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核燃サイクル撤退提言 「川下」から原発再考 民主の勉強会--会長・馬淵議員に聞く

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「川下」から原発再考 民主の勉強会 核燃サイクル撤退提言--会長・馬淵議員に聞く
中日新聞 《 核 心 》 2012/02/26.Sun.
 政府が今夏をめどに是非を判断する原発の核燃料サイクル。与党、民主党の中堅、若手議員ら約七十人でつくる「原子力バックエンド問題勉強会」が核燃サイクルの撤退を盛り込んだ提言をまとめ、今後の議論に一石を投じている。会長を務める馬淵澄夫元国土交通相にその狙いなどを聞いた。以下は一問一答。(聞き手=社会部・寺本政司、中崎裕)
----原発問題にバックエンドから取り組むのはなぜか
馬淵:原発の是非を議論するとき、これまでエネルギー需要という「川上」から入っていた。経済産業省の総合資源エネルギー調査会でやっている最適な電源多様化の議論も結局は原発、火力、水力、再生可能エネルギーの組み合わせを決めるだけで、原発は簡単にゼロとならない。逆に使用済み核燃料を減らすという「川下」からの視点なら話は違ってくる。原発は「トイレなきマンション」と言われ、廃棄物をどうするかが最大の問題だったわけだから、発想の転換がないと「脱原発依存」なんてやれっこない。
----核燃サイクル撤退を主張している
馬淵:使用済み核燃料の再処理は何十年もやってきていまだ完成していない。関係者はいろいろ言い訳するが、これはもうフィクション(絵空事)だったと言わざるを得ない。それがあたかもできるかのようにして、全国で五十四基もの商業用原発が動いてきた。このフィクションを前提にしているから原発はなくならないし、「再稼働せよ」なんて話が出てくる。
 再処理で燃料を再利用するというのが、その過程で余分な核物質が出てくる。この量がいったいどれくらいで、どう処分するのか見当すらつかない。六ヶ所村再処理工場(青森県)や高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)を動かせば、建物が放射能で汚染される。膨大な放射性廃棄物が出て、廃炉が大変になる。今、止めればその手間と費用が省ける。
----使用済み核燃料をどうするのか
馬淵:とりあえず三十年〜五十年の単位で中間貯蔵するのが現実的。問題の先送りといわれるかもしれないけれど、放射性廃棄物の最終処分は十万年かかるのだから、立ち止まってじっくり考えるべきだ。米国だってネバダ州の最終処分を白紙に戻した。貯蔵施設の設置場所は住民の受益と負担の公平性を確保しながら、国が主導的に進めるのが得策だと思う。
----提言後、「原発ムラ」の巻き返しはないか
馬淵:特に経産省は凄まじい。これまで経済性一本やりで推してきたが、最近は安全保障と絡めてくる。詳しくは言えないが、例えば、現在行っている米韓原子力協定の改定交渉。米国には韓国が再処理工場を持てば、北朝鮮を刺激するので思いとどまらせたい、と考えるかもしれない。そこで、日本が再処理を引き受ければ、東アジアの安定につながるとの理屈で、六ヶ所村の再処理工場が正当化されてしまう。外交上の秘密となれば、国民の知らないところで議論が進んでしまう。
----もんじゅも廃炉を条件に五年運転する案が浮上している
馬淵:五年ほどで、ある程度の実験データを得られるということでしょう。でも、いったん認めたらずっと続けることになる。現実に廃炉だ、と決めたとき、どういう撤退戦略を描くのか、運営する日本原子力研究開発機構に示してもらう。
----提言をどう具体化するのか
馬淵:議員提案による現行法の改正や新法成立を考えていく。夏までが勝負で、法案の骨子作りも進めている。積み上げてきたものをスパッと変えるのは、政治しかできない。
* 原発のバックエンド
 原発の建設や運転、核燃料の加工などをフロントエンドと呼ぶのに対し、使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理、廃炉作業などを指す言葉。日本は使用済み核燃料再処理して、プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を高速増殖炉などで燃やす核燃料サイクルを推進してきた。しかし、欧米の主要先進国は高コストを理由に核燃サイクルから相次いで撤退。使用済み核燃料再処理せず地中に埋める直接処分を採用する国が多い。高濃度の放射性物質のため管理、保管は十万年かかるとされ、日本を含め各国とも処分場探しに苦労している。
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核のごみ 行き先なし 核燃基地六ケ所村 / 高レベル=最終処分場決まらず/低レベル=管理に300年2012-02-26 | 地震/原発 
 「高レベル」=最終処分場決まらず  「低レベル」=管理に300年
中日新聞 《 特 報 》 2012/2/25日Sat.
