Quantcast
Channel: 午後のアダージォ
Viewing all articles
Browse latest Browse all 10100

死刑か無期懲役か/刑事裁判は、遺族のためにあるのではない

$
0
0

中日新聞を読んで 「死刑か無期懲役か」後藤昌弘(弁護士)
2011/04/17 Sun.
 13日の朝刊に、いわゆる闇サイト殺人事件の控訴審判決が報じられていた。1審では3人の被告のうち2人が死刑だったが、控訴した2被告ともに無期懲役の判決が下されたのである。
 関連して本紙30頁には、「誰のための裁判か」と被害者の母の言葉を見出しにとって、記事が書かれていた。
 遺族の無念の思いは痛いほどわかる。しかし、建前論でいえば、残念ながら刑事裁判は、遺族のためにあるのではない。
 刑事裁判の目的は、起訴された被告人について合理的疑いを入れない程度に有罪と証明されたか否かを確認し、また有罪と認定された場合には法に定める範囲内で個別事情に応じた相当な刑罰を科するのが目的である。
 裁判の過程で被害者が関与できるようにはなったが、刑事裁判の本質的な目的は遺族のためではないし、裁判員となる国民の司法教育の場でもないのである。
 昔、冤罪事件の弁護人として示談に赴いたことがある。被害者もさることながら、両親の憤りは尋常なものではなかった。「殺してもあきたらない」とまで言われた。
 強姦罪の法定刑に死刑はない。被告人は刑務所に行ったが、それで被害者の心の傷が癒えるものではない。被害者のケアの問題は別の次元で考えていくしかないのではと思う。
 今回の控訴審判決では、検察官も控訴していた。自首の事実を考慮して無期懲役とした1審判決について、軽すぎるというのである。
 しかし、自首してもしなくても量刑が同じであれば、自首するものはいなくなる。犯人の一人が自首したことで犯罪が発覚することが現実にある以上、自首したことを有利な情状として考慮することは刑事政策上あり得ることではないかとも思う。
 死刑か無期懲役か、今回の事件では、裁判官も随分悩んだであろう。
 人を裁くことは重いことである。
........................
「闇サイト事件」死刑回避の理由とは/ 卑見 下山裁判長の考えのなかに「死刑」は確かに含まれていた2011-04-16 | 死刑/重刑/生命犯 問題


Viewing all articles
Browse latest Browse all 10100

Trending Articles