、政府が国民の利益と関係なく得手勝手に“国家機密”を作り出し、それを取材し、“秘密”を入手すれば、国家権力によって逮捕拘禁してもかまわない、という習慣、言い換えれば、国家公務員法の乱用を政府に許すことになり、憲法に保障された言論表現の自由と、国民の知る権利を失うことになってしまうことを恐れたからだ〉
その渡邉に会うため、西山は東京へ向かった。
飛行機嫌いのため、新幹線に乗る。小倉から片道5時間。前日から泊まり込めばいいようなものの、枕が変わると眠れない。豪胆なようでいて、妙なところで神経質なのだ。見えない緊張に包まれていたのか、車中で缶ビールをあけた。
東京・大手町にある読売新聞本社の会長室で久々に顔を合わせると、歓談は2時間に及んだ。
このとき、作家の山崎豊子の小説のために取材を受けたと伝えた。
「主人公はだれか?」
渡邉から問われて、西山は答えた。
「もちろん、俺さ」(〜p121)
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◆『運命の人』 『ふたつの嘘 沖縄密約』西山太吉記者と外務省女性事務官の機密漏洩事件/小沢一郎夫妻2012-01-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
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◆検察を支配する「悪魔」 意図的なリークによって、有罪にできなくとも世論に断罪させようとする2010-01-26 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
検察を支配する「悪魔」 大衆迎合メディアが検察の暴走を許す---田原
マスコミを踊らすなんて、検察にとっては朝飯前なんですよね。
最近の事件で言えば、堀江貴文の事件。堀江は拘置所に入っているにもかかわらず、マスコミには堀江の情報が次々と出てきた。あれは検察がリークしたとしか考えられない。
最近はとくに意図的なリークによって世論を煽り、有罪にできなくとも、世論に断罪させて社会的責任を取らせようとする傾向が強くなったように思う。
情報操作によって世論を喚起した事件として思い出すのは、沖縄返還協定を巡って1972年に毎日新聞政治部記者、西山太吉と外務省の女性事務官が逮捕された外務省機密漏洩事件です。
西山記者が逮捕されたとき、「言論の弾圧だ」「知る権利の侵害だ」という非難が国民の間で上がった。
そこで、検察は起訴状に「西山は蓮見(女性事務官)とひそかに情を通じこれを利用し」という文言を盛り込み、批判をかわそうとした。この文言を入れたのは、のちに民主党の参議院議員になる佐藤道夫。
検察のこの目論見はまんまと成功、西山記者と女性事務官の不倫関係が表に出て、ふたりの関係に好奇の目が注がれ、西山記者は女を利用して国家機密を盗んだ悪い奴にされてしまった。
本来、あの事件は知る権利、報道の自由といった問題を徹底的に争う、いい機会だったのに、検察が起訴状に通常は触れることを避ける情状面をあえて入れて、男女問題にすり替えたために、世間の目が逸らされたわけです。
西山擁護を掲げ、あくまでも言論の自由のために戦うと決意していた毎日新聞には、西山記者の取材のやり方に抗議の電話が殺到、毎日新聞の不買運動も起きた。そのため、毎日は腰砕けになって、反論もできなかった。
さらに特筆すべきは、検察の情報操作によって、実はもっと大きな不正が覆い隠されたという事実です。『月刊現代』(2006年10月号)に掲載された、元外務省北米局長の吉野文六と鈴木宗男事件で連座した佐藤優の対談に次のような話が出てくる。吉野は西山事件が起きたときの、すなわち沖縄返還があったときの北米局長です。
その吉野によると、西山記者によって、沖縄返還にともない、日本が400万ドルの土地の復元費用を肩代わりするという密約が漏れて、それがクローズアップされたけれど、これは政府がアメリカと結んだ密約のごく一部にしか過ぎず、実際には沖縄協定では、その80倍の3億2000万ドルを日本がアメリカ側に支払うという密約があったというのです。
このカネは国際法上、日本に支払い義務がない。つまり、沖縄返還の真実とは、日本がアメリカに巨額のカネを払って沖縄を買い取ったに過ぎないということになる。
こうした重大な事実が、西山事件によって隠蔽されてしまった。考えようによっては、西山事件は、検察が、佐藤栄作政権の手先となってアメリカとの密約を隠蔽した事件だったとも受けとれるんです。
西山事件のようにワイドショー的なスキャンダルをクローズアップして事件の本質を覆い隠す手法を、最近とみに検察は使う。
鈴木宗男がいい例でしょう。鈴木がどのような容疑で逮捕されたのか、街を歩く人に聞いてもほとんどがわかっていない。あの北方領土の「ムネオハウス」でやられたのだとみんな、思いこんで
いるんですよ。しかし、実は北海道の「やまりん」という企業に関係する斡旋収賄罪。しかも、このカネは、ちゃんと政治資金報告書に記載されているものだった。
興味本位のスキャンダルは流しても、事の本質については取り上げようとしないメディアも悪い。いや、大衆迎合のメディアこそ、検察に暴走を許している張本人だといえるかもしれませんね。
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◆沖縄密約国賠訴訟
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◆西山太吉氏:日米密約を語る(1)YouTube
西山太吉氏:日米密約を語る(2)YouTube
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