 原子力政策を続けていく中で最も悩ましいのが、放射性廃棄物をどうやって処分するかという問題だ。放射能を無害化するのに要する時間は低レベル廃棄物で300年、高レベルになると数十万年ともいわれ、原発が“トイレのないマンション”に例えられる理由もここにある。青森県六ケ所村の核燃料サイクル基地で、日本が向き合わなければならない放射性廃棄物の現実を見た。(上田千秋)
■ドラム缶300万本収容へ
 核燃基地の北部にある低レベル放射性廃棄物埋設センター。再処理工場から約2キロ離れ、雪に覆われた一角の地表を十数メートル掘り下げた場所に、12メートル四方の埋設設備がいくつも立ち並んでいた。
 標高30〜60メートルの高台にあり、事業者の日本原燃の会社案内には「十分な強度を有する岩盤で透水性も小さく、埋設設備を設置する地盤としての条件を十分備えています」と書かれていた。
 放射性廃棄物は、使用済み核燃料を処理する際に出る廃液を指す「高レベル」と、それ以外の「低レベル」とに分けられる。同センターは、低レベル廃棄物の国内唯一の最終処分場として1992年12月に操業を始めた。現在、200リットルのドラム缶計24万本分が置かれている。
 低レベル廃棄物とは、原発で使われた水や金属、プラスチック、布、紙などだ。作業員が着た防護服やマスクも含まれる。これらは各原発で液体と固体に分別。液体は蒸発させて濃縮し、固体は焼却や切断、溶融などの工程を経てそれぞれセメントなどで固め、黄色いドラム缶に詰めて原発敷地内の施設で保管する。

              

 ドラム缶は、放射性廃棄物の専用輸送船が各原発近くの港で回収して回る。そして月に1回程度、六ケ所村のむつ小川原港に帰港し、同センターに運搬。缶の中身によって1号地(濃縮廃液や焼却灰など)と2号地(金属類やプラスチック類など)に分けられる。
 ここでの処分の工程は細かく決められている。まず、埋設設備の中にドラム缶を横に並べて置き、すき間にセメントを注入。埋設設備がいっぱいになると、漏出対策のため設備全体をコンクリートや水を通しにくい粘土質の土などで覆い、さらに4〜9メートルの厚さの土をかぶせて、さら地の状態にする。
 その時点から、放射線量の調査や周辺の巡視といった管理が約300年にわたって続く。日本原燃の赤坂猛広報部長(57)は「低レベル廃棄物の主要な核種は、半減期が5年のコバルト60。半減期の10倍の期間で放射能はほぼなくなり、300年たてば自然界と同じになる」と説明する。
 最終的にはドラム缶300万本を収容できるよう、核燃基地の敷地全体の4割に当たる300ヘクタールを確保している。1年間に全国の原発から出る低レベル廃棄物はドラム缶約3万本分なので、およそ100年はもつ計算だ。
 福島第一原発では、事故後に出た大量の放射性廃棄物の行き先が問題となるが、六ケ所村に持ち込まれることはないと言う。「通常運転の原発から出た廃棄物しか搬入できない規定になっている。福島の廃棄物をここで処分するという議論はまったく起きていない」
■英仏から返還
 低レベルに比べ、処分に圧倒的な手間と時間がかかるのが高レベル廃棄物だ。
 使用済み核燃料再処理工場に隣接する高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの中に入ると、整然と並んだ100個以上のオレンジ色の円いふたが目に飛び込んでくる。ふたの下に保管されているのは、高レベル廃液にガラスを混ぜた「ガラス固化体」が入った円筒形のステンレス製容器(キャニスター)。9本のキャニスターが縦に並んでおり、計約1400本が貯蔵されている。
 これらは、英国とフランスから返還されたものだ。電力各社は1990年以降、計約7100トンの使用済み核燃料の再処理を両国の工場に委託。ウランとプルトニウムを抽出してできる混合酸化物燃料(MOX燃料)は各原発に直接運ばれ、キャニスターだけが六ケ所村に持ち込まれている。
 別の部屋には、英国から到着して間もない長さ6・6メートル、直径2・4メートルの巨大な円筒形の輸送容器が置かれていた。1基に28本のキャニスターが入っており、到着するとまず、遠隔操作で中身が漏れていないかや放射線量などをチェック。問題がなければ貯蔵建屋の地下に収め、厚さ1・9メートルのコンクリートで覆ってふたをする。
 「本来なら厚さ1・2メートルで十分なところ、余裕を持って設計している。真上に立っても何の問題もないですよ」と赤坂部長。実際に何人もの社員が、マスクなど特別な装備なしで、ふたの上を歩き回っていた。
