規模縮小でも減らぬ負担? グアム移転費用問題
中日新聞 2012年2月8日 朝刊2面
日本政府は、在沖縄米海兵隊のグアム移転の規模を見直すことで米政府と合意したことに伴い、日本側が負担する移転経費の減額を米側に求めていく方針だ。政府はグアムへの移転規模が当初の八千人から四千七百人に縮小されることから減額要求は当然との立場だが、財政難にあえぐ米側が求めに応じるかどうか、予断は許さない。
Q グアム移転の見直し合意とは。
A 日米両政府は二〇〇六年五月の在日米軍再編のロードマップ(行程表)で、沖縄の海兵隊八千人のグアム移転と、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を同時に実現する方針だった。ところが普天間移設が一向に進まないため、米側はグアム移転を先に進める方針に転換。財政難に伴い国防予算が圧縮される中、移転規模も四千七百人に減らし、残りはハワイやフィリピンなどでの一時駐留を繰り返すことにした。
Q 米国の海兵隊が米国の領土であるグアムに移転するのに、日本がなぜ移転経費を分担するのか。
A グアム移転は沖縄の負担軽減を円滑に進めるため、日本側の意向で米軍再編の行程表に盛り込まれた。移転する海兵隊員も当初は四千人だったが八千人に倍増させた経緯もある。沖縄の負担軽減が進展することを理由に、日本政府は移転経費を一部肩代わりすることで米政府と合意し、グアム移転協定を結んだ。
Q 負担割合は。
A 移転経費の総額は百二億七千万ドル。このうち日本側は海兵隊の司令部庁舎や学校、家族住宅、上下水道などのインフラ整備のために将来回収される融資を含めて六十億九千万ドルを負担することになっている。現在の換算レートでみると、総額約七千九百億円のうち、六割にあたる約四千七百億円を日本側がまかなう計算だ。
Q 規模が縮小するなら、日本の負担額は減るのが当然だが。
A 確かにそうだが米政府は、普天間移設に先んじて海兵隊の移転を実現させることで沖縄の負担軽減を大きくアピールできると考えている。さらに国防予算が大幅に減額されることを理由に、日本側にこれまで通りの負担を求めてくる可能性は十分考えられる。
Q 日本はこれまで実際、米国にいくら支払ってきたのか。
A 〇九年度に約三百四十六億円、一〇年度に約四百六十八億円それぞれ支払った。
Q 米側はきちんと予算を使ってインフラ整備しているのか。
A 実は二年分約八百十四億円は手つかずのままだ。
Q なぜか。
A 普天間移設が進まないことが大きく影響しているのは確かだが、グアムの環境影響評価が大幅に遅れ、インフラ整備に入れなかったのも事実だ。
Q 見直し合意を機に、費用分担は仕切り直しすべきだね。
A その場合、協定の修正が必要になるだろう。現協定は国会が承認しているから、政府はあらためて国会に承認を求めないといけない。野党はグアムの先行移転が普天間の固定化につながると反発しており、今後国会が紛糾する場面があるかもしれない。
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「グアム移転協定」問題/沖縄の負担軽減を理由に、日本が移転経費を一部肩代わりすることで米政府と合意
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