 フランスの分は、2007年3月に1310本すべての輸送が完了。英国からはすでに約100本が戻り、20年までに残りの800本弱を受け取る。同センターには両国からの輸送分用のほか、3千本を貯蔵できるスペースがあり、さらに5千本分を増設中。いずれ六ケ所の再処理工場が本格稼働し、多くのキャニスターが出ることを想定しての措置だ。
 キャニスターはここで30年から50年間、貯蔵。搬入当初は200度あるガラス固化体の表面温度を自然の空気で100度以下にまで冷やした上で、最終処分場へ搬出することになっている。
 だが、厄介なのはむしろこの後。高レベル廃棄物は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」により、地下300メートルより深い場所に埋めるよう決められている。事業を担うのは、経済産業省所管の認可法人「原子力発電環境整備機構(NUMO=ニューモ)」。全国の市町村に呼び掛け、公募を基本に処分場の設置場所を決める方針で、平成40年代後半の操業開始を目指している。
 ところが、基本的な調査を受けるだけでも6年間に最大90億円の電源三法交付金が支払われるにもかかわらず、これまでに応募したのは2007年の高知県東洋町が唯一。同町も住民の猛反対を受け、3カ月後に撤回している。
 NUMOは調査に20年、着工から完成まで10年かかると試算。「技術が進んで工期が縮まる可能性もある。操業開始の目標は変えない」(広報部)とはいうものの、スケジュール通りに事業を進めるのは困難な情勢になっている。
 このままいけば近い将来、沖縄の米軍基地のような出口の見えない状態に陥りかねない。青森県原子力立地対策課の担当者は「福島の事故の前も後も、青森を最終処分場にしないという方針に変わりはない。最終処分場の選定は、止まっていていい話ではない」と力を込めた。
<デスクメモ> 今から300年前、日本は江戸時代。江戸市中に大量の灰を降らせた富士山の「宝永噴火」から5年後、大岡裁きで知られる大岡忠相が南町奉行となる5年前だ。当時、低レベル廃棄物処理を始めたとして、ようやくそれが無害になる計算。私たちはそれほど根気のいる仕事を子孫に託そうとしている。(木)
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核燃基地六ケ所村「核のごみ」封印 道遠く/ガラス固化 失敗続き/純国産技術進まず/核半島2012-02-22 | 地震/原発     

             

 核燃基地六ケ所村「核のごみ」封印 道遠く 
中日新聞 特報  2012/02/22 Wed.
 原発から出る使用済み核燃料を再処理するための核燃料サイクル基地・青森県六ケ所村。再処理の過程では危険な高レベル放射性廃棄液が残されるが、安全管理が課題だ。事業者の日本原燃は先月から、ガラスに混ぜて固める最終試験に再び挑んだものの、不具合で今月3日に中断した。ここには原発の推進、反対を超えて、わたしたちが避けて通れない「核のごみ」の重い現実がある。その行く末を議論する前に、再処理工場の実態を紹介することから始めたい。(小坂井文彦)
■ガラス固化 失敗続き
〈前段略〉
 中核施設「ガラス固化製造溶融炉」は、炉内の温度を上げる「熱上げ」を先月10日にスタート。同24日朝、ガラスを溶かす試験が始まった。稼働試験はトラブルが続発し、2008年12月から中断。昨年中に再開を予定していたが、東日本大震災後の電力不足と、地震に対する安全性の再点検に追われ、今年にずれ込んでいた。

            

 溶融炉はバルブのような突起物の付いた3?四方の大きさ。内側は耐熱煉瓦で造られており、下部は円錐形で「流下ノズル」と呼ばれる排出口がついている。
 ここで作られるのが、将来、地下深い最終処分場に埋設される予定の「ガラス固化体」だ。高レベル廃液とガラスを混ぜた液を、ステンレス製容器に流し込んで固めたものだ。円筒状で高さ1・3?、直径0・4?の大きさだ。
 高レベル廃液は、使用済み核燃料棒を溶かし、原発の燃料として再利用するプルトニウムとウランを抽出した後に残ったごみだ。人体に危険なセシウム137などの核分裂生成物が含まれる。
 製造工程は、粒状のガラスビーズを溶融炉に入れて、タンクからパイプを通じて廃液も投入。側面の主電極と底部の電極の間に高電圧の電流を通して、炉内の温度を1000度以上にすることでガラスを溶かす。
 廃液とガラスが混ざったら、流下ノズルから流す。混合液が排出中に冷えて固まらないように、ステンレス容器の間には、電熱線を巻いたような高周波加熱コイルが設置されて熱する。
 なぜ、ガラスなのか。日本原燃の赤坂猛広報部長(57)は「紀元前の工芸品が現在も原形をとどめるほどガラスは安定した物質。割れても廃液は流れ出さない。放射性物質を閉じ込めるのに適している」と説明した。
■純国産技術進まず
 だが、このガラス固化体を作る純国産の技術を日本原燃は確立できないでいる。各電力会社は技術のある英仏の会社に再処理を委託してきた。同24日からの試験は廃液を入れないガラスを溶かすだけの「最終試験をするための試験」なのに、“悲願”は翌25日未明に早くもつまずいた。
 排出口から流れるガラスの速度が低下した。炉内の上から直棒でかくはんしたが回復しない。排出口が詰まったとみられるが、炉からはがれた煉瓦か、結晶化したガラスかを確認するために結局、試験は中断された。
 溶融炉の作業は全て、中央制御室からの遠隔操作で行う。工程ごとに6つのグループに分かれ、それぞれ約80人が三交代で昼夜を問わずに作業を続ける。職員は排出口近くのカメラを監視し、炉内に増やした5つの温度計を見て電流を変えて溶融の度合いを調節する。今回のトラブルに、経産省原子力安全・保安院の検査官もいたが焦りは感ていなかったようだ。
 しかし溶融試験のトラブルは過去に9回も発生している。何とか119本のガラス固化体を作り上げたが、一部は水に溶けやすい化合物が混じった“不良品”だ。試験の中断により24万?の高レベル廃液がタンクに残されたままになっている。
 「既に99%完成している」(日本原燃関係者)が、最後の1%をクリアできない。トラブルが最初に起きたのは、初試験の2007年11月の直後。今回と同じくガラスが排出される速度が遅くなった。廃液をガラスに混ぜていたが、炉内の温度が安定せずに、廃液の金属製の元素が底部に固まり、排出口をふさいだ。
 08年7月は、排出口にガラスがこびり付いて固まり、排出自体できなくなった。同年12月には、混合液をかき混ぜる金属製の棒が曲がり、天井のティッシュ箱大のレンガが炉内に落ちた。レンガは10年6月、新設したクレーンゲーム機に似た機械で回収できた。
 また09年1〜10月は3回にわたり、パイプのつなぎ目から150?以上の高レベル廃液が漏れ出した。廃液が気化し、放射性物質が溶融炉のある部屋全体に付着してしまった。全ての機器を水で洗い流す除染作業に追われ、実験は長期間の中断を余儀なくされた。
 溶融炉は実は2つある。それぞれA系とB系と呼ばれ、昨年までの実験は全てA系で行われた。A系がトラブル続きだったため、今回はB系を使用したのだが、結果は同じに。B系の炉中には3年以上、ガラス原料が入れられたままだったことがトラブルを招いたという可能性もある。
 同じ様式の小型溶融炉の試験を、現在の日本原子力研究開発機構が茨城県東海村で成功させている。その上で、原燃が導入したが、生産性を高めるために5倍の大きさにした。「大型化にトラブルの原因があると言われても否定できない」(日本原燃関係者)という。
 再処理工場は08年5月の当初予定を大幅にずれ込み、今年10月の完成を予定している。本格的な稼働後は、A系とB系で年間500体ずつのガラス固化体を作る予定だ。
 しかし、試験の再開は3月上旬以降となり、高レベル廃液を入れた安定稼働と性能が確認される条件の10月の完成は事実上厳しい。
 与党内から再処理工場の凍結を求める声も上がる。一方、自前でガラス固化体を作れない場合、使用済み核燃料の再処理はもとより、高レベル廃液も処理できず、最終処分問題を含め混迷が深まることが予想される。
<日本原燃> 青森県六ケ所村に核燃料サイクル施設を建設するために、1980年に設立された株式会社。原発のない沖縄電力を除く国内の電力会社9社が出資し、資本金は4000億円。従業員約2400人のうち、3割を電力会社からの出向が占める。歴代社長は主に東京電力出身。再処理工場は93年に着工され、既に約2兆2000億円が投じられている。
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原発の「ごみ」行き場なく/「核半島」六ヶ所村再処理工場/東通原発/大間原発/核燃料 中間貯蔵施設2011-04-28 | 地震/原発
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映画「100,000年後の安全」地下500? 核のごみ隠すオンカロ/原発から出た放射性廃棄物を10万年後まで保管2011-06-01 | 地震/原発 
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核兵器に転用可能なプルトニウム/原発保有国の多くは本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようで2012-01-24 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
 「核燃サイクルは実現困難」 カーター元米大統領 本紙と会見
中日新聞2012年1月23日 朝刊 1面
 【ニューヨーク=長田弘己】カーター元米大統領(87)=写真、長田弘己撮影=が米ジョージア州アトランタ郊外の自宅で本紙と会見した。一九七七〜八一年の大統領在任時、核燃料サイクル事業の撤退を決断したカーター氏は同事業に関し「開発費用が巨額で、仕組みも複雑だ」と述べ、経済性や技術面で実現は難しいとの認識を示した。福島第一原発事故後の日本の原発政策には「政治的な影響力から独立した監視委員会を設置することだ」と話し、国民の側に立った安全規制の強化を求めた。
 カーター政権は七七年に新原子力政策を発表し、使用済み核燃料の再処理や、再処理で生じるプルトニウムを燃料とする高速増殖炉の開発計画の無期延期などを決めた。米国内で根強い反対論があったが「(設計や構造が)複雑すぎて好ましくなかった。限られた国家予算の中で考えれば終了させる必要があった」と強調。「私は(計画を)握りつぶした」と述べ、政策決定で強いリーダーシップを発揮したことを明かした。
 カーター氏は核兵器に転用可能なプルトニウムの拡散を懸念して東海再処理工場(茨城県東海村)の運転に懸念を示したが、日米交渉の末、最後は容認した。会見で日本の核燃料サイクルの是非では言及を避けたが、技術的なトラブルが続く高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の現状などを知り「私は正しかった」と述べた。
 一方、福島原発事故の日本政府の情報提供などが不十分との指摘がある点に「報道でしか知らないが、私もそういう印象を持った」と指摘。七九年の米スリーマイル島原発事故に取り組んだ経験をもとに情報の透明性、公開性が欠かせないとし「その上で日本が将来の原子力計画を決めることだ」と強調した。
 若いころ、海軍の原子力技術者としてカナダの原子力施設の事故処理で被ばくした経験を持つカーター氏は福島事故の収束にあたる作業員らに「同情し、胸が痛む。彼らの勇気を称賛し、健康であることを祈る」と話した。
 本紙はカーター氏から核燃料サイクルの意見を聞くため訪米した民主党原発事故影響対策プロジェクトチームの谷岡郁子参院議員(愛知選挙区)に同行。今月十五日(米国時間)の谷岡氏と会談した前後に本紙のインタビューに応じた。
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カーター氏と側近、東海再処理工場運転で応酬
中日新聞2012年1月24日朝刊 1面
            

 日本が核燃料サイクル開発を進める第一歩となった東海再処理工場(茨城県東海村)の運転をめぐる1977年の日米交渉で、本紙は当時のカーター米政権の外交記録や内部資料の一部を入手した。核兵器に転用可能なプルトニウムの拡散を懸念して運転に反対するカーター大統領と、対日関係を重視する側近や外交当局者らとの間で激しいやりとりがあったことをうかがわせた。
 文書や資料はホワイトハウスや国務省、エネルギー省、国家安全保障会議のメモや公電、書簡など。ジミー・カーター図書館(米ジョージア州アトランタ)に保管されていた。
 大統領は74年のインド核実験で核拡散の脅威が高まったとして、就任から3カ月後の77年4月に新原子力政策を発表。原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理や、それを燃料とする高速増殖炉開発などの無期延期を決めた。影響は、原発の核燃料を米国産に依存する日本に飛び火し、試運転目前だった東海再処理工場に反対する考えを示した。
 73年の石油危機に見舞われた日本は代替エネルギーの確保が悲願で、当時、国務省職員だったアマコスト氏(後の駐日大使)は再処理を中止すれば「右翼と左翼双方から反米ナショナリズムが起きるだろう」との懸念を伝えていた。後に親日家として知られるマンスフィールド駐日大使は77年7月に着任後「将来の良好な日米関係のためには妥協が必要不可欠」との極秘公電を送り、米側の譲歩を促した。これを受け、大統領は方針を転換。3日後に福田赳夫首相へ書簡を送り、交渉の取りまとめを約束している。
 米側はウランと混ぜた混合核物質にすることで、純度の高いプルトニウムの取り出しを防ぐ再処理方法への切り替えで運転を認めた。しかし、米原子力規制委員会(NRC)はこの方法でも「数日でプルトニウムを取り出せる」と核拡散の危険性があることを事前に報告していた。
 日米再処理交渉は77年4月から9月まで、当時の福田内閣との間で計3回行われた。当時、外務省科学課長として交渉にあたった太田博氏(75)は「米側は『日本に再処理を認めれば、他の国にやめろと言えなくなる』と強硬だった。日本だけの問題ではなかった」と振り返った。
 【東海再処理工場】原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す日本初の再処理施設。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料は高速増殖炉などで活用する。試運転後、1981年に本格稼働。使用済み燃料の年間最大処理量は210トン。2006年に電力会社からの燃料受け入れを終了し、現在は日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の研究施設。後継となる青森県6ケ所村の再処理工場はトラブルが続き、完成が遅れている。
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核燃料再処理交渉/「核武装 疑念晴れず」×「エネルギー源 期待」/日米間 認識にズレ
中日新聞【核心】 2012年1月23日 Tue. 朝刊3頁

       

 日米が激しくぶつかった1977年の再処理交渉。米国の外交記録や内部資料などから浮かび上がったのは核燃料サイクルを自国の「エネルギー問題」ととらえる日本と「核の脅威」と疑う国際世論との認識のズレだ。日本の核燃サイクルが米国の安全保障政策に左右される危うい実態も明らかになった。(社会部・寺本政司、中崎裕、蜘手美鶴)
■監視下の開発
 米国産濃縮ウランの提供を受けてスタートした日本の原子力開発は日米原子力協定で、米国の監視下に置かれている。米ソ冷戦の当時、同じ西側同盟諸国だった英、仏、西独と違い、原発の使用済み核燃料からプルトニウウムを取り出す再処理の実施には米国の承認が必要だった。
 日本は76年に核拡散防止条約(NPT)を批准し「核武装する気は毛頭ない」と繰り返し主張したが、米側の疑念は晴れない。
 交渉の裏方を担い、後に外務省の初代原子力課長となった金子熊夫氏(75)は「日本は信用されなかった。そもそもウランの利用を細かく制限する原子力協定は不平等条約の最たるものだが、その前提に核武装への疑いがある」と話す。名古屋大の春名幹男特任教授(日米関係論)も「当時のカーター政権や米議会に日本の核武装や日本のプルトニウムが第3者に流れる核ジャックへの懸念があった」。
 ただ、米側が制限付きとはいえ、運転容認に傾いた背景には、当時ぎくしゃくしていた日米関係があったとみられる。春名教授は「72年にニクソン大統領が日本の頭越しに訪中するなど日米関係は良好とは言えなかった。再処理反対も核を独占したいご都合主義との批判が日本政府内にあった。最後は日本との同盟関係を優先すべきだと判断したのだろう」と分析する。
 米側が運転の条件としたのはプルトニウム単体ではなくウランとの混合核物質にして取り出す方法。当時の福田赳夫首相は「ビールをつくる機械でサイダーをつくれと言っているようなもの」と不満を口にしたとされる。
■しばり忘れず
 だが、同じことは88年改定の現行協定の交渉でも繰り返された。日本側は青森県六ケ所村の再処理工場などで、自由に再処理できる包括同意の獲得に全力を挙げた。当時はカーター政権に比べ原子力開発に比較的寛容とされたレーガン政権だった。
 交渉は順調に進むかに見えたが、米側は包括同意と引き換えに、自国の安全保障に対する著しい脅威があった場合は協定を破棄できる文言を盛り込み、しばりをかけるのを忘れなかった。
 現行の原子力協定は6年後の2018年が期限切れ。金子氏は「イランと北朝鮮の核問題を抱える米国は、今でも再処理をやめてほしいと思っているはず」と話す。核兵器保有国以外で米国が再処理を認めているのは日本だけ。いまだ韓国は同意を得られていない。専門家の間では冷戦が崩壊し、テログループなどによる核ジャックの危険性が一段と高まったとの指摘もある。
 国内でも福島第1原発事故を受け、政府は今夏をめどに高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を含め核燃サイクルの是非をまとめる予定。先進国が相次いで撤退する中、エネルギー自給の名の下にプルトニウムをため込んできた日本がどのような決定を下すのか。世界は厳しい目で見ている。
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イランも米国も、まだ全面対決を望んでいない/核の一線を越える覚悟がイラン自身にあるのかどうか2012-01-24 | 国際
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原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
 知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
 4月の最終週に、ドバイ経由でエチオピアに出張した。出張ではホテルのロビーなどで外国人と何気ない会話を交わすことも多いのだが、今回出会った人々は、私が日本人と分かると、異口同音に「FUKUSHIMA」について聞いてきた。世界の人々が原発事故に関心を寄せているのだ。福島は広島、長崎と共に、広く世界に知られた地名になってしまった。
 日本はこれからも原子力発電を続けるべきであろうか。それとも、原発は取り止めるべきなのだろうか。
 報道各社による直近の世論調査では、賛否はほぼ拮抗している。多くの人が、地震が多い日本で原子力発電を行うことはリスクが伴うが、便利な生活を送るためには仕方がないと考えているのだろう。
 現在は、原発から漏れている放射性物質の封じ込めや津波で破壊された町の復興に関心が集まっているが、一段落つけば、これから原発とどう付き合うか、真剣に議論しなければならなくなる。
 その議論を行う前に、世界の原発事情についてよく知っておくべきだ。フランスが原発大国であることを知っている人は多いと思うが、その他の国の事情については、よく知られていないと思う。
 筆者の専門はシステム分析だが、システム分析ではデータを揃えて広い視野から先入観を持たずに現実を直視することが第一歩となる。そこで本稿ではIEA(国際エネルギー機関)のデータを基に、世界の原発事情について考えてみたい。そこからは原発の意外な一面が見えてくる。
*原発を所有する国の意外な顔ぶれ
 原発は最先端の科学技術を利用したものであるから、先進国にあると思っている人が多いと思う。しかし、調べて見るとどうもそうとは言い切れない。
 現在、31カ国が原発を所有している。原発による発電量が最も多い国は米国であり、その発電量は石油換算(TOE)で年に2億1800万トンにもなる(2008年)。
 それにフランスの1億1500万トン、日本の6730万トン、ロシアの4280万トン、韓国の3930万トン、ドイツの3870万トン、カナダの2450万トンが続く。日本は世界第3位だが、韓国も第5位につけており、ドイツを上回っている。
 その他を見ると、意外にも旧共産圏に多い。チェルノブイリを抱えるウクライナは今でも原発保有国だ。石油換算で2340万トンもの発電を行っている。その他でも、チェコが694万トン、スロバキアが440万トン、ブルガリが413万トン、ハンガリーが388万トン、ルーマニアが293万トン、リトアニアが262万トン、スロベニアが164万トン、アルメニアが64万トンとなっている。
 旧共産圏以外では、中国が1780万トン、台湾が1060万トン、インドが383万トン、ブラジルが364万トン、南アフリカが339万トン、メキシコが256万トン、アルゼンチンが191万トン、パキスタンが42万トンである。
 その他では、環境問題に関心が深いとされるスウェーデンが意外にも1670万トンと原発大国になっている。また、スペインが1540万トン、イギリスが1370万トン、ベルギーが1190万トン、スイスが725万トン、フィンランドが598万トン、オランダが109万トンとなっている。
 原発を保有している国はここに示したものが全てであり、先進国でもオーストリア、オーストラリア、デンマーク、アイルランド、イタリア、ノルウェー、ニュージーランド、ポルトガルは原発を所有していない。
 ここまで見てくると、一概に原発は先進国の持ち物と言うことができないことが分かろう。
*多くの国は本音で核兵器を持ちたがっている
 東欧諸国は旧共産圏時代に建設し、今でもそれを保有している。しかし、台湾やインド、ブラジル、南アフリカ、パキスタンになぜ原発があるのだろうか。韓国の発電量がなぜドイツよりも多いのであろうか。また、G7の一員でありながら、なぜイタリアには原発がないのか。
 原発の有無は、その国の科学技術力や経済力だけでは決められない。
 ある国が原発を所有する理由を明確に知ることは難しい。その国の人に聞いても、明確な答えは返ってこないと思う。しかし、原発を持っている国名を列記すると、その理由がおぼろげながら見えてくる。原発は国家の安全保障政策に関係している。
 原子力による発電は原子力の平和利用であるが、ウランを燃焼させることにより生じるプルトニウムは原子爆弾の原料になる。また、原発を製造しそれを維持する技術は、原爆を製造する技術につながる。原発を持っている国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができるのである。
 北朝鮮が原爆の所有にこだわり、それを手にした結果、米国に対して強い立場で交渉できる。この事実は広く知られている。そのために、イランも原爆を欲しがっている。
 米国が主導する世界では、世界の警察官である国連の常任理事国以外は核兵器を所有してはいけないことになっている。それ以外の国が原爆を持つことは、警察官以外が拳銃を持つようなものであり、厳しく制限されている。
 しかし、各国の利害が複雑にぶつかり合う世界では、金正日が米国に強気に出ることができるように、核兵器を持っていることは外交上で有利に働くと考えられている。
 多くの国は、本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり、原発保有国のリストと発電量を見ていると、その思いの強さが伝わってくる。
*フランスが原発大国でイギリスの原発が小規模な理由
 日本では、フランスが原発大国であることはよく報じられるが、その理由が語られることはない。フランスが原発に舵を切ったのは、地球環境問題がやかましく言われるようになった1990年代以前のことである。フランスはCO2を排出しない発電方法として原発を選んだわけではないのである。
 それには、西側にいながら米国と一線を画したいと考えるドゴール以来の外交方針が関連していると考えるべきであろう。同様の思いは、国防に関心が深いスウェーデンやスイスにも共通する。また、フィンランドは常にソ連の脅威にさらされてきた。
 そう考えると、西側の中でもイギリスの原発発電量がスウェーデンよりも少なく、フランスの約1割に過ぎないことがよく理解できよう。イギリスの外交方針が米国と大きく異なることは多くない。原子力の力を誇示して、ことさらに米国と一線を画す必要はないのである。
 韓国に原発が多いことも理解できる。米国が作り出す安全保障体制の中で原爆を持つことは許されないが、北朝鮮が持っている以上、何かの際に原爆を作りたいと考えている。
 その思いは台湾も同じである。旧共産圏に属する小国が、多少のリスクに目をつぶって原発を保持し続ける理由もそこにある。東西の谷間に埋もれるなかで、少しでもその存在感を誇示したいと思っているのだ。
*「絶対安全」とは言えない原発の所有を国民にどう説明するか
 このような力の外交の一助として原発を位置づけるという考え方は、多くの国で国民にそれなりの理解を得ているようだ。だから、フランスや韓国や台湾、ましてパキスタンで反原発のデモが繰り返されることはない。
 しかし、日本、ドイツ、イタリアではそのような考え方は国民のコンセンサスとはなり難い。言うまでもなく、この3国は第2次世界大戦の敗戦国であり、多くの国民は力による外交を毛嫌いしている。そのために、原発の所持を安全保障の観点から国民に説明することが難しくなっている。
 この3国では原発所持の理由を、経済性や絶対安全であるとする観点から説明することになる。しかし、それだけでは、使用済み燃料の最終処理に多額の費用を要し、また、福島の事故で明らかになったように、絶対安全とは言えない原発の所有を国民に説明することはできない。
 イタリアはチェルノブイリ原発事故の後に国民投票を行い、原発を廃止した。また、ドイツも緑の党などが強く反対するために、福島の事故を受けて、原発の保有が大きな岐路に立たされている。
 ここに述べたことを文書などで裏付けることは難しい。しかし、原発の保有国リストや発電量を見ていると、自然な形で、ここに述べたようなことが見えてくる。世界から見れば、日本の原子力政策も潜在核保有力の誇示に見えていることであろう。
 これまで、日本における原発に関する議論は、意識的かどうかは分からないが、本稿に述べた視点を無視してきた。
 しかし、原発の経済性と安全性の議論だけでは、なぜ、原発を持たなければならないのかを十分に議論することはできない。福島の事故を受けて、今後のエネルギー政策を考える際には、ぜひ、タブーを取り除いて議論すべきであろう。
 戦後66年が経過しようとしている。少子高齢化も進行している。そろそろ、老成した議論を始めてもよいのではないであろうか。 *強調(太字・着色)は来栖


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